ごあいさつ

理事長 藤枝重治
(福井大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)

理事長に就任して

我々の生活を激変させたコロナ禍からほぼ完全に回復し、以前の学会の形に戻ってきた中で、日本鼻科学会の理事長を拝命しました。日本鼻科学会では、多くの鼻副鼻腔疾患の原因、病態の解明を行い、確実な診断をし、症例ごとに適切な治療を行うことを目的として設立されました。会員は切磋琢磨して基礎および臨床研究と実地臨床を行っています。しかしながら鼻副鼻腔の二大疾患である鼻副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎においても、疾患発症の原因や症状の発現を、完全に説明できない状態です。おそらく複数の遺伝子が関与し、環境要因が加わることで体内の何らかの因子や状態が変化し、発症するのではないかと考えられていますが正確なところは不明です。例えば、アレルギー性鼻炎は、抗原に対する特異的IgEの存在と臨床状態で診断しますが、血清中で抗原特異的IgEは検出されるが、症状のない人もおられます。そのような現象はどのようになっているのかを明確にすることも本学会が目指す点と考えています。一方で、鼻副鼻腔炎の治療の中でEndoscopic sinus surgery (ESS)は、最重要な治療手段ですが、それを安全にかつ正確に、完全に行えるように導いていくのも本学会の使命です。さらに鼻副鼻腔腫瘍、脳腫瘍に対する安全な頭蓋底外科手術の確立です。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の学会員数は、現在ほぼ横ばい状態です。しかし日本鼻科学会の会員は、明確に減少傾向です。ベテランの先生や開業された先生が抜けられる一方、耳鼻咽喉科の専攻医になられた先生が、日本鼻科学会に入会されていない、もしくは入会されてもすぐに退会されてしまうことが原因であると考えられます。日本鼻科学会としては、若い先生方が、入会し積極的に日本鼻科学会で発表していただき、継続していただけるように学会全体が努力する必要があると考えています。日本鼻科学会総会の企画ものでは、手術に関するものが断然人気が高く、最も聴衆者を集めています。これは多くの先生方が鼻科学の手術に興味を持っていただけ、自分でもしっかり手術を達成したいとの表れであり、とても良い傾向だと思っています。そして専攻医の先生方、専門医の先生方が、鼻科手術指導医を取得していただくことに繋げることが、日本の鼻科治療の均てん化に重要です。そのためにもハンズオンセミナー、いくつかの施設で行われている手術技能研修会にぜひとも参加していただきたいと思います。現在は、会員の先生方が、目標とされる先生の施設に手術見学に行かれることもお勧めです。

一方、鼻科学における基礎研究も重要な項目です。ひと昔は、日本の鼻科学、アレルギー学が世界の先端であり、非常に高いレベルでした。例えば30年前では、Blue Journal (American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine)、JACI(Journal of Allergy Clinical Immunology)、Joural of Immunology、時にはJCI(Jounal Clinical Investigation)が学位取得後や留学中の仕事の成果を発表する雑誌でした。しかし最近はこれらの雑誌に掲載される日本の耳鼻咽喉科の先生は非常に少なくなりました。昔簡単だった臨床系の雑誌にも掲載が難しくなっています。これをぜひとも打破したいと考えています。「留学のすすめ」も一つの戦略ですが、まずは大学院に入っていただき、鼻に関することをぜひ研究して欲しいと思います。研究なんてと思われている専攻医の先生も多いと思いますが、専門医をとったら、一度基礎研究を学んでいただくと、医師のレベルがワンランク上がると思います。そして研究の成果をぜひ日本鼻科学会で発表して欲しいと思います。これも理事長としての切実な願いです。

そこで、日本鼻科学会としては、二つのweb配信を行います。一つはすでに始まっている手術を中心とした外科系のもの、もう一つは令和8年から始まる免疫療法などの内科的治療や臨床研究に関するものです。ぜひ皆さんwebを見ていただきたいと思います。

様々な治療を開発してこられた先生方、基礎研究をされてこられた先生方、それらの先生方が大きなテーマを持って、オールジャパンの体制で、AMED、ムーンショットもしくはCREST、ASPIRE等大きなグラントを獲得していただき、日本発の鼻科治療、トランスレーショナル研究、鼻科基礎研究など日本の鼻科学の成果をぜひとも世界に発信して欲しいと思います。そのようなエネルギーが湧き出ていく学会運営をしていきたいと考えておりますので、どうぞご協力をお願いいたします。

令和8年