主題1:汎用化学自動分析機を用いた梅毒抗体測定法試薬について
講師1:久米 俊久 氏 (極東製薬工業株式会社 営業学術部)
主題2:性感染症の現状について
講師2:古林 敬一 先生 (そねざき古林診療所 院長)
@ 今回、講師の久米俊久氏には両検査法の特徴や診断基準、TP検査における自動化の状況、及び梅毒検査自動化試薬「メディエースTPLA/RPR」などについてお話し頂いた。梅毒感染報告数は近年増加傾向にある。また、HIV患者が梅毒を併発させていることも多く、逆に梅毒陽性者にHIV検査を施行することでHIV感染の早期発見にも繋がる。梅毒検査法には脂質抗原法(脂質抗体検査)とTP抗原法(TP抗体検査)があり、脂質抗原法の特徴は感染後早期に陽性化し治療効果をよく反映するが生物学的偽陽性
(BFP:梅毒に感染していないにもかかわらず他の疾患で陽性となる)を示す場合があることである。 TP抗原法の特徴はTP抗体に特異性は高いが梅毒治療後も抗体は残るため陽性が続く
(抗体価は治療効果を反映しない)ことである。梅毒血清検査はこの2法を組み合わせて行いその検査結果を総合判定する必要がある。「メディエースHPLA/RPR」試薬はラテックス凝集免疫比濁法を測定原理とする。メディエースRPR試薬の特徴は、脂質抗原(カルジオライピン・レシチン)感作ラテックスを用いており脂質抗体IgMと主に反応し病態をよく反映すること、
IgMは凍結融解により活性が低下するので凍結検体では陰性化する可能性があること、血漿検体は測定不可であることがある。またメディエースTPLAの特徴はTP由来抗原成分感作ラテックスを用い、
47KdのTP菌体由来精製抗原を主要抗原としているのでTPIgG抗体だけでなくIgMも捕らえ、 TPHA法よりも早期に陽性化すること、治療後時間が経過し、
17Kdに対する抗体だけを有する患者では陰性化する場合があることが挙げられる。
A 今回古林敬一先生には性感染症の推移の実態、性感染症関連の患者の特徴HIV患者数や検査法、梅毒の病期や病態及びHIVとの関連、クラミジア感染症、尖圭コンジローマの病態および治療薬、淋菌検査やグラム染色の有用性など、実際に性感染症クリニックで日々診察なさっている立場から臨床に即した多方面に渡る内容を、貴重な資料を交えてお話し頂いた。性感染症は症状が曖昧であり、本人が自覚していない(性行為との関連に気付いていない)場合や、性感染症の心配を隠して一般内科を受診する場合などもあり、診察時や検査で見逃さないようにしなければならない。例えば女性の膀胱炎では、淋菌性尿道炎に注意する必要がある。淋菌は膀胱炎のfirst
choiceになるニューキノロン系薬にほぼ100%の耐性を持つので疑ったら、尿沈渣や遺伝子検査を実施する必要がある。またクラミジアによる感染症(咽頭炎、尿道炎、子宮頸管炎)は症状に乏しく、抗原検査をしてみないと分からないことが多い。感染症の推移として、
HIV届け出数は増加傾向にある。HIVスクリーニング検査は第4世代が主流(HIV-1,2抗体とHIV-1のp24抗体)である。
HIV感染のウィンドウ期にある場合はNATが必要となる。梅毒届け出数は京都府では減少傾向であるが減少傾向であるが大阪府や東京都では増加傾向にある。梅毒の皮疹は梅毒感染発見の手がかりとなるが、
1期疹は梅毒スピロヘータが侵入した部分にでき(硬結→びらん→潰瘍)、 2期疹は全身に散布されたスピロヘータの存在する部位に紅疹や紅色丘疹がみられる。
2期疹は採血時に我々検査技師が発見することも可能なので、意識しておく必要がある。また男性の活動性梅毒患者の4〜5人に1人はHIV陽性である。
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