靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

井滎兪経合

満足のいくような答えは無いんでもうしわけない。
『難経』六十八難の「井主心下満,滎主身熱,兪主体重節痛,経主喘咳寒熱,合主逆気而泄」は,つまり井滎兪経合に五行に基づいて五蔵を配し,その主要な病症を配したのだと思います。ただし,『難経』は理論の整合性を重んじた書物ですから,用心してかかる必要が有ります。(つまり,無理なでっち上げも当然多い。)
そもそも『霊枢』では末端から冬・春・夏・長夏・秋と並べています。順気一日分為四時篇の腧穴の使い分けに,冬もしくは蔵に問題があるときは本輸穴のうちの井穴を取る,春もしくは色に変化が見えたときは滎穴を取る,夏もしくは病が時に間し時に甚だしいというときは輸穴を取る,長夏もしくは変化が音に現れたときは経穴を取る,秋もしくは飲食不節によって得た病には合穴を取る,というのが有りますね。冬から始まるのは不思議なような感じもするけれど,陰陽論から言えば,冬至に一陽が生じて,次第に陽が盛んになるのだから,そのほうがある意味で理にかなっているわけです。『難経』七十四難で春から始めるように変更したのは,果たして新たな経験なのか,それとも理論応用の変更にすぎないのか、ちょっと難しいところでしょう。
『素問』『霊枢』には本輸の使い分けに関する記述はあんまり無い。季節に応じて何処を取るべきかという記述があって,その中に分肉とか腠理とかいう言葉に混じって,井・滎・兪・経・合という文字もちらほら見える。これをひっくり返して,井滎兪経合による表を作れば,井は冬だとか,冬は陰の極であるから同じく陰の極である蔵ともかかわるとか,になるわけです。ところが『難経』のように井を冬から春に配置転換すると,配当するものにも変更が必要になるわけで,春は木で肝でその主要な任務は疎通させることだから,それに異常が有れば,滞って「心下満」ということになる。まあ,そういったカラクリだろうと思います。
それはそうとして,井穴の威力は大変なもののようで,陰の極にも陽の極にも良く効くらしいから,『霊枢』の配当だろうと,『難経』の配当だろうと,まあどっちでも大丈夫です。
本当は兪か経あたりがニュートラルで,それより末端側を取るか躯幹側と取るかで陰陽に対応する,と言いたいんだけど,なかなか上手くおさまらない,というのが現在の私の思考の限界です。

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