愛媛県における、メディカルコントロール(MC)体制の現状4

県立新居浜病院麻酔科 越智元郎(資料制作:2003年10月)


Slide-41(前スライド次スライド

 平成13年、総務省消防庁の「救急業務高度化推進委員会報告書」でも、 救急業務の高度化を図るために、メディカルコントロール体制の確立が急 務とされました。

 平成15年3月総務省消防庁の「救急業務高度化推進委員会報告書」では メディカルコントロール協議会設置状況が紹介されています。今年2月の 段階で都道府県メディカルコントロール協議会を設置済みの都道府県数は 35、地域協議会については25となっています。本年年3月末を目途に全て の都道府県において設置される見込みと付記されていますが、いかにも付 け焼き刃的なメディカルコントロール体制の整備ではありませんか? な お愛媛県では県の協議会が最初に開催されたのは本年5月、地域の協議会 は6月スタートとなりました。


Slide-42(前スライド次スライド

 この「救急業務高度化推進委員会報告書」において、処置範囲拡大の方向 性として、本年4月を目途に「医師の指示なし除細動」を実施することが示 されました。また平成16年7月を目途に医師の具体的指示に基づく気管挿管 の実施を許可する方針とされました。薬剤投与についてはドクターカー等で 有効性の「研究・検証」を実施することとなりました。


Slide-43(前スライド次スライド

 そして本年3月26日の「救急救命処置に範囲等について」の一部改正では 救急救命士が除細動を医師の包括的指示の下に実施することが認められまし た。また救急救命士の除細動の対象として、はじめて無脈性心室頻拍が明記 されました。また留意事項として、事前・事後のメディカルコントロール体 制の整備が包括的指示の下での除細動実施の条件となると記載されています。


Slide-44(前スライド次スライド


Slide-45(前スライド次スライド

 次に本日の4つ目の話題として、メディカルコントロール体制の整備が不 十分な現状で包括的指示下の除細動を実施してよいか、という論議を取り上 げさせていただきます。


Slide-46(前スライド次スライド

 私は今年3月、厚生省が救急救命士法施行規則の一部改正に先立ち募集し たパブリックコメントとして、詳細な意見書を送付させていただきました。

 意見書の全文はウェブ(http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/03/n3-pubcome.htm) にも収載しておりますが、「救急救命士の、包括的指示下での除細動に賛成」 する立場で議論を展開しています。その根拠として、蘇生医学の専門家の世 界的な合意として、自動式体外除細動器を用いた除細動は訓練を受けた市民 が安全に実施できる一次救命処置に分類されており、また市民による除細動 は病院外心肺停止患者を重篤な神経学的後遺症なしに救命する上で、きわめ て有用であることが明かとなっています。これを踏まえれば、長時間の養成 教育を受けた、わが国の救急救命士に、医師の包括的指示に基づく除細動を 許可する事は、病院外心肺停止患者の救命という観点からみて明らかに国民 の利益にかなうことが明かであるからです。


Slide-47(前スライド次スライド

 しかし現在、メディカルコントロール体制整備が十分でないのに、包括的 指示下の除細動を開始してよいのか? という論議があります。

 現状として、わが国のいくつかの救急先進地区はMC体制確立に尽力してお り、これが整備されるまで包括的指示下での除細動は差し控えています。  一方、2003年3月に県単位のMC協議会ができただけで、4月から包括的指示 下での除細動を開始した地域があります。これについては国や県が容認して います。愛媛県もそうですが、これらの地域の多くでは1枚の検証票も完成 されたことがありません。

 私の意見としては、自動式体外除細動を用いた除細動は本来市民レベルで 許可されるべきものであり、救急救命士が行うことはMC体制整備中でも許容 範囲内と考えます。しかし、メディカルコントロール体制が未確立のまま気 管挿管訓練を開始したり、救急救命士による薬剤投与を考慮するのは順序が 逆であると考えます。


Slide-48(前スライド次スライド

 愛媛県のメディカルコントロール体制の現状をまとめますと、以下のよ うになります。

 まず今年3月、愛媛県救急医療対策協議会の専門委員会として「愛媛県 MC検討委員会」が設置されました。3月26日には「救急救命処置に範囲 等について」の一部改正が行われ、4月 1日には一部の消防本部が包括的 指示下の除細動を開始されています。これは県担当部局の助言によるもの だそうです。

 5月19日、愛媛県メディカルコントロール検討委員会 第1回委員会が 開催され、東予、中予、南予に各地域協議会を設置することとし、3地区 の中核医療機関及び代表消防機関を決定されました。また4人のメディカ ルコントロール統括委員を置き、MCの技術的な問題を統括し、連絡・調 整を行うことが決められました。

 6月には各地域協議会が設置され、検証医の決定、統一検証票の整備な どの作業が開始されています。ちなみに私は東予地区メディカルコントロ ール協議会から3人の検証医の一人に指名され、近々地域の消防本部と私 が所属する医療機関との間で協定書が交わされる予定です。


Slide-49(前スライド次スライド

 以上、愛媛県におけるMC体制の現状についてお話しをさせていただき ましたが、まとめとして

  1. わが国の病院前救護活動は心肺停止患者の救命という観点からみて 十分ではありません。このことから救急救命士に許される処置内容の拡大 が検討されてきましたが、その前提となるメディカルコントロール体制の 整備には大きな地域差がみられます。

  2. 検証作業が開始されていないメディカルコントロール後進地におい ても、市民レベルでの除細動に準じて、包括的指示下での除細動を開始し 救命率を上昇させるべきではないでしょうか。


Slide-50(前スライド次スライド

 本日ごご覧いただいた写真は愛媛県温泉郡川内町 滑川渓谷の紅葉です。


Slide-51(前スライド次スライド

 これは来島海峡大橋です。なお、今回の講演原稿、スライド原稿などを ウェブ(http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/03/naohti/)に収載しており ますので、ご参照いただけましたら幸いでございます。


Slide-52(前スライド次スライド)

 写真は石鎚山脈の遠景です。以上、皆様、ご静聴いただき有難うござい ました。


スライド 1〜10スライド 11〜2021〜3031〜4041〜52 ■News from GHDNet