国際基準に基づく小奇形アトラス 形態異常の記載法 ―写真と用語の解説



鼻と人中


2 つに分かれた鼻尖(Nasal Tip,Bifid)
定義
視覚的に評価可能で,鼻尖の縦方向のくぼみ,裂,平坦化(客観的)(図 30)。
コメント
この定義は鼻尖が広いということは必要としないことに注意する。この分け目は,触れればわかるが,触れなくても視診でわかる。鼻尖裂が鼻堤と鼻梁の分け目と続いている場合は,鼻裂(bifid nose)に含まれる。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Nasal cartilages,separated
図 30 割れた鼻尖
中央と右の写真では,鼻梁,鼻堤,鼻底がすべて広いことに注意。

広い鼻尖(Nasal Tip,Board)
定義
鼻尖の幅が増えた状態(客観的)(図 31)。
コメント
鼻尖の幅は,鼻翼と鼻尖の前結部で評価される。鼻尖の形がいくらか四角い人では簡単である。鼻の下方から観察する場合が最善のこともある。幅について客観的な計測値はない。関連語として球状の鼻(bulbous nose)を参照。
同義語
Nasal tip,wide
図 31 広い鼻尖狭い鼻尖(Nasal Tip,Narrow)
・Nasal tip,bulbous:Nose,bulbous参照

平らな鼻尖(Nasal Tip,Depressed)
定義
鼻尖から nasal base までの距離が短い状態(客観的)(図 32)。
コメント
これは,しばしば短い鼻柱(short columella),突き出した鼻尖(overhanging nasal tip),未発達な鼻尖(underdeveloped nasal tip)と合併することがあるが,これらは区別する。
同義語
Nasal tip, retruded;Nasal tip, re-cessed
図 32
平らな鼻尖下段の 3 つの写真は同一症例であるが,右側の写真が最もよくわかる。また,下段右の写真では鼻柱が短いが,上段右の写真では目立たない。

偏位した鼻尖(Nasal Tip,Deviated)
定義
鼻尖が中央から片側に位置している状態(主観的)(図 33)。
コメント
鼻尖が偏位していると決定される最少角度はとくにない。軽度の偏位の評価は,観察者の経験に大きく依存している。鼻中隔の偏位は,鼻尖の偏位を合併することがある。
図 33 偏位した鼻尖
下からの観察(左写真)の方が,正面からの観察(右写真)よりよくわかる。

狭い鼻尖(Nasal Tip,Narrow)
定義
鼻尖の幅が小さい状態(主観的)(図 34)。
コメント
鼻尖の幅は,鼻翼と鼻尖の前結部で評価される。鼻尖の形がいくらか四角い人では簡単である。鼻の下方から観察する場合が最善のこともある。幅について客観的な計測値はない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
つままれた鼻尖(Nasal tip,pinched)
図 34 狭い鼻尖
左の写真では,鼻梁と鼻堤は広く鼻尖のみが狭いが,右の写真では鼻梁も鼻堤も狭い。

張り出した鼻尖(Nasal Tip,Overhanging)
定義
鼻尖が Nasal base の下に位置している状態(主観的)(図 35)。
コメント
この所見は,しばしば長い鼻堤と関係がある。横顔で評価するのがよい。これは平らな鼻尖(depressed nasal tip)と下方に付着した鼻柱(low insertion of columella)とを合併することがあるが,区別して記載する。
図 35 張り出した鼻尖
この特徴は,側面から評価されるべきであり,正面から認識される場合は,左の写真のように程度が強い場合だけである。
・Nasal tip,pinched:Nasal tip,narrowを参照
・Nasal tip,recessed:Nasal tip,depressedを参照
・Nasal tip,retruded:Nasal tip,depressedを参照
・Nasal tip,upturned:Nares,antevertedを参照
・Nasal tip,wide:Nasal tip,broadを参照

鼻欠損(Nose,Absent)
定義
鼻のすべての構造がまったくない状態(客観的)(図 36)。
・Nose,beaked:Nasal ridge,convexを参照
図 36 鼻欠損

鼻裂(Nose,Bifid)
定義
鼻梁,鼻堤,鼻尖が縦方向にくぼんでいる,あるいは割れている,へこんでいる状態(主観的)(図 37)。視診で評価される。
コメント
これはバンドリング用語であるが,実際の場では便利であるため,このまま使う。鼻尖がくぼんでいる,あるいは割れているだけの場合は,鼻尖裂(bifid nasal tip)として記載する。
図 37 鼻裂
・Nose,broad:Nose,wideを参照

球状の鼻(Nose,Bulbous)
定義
鼻の前下側の容積が大きく,球状であること(主観的)(図 38)。
図 38 球状の鼻
コメント
これはバンドリング用語であるが,実際の場では便利であるため,このまま使う。この大きさと形の変化は,鼻尖に限定されるかもしれないが,鼻下 1/3 が含まれる場合もある。鼻尖の幅が大きいだけの場合は,広い鼻尖(broad nasal tip)として記載する。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
じゃがいものような鼻(Potato nose);洋ナシ型の鼻(Pear-shaped nose);球状の鼻尖(Nasal tip, bulbous)
・Nose,flat:平坦な鼻堤(Nasal ridge,depress-ed)を参照
・かぎ鼻(Nose, hooked):凸の鼻堤(Nasal ridge,convex)を参照
・大きい鼻(Nose,Large):大きい鼻(large nose)という用語は,バンドリング用語で,突出した鼻(prominent nose),幅広い鼻梁(wide nasal ridge),突出した鼻尖(prominent nasal tip),広い鼻底(broad nasal base)で構成する。これは容易に定めるのは現在,難しくなっている容量の評価を必要とする。突出した鼻はしばしば大きな鼻と誤って記載される。

長い鼻(Nose,Long)
定義
鼻根点から鼻下までの距離が,平均の 2 SD 以上あること(客観的)(図 39)。 あるいは明らかに鼻根から鼻底の長さが長い状態(主観的)。
コメント
長さの正常値は文献などにでている
[Farkas,1981;Zank ら,2002;Hall ら,2007]。鼻の長さは通常,人中の長さと明らかに逆相関する。鼻根点は測定するのが難しいことがあり,そのような場合は,客観的評価のみされ得る。計測(客観的)して正常範囲内でも大きくみえる(主観的)こともある。乳児の鼻は通常,大人と比べると,顔の長さに対して短くみえる[ Farkas と Munro,1987]。鼻は生涯発育するが,成人期には鼻堤の長さが増えるが鼻の長さは必ずしもそうではない。これを測定する成人の正常値はない。長い鼻(long nose)は大きい鼻(large nose)と区別する。
同義語
Increased nasal height
図 39 長い鼻
ここでは,鼻の長さが絶対的な意味で増えた状態をさすことに注意。適切な主観的評価を行うには,顔の長さと幅との比較が必要である。

狭い鼻(Nose,Narrow)
定義
鼻翼間の距離が,年齢平均の 2 SD 以下の状態(客観的)(図 40)。 あるいは鼻底と鼻翼の幅が明らかに低下している状態(主観的)。
コメント
鼻の長さは,両鼻翼の最も外側の距離と定義される。狭い鼻(narrow nose)はしばしば,狭い鼻底(narrow nasal base)と合併するが,必ずしもそうではない。また,厚みが減った鼻翼,狭い鼻孔,狭い鼻柱と合併することもある。狭い鼻という用語は,鼻翼間の距離だけでなく鼻尖,鼻堤,鼻梁の減少を示すのによく使われる。このようにバンドリング用語である。これを広く使うのは好ましくなく,むしろ個々の構成要素を記述するべきである。
図 40 狭い鼻

突出した鼻(Nose,Prominent)
定義
鼻下と鼻前の距離が,平均の 2 SD 以上の状態(客観的)(図 41)。 あるいは鼻尖が明らかに前に突出していること(主観的)。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Nose,large
図 41 突出した鼻
この特徴は,側面から最もよく評価される。正面像ではあまり突出がわからない。

短い鼻(Nose,Short)
定義
鼻根点から鼻下までの距離が,平均の 2 SD 以下の状態(客観的)(図 42) あるいは,鼻根から鼻尖までの長さが明らかに減っている状態(主観的)。
コメント
長さの正常値は文献などを参照する[Farkas,1981;Zank ら,2002;Hall ら,2007]。鼻の長さは通常,人中の長さと関係がある。鼻と人中は顔の中心部を占め,どちらかが減れば,もう一方が増えるといった反対の変化がしばしば生じる。鼻根点は測定するのが難しいことがあり,そのような場合は,客観的評価のみされうる。計測(客観的)して正常範囲内でも,顔の中心の長さが長いために鼻が小さくみえる(主観的)場合が時折ある。乳児の鼻は通常,大人と比べると,顔の長さに対して短くみえる[Farkas と Munro, 1987]。鼻は生涯発育するが,成人期には鼻堤の長さが増えるが鼻の長さは必ずしもそうではない。これを測定する成人の正常値はない。
図 42 短い鼻
ここでは絶対的な意味で鼻の長さが減っている状態をさすことに注意。適切な主観的評価を行うには,顔の長さと幅との比較が必要である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
小さい鼻:長さと幅が両方小さい(Nose,small)
・Nose,small:Nose,short参照

広い鼻(Nose,Wide)
定義
両鼻翼間の距離が,年齢平均の 2 SD 以上であること(客観的)(図 29)。 あるいは,鼻底と鼻翼の幅が明らかに増えた状態(主観的)。
コメント
鼻の長さは,両鼻翼の最も外側の距離と定義される。広い鼻(wide nose)はしばしば,広い鼻底(wide nasal base)と合併するが,必ずしもそうではない。また,厚みが増えた鼻翼,広い鼻孔,広い鼻柱と合併することもある。広い鼻という用語は,鼻翼間の距離だけでなく鼻尖,鼻堤,鼻梁の増加を示すのによく使われる。このようなバンドリング用語である。これを広く使うのは好ましくなく,個々の構成要素を記述する。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Nose,broad

厚い鼻周囲組織(Paranasal Tissue,Fullness)
定義
鼻に並行した組織の容積が増えた状態(主観的)(図 43)。
図 43 鼻周囲組織の肥厚
左の写真では,肥厚はほんのわずかなことに注意。
コメント
この肥厚(fullness)は,骨と軟部組織の両方によってひき起こされる。これは,広い鼻堤(wide nasal ridge)や広い鼻梁(wide nasal bridge)とは区別する。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Laterally built up nose
・Pinched nose:nasal ridge,narrowを参照
・Potato nose:Nasal tip,bulbousを参照

長鼻(Proboscis)
定義
柔らかい管状構造物で,通常は顔の正中部か正中部からすこしずれたところに位置する(客観的)(図 44)。
コメント
proboscis は単空洞である[Mc-Grath,1992]。これは,鼻の奇形や,無鼻,無鼻翼と関係がある。
図 44 長鼻
・パグ鼻(pug nose):上向きの鼻孔(nares, anteverted)を参照
・鞍鼻(saddle nose):彎曲した鼻堤(nasal ridge,concave)を参照
・スキージャンプ鼻(ski jump nose):彎曲した鼻堤(nasal ridge,concave)を参照
・しし鼻(snub nose):平坦な鼻梁(nasal bridge,flattened)を参照

人中(PHILTRUM)


人中の解剖

 人中(Philtrum:ギリシャ語で philtron=恋の妙薬[古代ギリシャ人は人中を,人体における最も敏感な性感帯のひとつとみなしていた])は上口唇の正中部にある縦溝で, 2 つの隆起あるいは柱によって境界される。それは,鼻底(鼻下)と粘膜皮膚境界部(上口唇)との間に位置し,鼻唇の距離をも示す。溝と隆起部の下端は,粘膜皮膚境界部の Cupid’s bow の中央を形つくる[ Carey ら, 2009 参照]。

人中の測定

 軟組織間の短い距離を測るのは難しく,間違うことがあるために,鼻唇間の距離の測定は正確ではない[ Mehes,1988;Wardと Jamison,1991]。さまざまな集団の人中の長さの正常値についての調査書がいくつか出版されている。それらの論文の一部を表に示す。
表 人中の長さの正常値(一部抜粋)
年齢/方法 国名
在胎 13~42 週/超音波 イスラエル1)
在胎 28~42 週/カリパスまたはコンパス ハンガリー2)
在胎 27~41 週/カリパス 日本3)
在胎 37~41 週/カリパス 日本4)
1 か月~15 歳/カリパス 日本5)
1~18 歳/カリパス アメリカ6)
出生後~14 歳 アメリカ7)
出生後~12 歳/光人体計測 ドイツ8)
出生後~97 歳/透明な硬カリパス スイス9)
1)Gull ら,2005;2)Me´hes,1981;3)Fok ら,2003; 4)Tateishi and Kajii,1992;5)Igarashi and Kajii, 1988;6)Farkas ら,1992;7)Feingold,2001;8) Stengel-Rutkowski ら,1984;9)Zankl ら,2002
理想的には,人中の長さはスライド式の測定器を使って測定するが,実際には,主に透明な定規が使われる[Hall ら,2007]。表情で目印が変わることがあるので,測定は自然体で行う。さらに測定が難しいことに,人種,年齢,性別を考慮する。

解剖学的バリエーション

人中は,量的および質的特徴によって分類される:
  1. 長さのバリエーション:長い,短い
  2. 幅のバリエーション:広い,狭い
  3. 深さのバリエーション:滑らか,深い
  4. まれな外観:テント状,人中の隆起が平行ではない,正中縫線,正中洞

平行ではない人中隆起(Philtral Ridges,Malaligned)
定義
人中隆起が通常の平行な位置にないこと(主観的)(図 45)。
コメント
Hajnis[1972]は,下向きに一点に集まる,下向きに分かれる(台形あるいは三角形),凸状(卵型),凹状の人中の形について述べている。これらの所見はすべて,“不整人中稜(malaligned philtral ridges)”という用語にまとめられて使われる。
図 45 平行ではない人中隆起
左の写真では,卵形の人中であるが,右では台形である。

広い人中(Philtrum,Broad)
定義
唇紅縁の直上で計測された人中隆起の距離が,平均の 2 SD 以上あること(客観的)(図 46)。あるいは,人中隆起の距離が明らかに増えている状態(主観的)。
コメント
人中の幅の平均は,乳児では 7 mm
[Franz と Sokol,1971],成人では 9.7 mm[Wardと Jamison,1991]といわれている。人中の幅を測るのは,人中の長さを計るよりも不正確である(前述)。広い人中は,人中隆起の減少や浅い溝,すなわち smooth philtrumと関係がある場合があるが,それらは区別して記載する。広い鼻中隔でみられる場合がある。
同義語
Philtrum,wide
図 46 広い人中

深い人中(Philtrum,Deep)
定義
鼻底と上口唇の境界との間の正中で,人中隆起が突出し,溝が目立つ状態(主観的)(図 47)。
コメント
押しつぶされた人中(depressed philtrum)という用語は,人中隆起は正常で溝が深い状態を表すのに使われることがある一方,溝は正常で人中隆起が突出している状態とこれを区別するのは難しい[Pashayan,1983]。隆起の高さが正常で溝が明らかに深いという状態はない。
同義語
Philtrum,deep
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Philtrum,depressed
図 47 深い人中
・Philtrum,depressed:Philtrum,deepを参照
・Philtrum,flat:Philtrum,smoothを参照
・Philtrum,indistinct:Philtrum,smoothを参照

長い人中(Philtrum,Long)
定義
鼻底と上口唇の粘膜皮膚境界中央との距離が,平均の 2 SD 以上ある状態(客観的)(図 48)。あるいは,この距離が明らかに増えた状態(主観的)。
コメント
人中の長さは通常,鼻の長さと関係がある。人中と鼻は顔の中心部を占め,どちらかが減れば,もう一方が増えるといった反対の変化がしばしば生じる。したがって,長い人中は短い鼻(short nose)としばしば合併するが,別々に記載する。
図 48 長い人中
ここでは,絶対的な意味で人中の長さが増えている状態をさすことに注意。適切な主観的評価を行うには,鼻の長さとの比較が必要である。

正中縫線状の人中(Philtrum,Midline Raphe)
定義
人中の正中溝が狭い状態(客観的)(図 49)。
コメント
堤はわずかに隆起していることがある。
図 49 人中の正中縫線

正中洞のある人中(Philtrum,Midline Sinus)
定義
人中の正中溝にくぼみがある状態(客観的)(図 50)。
コメント
口唇の先天洞は一般的には下口唇にみられるが,まれに上口唇の人中にみられることがある。普通,鼻柱の付着部に近いところにみられる[Asahina,1997]。
図 50 人中の正中洞
(下段の 2 枚の写真は,Dr. Alan Fruer の厚意による。)

狭い人中(Philtrum,Narrow)
定義
上口唇の朱色境界の直上で計測される人中隆起間の距離が平均の 2 SD 以下の状態(客観的)(図 51)。あるいは,その距離が明らかに小さい状態(主観的)。
図 51 狭い人中
・Philtrum,prominent:Philtrum,deepを参照

短い人中(Philtrum,Short)
定義
鼻底と上口唇の粘膜皮膚境界中央との距離が,平均の 2 SD 以下である状態(客観的)(図 52)。あるいは,この距離が明らかに減った状態(主観的)。
コメント
鼻柱は通常,鼻底に付着している。下方に付着した鼻柱(low insertion of colu-mella)だと人中は短くなるが,これらは区別して記載する。鼻柱の付着部を人中の上限として使うと,偽の短縮となってしまうであろう。外側にめくれ上がった上口唇(everted upper lip)はしばしば主観的に短い人中とみなされるが,これらは区別して記載する。
図 52 短い人中
・Philtrum,simple:Philtrum,smoothを参照

平坦な人中(Philtrum,Smooth)
定義
平らな皮膚表面で,鼻底と上口唇の朱色境界の間の上口唇中央に隆起構造がない状態(主観的)(図 53)。
コメント
この所見には,まったく人中隆起がない状態から,いくらか隆起している状態まで,スペクトラムがある。滑らかな人中の度合いについての正常値が利用できる[Queisser-Luft ら, 2001]。胎児性アルコール症候群の評価[Astley と Clarren,1995]で使われる人中の滑らかさの段階づけは,わかりやすくなっている(図 54)。この所見は,顔の表情によって大きく影響されるため,通常の状態で評価されるよう,注意する。平坦な人中は長い人中(long philrtum)と関係がある場合がある。しかし,この 2 つの所見は区別して記載する。
同義語
Philtrum,flat
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Philtrum,indistinct;Philtrum,simple
図 53 平坦な人中
下段の写真の表情では,滑らかな人中と誤解を与えるが,中央の写真の同一人物のニュートラルな表情では,人中ははっきりしている。
図 54 人中の滑らかさの分類上段は白人,下段はアフリカ系アメリカ人[ Astley と Clarren,1995]。グレード 4 と 5 が滑らかとみなされる。

テント状の人中(Philtrum,Tented)
定義
鼻柱を頂点とし,三角形に人中の軟組がテント状に突出した状態(主観的)(図 55)。
コメント
テント状の人中は,平坦な人中(smooth philtrum)と合併することがあるが,区別する。
図 55 テント状の人中
・Philtrum,wide:Philtrum,broadを参照