主題:細菌の分離培養と薬剤耐性について−バンコマイシン耐性腸球菌を中心に−
講師:久保 亮一 先生(関東化学滑博ョ会社 ライフサイエンス部 マイクロバイオ部)
VREはバンコマイシンに耐性を獲得した腸球菌で(MIC≧16μg/mL)、消化器系では無症状であるが、術後感染や敗血症、免疫不全で難治性となる。バンコマイシン耐性遺伝子はvanA〜Eおよび,
vanGがある。vanA、 vanB遺伝子による耐性株は便や尿からの分離頻度が高く、免疫低下による内因性感染の原因となり、またプラスミド上に存在するため、感染対策が必要である。耐性機構は細胞壁のD-ala-D-ala結合がD-ala-D-乳酸結合に変わることであり、vanA遺伝子保有株はバンコマイシンとテイコプラニンに耐性を示すが、vanB遺伝子保有株はテイコプラニンでは耐性機構が働かないため感受性を示す。VRE検出のためのスクリーン培地に求められる性能として、観察しやすいこと、vanB遺伝子(MIC
6〜8μg/mL)の誘導性が高いこと、vanC遺伝子保有株の抑制が強いことなどが挙げられる。従来のエスクリン分解を原理とする培地に比べて、酵素基質培地は特異性が高く観察しやすい。化学療法の発展で、VREは制御可能な感染症となった。早期に発見し治療や院内感染防止を図るために、適切なスクリーニングを行うことが重要である。
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