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がん医療フォーラム 出雲 2017/がん患者さんと家族を支える在宅療養について考える
【第2部 講演】出雲市の在宅医療推進に向けた取り組み

森口 修三さん(出雲市役所健康福祉部 医療介護連携課 課長)
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森口 修三さん
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地域包括ケアシステムとは

最近、在宅医療や地域包括ケアシステムといった言葉を聞かれる機会があるのではないかと思います。地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上になる2025年を目処に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるような、そういったまちづくりをしていこうというものです。そのためには医療・介護・予防・生活支援・住まいという5つの要素が包括的に確保される体制の構築が必要となります。

住み慣れた住まい、地域に住み、生活支援、介護予防を受けながら、必要なときに医療、必要なときに介護を受けられる、そういったまちづくりを市町村や都道府県が地域の特性に応じて、住民や関係者とともにつくり上げていくものです。今後、地域包括ケアシステムを構築していく、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けていくためには、在宅医療というのは非常に重要な取り組みのひとつであり、また国の大きな方針として進めていくことになっています。そのためには在宅医療を充実していく、そして、在宅医療というものを皆さんに知っていただく必要があると思っています。

在宅医療で重要な多職種の連携

在宅医療とは、身体の具合や介護する家族の状況などの理由から、病院への通院治療が難しい方に対して、その方が望むような在宅での療養生活が送れるように支援し、適切な治療や介護を行うことです。医師や看護師などが定期的に訪問して診療などを行ったり、必要に応じて薬の処方や、各専門職による歯科治療・リハビリ・栄養指導などを行うことをいいます。高齢化社会を迎えて、長期の療養を必要とされる高齢者の多くが、病院などで入院生活を送られています。一方で、「できることなら住み慣れた自宅で療養したい」「家族と一緒に過ごさせてあげたい」といったご家族やご本人の思いがあります。ただ、いざ在宅医療をするとなると、やはり不安や心配があるのではないかと思います。

在宅医療は、患者さんご本人だけでなく、ご家族も支えていく必要があることから、さまざまな職種の医療・介護関係者やサービスによって成り立っています。患者さん、ご家族を中心として、医師や看護師さんだけでなく、薬剤師さんやリハビリなどの医療関係職種、栄養士さん、ケアマネジャーさん、またデイサービスやホームヘルプといった介護サービスなど、さまざまな職種や介護サービスに支えられて成り立っています。患者さん、そしてご家族が安心して在宅医療を受けることができるようにしていくためには、このようなさまざまな関係者がお互いに協力・連携していく必要があります。関係者の間で、いわゆる「お互いの顔の見える関係」をつくっていくことが重要となってきます。

在宅医療を推進していくためには、医療と介護を連携しながら進めていく必要があります。そのための事業として、在宅医療・介護連携推進事業が国から示されています。この事業には、ア)地域の医療・介護サービス資源の把握、イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討、ウ)切れ目のない在宅医療と介護サービスの提供体制の構築推進、エ)医療・介護関係者の情報共有の支援、オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援、カ)医療・介護関係者の研修、キ)地域住民への普及啓発、ク)在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携、という8つの事業項目があり、全国の各市町村は2018年4月までに、8項目すべてについて取り組むこととされています。

出雲市の取り組み:医療介護資源マップ

この在宅医療・介護連携推進事業について、現在、出雲市ではどのような取り組みが行われているのか、一部ご紹介させていただきます。平成29年4月時点での主な医療・介護サービス資源を調査した表をご覧ください。皆さんは、市内にこれだけの数の医療・介護資源があることをご存じだったでしょうか。あまり知られていないのではないかと思います。これらの医療・介護資源が市内のどこにあるのか、また在宅医療を行う上でどのような機能を持っているのかということを、現在ウェブ上で検索できるようになっています。市のホームページのトップ画面に「医療介護資源マップ」というバナーがあります。これをクリックしていただくと、地図上(日常生活圏域)で探す、あるいは検索条件から探すことができるようになっています。

地図から検索する場合は、日常生活圏域を選んでクリックすると医療・介護サービスを提供する診療所などが表示されます。診療所であれば住所や診療時間などの基本情報と、訪問診療を行っているか、行っているのであれば在宅で可能な処置の項目などの詳細情報を見ることができるようになっています。また検索条件から探すこともできます。パソコンやスマートフォンをお持ちの方は、ぜひアクセスして活用いただければと思っています。なお、できるだけ最新の情報を掲載するように配慮していますが、常に最新の情報を掲載しているわけではありませんので、その点はあらかじめご了承いただければと思います。

在宅医療・介護についての市民へのアンケート調査から

在宅医療・介護連携について、サービスを提供する側の事業者はどのように考えているのか、そして在宅医療を受ける側の市民は在宅医療についてどのように考えているのか、どういった課題があるのかを抽出するために、平成27年度に事業者へのヒアリングと市民へのアンケート調査を行いました。本日は市民へのアンケート調査の結果の一部を紹介させていただきます。

20歳以上の市民3,000人を対象として30項目のアンケート調査を行い、約半分の1,551人から回答をいただきました。「在宅医療について知っていますか」という問いに対して、「少し知っている(聞いたことがある)」が最も多く約6割で、「よく知っている」と合わせて約9割が在宅医療について「知っている」と回答しています。年代別では40歳代の方が少なく、20歳代の方が「少し知っている」と「よく知っている」を合わせて8割に満たないという状況になっています。性別で見ますと、女性のほうが知っている方が多いという結果でした。

在宅医療・介護を受けることのイメージについては、「とても思う」「やや思う」を足した値で見ると、「経済的負担が大きくなる」という回答が一番多いという結果でした。次いで「療養できる部屋や風呂・トイレなどの住宅環境の整備が必要である」が多くなっています。

「あなたが要介護状態となって長期療養が必要になった場合、主にどこで過ごしたいですか」そして、自宅以外を選んだ方については、その理由にも選んでいただきました。全体では「特別養護老人ホームなどの介護施設」と回答した方が約4割と最も多く、次いで「自宅」「病院」となっています。性別では男女とも介護施設が最も多くなっていますが、男性の方が自宅の割合が多くなっています。自宅以外を選択した理由では「家族に負担や迷惑をかけるから」が最も多く、次いで「家族が仕事を辞めないといけなくなるから」「急に病状が変わったときの対応が不安だから」となっています。

「あなたの家族が要介護状態になった場合、主にどこで過ごしてもらいたいですか」そして、自宅以外を選んだ方については、その理由も選んでいただきました。全体では「特別養護老人ホームなどの介護施設」と回答した方が約4割と最も多く、次いで「自宅」「病院」となっています。これはさきほどの問いと同じ割合となっています。性別で見ますと男女とも介護施設が最も多いのはさきほどの問いと同じですが、自宅については女性のほうが多くなっています。これはさきほどの問いとは逆になっています。また自宅以外を選択した理由は「家族に負担や迷惑がかかるから」が最も多く、続いて「急に病状が変わってときの対応が不安だから」「仕事を辞めないといけなくなるから」となっています。

「がんなどの病気で人生の最期を迎えるとき、最期はどこで過ごしたいですか」という問いに対して、「自宅」と回答した方が約4割と最も多く、次いで「緩和ケア病棟」「病院で入院を継続」となっています。性別では、男性は「自宅」、女性は「緩和ケア病棟」が最も多くなっています。全体でも、性別でもそうですが、さきほどの自らが要介護状態になった場合と比較しても、自宅の割合が増加しています。その一方で「死亡の場所」という統計データでは、全国的に見ても出雲市でも病院で亡くなる方が約8割で、自宅は約1割となっています。「最期は自宅で過ごしたい」という希望と現実には、今のところギャップがあるという状況です。

出雲市の在宅医療の評価では「在宅医療が充実しているか」という問いに対して、「とてもあてはまる」「ややあてはまる」を合わせても約4割となっています。この問いの中で最も高く評価されている救急医療と比較しても、少し低い値となっています。また「自宅で療養を継続できる体制を社会全体で進めていくべきと思いますか」という問いに対しては、「とても思う」「やや思う」を合わせて7割程度となっています。

在宅医療推進のための取り組み

こういったアンケートの結果からも、在宅医療を推進し、充実させていく。そして、そのことを市民の皆さんに知っていただくことは非常に重要だと考えています。こうしたアンケートやヒアリングの結果などから、課題や現状の共有、そして在宅医療・介護連携体制の構築に向けた必要な取り組みの検討の場として、出雲市では「出雲市在宅医療・介護連携推進連絡会議」を開催しています。この会議には医療・介護関係団体や職種の代表の方にお集りいただき、意見をいただきながら、協議・検討を行っています。

また、在宅医療を行う体制の整備としては、島根県に設置されている医療介護総合確保基金を活用して、平成28年度から訪問診療・訪問看護確保対策事業を設け、在宅医療を行う事業所に対して、運営の補助を行っています。市内の北部沿岸部や南部の山間部などを条件不利地域として設定し、そうした地域へ訪問診療または訪問看護を行う診療所や訪問看護ステーションに対して補助金を交付し、条件不利地域においても安心して在宅医療を行うことができる体制を構築していこうというものになります。

さきほどからお話しましたように、在宅医療を行うためには、医療・介護関係職種が連携していく必要があります。そのため、お互いの顔の見える関係づくりが非常に重要となってきます。それは在宅医療を受ける患者さんやご家族の安心感にもつながります。その取り組みの一環として、市では研修会などを開催しています。ほとんどが仕事終わりの夜の開催となりますが、いつもたくさんの医療・介護関係職種の方たちに参加していただき、意見交換などを行っています。こういった行政が主催するものだけでなく、医療・介護関係機関や団体による取り組みも本当に数多く出雲市では行われています。関係者の意識が高く、熱心で、活動が活発に行われていることは出雲市の大きな特徴だと思っています。行政としても非常に心強く感じているところです。

在宅医療を知るきっかけ「在宅医療座談会」

市民アンケートからも在宅医療に関する市民の認知度、「よく知っている」と答えられた方は3割に満たないという結果でしたので、在宅医療を推進していくためには住民の皆さんの理解が最も重要となっています。そうしたことから、出雲市では在宅医療について知っていただくきっかけとして、「在宅医療座談会」を開催しています。昨年度から町内会などの小さな単位でも開催しており、昨年度は21か所で開催することができました。実際に在宅医療や介護に携わっている医師や看護師さん、薬剤師さん、ケアマネジャーさんといった専門職からのお話を聞いていただき、ざっくばらんに意見交換をしているころです。

そういったことで、在宅医療について少し知っていただきたいということ、今後、自分が要介護状態になったらどうしようと考えるきっかけに、またご家族のいる方は家族と話すきっかけにしていただければと思っています。そして在宅医療について関心を持っていただければという思いで、在宅医療座談会を開催しています。開催のご希望や関心がございましたら、市役所の医療介護連携課にご連絡いただければと思います。特にアンケートでの「在宅医療について知っていますか」の回答結果からも、若い世代の人にもぜひこういった在宅医療座談会を開いてみたいというお声かけをいただきたいと思っているところです。

市の在宅医療の取り組みの一部を紹介させていただきました。まだまだ不十分なところはありますが、在宅医療については国レベルの大きな流れの中で、多くの関係者が連携しながら、そして患者さんと向き合いながら実施されているということと、行政などがサポートしながら進めていこうとしていることをご理解いただければと思います。最後になりますが、市役所としても、住民啓発や情報提供が不十分といったご意見をいただいていますので、さきほどご紹介しました在宅医療座談会などを通して充実させていきたいと思っております。また、関係者の皆さんの意見を聞きながら検討し、今後の事業につなげていきたいと考えています。そして、このような取り組みを進めていくためには、住民の皆さん、関係者の皆さんのご理解、ご協力が必要となりますので、引き続きご支援をいただければと思っています。

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掲載日:2017年10月16日
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