未病の段階からの健康の維持増進が注目されており,それに伴いストレスマネジメントの必要性がいろいろな場面でより強く求められています。ストレスマネジメントという考え方は決して新しいものではなく,ストレッサー(ストレスの原因となる刺激)に対処(コーピング)するために活用される様々な技法の総称として使用されてきました。最近では,神経生物学的機序の観点からストレスマネジメントは1)Behavior;ストレス状況下での認知・行動調節(認知的介入,認知再構成,娯楽など),2)Exercise;運動(有酸素,無酸素運動),3)Relaxation;リラクセーション技法,4)Nutrition;栄養法,食事や減量,の4つに分類されています。これらのストレスマネジメントは多くの臨床研究によって有効性が報告されていますが,その効果について生物学的指標を用いて客観的に評価した研究が少ないのが正直なところです。
そこで基礎・医療分野では,単にバイオマーカー等を用いた研究のプロトコール紹介にとどまらず,なぜストレスマネジメントが健康増進やストレスの軽減に有効なのか,どのようなストレスマネジメントプログラムが効果的なのかについて,そのメカニズムに迫る多様な研究の実践と知識拡大を目指します。さらに,医療領域においてストレスマネジメントに関する多くのツールや技法がどのような意義を有し,実際にどのように行われているのかについて積極的に情報発信するのと同時に,科学的根拠のある有効性の研究と実践を検討していくことで,ストレスマネジメントの発展と新たな可能性の拡大へ少しでも寄与できる活動を推進していきたいと考えております。
岡村尚昌(久留米大学)