主題:臨床化学分野 研修会
主題1:血中エラスターゼ1の臨床的意義
講師1:祖父江 晋 氏 (三菱化学メディエンス株式会社)
主題2:HbA1cの標準化 ―過去・現在・未来―
講師2:日下部 映吏 氏 (アークレイマーケティング株式会社)
@血中エラスターゼ1は膵特異性が高い酵素として知られ、近年ラテックス免疫比濁法を原理とする測定法が開発されたことから汎用生化学自動分析装置による測定が可能となった。今回はエラスターゼ1の特徴として、血中半減期が長く膵炎において他の膵酵素より比較的長く異常高値を取ることから急性膵炎の病態をよく反映すること、エラスターゼ1の主な代謝経路が肝であるので腎から排出される他の膵酵素に比べ腎不全の影響を受けにくいこと、また膵管や膵管分岐が閉塞された場合に鋭敏に上昇するので膵癌の腫瘍マーカーとしても利用できることなどをお話いただいた。膵臓癌症例の70%(膵頭部癌のみでは89%)でエラスターゼ1が異常値を取るという報告なども紹介していただいた。エラスターゼ1を他の膵酵素やCA19-9などの腫瘍マーカーと併せて測定することでより確実な膵疾患の診断が期待できる。
AHbA1cの成り立ちから日本国内・世界における標準化の動きまで幅広くお話いただいた。国内におけるHbA1c標準化に関して機種間差や不安定型HbA1c分画の扱いの違い、施設毎の補正処理の違い、HbA1cの異なる特徴を利用した各測定法(HPLC法、免疫法、酵素法)間の差などの問題点やその解決策を、標準化の歴史を辿りながら分かり易く解説していただいた。また、米国(NGSP)や欧州(IFCC)における標準化の概要もお話いただいた。「グリコヘモグロビン国際標準化に関するIFCC/IDF/EASD/ADA合意声明文」や「日本臨床化学会糖尿病関連指標専門委員会の見解」ども紹介していただいたが、標準化に向けてまだまだ動きがありそうな印象が大きい。今後も国内及び世界の動向を勉強できるこのような機会の必要性を強く感じた。
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