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市民公開講座 がんになっても尊厳をもって安心して暮らせる社会へ 2024
閉会あいさつ

関 順彦さん(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)

帝京大学腫瘍内科の関と申します。私は腫瘍内科の診療科長、また帝京がんセンターのセンター長を拝命しております。本当によい会だなとつくづく思いながら前に座らせていただいておりました。当院は2008年から地域がん診療連携拠点病院として指定を受けております。また2019年には、さらにその中でも高度な医療体系を提供できる病院ということで、地域がん診療連携拠点病院(高度型)という称号も拝命いたしました。がん診療連携拠点病院として、よりよいがん診療を実践するために、当然私たちは院内を整備して、職員一丸となって、その要件を満たすために頑張っています。例えば、認定資格を持った人が何人いるか、患者さんにがん相談や緩和ケアを何件提供できているか、手術の件数や抗がん剤の処方件数が何件以上であるか、そういったことに着目しているわけです。

一方で、今日は日本がんサポーティブケア学会学術集会のプレイベントということで市民公開講座を拝聴いたしましたが、今日議論されたことは、実はがんの拠点病院の要件にはほとんど含まれていないような、しかしながら将来のがん医療にとって大切な内容が議論されました。

講演1では整形外科を率いる河野先生から、「知っておきたいがんロコモ-オンコ・オルソペディクスという新たな領域」という話をいただきました。「がんロコモ」は大変重要な問題ですが、こういったことが実は要件にはなかなか入ってきていないということがあります。講演2では、緩和ケアセンターを率いる有賀先生から、「診察室の内と外からの患者・市民参画」ということで、一緒になって将来のために患者さんとよりよい医療をつくり上げていく、あるいは実際の現場では、しっかりと自分の意見を言うことによって、やはり医療者と患者さん・ご家族が、よい医療を築き上げていくことについて力説いただきました。

そして、桜井なおみ先生には、8~10年くらい前に一度、まさにこの場で、当時はシェアードディシジョンメイキング(Shared decision making:共同意思決定)の重要性をお話しいただいて、私はそれを、桜井なおみ先生=シェアードディシジョンメイキング、と思いながらいつも実践してきました。今日は2つのこと、患者さんに「わかりやすい言葉」を、すなわち「お互い齟齬(そご)がないようにしっかり共通言語を確立していこう」ということ、そして、「仕方がないということは言わない」「言ってしまうような医師であってはならない」ということを教えていただきました。私は、「仕方がない」とは言わないのですが、「うーん、それはなかなか難しいですね」と言ってしまうことはやはりよくあります。ただ私も若い先生には、「自分がその患者さんの社会的・身体的・精神的苦痛に対して、十分理解しているということを、しっかりと自分の言葉で説明する、患者さんの苦痛を100%取り除くことはなかなか難しいとしても、それによって少しでも良くなるように一緒に考えていく」という姿勢をもつように指導しています。桜井なおみ先生には、そういった姿勢に対する重要性を、「"仕方がない"をなくそう」ということを通して、まさに今一度、教えていただきました。

本日は、がん診療連携拠点病院というハード面の話ではなく、市民公開講座というソフト面でいただいたご意見やご提案をしっかりと実践して、よりよい医療にしていくことの重要性に気づかされたよい機会でした。ご参加いただいた医療従事者の方々、あるいは患者さん、そのご家族が、共通の目的・問題・課題が認識できた、本当によい会だったと思います。

最後にこのような会を催してくださった佐伯先生、演者として登壇いただいた河野先生、有賀先生、桜井先生、本当にありがとうございました。またこの企画をしっかりと遂行していただいた渡邊先生にも感謝いたします、そして、何よりもこの会にご一緒いただいた参加者の皆さまに感謝して、この会を終了したいと思います。皆さま、本当にありがとうございました。

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掲載日:2024年04月11日
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