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がん医療フォーラム 2023 活用しよう!相談と支え合いの場
【第2部】パネルディスカッション
困った時はがん相談支援センターへ

橋本 久美子さん(聖路加国際病院 がん相談支援センター 相談員)
橋本 久美子さんの画像
橋本 久美子さん
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がん相談支援センターの役割

皆さん、こんにちは。聖路加国際病院がん相談支援センターの橋本です。先ほどの山口さんの、「なぜこれほど苦労して自分で情報を集めなければならないのか」という言葉が、まだ心に響いているのですが、髙山先生からも前半ご紹介がありました、がん相談支援センターを実際にご利用されている方たちがどのようなご相談にお見えになっているかということを、紹介を兼ねてご案内したいと思います。

このがん相談支援センターにいる私たち相談員ですが、看護師・ソーシャルワーカー・心理士たちが、治療や検査、また生活全般、心の悩みなどに皆で対応しています。がんになる患者さんは、2人に1人というお話もありましたが、小さいお子さんの小児がんから、働く世代、そして高齢者と、幅広い世代ががんになります。小さいお子さんの場合は就学への影響が出ることもあり、こうした患者さん自身がどの年代で病気になるかによってもどのような影響が出るのか変わってきますが、周りの家族もそれぞれの役割を抱えていますので、がんになった患者さんだけではなく、その周りの方たちにも何かしらの影響が出てくるということがあります。

就学やきょうだいへのかかわり方なども相談できる

そうした中で、例えば小さいお子さんが、がんになった場合、どこに相談したらよいのでしょう。こうした時には、小児がん拠点病院、またはがん診療連携拠点病院の中で、小児がんの相談に乗っている「がん相談支援センター」があります。小児がんに関する専門的な研修を受けた相談員たちが、就学のことや、どこの病院がよいのか、また、専門病院に行くとお子さんの療養、入院期間が長くなり、付き添いのご家族を含めて、ほかのご家族と離れる期間が長くなることもありますので、きょうだいへのかかわり方・制度など、いろいろご相談に乗ることができます。

年代別に抱える悩みが変化するAYA世代

また、AYA(Adolescent and Young Adult[思春期・若年成人])世代という15~39歳までの若い世代の人たちが、がんになった時の相談もあります。20歳未満の方には、まず小児科での診察を勧めています。年齢とともに体や病気の状態が変化していきますので、治療の経過とともに、成人診療科を受診するタイミングを医師と相談していくことが必要です。
20歳以上の方には成人診療科での診察を勧めています。
先ほどの動画の中でも「妊よう性」のことが出てきましたが、今後、治療に伴い妊娠できるか、また家族性の遺伝はないか、先の人生や将来を考えた治療の選択、それに合わせた医療機関の選択を検討する必要もあります。

講演の画面01

この表は10歳代、20歳代、30歳代、それぞれの年代によって違う悩みを抱えていることをお示ししております。こうした病院のかかり方や暮らしの悩み、どの病院がよいのか、就学・就労について、また、しばらく受診していない時にどの病院を受診したらよいか、そのような医療機関の窓口の相談も、がん相談支援センターで受けております。

さまざまな専門家と協働して仕事と治療の両立を支援

そして、働く世代の方が、がんになった時の相談もあります。仕事と治療は両立できるということを話す前に、びっくりして仕事を辞めてしまうという報告も、髙山先生からありましたが、2人に1人の方が、がんになるといわれていて、今では多くの方が治療をしながら仕事をしています。
今、がん相談支援センターでは、「両立支援コーディネーター」という相談員が、就労のことについても一緒に勉強しながら、ウィッグなどの助成金に関すること、いろいろなことについて、企業やさんぽセンター(産業保健総合支援センター)、ハローワーク、各自治体、ピアサポート(がん体験者ががん患者さん・ご家族を支援すること)の人たちや美容に詳しい方たちと連携しながらサポートしています。働く世代の方でがんを患った方がいたら、まず、がん相談支援センターをぜひご案内いただければと思います。

また、ご高齢の方のがん相談ですが、治療中・治療後ともに、治療前とは大きく体の状況が変化し生活に影響することもあります。そのサポートや使える制度、治療の選択などについても相談ができます。院内のさまざまな職種と地域にいるヘルパーさん、ケアマネジャーさん、こうした人たちとの連携などの調整の相談にも乗っておりますので、ぜひご相談いただければと思っています。

ご家族の悩みも相談できる

もう一つ、ご家族や大切な人が、がんになった時の相談もあります。親御さんがこれから手術を受ける時に、「僕は、お母さんのために何かしたい。そんな応援の仕方がありませんか」というように、ご家族や周りの人たちも、どうしてよいか悩むことが多くあります。こういった方たちにも、私たち相談員がきっかけになり、医療者とつなぐことなどをしております。うつ病のような症状になるご家族も多くいますので、ご家族も医療者に相談ができるということをお伝えしたいと思います。

講演の画面02

少し見にくいかもしれませんが、実際にがん相談支援センターには、治療の情報というような、がんのご病気そのものについてだけではなく、ご家族や医療者とのかかわり方など、むしろ周りの人とのやり取りがつらいというご相談も多く寄せられています。こういった病気だけではない、体や暮らしの相談にも多く乗っております。

今、がんは不治の病から、長く生きる時代になってまいりました。「がんの疑い」というところから、先ほどの山口さんのお話にもありましたように、病院を選び、その後、治療を長く受け続けながら社会で暮らしていく時代になってきました。

講演の画面03

こういった時に、その人らしい治療の選択をするためには、やはり場所や制度、人、情報、専門職とのつながりが大事になってまいります。ぜひ、多くの皆さんにがん相談支援センターをご利用いただき、支えの場となっていければと思っております。今日は、どうぞよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました。

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掲載日:2024年01月29日
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