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がん医療フォーラム 2018 がんを知り、がんと共に生きる社会へ
【第2部】 パネルディスカッション
私たちが望む「がんと共に生きる社会」とは
がん患者団体からの報告

馬上 祐子さん(一般社団法人日本希少がん患者会ネットワーク事務局長)
馬上 祐子さんの画像
馬上 祐子さん
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「希少がん」とは

一般社団法人日本希少がん患者会ネットワーク外部リンクの馬上と申します。ちょっと長い名前で、英語名ではRare Cancers Japanと言い、「RCJ」という名前で覚えていただければと思います。私自身は「小児脳腫瘍の会」という、小児がんの患者団体の代表も併任しております。

「希少がん」というのは皆さん聞き慣れないと思うのですが、文字どおり「希(まれ)な腫瘍」のことです。種類が非常に多く、患者数は少ないのですが、全ての希少がんの方を合わせると、がん全体の人口の2割を占めると言われています。私どものロゴは、5つの四角の中の真ん中に、小さないろいろな色の四角があります。10人に2人、つまり5人に1人は希少がんであり、その中にたくさんの種類があるということを示しています。

希少がんにおけるさまざまな課題

先ほどの前半のお話で、正しい情報を得ることの重要性とか、顔の見えるつながりの重要性、社会で支えていくことの重要性を、本当にしみじみ感じさせていただいたのですが、こういうことが希少がんにも実現していくといいなと思いました。

希少がんは、数が少ないために不利な状況があります。まず、数が少ないので、医師が診る患者さんの中でも、本当に珍しい方という部類になります。例えば、小児脳腫瘍は、小児科医が一生に1人診るかどうかという頻度です。ほとんどの先生が分からないというような状況になりますので、専門家がまずいらっしゃらない。専門家がいたとしても、すごく遠い病院にいて、交通費をすごくかけて通わないといけないとか、そもそも情報が少なくて、専門家までたどり着けないという問題があります。

患者数が少ないので、臨床試験はたくさんの患者さんを集めて行うのですが、その臨床試験もしづらい。ということは、前半のお話にあった、標準治療が確立しづらいということになります。特に希少がんは、病理診断が非常に難しく、違う名前の病名になってしまうこともあって、治療にあたって問題になっています。

ゲノム医療への期待

皆さんとちょっと違う話になりますが「ゲノム医療」という言葉を、最近よく聞くようになってきていると思います。遺伝子情報のことを「ゲノム」と言いますが、がんはさまざまな遺伝子の変異が積み重なることで発症します。その遺伝子の変異は、個人個人で異なります。その一人一人のがんの原因、その遺伝子の変異を突き止めて、それに合った治療を行うことをゲノム医療と言います。

日本希少がん患者会ネットワークの取り組み

私どもは2017年に発足した、出来たてほやほやの患者会の連合会ですが、がんのゲノム医療が推進されることに、とても期待を抱いています。これまでは疾病別の臨床試験ということで、希少がんの人は臨床試験に入りづらかったのですが、これからは遺伝子の変異に応じて臨床試験が進められるということになると、例えば、大腸がん・胃がんの人に加えて、希少がんの人でも、遺伝子の変異が同じであれば、同じ臨床試験に入るチャンスが増えるということになるのです。

私どもは、研究推進、患者家族支援、政策提言などを掲げて、11団体で2017年に設立されました。2018年2月に一般社団法人化して、現在は16団体が入っています。この中に小児がんの患者会は6団体ほど、希少がんは、小児、思春期、または若年成人に多いがんであるということも言われています。

希少がんに関する情報発信

私たちのミッションとしては、先ほどから話題になっている「情報」です。正しい情報、少ない情報を集めて皆さんに還元すること。患者会の中でも、同じ課題を突き止めて、優先順位を付けて、一番先にやっていくことから、行政や学会のほうに陳情していく。それから、がん研究の推進、治療法の開発推進です。患者数が少ない希少がんは、今まで企業もあまり治験をしていただけませんでした。ゲノム医療の到来で、希少がんの方々もぜひ臨床試験に参加させてほしいということを言っていこうとしています。

また、国内外患者団体との交流です。年間に50人くらいしか発症しない希少がんもあり、国内だけでは臨床試験ができないので、海外の方々と一緒に国際共同治験を行おうということになります。そういった情報を得るために、海外の患者団体とか学会との交流をしています。もちろん、日本の中の会員交流もしています。

今年の活動内容ですが、正力厚生会の助成金をいただいて、ホームページを開設しました。「希少がん 患者会」で検索してクリックしていただくと、私どものホームページが一番トップに出てきますので、そちらのほうで希少がんの新しい情報や患者会情報がありますので、ぜひご覧になってみてください。

2番目に、「MASTERKEY PROJECT」という、国立がん研究センターが主体となっている、希少がんのプロジェクトの連携協定を、この2018年8月に結びました。3番目は、日本癌治療学会で「国際希少がんシンポジウム」で、希少がん対策をやっていただきたいということを、私どもの理事長などが訴えさせていただきました。
MASTERKEY PROJECTとは、希少がんに特化して「レジストリー研究」と言って、希少がんのデータを集めて解析して、将来に役立てる研究と、もう一つは、いろんな疾病でも同じ変異の方々を集めて臨床研究をたくさん増やしていこうというプロジェクトです。企業の方も入ってくださって、こうした情報を公開していこうということで協定を結びました。

2019年度の活動計画としては、4月に国立がん研究センターで、希少がんサミットの第1回を行います。やはり、最新のゲノム医療などについて先生方にお話を伺ったり、また、患者家族同士の情報交流を目的としています。がん関連の学会で、産業界の方、行政の方、研究者の方、そして私ども患者会が一緒になってディスカッションをする予定としています。またお知らせしますので、おいでいただければと思います。私の発表は以上です。ありがとうございました。

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掲載日:2019年6月10日
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