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北見地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2023
【イントロダクション】
北見地域のがん患者さん支援の充実に向けて

渡邊 清高さん(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)

研修会の目標

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皆さん、こんばんは。帝京大学の渡邊清高と申します。今日は、このような貴重な機会をいただき、皆さま方とご一緒に研修を開催できることを楽しみにしております。本日の研修会の目標は、こちらに記載しておりますとおり、「北見地域のがん患者さんとご家族向けの支援の現状と課題を概説できる」、そして、「がん患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)の向上と支援の充実に向けたかかわりの事例を説明できる」、こちらは今日いくつかご紹介いただけるということで、私も楽しみにしております。
その上で、今日いろいろなご施設の皆さまがお集まりですので、ぜひ「地域におけるがん患者さんの支援に向けた多職種チームアプローチの意義を説明できる」ということを目指してみたいと考えております。
この北見地域での取り組みを自分の所でもぜひやってみたいというようなご意見を事前のアンケートでも多く聞かせていただいております。

看護師、ケアマネジャーなど多職種のご参加による研修会

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さて、こちら事前の申し込みが235名とご紹介いただいておりましたけれども、医療関係者の方が55%、福祉・介護関係者の方は32%です。ご参加いただく方も一番多いのは看護師の方でいらっしゃいまして、ケアマネジャーの方も2割ほどで、まさに多職種が集ってくださったということで、ありがとうございます。

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「がん患者さんへのかかわり」ということで、「現在かかわっている」という方はおよそ6割で、「ほぼ毎日」という方と「ときどき」「たまに」「ほとんどない」という方がそれぞれ4分の1ぐらいということで、本当にいろいろなかかわり方があるのかなと思っております。
一方で、「がん患者さんの問い合わせに対応できますか」という質問に対して、「自信がある」という方は7%ほど、「やや自信がある」方は3割、「自信がない」という方は62%ということで、一言でがん患者さんへのかかわりや問い合わせ対応といっても、具体的なイメージがまだ共有できていない部分があるかと思いますので、ぜひこういったところを共有しながら、これから情報共有とディスカッションが進められればと考えております。ぜひ肩肘張らずに、気楽にお時間がご一緒できることを楽しみにしております。

また、多くの皆さま方が市のネットワークのメールやインターネットを経由してご参加いただけたということで、ありがとうございます。
コメントとしては、「患者さんとご家族にどうかかわるかを知りたい」「オホーツクエリアの患者さんを取り巻く支援の実態を知りたい(当事者のご意見)」「医療・在宅・介護・生活支援サービスの生の声を聞きたい」「北見地域の患者さん支援をがん対策に生かしてほしい」という声もありました。「在宅支援の関係者との連携で望むことを聞かせてほしい」ということで、ご自身の問題意識あるいはほかの職種の方からどう見られているのかということについてのご意見もありました。
「多職種チームアプローチの仕方を知りたい」「今後困らないように、支援や在宅看護なども知っておきたい」「どのような場所でどのような活動をされていらっしゃるか」、今日現場からのご報告をいただけるということで、私自身も楽しみにしているところです。具体的なトピックとしては、「AYA世代の連携支援、医療用麻薬の調剤、退院支援について」というお声もございました。

「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」を目指して

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私から導入を簡単にお話しさせていただければと思います。
「多職種チームケアと地域連携」に関しまして、この3月に変更された第4期「がん対策推進基本計画」では、患者さんが「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」ということで、「日常生活を送ることができる」「病気や療養生活について相談できる」、あるいは「家族の悩みや負担について相談できる支援が十分である」ことが目指されているところですが、目安としてはまだ十分ではないといった思いもあるということです。
身体的な苦痛、精神心理的な苦痛を抱えていらっしゃる方もおよそ4割ということで、それをどのように、あるいは誰が埋めていくのかも課題として示されているかと思います。

病院と診療所、これからは並走して患者さんを支えていく

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そうした中で、これまで医療機関の連携というかたちでいえば、病院と診療所、がんを主に診療している医療機関と患者さんのケアにかかわる医療機関ということで分断されているように見えるものが、これからは多くのトピック、診断、治療、フォローアップ、就労、社会復帰あるいはACP(アドバンス・ケア・プランニング:今後の治療・療養について患者さん・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス)、そういったところで、さまざまな医療機関、医療職種が手を取り合って患者さんを支えていくところが、並走するイメージで示されています。
私が国立がん研究センターに在籍している時に、患者さん向けの情報を取りまとめたことがありました。そうした中では、「病院の中でのチーム」、通院治療の場合には「地域医療のチーム」があるということ、あるいは生活や介護・福祉も含めた「地域包括ケアのチーム」があるということを、患者さんにわかりやすい言葉でご紹介したことがありました。

地域に広がるネットワークづくりに向けて

さて、「地域に広がるネットワークづくりに向けて」ということですが、道では『北海道がんサポートハンドブック』という、道内のさまざまな患者さん・ご家族が利用できるリソース、情報源を取りまとめた冊子を、毎年更新していらっしゃいます。最近の更新では、特に患者さんが診断された時だけではなくて、その後の生活や緩和ケア、在宅、お金のことなど、生活者目線での情報を充実させていっていると伺っております。

そうした中で、患者さんが家で過ごす時に必要な情報を取りまとめるということを、私自身も2012年以降実施しておりまして、特に新型コロナウイルス感染症がはやって以降は、「在宅で通院する患者さんをご家族で支えたい」、あるいは「心構えを知っておきたい」ということで、情報とそれをつなげる連携や多職種チームケアというところもテーマに、いろいろな地域で研修会をさせていただいています。

今回のテーマである北見での取り組みも、「情報がそこにある」、あるいは「相談できる職種の方がそこにいらっしゃる」ということももちろん重要ではありますが、「情報を知っている」ことに加えて、「誰がその情報を届けるのか」「どのようにその方とつなげるのか」が、実はこの情報プロジェクトでは大変重視されているということを、多くのアンケートやいろいろな研修会でお伺いしたところです。
そこで、ぜひ現場の皆さま方の声をお伺いしたい、ほかの地域の皆さまにもご紹介していきたいということで、ウェブでもこういった活動はしてまいりたいと考えております。

地域で患者さんを支える「がん医療ネットワークナビゲーター」の育成

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これも一つの例ですが、日本癌治療学会では、がんに関しては、道の国が指定している地域がん診療連携拠点病院、北見赤十字病院の先生方、そして地域の医療従事者、介護従事者の方が連携する中で、患者さんを身近で支えるがん相談員の妹分、弟分のようなかたちで「がん医療ネットワークナビゲーター」という人材を育成しております。こういったところでもうまく患者さんを、信頼できる情報あるいは役に立つサービスや支援に結び付けるような、そういった仕掛けができればと考えております。
これも道内ですと2022年末の段階では35人、人材育成が進んでいるということで、今後さらに地域で患者さんを支える人材を育んでいければと考えております。

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私自身がかかわっているプロジェクトといたしましても、地域の医療従事者のチームケアや地域連携、そういったところにお役に立てるような情報発信、あるいは研修会、そしてその内容を提案というかたちでまとめていくことを試みておりますので、本日のディスカッションの内容を楽しみにしております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

関:ありがとうございました。それでは、実践報告に移ります。まず1題目は、「北見赤十字病院におけるがん診療および退院支援等の課題と対策」ということで、北見赤十字病院副院長・患者支援センター長の上林実先生からご報告をお願いいたします。

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掲載日:2023年10月30日
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