不可附席
- 医経
- by shenquzhai
- 2006/04/12
『太素』26寒熱雑説(『霊枢』寒熱病篇)
寒熱雑説の経文で、皮寒熱と肌寒熱を対比検討してみると、症状としては乾くのが鼻か唇かであって、皮不可近席と肌痛が対になっている。また骨寒熱の病毋所安は、『甲乙経』では病が痛になっている。してみると、不可附席も熱いからというばかりでなくて、皮膚が痛んで席に着けないのかも知れない。(上の「身を席に近づけるかどうかの問題ではないのかも」とは齟齬する。)
皮寒熱の「三陽之胳」について、楊上善は「三陽胳在手上大支脈,三陽有餘,可寫之」と言う。うっかり読むと、手少陽脈の三陽絡穴と解しているようだが、そうではなさそうである。渋江抽斎『霊枢講義』に「手三陽の別絡を言うに似る、因って攷えるに三陽絡は、泛く手足三陽の絡脈を指す、蓋し陽経は表を主る、故に其の絡を刺すなり」と言っている。案ずるに三陽は太陽、陽明、少陽の三つの陽を言うに過ぎないであろう。陽の部の絡脈(細絡)を取る。手少陽脈の三陽絡穴と解するのは、おそらくは楊注の読み誤り。張介賓は、三陽は足太陽であって、その絡穴は飛揚穴であるというが、これも不審。また、『甲乙経』の三陽絡穴にも飛揚穴にもここに相応しいような主治は無い。
肌寒熱の「三陽於下」についても、楊上善は「足三陽盛,故去其血也」と言い、足の太陽、陽明、少陽の部位に細絡を探して血を去るようである。少なくとも三陽という名の穴が有るようには言ってない。
肌寒熱に三陽を「下に取る」と有るところからすれば、皮寒熱は「上に取る」で手の三陽で良いだろう。
発汗させるために、皮寒熱では手の、肌寒熱では足の太陰を補う。
つまり、皮寒熱と肌寒熱はほとんどぴったり対をなしている。解釈も対になるようにすべきである。
骨寒熱は、その次の段階に入ってしまっている。それにしても痛と汗と槁を言っている。治療できるものは、やはり刺絡する。
皮寒熱,皮不可附席,毛髮焦,鼻槀腊,不得汗。取三陽之胳,補手太陰。附は近に通じる。席はムシロ、敷物。どうして敷物に近づけないのかいささか腑に落ちないが、『太素』22五節刺(『霊枢』刺節真邪篇)にも「熱於懷炭,外重絲帛衣,不可近身,又可不近席」とある。突飛な修辞というわけではない。ただし、前が重絲帛衣を身に近づけることを云々しているのであれば、後も重絲帛衣を席に近づけることを云々しているのであって、身を席に近づけるかどうかの問題ではないのかも知れない。
肌寒熱,肌痛,毛髮焦而脣槀腊,不得汗。取三陽於下以去其血者,補太陰以出其汗。
骨寒熱,病毋所安,汗注不休。齒未槀,取其少陰於陰股之胳;齒已槀,死不治。
寒熱雑説の経文で、皮寒熱と肌寒熱を対比検討してみると、症状としては乾くのが鼻か唇かであって、皮不可近席と肌痛が対になっている。また骨寒熱の病毋所安は、『甲乙経』では病が痛になっている。してみると、不可附席も熱いからというばかりでなくて、皮膚が痛んで席に着けないのかも知れない。(上の「身を席に近づけるかどうかの問題ではないのかも」とは齟齬する。)
皮寒熱の「三陽之胳」について、楊上善は「三陽胳在手上大支脈,三陽有餘,可寫之」と言う。うっかり読むと、手少陽脈の三陽絡穴と解しているようだが、そうではなさそうである。渋江抽斎『霊枢講義』に「手三陽の別絡を言うに似る、因って攷えるに三陽絡は、泛く手足三陽の絡脈を指す、蓋し陽経は表を主る、故に其の絡を刺すなり」と言っている。案ずるに三陽は太陽、陽明、少陽の三つの陽を言うに過ぎないであろう。陽の部の絡脈(細絡)を取る。手少陽脈の三陽絡穴と解するのは、おそらくは楊注の読み誤り。張介賓は、三陽は足太陽であって、その絡穴は飛揚穴であるというが、これも不審。また、『甲乙経』の三陽絡穴にも飛揚穴にもここに相応しいような主治は無い。
肌寒熱の「三陽於下」についても、楊上善は「足三陽盛,故去其血也」と言い、足の太陽、陽明、少陽の部位に細絡を探して血を去るようである。少なくとも三陽という名の穴が有るようには言ってない。
肌寒熱に三陽を「下に取る」と有るところからすれば、皮寒熱は「上に取る」で手の三陽で良いだろう。
発汗させるために、皮寒熱では手の、肌寒熱では足の太陰を補う。
つまり、皮寒熱と肌寒熱はほとんどぴったり対をなしている。解釈も対になるようにすべきである。
骨寒熱は、その次の段階に入ってしまっている。それにしても痛と汗と槁を言っている。治療できるものは、やはり刺絡する。
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