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【実践報告】
在宅医療におけるがん診療と多職種連携の課題と必要性

本間 栄志さん(医療法人社団邦栄会 本間内科医院 理事長・院長)

よろしくお願いいたします。本間内科医院の医師をしております本間と申します。私から、「在宅医療におけるがん診療と多職種連携の課題と必要性」について、お話しさせていただきます。

多職種で連携し、クラウドシステムなどで情報を共有

講演の画面01

当院の在宅医療の特徴ですが、「在宅療養支援診療所」という、在宅医療の契約を結んだ患者さんに24時間対応するタイプの診療所になります。がんの終末期や難病、介護2以上などの比較的介護度が高く、通院が困難な患者さんに対応しております。
訪問歯科医師、訪問看護師、訪問薬剤師との多職種で連携をしまして、クラウドシステムなどによって患者さんの情報を共有し、在宅医療をサポートしています。
当院の在宅医療の現状としましては、14年ぐらい前から訪問診療を開始しておりまして、ピーク時は施設の方120人ぐらい、在宅の方60人ぐらいを診ていたのですが、私もだいぶ年齢を重ねまして、現在では、施設で大体100人の方、在宅で20人ぐらいの方を24時間で対応しております。

講演の画面02

当院で看取らせていただいた患者さんの数ですが、総数でいうと約14年間で731人の方を、多い月ですと1か月に10人ぐらいの方を看取らせていただいています。

講演の画面03

看取らせていただいた患者さんの死亡病名をまとめてみたのですが、約半数の方は老衰で、あとは肺炎や腎不全が良性疾患としてはパーセンテージが高くなっております。
がん種でいいますと、やはり日本でも多い大腸がん、胃がん、肺がんの方が多くて、患者さんの34%、3人に1人ぐらいは、がんの病名で看取らせていただいております。最近ではCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)で3人の方を看取らせていただいています。

在宅医療開始前のアドバンス・ケア・プランニングが重要

そこで、「在宅医療におけるがん診療」として私が大切だと思っていることを少しお話しさせていただきますが、まずは在宅医療開始前のACP(アドバンス・ケア・プランニング:今後の治療・療養について患者さん・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス)が重要だと思います。患者さんとご家族の考えや希望をお伺いして、私の「訪問診療の方針をぶれないようにする」ということを心掛けています。
私の訪問診療の緩和治療方針が変わってしまうと、ほかの職種の人も悩んでしまいますし、あるいは患者さん・ご家族もいろいろと不安に思われてしまいますので、基本的には最初に治療方針を自分で決めて、ぶれないようにしております。

多職種で迅速にさまざまな情報共有と必要なサービスの検討を

また、多職種が退院カンファや初回の訪問時に集まって、その場でさまざまな情報共有と必要なサービスの検討を、やはり迅速に行うことが重要だと私は思います。がんの終末期の患者さんはやはり時間が限られておりますので、さまざまなサービスの導入などを早くしないと時間がなくなってきますので、そういうところが重要だと考えております。
そういった考えの中で在宅緩和治療として、まずはやはり疼痛(とうつう)コントロールを行っていて、内服、外用、注射剤も使っております。あとは発熱や倦怠(けんたい)感、不安、不眠、せん妄などの対応も行っております。
結構重要だと思っているのが、やはりご家族の精神的なケアです。終末期のがん患者さんは、やはり先ほどもお話ししたように病状や状態が刻々と変化していくので、多職種間での情報共有と迅速な対応が必要不可欠な診療だと思います。
特にご家族の精神的なケアとしては、訪問看護師さん、あと訪問薬剤師さんの薬の説明を通して、いろいろな不安などをご家族の方から聞いていただいておりますので、それを私のほうに報告していただいて、迅速に対応することが必要だと思います。

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それから、「在宅医療における多職種連携の課題」としましては、多職種で連絡しやすい時間帯が異なるということで、私、訪問診療医は午前外来、午後訪問診療というスケジュールで診療をしておりまして、訪問看護師、訪問薬剤師も一日中それぞれの業務に追われていて、緊急度、重要度、内容に応じてさまざまな連絡ツールが必要だと思います。
今までは携帯電話、SNS、FAXなどを使っていましたが、携帯電話ですとそれぞれの業務の妨げになることもあり、SNSだとやはり匿名にしないと使えません。それでいろいろ試行錯誤した結果、今現在、当院では緊急時は携帯電話ですぐに連絡を取るようにして、匿名可の内容であればSNSも使っていますし、あとはクラウドを2種類使っています。
一つは当院のカルテの内容や処方内容、採血データなどをほかの職種も見られるようにしております。もう一つは、写真や動画などでも詳しい情報共有ができるようになっております。

「普段からの顔が見える関係づくり」が多職種連携において最も重要

講演の画面05

最後のスライドですが、私が考える多職種連携で最も重要なことは、「普段からの顔が見える関係づくり」だと思います。これがないと、やはり迅速な対応ができないということが課題になりますので、これが普段から必要なことだと思っております。以上です。ありがとうございました。

関:ありがとうございました。続きまして、「訪問看護ステーションにおけるがん看護の課題と対策」、訪問看護ステーションタッチケア、澁谷順子さんからお願いします。

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掲載日:2023年11月06日
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