靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

飢則煩,飽則…

 すでに2006-04-11の「選穴論」のつけたしで触れたけれど、改めて:
『太素』巻30風逆(『霊枢』癲狂篇)
風逆,暴四支腫,身𨻽𨻽,唏然時寒,飢則煩,飽則喜變,取手太陰表裏、足少陰、陽明之經,肉清取滎,骨清取井也。
 これに類似する『甲乙』の記事は:
『甲乙』巻08五蔵伝病発寒熱第一下
寒熱欬嘔沫,掌中熱,虚則肩背寒慄,少氣不足以息,寒厥交兩手而瞀,口沫出;實則肩背熱痛,汗出,四肢暴腫,身濕(一本作溫),揺時寒熱,饑則煩,飽則善面色變(一作癰),口噤不開,惡風泣出,列缺主之。
 身𨻽𨻽と身濕が相応し、𨻽が漯に通じて汗出貌なら、一本の温は取れない。飽くときは喜變が善面色變になっていて、さらに癰に作るものも有るという。このいずれが是であるかは分からない。列缺は手太陰経脈の穴ではあるが、絡穴であって、経でも滎でも井でもない。
『甲乙』巻10陽受病発風第二下
風逆暴四肢腫濕,則唏然寒,飢則煩心,飽則眩,大都主之。
 飢なら煩心、飽なら眩のほうが、煩と善変(一般的な解釈では煩躁と不安)よりはまだ分かりやすい。大都は滎であるが、足太陰であって、足太陰は『太素』巻30風逆の記事には出てこない。
 また、『甲乙』巻10陽受病発風第二下には「風逆,四肢腫,復溜主之」と「四肢腫,身濕,豐隆主之」も有る。復溜は足少陰の経だが、豊隆は足陽明の絡である。
 なお、『霊枢』癲狂篇のこの条の解説に『甲乙』を引くのは、渋江抽斎『霊枢講義』の大都の主治くらいで、しかもそれについての按語は何も無い。
 『太素』風逆の記事と、これらの『甲乙』の主治は相互に関わっているはずだが、どれが正しいとも言い難い。つまり、『霊枢』も『甲乙』もそう簡単に金科玉条と崇めるわけにはいかない。

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