主題1:膠原病・関節リウマチの検査と最近の話題
講師1:林 伸英 技師 (神戸大学医学部附属病院 検査部 副技師長)
主題2:膠原病・自己免疫疾患の診断と臨床
講師2:小柴 賢洋 先生 (兵庫医科大学 臨床検査医学 主任教授)
@関節リウマチを診断する検査項目としてリウマチ因子、抗CCP抗体、抗核抗体、MMP-3などの感度、特異度をRCO解析による説明。最近開発された抗CCP抗体測定はRA診断の特異度が高く早期診断への重要性が注目されている。最近の話題としてマルチプレックス技術を利用した多項目(11項目)同時測定できる自己免疫抗体スクリーニング法が開発されているが、国内では発売されていない。
A膠原病の診断と治療についての概略とどのタイミングで専門医へ依頼するかをテーマに講演して頂いた。膠原病は3つの特徴がある。第1は、リウマチ性疾患で運動器の痛みを伴う疾患。第2は、自己免疫性疾患で免疫異常があり、自己抗体が認められ、病因に直接関与している。第3は全身炎症性疾患で他臓器障害が起こる。自覚症状は、原因不明の発熱、皮疹、レイノー現象、関節痛・腫脹などが見られた時。検査は、貧血、白血球現象、炎症(CRP)、高γグロブリン血症、自己抗体を調べる。関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリトマトーデス(SLE)、強皮症など代表的な膠原病診断の自己抗体をわかり易く説明された。しかし、自己抗体が陽性であってもその患者が自己免疫疾患であるとはいえない。膠原病を疑う自覚症状や炎症所見があれば、専門医へ依頼することが望ましい。今回は、医師会の先生が多く参加され、講演後の質疑では診察しているの患者の診断法や今後の治療法の質問があった。
【確認問題】
林 先生
設問1;関節リウマチ診断において、最近測定系が開発され注目を集めてる自己抗体は?
設問1回答;抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)
設問2;診断精度(感度・特異度)において、抗CCP抗体の優れている点は?
設問2回答;RA以外の膠原病や慢性炎症性疾患での特異度が高い点が特に優れている。
小柴 先生設問1;「膠原病の3つの顔」とは何のことか?
設問1回答;膠原病は以下の3つの特徴を併せ持つ。
1.臨床:リウマチ性疾患
運動器の痛みを伴う疾患である。
2.病因:自己免疫性疾患
免疫異常があり、各種の自己抗体が認められ、少なくとも一部の自己抗体は病因や病勢に直接関与していると考えられる。
3.病変部位:全身性炎症性疾患
多臓器障害が起こり得る。
設問2;膠原病で有病率が高いものを順に3つ挙げよ。
設問2回答;正確な罹患者数は明らかではないが、本邦では概ね以下のように考えられている;
@関節リウマチ 約70万人
Aシェーグレン症候群 約10 - 30万人
BSLE 約5万人
設問3;膠原病の検査について間違っているものはどれか。すべて選べ。
a. RFが陰性なら関節リウマチは否定できる。
b. RFが陽性なら関節リウマチである可能性は約80%である。
c. RF陽性率は加齢に伴い低下する。
d. 抗核抗体が陰性なら膠原病は否定できる。
e. 疾患特異的自己抗体は感度が高い。
設問3:回答 a?eのすべて
a. RAにおけるRFの陽性率は約8割、→RF陰性でも関節リウマチは否定できない。
(RF陰性RA=血清陰性RA Sero-negative RA)
b. 検査前確率によって検査後確率は変わる。
RAにおけるRFの感度(Sn)=80%、特異度(Sp)=40%とすると陽性尤度比=Sn/(1-Sp)=0.8/0.6=1.33
A) 検査前確率が90%であれば、検査前オッズ=9なので
検査後オッズ=9x1.33=12 →検査後確率=92%
B) 検査前確率が50%であれば、検査前オッズ=1なので
検査後オッズ=1x1.33=1.33 → 検査後確率=57%
c. 高齢者では健常人でもリウマトイド因子がしばしば陽性になる。
d. 未治療のSLEでの抗核抗体陽性率は高く、用いられる核材によって差はあるものの、90〜95%程度である。逆に言えば、SLEであっても抗核抗体陰性例が存在する。
e. 疾患特異的自己抗体は感度は低いが特異度が高い。
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