地域がん診療連携拠点病院「高齢者がん診療ガイドライン」研修会 2023
まとめ・閉会あいさつ
高齢者がん診療ガイドライン作成委員会を代表して、閉会のごあいさつをさせていただきます。埼玉医科大学国際医療センター、乳腺腫瘍科の石黒と申します。COI(Conflict of Interest:利益相反)はございません。今日は本当にたくさんの方、そして多くの職種の方に参加いただきました。事前申込者だけで1,329名、その後の申し込みの方もいらっしゃいましたけれども、看護師さん・保健師さん・助産師さんが4割で、医師・歯科医師が24%、患者さん、家族そして行政の方も含めて、本当に多種多様の方にご参加いただきました。日本がんサポーティブケア学会のご協力もあり、わかりやすくて優しい感じのポスターにしていただいて、インパクトがあったのではないかなと思っております。
さて、今回ガイドラインということで、やはりガイドラインである以上、臨床試験に基づく高いエビデンス、一定以上のエビデンスがあって初めてガイドラインはつくられるわけですけれども、エビデンスのほとんどはPS(Performance status)、全身状態であったり、あとは年齢による適格基準というものがあったりして、その臨床試験の結果に基づいてガイドラインがつくられてきたということがあります。
最近は、年齢制限は撤廃したほうがよいのではないかということで、年齢制限が外れているような臨床試験もあると思いますけれども、ただ、そうした臨床試験であっても、若年者と同じような治療ができる、そういったことが前提となっていますので、非常に状態のよいfit(80歳未満で、日常生活動作の障がい、問題となる併存症、老年症候群の症候がいずれもない)な高齢者が主に入っていて、一般的な高齢者は、そういった臨床試験の中には含まれないということがほとんどかと思います。
一方、暦年齢で見たときの高齢者というのは、非常に個人差が大きなポピュレーション(母集団)でして、ただ、その高齢者の患者さんを、われわれは「年齢相応ですよ」と言ったり、「年齢よりも若く見えますよ」と言ったり、何となく曖昧なかたちで表現して、ディスカッションをこれまでしてきたわけですけれども、ここはやはりしっかりとした点数化というか客観的な指標、それが「高齢者総合機能評価」という包括的な評価になると思うのですけれども、まずはこういったところを利用して評価をするというところが第一歩ではないかなと思います。
その包括的な評価の中には、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)、IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作)、認知機能、栄養、併存症、社会的サポート、あとポリファーマシー(多くの薬を服用することにより副作用などの有害事象を起こしやすくなること)の状況、心理的状況とさまざまなものが包括的にあって、さまざまな評価方法がありますけれども、やはりこの辺もまずはやってみる、そして、できるようになるという前提があって初めて、エビデンスをつくる臨床試験を行えるということで、今は海外からの臨床試験がほとんどですけれども、拠点病院の先生方、皆さまには、こういったエビデンスを日本国内からも出していけるよう、まずは「GA」ができるように、定着していければよいかなと思っております。
この「GA」に関して、二宮先生から報告がありましたけれども、今回の推奨度というのは、実は患者さんの視点に基づいて作成をしております。確かに診療報酬がないと難しい、誰がやるのかなど、提供側の視点というのは、まだまだ課題が多いということはありますけれども、患者さんの視点に立てば、「行うことを推奨」、もしくは「弱く推奨」、「提案」まで含めて、11人のパネルメンバー全員が、その方向については合意をしているということになります。
ただ残念ながら、エビデンスの高い臨床試験の数が少ないので、「強い推奨」というところには至らず、推奨の強さは「2」ということで、エビデンスが不十分であることが課題ではありました。
高齢者がん医療に関して、これは事前にいただいたご意見で、その中から一部ピックアップをさせていただきましたけれども、認知症高齢者の方への告知の仕方だったり、拠点病院から地域の病院に最終的には移動される方が多いと思いますけれども、地域の病院で高齢者のがん終末期を診ざるを得ないというような課題であったり、あとは依頼時期の問題など、さまざまな問題に関しては、今回は一部のところしかカバーできずに、あまり触れることができずじまいでした。
われわれの班研究も2022年度でいったん終わりますけれども、今後、医療と介護の連携、もしくはその体制整備に関しての研究なども進めていく予定ですので、また皆さま方と一緒に学んでいければというふうに思っております。まずは、津端先生からお話がありましたけれども、「第1回 高齢者がん診療向上のための国際セミナー」、こういった機会でまたご一緒できればと思いますので、よろしくお願いいたします。以上で私から閉会のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
渡邊:石黒先生、ありがとうございました。研究班の活動は、活用と普及というところですので、ぜひ身近なところで、どう活用していくか、どう連携していくかということの議論が、今回の研修会をきっかけに始まればと思います。
今後、この「高齢者がん診療ガイドライン」が普及、活用されて、高齢者の皆さま方、がん患者さんに等しく質の高い医療、ケアができることを願いながら、この会を閉じさせていただきます。本日はご参加いただきましてありがとうございました。