靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

中華飲酒詩選

『中華飲酒詩選』がついに平凡社の東洋文庫に入りましたね。前に酒の肴に本を読む,と言って,文庫にならないかなあ,に挙げていた本なんで,これは手に取るくらいはしないといけないなあと思って,棚から抜いて見ると,あとがき代わりに「思い出」と有って,中村喬と署名が有って,「私が父の酒を盗み飲みしたのは」云々と始まっていた。面食らいました。
青木正児の本は大抵,と言っても名物学関係の本はと言うことですが,持っているし,中村喬のものだってそこそこ買ってはいるけれど,今の今まで父子だとは知らなかった。これはこの「思い出」だけのためにでも求める価値が有る。勿論,最初の版なんて持ってないけれど,叢書本のほうなら多分二冊持っているけれど。
その「思い出」の傑作部分:
......博士課程は中国文学と中国史とが一緒だったので,ついに私は父の講義を受ける羽目になった。しかも,当時博士課程の院生は私一人だったので,講義は一対一。いくらなんでもそれは勘弁してほしいと思ったけれど,そのような事態になることは大学院に入るときに,当然予測すべきであった。......最初の時間,教室で待っているときは,逃げて帰りたい気分であった。でも,父の方は全く意にも介していなかったようで,平然と教室に入って来て,ちり紙を出して鼻をかんでから,「それじゃ」と坦々としたものであった。......

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