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在宅医療を支える多職種連携研修会/板橋サバイバーシップ研究会 2018
患者さんが安心して住み慣れた地域で暮らすために【第2部】グループワーク

患者さんとご家族が安心して地域で暮らすために

モデレーター: 渡邊 清高さん
山田 陽介さん
グループワークの様子1写真
グループワークの様子1

渡邊:第2部はグループワークです。先ほど鈴木先生から、検討していただきたい事項として、1) 退院前にできること、2) 慢性呼吸不全で進行肺がん患者さんへの胃ろう造設の考え方、3) 地域包括ケアとして考えた場合に介護職や他の地域住民が関われること、4) その他、という4つのテーマを挙げていただいています。全部についてご議論いただく必要はなく、グループ発表では、結論というよりは、「こんな意見が出た」「今までにない視点で盛り上がった」といったお話をご紹介いただければと思います。

入院中の在宅療養に向けた評価と準備

Aグループ:今回の例は非常に難しい患者さんであったと痛感しました。在宅が始まった最初の時点で、事前の情報がなく、退院する前の話し合いやカンファレンスがあったのかどうか、その内容はどうだったのかという部分が不明瞭だったので、まずはそのあたりについてディスカッションしました。

この方は食事に関して、内服薬が食道に引っかかるのが怖くて1錠ずつのんでおり、食欲も不良でしたが、途中でプリンやゼリーを食べることができている時点で、嚥下状態についての情報がありませんでした。入院中に嚥下機能の評価をした上で、胃ろうが適切な対応方法なのかどうか、検査や評価などをしたほうがよかったのではないか、という意見が出ました。緩和ケアや、施設の選択肢もあるなかで、ご本人の退院先希望についての話し合いの経緯も気になるところです。

介護支援に向けた準備

周囲の状況ですが、この方は要支援2という状態とのことですが、このADLの状況から要支援2ではないのではないかと感じました。介護度を上げてもうもう少し介入できないかなという点でディスカッションしました。

また、医療関係者が多くかかわった割には、介入の種類が定まっていないようなので、枠組みをしっかり決めた上で在宅療養を実施すれば自宅での生活をもう少し有意義にできたのかもしれないと考えました。QOLに関しては、家で特にしたいと思うことがないこと、歩くのも大変だということから、家屋調査なども踏まえて、もうちょっと環境調整をしていったほうがいいのかなと思っております。

さらに、地域支援の説明なども詳しく説明すると、使える支援の選択肢があったのかもしれません。患者さんに伝える情報がすごく少なく、こちら側から伝えられることがいっぱいあったのに伝えられていないのではないか、という印象がありました。

渡邊:ありがとうございます。4つの視点についてかなり幅広く議論していただきました。胃ろうについては多くのグループで話題になっていました。適応をどう考えるか、生活するときに誰がどう管理するのか、そもそも胃ろうをつくるときの意思決定はどうだったのか、といったテーマでした。あとは介護度の話もありました。どこかのタイミングで、早く介入できた部分があったのではないか、準備できた部分もあったのではないかなど、さまざまなご指摘がありました。

グループワークの様子2写真
グループワークの様子2

経過におけるチームカンファレンスの必要性

Bグループ:Aグループの内容と重複しますが、退院前のカンファレンスが必要だったのではないか、という点です。やはり入院状況、退院してからの医療サービス・介護サービスの整理なども含めて、病棟でのカンファレンスを行い、その上で退院前のカンファレンスが必要と考えます。さらに退院後もチームでカンファレンスをすることによって、サービスの説明不足が防げたのではないかなと思います。胃ろうの件に関しても、つくって以降使用されていない状況でした。使い方や管理などを話し合っていなかったのではないかと考えられます。

独居の方を在宅で支えるときの課題

周囲の状況に関しては、独居でさらにキーパーソンが不在で、がんが進行した状況のもとで退院されたということですが、本当に退院して大丈夫だったのか、という点が議論にあがりました。また、独居でしたので、親戚の方と連絡ができなかったのかなというところが気になりました。独居での生活困難に関しては、地域の援助は難しかったのだろうかと話しました。生活保護を申請されておりますので、ケースワーカーさんの関与があったはずですが、情報にはケースワーカーさんについての言及がありませんでしたので、どうだったのかが話題としてあがりました。

渡邊:ありがとうございます。このグループでは、社会的支援についてかなり突っ込んだ議論をされていました。キーパーソンをどなたに設定するか、キーパーソンなどの意思決定できる人が少ない場合にどう介入するのか、介入するタイミングは、難しいポイントです。

今後の方針に関する説明と対話の必要性

Cグループ:このグループは医療職だけで介護職がいないグループでした。医療的なところを主に話し合っています。今回の入院前のがんに対する積極的な治療を終えて、症状緩和を主体とする治療になっている段階で、主治医からの病状説明や今後に向けた意向など終末期に向けての意思決定の支援ができていたかどうか、というところで疑問があがりました。また、訪問看護師さんが早めに関わっていければ、患者さんの意向などを聞き出すといったケアができたのではないか、という話もありました。

あとは、胃ろうについて、同意を得て造設しているということですが、胃ろう造設がその後の在宅を見据えて本当に必要で適切なのか、ということを話し合うことが必要だと感じました。退院前カンファレンスも少し早めに実施し、胃ろうや中心静脈留置ポートなどの目的や管理について、在宅での視点を入れて検討できればいいのではないか、という意見が出ました。

渡邊:ありがとうございます。退院前カンファレンスも含めて、病院と在宅との連携の視点で突っ込んだ議論をしていただきました。

グループワークの様子3写真
グループワークの様子3

治療や服薬の方針、チームづくりの提案

Dグループ:病院で、看護師さんからの説明が入院時にきちんとできていたのかなどの指摘がありました。通過障害に対して、ステント(腫瘍などで狭くなっている場所に留置する管状の医療機器)などの他の方法での対応はどうか、という話が医師から出ておりました。薬剤師からは、お薬を1錠ずつのんでいる状態だった、とのことでしたが、胃ろうが機能していれば水で溶かして注入するといった服用方法も可能だったのではないか、という話も出ておりました。全体的には、遠慮がちな方なので、話を聞けるようなチームを作っていければよかったという話が出ました。

渡邊:ありがとうございます。ほかのグループはどうでしょうか。

在宅で最後まで支える

Eグループ:個人的な経験になるのですが、ベースにがんがある方に胃ろうを増設してつらい思いをしたことがあります。いったんつくった胃ろうが、病状の進行によって痩せてきたため、感染の原因になり、その後亡くなった例がありました。基礎疾患としてがんがある方に対して胃ろうは根本的に利益がそれほどないのではないか、と個人的に思っています。以前からメンタルクリニックを受診されていたということで、かなり不安の強い方のようです。最後まで支えてご自宅で看取ることができたというのはすごく素晴らしいことだと思いました。

Fグループ:私たちのグループでは、ご本人は退院してからどういう生活を送りたかったのか、どう死にたかったのか、についてみんなで考えていきました。ご本人は、なぜ家に帰ったかというと「生きるために」帰ったのではないか、病院で死を待つのではなくて、生きるために本人は帰ったのではないかという意見がありました。周りからのサポートを受けて生きる、そのためにもっとサポートできたのではないかと話しました。

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グループワークの様子4

在宅での不安に耳を傾ける

Gグループ:介護必要度の区分変更の見直しなど、退院前の支援が足りない部分を中心に話しました。自宅で、不安を訴えられる存在を見つけられたことがご本人の強みになって、最後まで生活ができたのではないか、と話し合いました。制度を十分に活用し在宅で過ごせたというところがとても強みだったのではないかという話がありました。

山田:半年もの間、在宅での生活が実現できてよかった、ということでしょうか。今後同じような症例があったときにどう支えたらいいか、非常に私も勉強になりました。三途の川の話を言える相手がいる。「怖い」ということを聞いてくれる相手がいる。非常に重要ですよね。ありがとうございました。

在宅で関わる関係者の連携

Hグループ:退院するにあたって、病院での準備が十分整っていないということと、ご本人と病院とが、帰ってからの生活のイメージを共有されていないということについて指摘がありました。在宅での生活が始まってからの話ですが、地域で関わり合いが持てる可能性のある関係者について、入院前から関わることができたのではないか、という話が出ました。

気持ちに寄り添う在宅看護

Iグループ:このグループでは、患者さんの意向やQOLという、患者さんの気持ちに寄り添う看護という視点で話し合いました。まず、胃ろうの造設の経緯については、ご本人が本当に胃ろうのことを分かっていたのか、という点が話題になりました。また、ご本人が人と関わることが好きではないという話がありましたが、本当にそうなのか、何か不安があったのではないかという意見が出ました。退院前カンファレンスをするときに、医療の側面だけではなくて、ご本人が家での不安を解消できるようなケアも取り入れられるように、カンファレンスをしていくべきではなかったかと考えました。病気ではなく、人生を振り返る絶え間ない会話なども大切なのではないか、といった話し合いになりました。

山田:ありがとうございます。大変勉強になります。どうしても医療者は病気中心に考えてしまいがちですけれども、一人の個人にとっては、病気は一部の問題であり、主となるのは生活全般の話題です。医療者が来て病気の話題ばかりするのではなく、生活全般の関わりが非常に重要だと思います。

グループワークの様子5写真
グループワークの様子5

在宅ケアに関わる関係者の連携

Jグループ:ほかのグループと同じような課題が挙げられました。胃ろうをつくったものの、どう使うかの指導には至らないまま自宅に帰ってしまったことや、退院前カンファレンスについてでした。その中でケアマネジャーさんから、入院中に介護必要度の区分変更などを行うことで、退院した後にさまざまなサービスが利用できるのではないか、という前向きな意見が多く出ました。カンファレンスなどをうまく活用している病院があり、場合によっては退院前に環境が整えられることもあると思いました。退院前の時間が十分なかったりご本人のお気持ちの問題で環境を整えるのが難しい場合には、在宅ケアに関わる関係者がうまく関われればよいと思いました。そういう方たちが地域の中にいっぱいいるという状況ができてきている中で、今後も皆さんで力を合わせていけたらいいなと思いました。

山田:ありがとうございます。やはり意思決定の話が重要になりますね。胃ろうに関しては病院でも議論がなされて実施されているということだと思います。意思決定のプロセスがあり、多職種で議論し、さまざまな意見があったと思います。

Kグループ:Kグループは、医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、リハビリテーション職がおり、とてもバランスのいい班で話を進めました。この方の経緯を追って3つの視点で話をしました。まず1つは告知です。告知をこの方がどこまで理解されていたのか、告知をどこまで望んでいたのかとか、告知という言葉の定義を最初に話しました。そして、在宅でこの方を引き継ぐ医療職がその状況をどこまで理解していたのかが大切だと思いました。それから、胃ろうに対する同意に関して、どれだけ理解して同意したのかなという点で話が出ました。

グループワークの様子6写真
グループワークの様子6

ご本人の思いを受けとめる

2番目として、患者さんの思いは、本当に、退院してご自宅に居たかったのか、もしかしたら病院で治療を受けたほうが良かったのかとか、患者さんの思いがどうだったのかという話が出ました。最後に、患者さんの思いに通じますが、最後は「家で居てもいいわ」と看護師さんに言ったということですけれども、そういったスタッフとの関係性は重要だという点と、その患者さんの思いをしっかり受け止めてそれを治療の方針に生かすことができていたことから、鈴木先生を中心にいいチームができていたのだという話をしました。

安心できる在宅療養の導入に向けて

Lグループ:退院前にもう少しそれぞれができることがないかという点に注目して話し合いを進めました。まず、患者さんの意向ですが、まだ家にいたいとの言葉がありました。病院で不安を持って退院し、在宅で訪問の医師や看護師などのいろいろな職種の方が関わる中で、本人の本音として「まだ」家にいたいと言いながら、ゆくゆくは病院に戻らなければいけないという受け入れ方をされていたのかもしれないという話が出ました。

ほかのグループで出ていなかった内容をあげますと、入院しているうちに、種類の多い内服薬を整理したり、のみ薬を貼り薬にするなどの剤型の変更を検討したりできなかったのだろうか、という話が出ました。また、胃ろうをつくったことによる、食事形態の指導がどのぐらいなされていたのか気になりました。リハビリテーションの視点では、トイレまでしか行けないという状況なので、トイレまでの移動方法を和らげるような、呼吸リハや歩行器の使用、酸素流量の変更などの、生活が楽になる検討を入院中にしておけば、より安心して退院できたのかなという話が出ました。

佐藤(総合司会:佐藤クリニック):どうもありがとうございました。課題のご指摘などもありましたが、良かった点に関するお話がずいぶん出て、多職種からの意見で目からうろこだった部分があったのではないかなと思います。鈴木先生、何かご意見はありますか。

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グループワークの様子7

在宅でのケアにおける準備

鈴木:胃ろうに関しては、ご本人の話ですと、「胃ろうをつくりましょうね」と言われて、「はい」と言ってしまったとのことでした。性格的に、流されてしまいやすい人だったということです。はいと言ってしまったけれども、実際どういうものなのかは、ご指摘の通り十分イメージができていなかったようです。これからどう生活するのかのイメージもないまま、転院の話が出てきたときに、やっと本人の気持ちとして、「家に帰りたい」と言えて、そこから間もなく退院が決まってしまったために退院前カンファなどが実施されず、並行して本人の状態がどんどん悪くなっていったようです。自宅に帰すなら今しかない、という状況がある一方で、在宅でケアしてほしいという話でした。とはいえ、こうしたこと決して珍しいケースではないと思います。

退院前カンファレンスがあったら良かったなと今でも思いますが、実際に退院日程を決めてカンファレンスをやって準備して退院、というタイミングがうまくいかないケースも結構あると思います。今回のケースは、誰が悪いということを指摘するために取り上げたのではなく、純粋に、こういう方にもう少し何かできなかったのかなという点について、皆さんの意見を聞きたかったので取り上げました。

在宅で過ごす人の支えとなるチームづくり

在宅になる前の段階、治療中の時から地域でも関わり始められたらいいなと思います。今回の患者さんは、もともとの性格のことから関わりがなかなか難しい方でしたが、それでも最終的には特定の看護師さんがキーになって、その方が本人の支えとなったわけです。人と付き合うのが苦手な方でも、むしろそういう人こそ、人の支えが必要だったということだと思いました。それが自分ではなかったとしても、人と人として付き合うなかで本人が話しやすい人がチームにいて、その人がそのチームのキーになると思います。キーになる人がまだいないという患者さんには、患者さんごとの背景を踏まえながら、自分がキーになるかもしれないという思いで関われたらいいなと思いました。

佐藤:どうもありがとうございました。それではまとめに入っていきます。ご存じのとおり答えは出ないものですが、もやもやしていたものが少しでも晴れていけばいいなと思います。

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掲載日:2019年1月21日
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