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がん医療フォーラム 2023 活用しよう!相談と支え合いの場
【第2部】パネルディスカッション
企業内がん経験者コミュニティーの活動と意義について~サッポロビールの取組事例から~

村本 高史さん(サッポロビール株式会社人事部 プランニング・ディレクター)
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村本 高史さん
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ピアサポートの様子に大きな勇気と希望を得る

皆さま、こんにちは。サッポロビールの村本高史と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私からは、企業内がん経験者のコミュニティーの活動と意義について、サッポロビールの取り組みをご紹介します。
サッポロビールは、ビールやワイン・焼酎などのお酒を扱っている、従業員数およそ2千人規模の会社です。私は59歳ですが、キャリアの3分の2を人事部門で過ごしてまいりました。現在はプロフェッショナル職、いわゆる専門職として、その中で治療と仕事の両立支援策の推進にもかかわっております。

私は、2009年、44歳の時、頸部(けいぶ)食道がん、食道入り口のがんが見つかりました。この時は、取りあえずかけた放射線が思った以上に効果を発揮し、かけられる限界まで続けて、がんは消えました。2年後、同じ場所にがんが再発しました。今度は手術するしかなかったので、手術で食道上部をつくり直し、声帯を含む喉頭を全摘しました。
再発の際、先生は、「食道発声法を身に付ければ、小さい声だけれど出るようになります」と言われました。声帯の代わりに食道を震わせて声にする食道発声法があるということで、入院前に東京の「銀鈴会」という、喉頭摘出者団体が行っている発声教室を事前に見学しました。行ってみて、ピアサポート(がん体験者ががん患者さん・ご家族を支援すること)の様子に大変感動し、「生きてさえいれば何とかなる」と、大きな勇気と希望を得て帰り、その後、食道発声を習得し今日に至っております。

がん経験者の社内コミュニティーを発足

講演の画面01

サッポロビールのがん経験者の社内コミュニティーは、「Can Stars(キャンスターズ)」という名称です。「がん」を表す「Cancer」と「できる」という意味の「Can」を掛け合わせ、サッポロビールのシンボルマークである星のマークの「Star」と組み合わせました。先輩格の生命保険会社、アフラックさんのコミュニティーを見習い、2019年3月に発足しております。対象は、がん経験者の社員、それからがん経験者の家族・遺族である社員で、現在は13名で活動しております。

「ピアサポート」「両立環境づくり」「社会へのインパクト創出」を柱に活動

講演の画面02

目的は、会社のダイバーシティや健康経営の一環として、がん経験者が安心して働くことができる社内体制を整備することで、これを推進するということもあり、会社の方向性に合致することから、活動は就業時間の中で行っております。活動内容は、体験の相互共有や、体験談の一般社員向けの発信による「がん経験者同士の相互支援(ピアサポート)」、これをメインに、社内啓発活動への協力による「両立環境づくり」、活動の社外発信、他企業の同じようなコミュニティーとの協働による「社会へのインパクト創出」、これらを3本柱に、社内の会合は2か月に1回ぐらい、定期開催をしております。

会員からは、「働きながら会社とのつながりを感じられるからこそ、治療にも前向きに取り組める」「もし身近に罹患(りかん)した人がいたら、特別扱いしないで普通に接してほしい」といった切実な声が出ており、社内外に発信をしているほか、「自分の経験を会社や社員の役に立てたい」「今、こうして働けるのは会社のおかげ」といった、会社への恩返しや感謝の気持ちは、ほぼ全員が感じております。

当事者の声を盛り込んで両立支援のための「ガイドブック」を改訂

また、2022年は初版制作から5年が経過した、会社の『がんなど治療と就労の両立支援ガイドブック』を、Can Starsのメンバーが参画して改訂し、当事者の声をふんだんに盛り込んで、本人編・上司編・同僚編の3編に構成をしました。このガイドブックは、2023年から、サッポロホールディングス社のホームページからパワーポイント版を自由にダウンロードできるようになりました。パワーポイント版なので、ほかの企業の皆さまが、これをたたき台に加工して、自社の両立支援ガイドブックを作成できるようにしております。

企業内コミュニティーが支え合いの場の選択肢に

講演の画面03

社内コミュニティーですが、死を直視したがんサバイバー(がんの経験者)同士が、社内で安心して話ができる場は、自己効力感を再認識し、働きがいや生きている喜びを心から感じられる場になります。世間では、病院のがん相談支援センターやがんサロン、患者会で、皆さまが本当に真摯に活動されておりますが、企業内コミュニティーがこうした選択肢の一つになれば、企業で働くサポートが必要なサバイバーにとって、気軽に参加できる場になっていくと思います。
「ピアサポート力の向上」、あるいは「社内で支援が必要な人に確実に情報を届けること」、こうした課題はありますが、企業内コミュニティーの可能性を強く認識し、社内の理解・浸透のみならず、社外への発信・連携・協働により、社会の取り組み全体の推進を後押ししていければと思っており、これからもCan Starsが中心的役割を果たしていきたいと思っております。私からは以上です。ありがとうございました。

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掲載日:2024年02月05日
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