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在宅医療を支える多職種連携研修会/板橋サバイバーシップ研究会 2018
患者さんが安心して住み慣れた地域で暮らすために 【第1部】導入と事例提示
板橋サバイバーシップ研究会の取り組み 住み慣れた地域で暮らすためのチームづくり

渡邊 清高さん(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)
渡邊 清高さん写真
渡邊 清高さん

「住み慣れた地域で暮らす」をともに考える

皆さん、こんばんは。板橋での「在宅医療を支える多職種連携の研修会」は、普段患者さんやご家族とのやりとりでは話しきれない本音や困りごとも含めて、ざっくばらんに話せるような場があるとよいと感じることが多くあり、企画させていただきました。今回、多くの皆さまにお集まりいただいて、患者さんが「安心して住み慣れた地域で暮らす」という軸で医療や介護・療養生活をみたときに「私たちは、どんなことができるのか」を一緒に考える機会を持てたこと、ありがたく思っています。

板橋サバイバーシップ研究会の企画

早速、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)についてお話をさせていただきたいと思います。サバイバーシップ研究会は2年前から、板橋区医師会 在宅部・学術部・在宅医会の先生方にご協力いただいてやってまいりました。その中で、”がん”はサバイバーシップ、看取りも含めた在宅や生活支援という文脈で語られることが多かったのですが、”がん以外の疾患”についても、何か一緒に考えたり議論したりする機会がないかと考え、企画したというのがきっかけです。

講演の様子写真
講演の様子

医療の進歩から、支える地域づくりへ

都市部での高齢化率は上がっており、板橋区でももちろん例外ではありません。がんについては、1980年代に死因の第1位になって、年々その数は高齢化とともに増えています。亡くなる方、がんにかかる方は増えている一方で、治療などが進歩し、がんイコール死ではなく、病気を患っても、その後の生活をいっしょに考えていくことが必要になってきています。病気が治ったあとや病気と向き合いながら生活を維持するにあたり、その人なりの生活や仕事や社会生活をどのように維持していくのか、私たち医療や介護・福祉に関わる専門職が、あるいは地域社会がどうサポートしていくのか、新しい課題を示されていると言えると思います。

地域の多職種で関わる

こうした中で、私自身、患者さん向けの情報をつくるという機会がありました。「患者必携 がんになったら手にとるガイド」というがん患者さん向けのガイドブックの中に示した「チーム医療」では、治療の側面だけではなく、「生活を支える」という課題のためにさまざまな職種の方が関わること、そして、患者さんとご家族もチームの一員であると示されています。

また、在宅療養のときにご家族向けに意思決定を支えるツールとして、『ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド』というガイドブックをつくりました。これまでは、診断から看取りの時期を横軸に置いたときに、どこかでぶっつり切れて病院と診療所で分かれていたのですが、最近は就労や社会復帰、そしてACPという視点からいろいろ職種の方が関わられるようになってきています。今日の議論でも、「どう関わるのか」あるいは「どう関わるべきだったのか」といったやりとりがなされるのではないかと思います。

「サバイバーシップ」のニーズと研究領域

がんに関して、「サバイバーシップ」という考え方が示されました。1980年代に、アメリカの医師が、「がんになる・ならない」「治る・治らない」ということではなく、社会的な視点で考えたときに、患者さんの状態に関わらず共通する課題があることを報告しました。そこでは、治療が一段落している時期、その間の空白の時期に対して、社会的な課題も含めた支援が必要ではないか、といった視点が示されました。社会全体で「患者さんを支える」という視点ではどんな資源があるのかということを検討する研究領域が示されました。患者さんの痛み、心のつらさ、さらには社会的な痛みや尊厳に対しても包括的に対応していこう、ということが示されたわけです。

「患者さんとご家族の社会生活を支える視点」での研修会開催の提案

板橋サバイバーシップ研究会では、板橋区医師会の先生方、そして4基幹病院の先生方(帝京大学医学部附属病院、日本大学医学部附属板橋病院、東京都保健医療公社豊島病院、東京都健康長寿医療センター)にご協力いただき、これまで7回の勉強会を開催してまいりました。今後も継続して取り組めればと考えております。今回、医療職以外の介護・福祉・行政の方も含めたより多くの関係者の方と、地域で安心して自分らしく住み続けることができる仕組みについて話し合っていきたいと企画をさせていただきました。

早速、事例の提示ということで鈴木先生にバトンタッチをさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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掲載日:2018年12月26日
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