奈良県臨床細胞学会 会長
奈良県立医科大学 病理診断学講座
藤井 智美
奈良県臨床細胞学会の設立までの経過は、日本臨床細胞学会奈良県支部会報の創刊号(1999)に紹介されている奈良市総合医療検査センターの西川義雄先生の記述に詳しい1)。
奈良県における細胞診は、他県と同様に婦人科の検診とともに発展してきた。その歴史は、昭和34年(1959)に大阪大学から赴任された産婦人科学の石塚直隆教授(昭和36年8月名古屋大学教授、後学長)の時代に遡るとされる。その翌年に産婦人科助教授に就任した須川佶先生(〜昭和41年、後大阪市立大学医学部産婦人科学教授)が若い医師を細胞診の勉強のために他施設に長期出向させたりして、熱心に指導された。石塚教授の後任として昭和36年に前山畠男教授(〜昭和45年、後熊本大学医学部産婦人科教授)が就任、さらに昭和42年には当時関西では細胞診に力を入れていた大阪成人病センターから高橋義浩助教授が就任して、子宮癌の集団・個別検診と関連して、細胞診がさらに熱心に行われたようである。
昭和47年に山口龍二先生が東北大学から産婦人科教授に就任され(~昭和53年5月)、昭和54年には東北大学から一條元彦教授が就任、平成7年に退官されるまで長く産婦人科の教授職を勤められた。その間、細胞診をしていた多くの先生から日本臨床細胞学会奈良県支部の設立の気運が高まり、当時日本臨床細胞学会認定指導医であった横山泰先生(奈良県支部の初代支部長)、県産婦人科医会長の福丸捻一先生、産婦人科教授の一條元彦先生らが中心となり、昭和59年5月に日本臨床細胞学会から奈良県支部会の設立が許可され、日本臨床細胞学会奈良県支部が設立されることとなった。
翌年昭和60年1月に横山泰先生を日本臨床細胞学会奈良県支部の初代支部長として第1回支部会が県文化会館で開催された。この頃、支部学術集会は特別講演と一般演題というスタイルが確立した。 昭和62年に第2代支部長として県立医科大学産婦人科の一條元彦教授が就任された。一條先生は支部長になった当時を振り返って、日本臨床細胞学会奈良県支部会報創刊号の中で、子宮癌検診における奈良県の認識の低さに閉口し、相当なご苦労をされたことを記述されている2)。昭和63年6月の第4回総会・学術集会で、支部学術集会の講演は主に細胞検査士による教育講演と医師による特別講演、それに一般演題というスタイルができた。また、平成2年10月の第6回総会・学術集会からは秋〜年末に開催されるようなった。
平成5年10月には日本臨床細胞学会奈良支部支部長として中野博教授(病態検査学、〜平成10年)が就任された。平成7年の第10回総会・学術集会からは症例実習を中心としたスライドカンファレンスが行われるようになり、同年の8月に奈良県立医科大学で7症例のスライドカンファレンスがなされている。第12回総会・学術集会は平成9年10月に奈良県医師会メディカルセンターで開催され、この年から学術集会は年末、スライドカンファレンスは翌年の早春に行われるようになった。
平成10年4月には第4代支部長として市島國男教授(奈良県立医科大学第1病理学)が就任された。第17回総会・学術集会は第28回日本臨床細胞学会近畿連合会学術集会と合同で、平成14年7月に奈良県立医科大学で開催された。翌年の3月にはスライドカンファレンスが奈良県立医科大学で開催された。 平成15年4月には第5代支部長として中村忍教授(奈良県立医科大学総合医療学講座)が就任された。平成17年に中村忍先生が大会長として第44回日本臨床細胞学会秋期大会が11月11、12日の2日間にわたり奈良県文化会館、奈良県新公会堂の2つを会場で開催され、3,000人もの多くの参加者があり、大盛会であった。
平成21年4月には第6代支部長として野々村昭孝教授(奈良県立医科大学病理診断学講座)が就任された。平成22年の1月に、日本臨床細胞学会奈良県支部のホームページを試験施行し、4月からは正式にホームページを開設している。
平成24年4月には第7代支部長として小西 登(奈良県立医科大学病理病態学講座教授)が就任された。平成27年には橿原市文化会館において第40回日本臨床細胞学会近畿連合会学術集会を開催し、また同年12月には日本臨床細胞学会奈良県支部から奈良県臨床細胞学会に名称変更した。
平成29年4月には第8代支部長として大林千穂(奈良県立医科大学病理診断学講座教授)が就任しされた。令和3年には橿原文化会館において、第46回日本臨床細胞学会近畿連合会学術集会を開催した。令和4年7月に第9代支部長として藤井智美(奈良県立医科大学病理診断学講座)が就任し、現在に至っている。
尚、本文は小西登前々支部長並びに大林千穂前支部長による記載に藤井が追記した。
<参考資料>
1) 西川義雄:私の細胞診断学専攻と日本臨床細胞学会奈良県支部誕生の思い出。日本臨床細胞学会奈良県支部会報 1:Ⅳ-Ⅴ, 1999.
2) 一條元彦:所感。日本臨床細胞学会奈良県支部会報1:Ⅱ, 1999.
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