主題:感染症診療と検査 (消化管感染)
講師:古川 弘 先生((株)日本医学臨床検査研究所)
細菌性消化器感染症を感染部位で分けると、上部消化管感染症として免疫低下患者のカンジダ性食道炎やヘリコバクター感染症(胃)等と下部消化管感染症として感染性腸炎(小腸、大腸)がある。感染性腸炎の原因微生物には、細菌、ウイルス、原虫、寄生虫等があり、食中毒患者や海外渡航者、ペット愛好者、入院後の腸炎患者といった患者情報から、ある程度原因微生物を予測することができる。感染性腸炎は、市中腸炎と院内腸炎の2つに分けられる。
市中腸炎は、食中毒患者からカンピロバクター、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌、ノロウイルス等、ペット愛好者からカンピロバクター、サルモネラ菌、エルシニア菌等、海外渡航者から赤痢菌、チフス菌、パラチフス菌、コレラ菌、赤痢アメーバ等の微生物が検出される。院内腸炎の原因微生物は、市中腸炎の原因微生物とは異なり、院内腸炎の便培養検査は、3day
ruleに基づき抗菌薬関連腸炎(ディフィシル、MRSA、Klebsiella oxytoca等)の微生物の検索を中心として便培養検査を行う。3day
ruleとは、入院後3日以降の便培養検査では、市中腸炎の原因微生物を検出することが殆どないということである。
消化管感染症の原因微生物の検索は、患者情報や便の性状を知ることが重要で予測される微生物の培養ができ、またグラム染色や抗原検出検査を組み合わせることにより、迅速に原因微生物を特定することが可能になる。
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