靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

盛怒則差

『三国志』魏書・方技伝に華佗の手柄話が載っている。
また一郡守の病むもの有り,佗は以てその人盛怒するときは則ち差ゆと為し,多く貨を受けて治を加えず,いくばくもなくして棄てて去り,書を留めてこれを罵る。郡守果たして大いに怒り,人をして追捉せしめて佗を殺さんとす。郡守の子これを知り,属して逐うことなからしむ。守瞋恚既に甚しく,黒血数升を吐きて癒ゆ。
流石と言いたいところだけれど,実はこれは『呂氏春秋』至忠に載る文摯の話の焼き直しです。そこでは文摯は煮殺されている。そして,言いたいことは「それ治世に忠たるは易く,濁世に忠たるは難し」なんです。なんたって,篇名が「至忠」なんですから。『三国志』はこうした名医伝説を作り替えたホラ話を平気で書く。用心すべきだと思う。

実は,ず~っと昔,インドかアラビアかの名医の話としても,このエピソードを読んだ記憶が有るんです。何で読んだのか,どうしても思い出せないのが残念ですが,何処の暴君も同じなんですねえ。

それとは別の話として,この「其人盛怒則差」ということ自体はどうなんでしょう。『黄帝内経』には無いような気がするんですが。

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