俗字をどうする
- 医経
- by shenquzhai
- 2010/02/16
古抄本を整理し,活字化しようとすれば,まず一般的には正字化を目指すことになる。そしてまた正字となれば,一般的には康煕字典体ということらしい。でも,例えば唐代の書物の整理に,清代の字典の規範に合わすべく汲々とするというのも,考えてみれば馬鹿馬鹿しい。では唐代の『干禄字書』かというと,これでは如何せん,資料が不足する。それに,正字化してかえって見慣れない字形になりかねない。例えば,凍は俗で,涷が正だそうである。
無論,俗字を保存するという行きかたもある。ただ,あまり拘ると,『太素新校正』の壮大な徒労を繰り返すことになりかねない。変な言い方だけど,企画外れの俗字には遠慮ねがうことになる。張燦玾先生が書かれたものの中に,書字生や刻工の癖や好みで,横、竪、撇、点、捺、折などの画に,規範に合わない書き方が出ているものを「匠字」とよびたいとあった。ただし,こうしたものも容易に習慣化,流通化するから,一般の俗字と線引きのしようがない。第一,張先生が挙げる例のうちのいくつかは,『干禄字書』に載っているし,甚だしくは現代日本の通行の字形である。
俗字を保存することに全く意義がないとは思わない。例えば仁和寺本『太素』では,声符「専」の処理に迷う。専は專の俗字だから,人偏に専は,正字に統一するなら「傳」というのが理屈だけれど,文義からは「傅」としたいことがままある。声符「尃」の一点を欠く例なんぞ『敦煌俗字典』にはいくらもある。さらには文義からは,どちらとも言い難いこともある。また例えば,「涘」が実は「凝」の俗だろうというのも,凝の冫が原鈔本ではおおむね氵になっていることと関係するだろう。
俗字を保存したいとなると,電子化ではさらに別の悩みがある。そんな字形は,さすがに使えない! 亻に専も,氵に疑も,ユニコード統合漢字拡張領域Bまでには無いらしい。
無論,俗字を保存するという行きかたもある。ただ,あまり拘ると,『太素新校正』の壮大な徒労を繰り返すことになりかねない。変な言い方だけど,企画外れの俗字には遠慮ねがうことになる。張燦玾先生が書かれたものの中に,書字生や刻工の癖や好みで,横、竪、撇、点、捺、折などの画に,規範に合わない書き方が出ているものを「匠字」とよびたいとあった。ただし,こうしたものも容易に習慣化,流通化するから,一般の俗字と線引きのしようがない。第一,張先生が挙げる例のうちのいくつかは,『干禄字書』に載っているし,甚だしくは現代日本の通行の字形である。
俗字を保存することに全く意義がないとは思わない。例えば仁和寺本『太素』では,声符「専」の処理に迷う。専は專の俗字だから,人偏に専は,正字に統一するなら「傳」というのが理屈だけれど,文義からは「傅」としたいことがままある。声符「尃」の一点を欠く例なんぞ『敦煌俗字典』にはいくらもある。さらには文義からは,どちらとも言い難いこともある。また例えば,「涘」が実は「凝」の俗だろうというのも,凝の冫が原鈔本ではおおむね氵になっていることと関係するだろう。
俗字を保存したいとなると,電子化ではさらに別の悩みがある。そんな字形は,さすがに使えない! 亻に専も,氵に疑も,ユニコード統合漢字拡張領域Bまでには無いらしい。
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