靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

蔵気法時論の大概

(通行本で言うところの蔵気法時論 その前半)
 五蔵と関わる時と、経脈と、味を説く段が二つ、五蔵の病症と取るべき経脈を説く段が一つある。
 五蔵と四季との関係は、現在の常識と同じだから、別にどうということは無い。ただ、それを一日のうちにも置き換えて同じような関係が有ると言う。肝を例にすれば、第二段では、夏に愈、長夏に加(後のまとめの文に拠る)、秋に甚、冬に持(持ちこたえ)、春に起(好転、起床?)である。他の心・脾・肺・腎は、起に夏・長夏・秋・冬をあてて同様に順送りにする。春→夏→長夏→秋→冬を一日に置き換えれば、平旦(明け方)→日中→日昳(午後のやや日が傾いたころ)→下晡(夕方)→夜半となり、季節と同様な病情の変化を予想する。
 味の関係はややこしい。大胆すぎるという批判を覚悟して言えば、第二段の泻に用いるべき味、心の甘と脾の苦を入れ替えたい。そうすれば散を欲すれば辛、逆の収を欲すれば酸、軟を欲すれば鹹、逆の堅を欲すれば苦となる。脾に病が在ればいずれにせよ甘を食す。第一段も、鹹を食せば燥くとか、苦を食せば泄すとか、辛を食せば潤うとか、いずれも単純に効能を説くのであって、五行の相生・相剋を考えようとするのは錯覚かも知れない。肝は急を苦しみ、あるいは散を欲するが、ときには収の必要も考慮すべきである。心は緩を苦しみ、あるいは軟を欲するが、ときには堅の必要も考慮すべきである。脾は湿を苦しむ。肺は上逆を苦しみ、あるいは収を欲するが、ときには散の必要も考慮すべきである。腎は燥を苦しみ、あるいは堅を欲するが、ときには軟の必要も考慮すべきである。そして酸には収、苦には泄あるいは堅、甘には緩、辛には潤あるいは収、鹹には燥あるいは軟の効能が有る。
 第三段は、五蔵の病情と取るべき経脈の説明である。ただ、心の変病に郄中とか、脾病に太陰・陽明の他に少陰とか、肺病に太陰の他に足太陽の外にして厥陰の内とかを指示するのが面白い。そもそも『霊枢』経脈篇の是動病でさえ、冠したのとは異なる蔵に冠する症状が登場することが有る。心すべきであろう。

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