靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

外からの影響は先ず左に出る

『素問』にも,右と左の寸口の脈状が異なるという記事が,有るには有るということは,かつて古典研に出戻っていた頃に,病能論を引いて口走ったことが有りましたが,その後はずっとほっぽり出してました。
これは,ひょっとすると(頚と手首でなくて)左右の人迎脈口診と関係が有るかも知れないので,紹介しておきます。

帝曰:有病厥者,診右脉沈而緊,左脉浮而遅,不然(『甲乙』作「不知」)病主安在?
歧伯曰:冬診之,右脉固當沈緊,此應四時,左脉浮而遅,此逆四時,在左當主病在腎,頗關在肺,當腰痛也。
帝曰:何以言之?
歧伯曰:少陰脉貫腎絡肺,今得肺脉,腎爲之病,故腎爲腰痛之病也。
帝曰:善。

厥を病んでいるとして,右の脈は沈んで緊張していて,左の脈は浮いて遅いとしたら,この病はどんな状況なのか。
冬であれば,右の脈(おそらくは脈口)が沈んで緊張しているのは,季節に応じているわけで当然のことである。ところが左の脈は浮いて遅いとしたら,これは季節に相応しくない。この季節なら,脈は沈んで腎の部に在るべきなのに,浮いて肺の部に偏っているわけだから,腰が痛む。
何故そんなことが言えるのか。
腎と肺が足少陰の脈で密接に繋がっているのは常識である。だから肺と腎の一方が満ちていれば,もう一方は不足がちである。いま脈が肺の部に偏っているのだから,腎は相対的に虚しているわけで,つまり腎の機能低下である。だから,わかりやすい,あるいは目立った症状としては腰が痛むという状態になる。
なるほど。

寸が肺で尺が腎,なんてことは考えてないと思います。人迎で外,脈口で内を診るのとも,微妙にニュアンスが違うようです。右は季節に応じた脈を表現していて正常であり,左の方に季節の影響による異常が表現されます。つまり,右の脈は診断には寄与しないようですが,外からの影響によって先ず左に現れた異常が右にまで及んだら,つまり病が進んだと判断すべきでしょう。先ず現れる季節の悪影響を外と言い,病が進んで深刻になった状況を内と言うのは,あるいは可能かも知れません。

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