靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

厳三点

佐藤春夫訳の『平妖伝』の第四回に,厳本仁なる名医が登場するけれど,いや,噴飯ものです。
訳文:益州に一人の名医が居った。姓を厳,名を本仁といい,有名な厳君平の後裔であった。彼の診察は人とちがい,三木の指頭で打点すれば直ちに病源を知り,その与える薬で癒らぬものはなかった。そこで一つの渾名が伝わり厳三点と呼ばれたのである。
原文:話説益州有箇名醫姓嚴名本仁乃嚴君平之後裔他看脉與人不同用三箇指頭畧點着便知病源所之藥無有不愈故此傳出一箇渾名叫做嚴三點(国会図書館蔵の清版に拠る)

「三木」が「三本」の間違いというわけじゃないんですよ,わざわざ「木」に「もく」とルビが有るんだから。それはまあ,文庫に入れるに際しての編集ミスの可能性も無くは無いけれど,下文にも「寸関尺(脛脈の部位)の三支脈の上を一点し」云々とやっているんだから,訳者が無罪というわけにはいかないと思うよ。示教と助力の「畏友増田渉君」もね。

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