Nuss法漏斗胸手術手技研究会

我が国の胸壁疾患治療の向上と発展をめざして

研究会について

代表世話人挨拶

 この度、同研究会の世話人代表を仰せつかりました長野県立こども病院形成外科 野口 昌彦です。 前任者の植村先生とともに、この会の発足時より同研究会の運営に携わってきました。

 さて、この会は、当時未知の治療法であったNuss法を「安全な漏斗胸治療」として根付かせることを目的に設立されました。 新たな術式としてNuss法が本邦に紹介されたのは1999年の春に開催された形成外科学会総会だったのですが、このNuss法はそれまで行われた漏斗胸治療とは全く異なる手技による治療法でした。 そのため同治療法に対し拒絶反応を示された先生も多く、私もその一人でした。ともかく真実を自分の目で確かめてやろうと、講演会終了直後のNuss先生のもとに駆け寄り手術見学を申し込みました。 あれから約25年を迎えようとしております。その間に漏斗胸という疾患の概念は大きく変化し、今現在もその途中です。 この変化のきっかけとなったのがNuss法であり、私自身はNuss法という治療法がもたらした最大の功績は漏斗胸疾患に対する関心を高めた点と考えます。 その結果、多くの医師が改めて様々な観点から漏斗胸を再評価した結果が今の漏斗胸治療の進歩につながったと考えます。

 話は戻りますがこの会が発足した当時の常識として、漏斗胸治療においては思春期半ばを超えた症例、左右非対称を有する症例は治療効果が低く、また漏斗胸治療後には肺活量などの呼吸機能は変化しないか多くは低下するというのが常識でした。Nuss法をきっかけに更に治療法が発展したことで、これら全てが覆されようとしている現状には驚かされるばかりです。 この傾向はNuss法のみにとどまらず新たな知見のもと、術式としては胸肋挙上法が、また保存療法としてのバキュームベルが有効な治療法として確立されるに至っています。 一方、これらの治療法の進歩により漏斗胸疾患にともなう機能障害の位置づけが明確になってきました。 不定愁訴として片付けられていた、労作苦や易疲労性などが漏斗胸を原因とする病態であることが報告されています。 このようにこの四半世紀の中で漏斗胸を取り巻く世界は大きく変化しております。 さらに今後の新たな展開として、漏斗胸治療において大きな課題であった術後疼痛管理に対する鎮痛を目的とした“冷凍凝固療法”の本邦への導入に向けての活動が始まっています。

 以上、長くなりましたが今回の就任を受け、今後の漏斗胸治療のさらなる発展を目標に、気持ちも新たに同研究会を盛り上げて行きたいと考えます。 そのためには世話人をはじめ、多くの施設会員の皆様のご協力が不可欠です。 特に同研究会の考えに賛同しご協力いただいている多くの施設会員の皆様には施設会員であるメリットを感じていただけるよう定期講習会やそれぞれの地域での講演会開催などの企画を考えております。 このような同研究会の企画を通じ、会員の皆様のスキルアップを果たし、漏斗胸をはじめとする胸郭変形に悩まれている多くの患者さまに確実な情報と治療をお届け出来るよう貢献できたらと考えます。 今後ともよろしくお願いいたします。

令和5年8月  長野県立こども病院形成外科 野口 昌彦