靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

重校と新校正と

王洪図、李雲重校の『黄帝内経太素』修訂版(科学技術文献出版社2005.5)と銭超塵、李雲校正の『黄帝内経太素新校正』(学苑出版社2006.6)には,そっくりなところが有るんですね。例えば巻21九鍼要道「取三脉者恇」の楊上善注に「恇,匡方反,怯也,氣少故怯。」とあって,王洪図、李雲重校の脚注に「仁和寺原鈔"匡"字漫漶,辨其殘筆,當作"匡"。盛文堂本、小曽戸摹寫本均作"區方反",恐未安。」と言う。で,銭超塵、李雲校正の脚注では,編集方針で原鈔の俗字を保存すると言っているからそれを説明した外には、仁和寺原鈔→原鈔,小曽戸摹寫本→日本摹寫本に改めて,恐未安でなく與原鈔殘筆不合と事実の紹介にとどめているくらいです。そっくりだと思いませんか。共編者が同じなんだから当然とも言えるけど。他に書きようがないかも知れないけど。
ちなみにこの脚注は誤りで,本当はやっぱり「區方反」だと思いますよ。原鈔は「區」の上部横棒にノを増画した俗字であって,原鈔では「歐」の左旁もこのように書かれている。新校正も「歐」については「匡」に「欠」などとは言わない。同じように誤るのを,偶然と言うのもねえ。

巻16虚実脉診「行步恇然也」の楊注には「恇,■方反,怯也」として,重校脚注に「"■",當作"偘"字。與"侃"同。《玉篇・人部》:"偘",同 "侃"。」,あるいは新校正脚注に「"■"爲"偘"俗字,與"侃"同。《玉篇・人部》:"偘",同"侃"。」と言う。脚注は恐らくは誤りである。■は臨の右半の形。原鈔では「區」字は横「一」に「ノ」を増画している。ここではさらに「乚」が省略されているのだろう。

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