ごあいさつ

理事長 春名 眞一

令和元年10月の日本鼻科学会総会・理事会において理事長に選出され、2年間の学会運営を任されました。

日本鼻科学会は、昭和37年10月に発足した鼻副鼻腔研究会から始まり、昭和39年に日本鼻副鼻腔学会に、昭和57年には現在の日本鼻科学会に名称を改めました。平成25年4月1日から一般社団法人日本鼻科学会となり、現在の会員数は1,950名で活動しております。 本学会は、一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会の関連学会に属しており、その目的は、鼻科学に関する研究及び知識の情報の交換や、会員及び国内外の関連学会や各種団体と連携協力し、鼻科学の進歩・普及を図り、医学医療の発展に寄与することです。 具体的には、(1)社員総会ならびに学術講演会の開催(2)学会誌、診断・治療ガイドライン他の刊行物の発行(3)講習会及び研究会等の開催(4)研究奨励及び研究業績の表彰(5)会員及び国内外の関連学会あるいは団体との連携・協力(6)国際的な研究協力と交流の推進(7)一般市民への鼻科学普及活動などであります。

鼻科学は、乳幼児から老年までの多くの多岐にわたる疾患を外科的あるいは内科的に扱う感覚器・運動器学であり、対象となる疾患は、鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などの炎症性疾患や良性あるいは悪性腫瘍、顔面外傷、嗅覚障害などであります。特に、国民病とまで言われるアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(近年増加傾向の好酸球性副鼻腔炎を含める)は、耳鼻咽喉科診療機関で受診する患者の中で最も多い疾患であり、それらの適切な診断及び治療指針の役割は重要です。また、健康寿命が延びるとともに嗅覚異常と認知症との関連や嗅覚そのものに対する国民意識の向上で嗅覚研究が活性化しています。

外科的治療として、内視鏡下鼻内副鼻腔手術(以下、ESS)は最近の耳鼻咽喉科外科学では最も発達した分野であり、その適応には鼻副鼻腔炎はもとより、外傷、良性あるいは悪性腫瘍、さらに鼻副鼻腔を経由した頭蓋底手術にまで発展してきております。また同時にナビゲーションなどの支援機器も革新し、今後も学会の中核となると確信します。会員のための鼻副鼻腔臨床ハンズオンセミナーも活況を呈しています。一方、かねてより指摘されてきたESSにおける副損傷の問題への学会の対応として、ESSの標準化を目指した日本鼻科学会認定手術指導医制度を令和2年から開始することといたしました。

また、臨床のみならず、基礎研究の、特に、好酸球性副鼻腔炎や嗅覚の治療に結びつく病態解明の発表が活発になっており、まもなく、基礎研究から結びついた抗体医療がアレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎にも適応される予定であります。さらに多くの会員に基礎研究への関心を深めていただけるよう、基礎ハンズオンセミナーも充実させております。

国際的な取り組みとしては、川内秀之前理事長の尽力により、アジア(韓国、台湾など)や欧米を中心に多くの海外の先生方を招聘し、会員に多くの刺激を与えております。特に、アジアにおける国際交流が盛んで、中でも韓国鼻科学会との学術交流は恒例であり、令和2年には、第59回日本鼻科学会と20th ARSR(Asia Research symposium in Rhinology)を大津市で同時開催する予定です。また、国際鼻科学会(IRS)や欧州鼻科学会(ERS)、アメリカ鼻科学会(ARS)とも密接な関係が構築され、日本で発祥したISIAN(International Society on Allergy of the Nose) は、毎年、IRSあるいはERSとジョイントして世界各地で開催され、多くの本学会会員が発表しております。2023年には、12年ぶりに東京でISIANとIRSが開催されることとなり、本学会では全面的にサポートする予定であります。

本学会として継続すべき大きな目標は、国際交流や学術及び広報活動の充実、法人としての国民への貢献が挙げられます。そのために本邦におけるさらなる臨床的なエビデンスを構築し、break throughとなる新たな基礎及び臨床的な開発を支援していきたいと考えております。具体的には、学会では9つの委員会と学術委員会の中に12個のアドホック委員会を構成し、さまざまな事務的課題や学術的テーマに対応していく所存です。また、会員数を増加させることは必須であり、後進の育成の目的に魅力的な学会企画とともに女性医師の参画を積極的に行なっていきたいと考えております。

歴代の理事長ならびに理事会の努力により充実した学会運営がなされておりますが、急激な医療の進歩や国民のニーズに学会も迅速に対応しなければなりません。会員の皆様の期待に応えるように活動してまいりたいと考えておりますので、ご支援とご理解を何卒よろしく願いいたします。

令和元年12月