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がん医療フォーラム 2023 活用しよう!相談と支え合いの場
【第2部】パネルディスカッション
認定がん医療ネットワークナビゲーターとは

村上 利枝さん(認定がん医療ネットワーク シニアナビゲーター)
村上 利枝さんの画像
村上 利枝さん
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2度のがんを経験して

皆さん、こんにちは。本日は、このような素晴らしい機会をいただき、誠にありがとうございます。相模原協同病院でピアサポート(がん体験者ががん患者さん・ご家族を支援すること)をしております、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークシニアナビゲーターの村上利枝です。どうぞよろしくお願いいたします。

私は、40年前、結婚を機に横浜から相模原市に参りました。結婚して10年、35歳の時に子宮頸(けい)がんになりました。今でいうAYA(Adolescent and Young Adult[思春期・若年成人])世代です。告知もなく、子どもも小さく、この幼子を残して死ねない。不安でいっぱいだった思いがあります。それから14年後、今度は49歳で乳がんになりました。2度目のがんで、少しは自分自身も落ち着いて行動できるかと思いきや、不安で不安でどうしようもなかったことを思い出します。生きていくということは、がんを患っても、仕事・子育て・介護などを行わなければならず、本当に大変です。

ピアサポーターとして患者さん・ご家族を支える

自分の乳がんの勉強になると学び、キャンサーネットジャパンの認定乳がん体験者コーディネーターを取得しました。2007年、先ほどの髙山先生のお話にありました、東京都のモデル事業のピアカウンセラーとしてお声をかけていただき、ピアサポート一筋に、相模原市・神奈川県・東京都で従事しております。
相模原協同病院のピアサポーターは3名全員が、病院から質の担保を求められていることもあり、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビゲーターの取得者です。本日は、「活用しよう!相談と支え合いの場」ということで、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビゲーター制度のご紹介をさせていただければと思います。

患者さん・ご家族ががんに関する適切な情報にたどり着くために

講演の画面01

がん患者さん・ご家族は、さまざまな問題を抱えご相談にお見えになります。告知、治療方法、医療者との関係、仕事、福祉、生き方、本当にさまざまな問題をお持ちです。不安も多くあります。相談対応は傾聴が主ですが、ピアサポートの経験を生かした生活上の助言、医療者への伝え方、社会資源の紹介など、さまざまな対応をしております。

ここ十数年の医学の進歩は目覚ましいものがあります。この医学の進歩に、患者さん・ご家族が追いつけない状況です。患者さん・ご家族は、治療方針を決めるだけの知識も情報も十分にはありません。不安が増し、医療者とのコミュニケーションの妨げにもなっています。渡邊先生の先ほどのお話でもありましたように、話し合いのこと、SDM(Shared decision making:共同意思決定)もうまくいきません。
また、髙山先生のお話にもありました、インターネットを開けば、どうしてよいのかわからないくらい情報があふれています。また、そこに付け込む怪しい情報もあります。現在、日本では、独居、老々介護、病気に対する患者さんと医療者の思いの隙間、医療費問題など、医療が抱えているさまざまな課題もあります。

ピアサポートとしてがんの知識と適切な情報を学ぶことが大切

一方、がんと共に生きる時代の環境と体制も整ってきております。例えば、がんと就労、高額療養費制度です。先ほども申し上げましたが、ピアサポートは傾聴が一番大事です。しかし、ご相談に来られた方にきちんと対応するには、がんの知識と適切な情報を学んでおくことも大切です。そこで私は、ピアサポートの質の担保・維持向上のために、2015年に日本癌治療学会の認定がん医療ネットワークナビゲーター制度の講義を受講しナビゲーターを取得し、2017年にシニアナビゲーターを取得いたしました。がん医療、新しい知識のゲノム医療、医療費制度など、多岐にわたって勉強することができ、よりよい相談には大変有効です。

講演の画面02

これは、日本癌治療学会のホームページですが、目的は、「日本のがん医療の発展と進歩を促進し、国民の福祉に貢献する」。ナビゲーターは、「2次医療圏でのがんの啓発活動を行うに十分な知識と素養を修得した者」。シニアナビゲーターは、「がん医療を受けるために必要な医療関連情報、生活支援情報等に関する適切な助言・提案・支援を行うに十分な知識と素養を修得した者」となっております。ナビゲーター・シニアナビゲーターの特徴は、どちらも、「医療介入またはこれに相当する可能性のある行為は行わない」ことです。

患者さん・ご家族を適切な相談窓口に「つなぐ」

実際にどのような相談が寄せられているか、簡単にお話ししたいと思います。Aさん、85歳の男性で、肺がんでステージ4を告知されました。86歳の妻と2人暮らしで、妻が5年前に脳梗塞を患い、「何とか今まで2人で助け合ってきたが、どうしよう。自分のことも心配だが、誰が妻をサポートするのか。子どもたちがいるが、それぞれ生活しているから迷惑をかけたくない」という相談でした。Bさん、49歳の女性で、乳がんでステージ2を告知されました。「乳房温存か全摘か悩んでいる。セカンドオピニオンって何?どうしたら受けられるのか」という相談でした。そのほか、「医療費のことが心配」「治療情報はどうすればわかるのか」「仕事をどうしよう」など、さまざまなご相談が寄せられます。

どうぞ、相談の取っ掛かりとして、お気軽にご相談ください。がんになっても、その人らしく安心して暮らせる、「がんとの共生」のお手伝いをし、がん難民、高齢社会、希薄な社会への愛の担い手となるよう、まだまだ十分ではないですが頑張ってまいります。

講演の画面03

がん相談支援センターと適切な相談窓口に「つなぐ」をキーワードに、患者さん・ご家族を適材適所につなぎ、地域社会で支えるために、認定がん医療ネットワークナビゲーターが一筋の光になるよう精進してまいりたいと思います。どうぞ皆さん、よろしくお願い申し上げます。
認定がん医療ネットワークナビゲーター制度に関するお問い合わせ先は、日本癌治療学会のホームページをご覧ください。ご清聴ありがとうございました。

日本癌治療学会ホームページ>認定がんnavi制度
https://www.jsco.or.jp/certifiednavi/

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掲載日:2024年02月05日
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