主題:一般検査分野 研修会
副題1:一般検査基礎講座1「尿定性検査の基礎」
講師1:日下部 映吏 氏 (アークレイ株式会社 学術センター)
副題2:尿路感染症診断と治療 〜一般検査からのアプローチ〜
講師2:中村 彰宏 技師 (天理よろづ相談所病院 臨床病理部)
今回の研修会は2つの講義を拝聴した。最初の講義はアークレイ株式会社学術セン」ターの日下部映吏氏に「尿定性検査の基礎」をお願いした。尿試験紙の総論的な話から、各項目の原理、意義、注意点に至るまで詳細に講演していただいた。講演後のディスカッションでは、陽性反応が出た場合の確認法の実施の有無について議論された。アルカリ尿での蛋白、ウロビリノーゲンやビリルビン陽性時の確認、ケトン体陽性時の確認・・・日常遭遇しがちだが、実際の現場ではなかなか確認法の実施を行えていないこともわかった。これらの確認法は試薬が高額ではない割に、試薬作製や確認操作に手間がかかったりする為であろうと考えられるが、確認法の実施について見直す良い機会であったと思う。
第2講義目は天理よろづ相談所病院臨床病理部の中村彰宏技師に「尿路感染症診断と治療」という内容で講演をしていただいた。中村技師は奈良県臨床検査技師会一般検査研究班の班長で、細菌検査と一般検査の両分野に精通されており、今回は一般検査で使える尿路感染症の知識を教えて欲しいと言う筆者の依頼内容に、忠実に答えていただいた内容での講演であった。一般検査からの尿路感染症のアプローチとしては、尿沈渣中の細菌、尿試験紙であれば白血球、亜硝酸塩、外観などの組み合わせが挙げられるが、尿沈渣でも可能なら細菌の形態を報告すること(JCCLSでは球菌と桿菌を分けて報告せず、「細菌」として報告することになっている)、一般検査室でのグラム染色の実施や鏡検など、さらにもう一歩感染症に近づいた尿検査を実施することの重要性をお話ししていただいた。
過去に近畿一般検査研究班で医師を対象に尿沈渣のアンケート調査を行ったが、その際に「感染症の診断に2日も3日も待てない・・・」という生の声を聞いたことがある。尿路感染症の診療の実際は、細菌の培養結果を待つことなく、尿一般検査の結果をみて臨床医も抗生剤の投薬をするか否かを決めており、我々も尿路感染症の早期治療に貢献できるような情報の提供に努めたいと思う。
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