後頭蓋窩、特に小脳橋角部に発生した脳腫瘍
の手術は、多数の脳神経と腫瘍が
接触あるいは癒着していることから、脳神経外科の中でも最も難易度の高い手術
の1つです。この部分に到達するための手術アプローチは多数あります (図1参照)。
各手術法の特徴の解説はこちらです。

しかし日本の現状では、脳神経外科では脳神経外科的アプローチ (後頭蓋窩法・
拡大中頭蓋窩法)のみ、耳鼻咽喉科では耳鼻科的アプローチ (経迷路法・後迷路法・
中頭蓋窩法)のみが選択され、腫瘍を手術するチームによっておのずと手術アプローチ
が決まることがほとんどです。すなわち、
手術を行う科によって自動的に手術方法が
限定されてしまっているのが現状
といって差し支えないと思います。

東京警察病院脳神経外科では、
脳神経外科的アプローチ・耳鼻咽喉科的アプローチの
どちらも得意としており、十分な経験を有しています。このために、患者さんの腫瘍の
腫瘍の種類や発生部位によって最適な手術アプローチを使い分けていることが特徴
です。
このように、術者側の要素で手術方法が限定されることなく、患者さんの病状に最も
そぐう方法を適用して良好な手術成績をおさめている施設は全国でも限られています。
当科の手術成績はこちらです。

我々の手術アプローチの選択の基準は以下の通りですが、さらに患者さん個々の条件
によって、さらに細かく検討してアプローチを決定しております。

     
                            
図 1 




                                                                                         
  東京医大 脳神経外科における
                            

        
      聴神経腫瘍 (小脳橋角部腫瘍)・頭蓋底腫瘍に
           対する手術アプローチの使い分け





頸静脈孔神経鞘腫・舌下神経鞘腫
   (下位脳神経から発生する神経鞘腫)の場合

         (詳しくは頸静脈孔神経鞘腫のページ舌下神経鞘腫のページをご参照ください)、、

   1) 頸静脈孔という、下位脳神経群 (舌咽神経・迷走神経・副神経)と内頸静脈が通過する
     部位に腫瘍が存在するため、この部分の操作が必須
   2) その穴を通って、頭蓋の内外にダンベルのようにまたがっていることも多く、その場合には
     頭蓋内だけでなく、頭蓋外も操作する必要があること
   3) 難聴が出現したり、進行してきている場合には、
聴力温存を考慮する
  
  という特徴があり、基本的には後頭蓋窩法を中心に場合によっては後迷路法を追加します。


          

        
66dB 17dB

     
大きな頸静脈孔神経鞘腫の例で、腫瘍は頭蓋内だけでなく、頭蓋外にまで進展しており、     
     66dB (デシベル)の難聴を認めましたが、後頭蓋窩法+後迷路法により頭蓋外まで全摘を
     行い、術後の聴力は17dBまで改善しました。

         


聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍関連のメニュー

   「聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍の説明」
        聴神経腫瘍の他、顔面神経鞘腫・三叉神経鞘腫・頸静脈孔神経鞘腫などの
       小脳橋角部腫瘍について解説。


   「聴神経腫瘍の手術適応」
   
    東京医大 脳神経外科の手術適応。 

   「聴神経腫瘍、小脳橋角部腫瘍の手術方法の特徴と解説」
      
聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍に対する種々の手術アプローチの利点と欠点を
       はじめとして特徴を解説。


    「聴神経腫瘍、小脳橋角部腫瘍の手術方法の使い分け
        聴神経腫瘍に対する種々の手術アプローチの使い分け方、小脳橋角部腫瘍の
       種類に合った手術方法につき解説。


   「聴神経腫瘍手術の実際」
       患者さんが手術のイメージを理解しやすいよう、イラストで説明

   
「聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍のモニタリング」
     
  聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍を手術する際に用いられる術中神経モニタリングにつき解説。

    
「聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍・頭蓋底腫瘍の診療実績」
      
 東京医大 脳神経外科 河野の診療実績。

    「聴神経腫瘍の手術成績」
      
 東京医大 脳神経外科 河野道宏の手術成績。

    「初診・セカンドオピニオン外来スケジュール」

    テレビ東京の番組で
「神の手」福島孝徳教授に信頼される医師の1人に挙げられました。
       TV内容

    
「神の手」福島孝徳教授とのセミナー
       リーフレット





   ご質問等ございましたらお気軽にご相談ください。
 。。










         

       
    業 績   mkouno-nsu@umin.ac.jp    


           スタッフ  






三叉神経鞘腫 (三叉神経から発生する神経鞘腫)の場合は、

   1) メッケル腔という部位に腫瘍が存在していることが多く、この部分の操作が必須
   2) 小脳橋角部に腫瘍が進展している場合に後頭蓋窩へも到達することが必要
  
  という特徴があり、これを同時に可能とするためには拡大中頭蓋窩法が適しています
    (図4参照)。



          

        
              メッケル腔から小脳橋角部に進展する三叉神経鞘腫に対して、
              拡大中頭蓋窩法を用いて全摘した患者さんの例。
              オレンジ矢印部分の錐体骨を削って進入しています。
                                  


顔面神経鞘腫 (顔面神経から発生する神経鞘腫)の場合

 
     (詳しくは顔面神経鞘腫のページをご参照ください)

   1) 顔面神経膝神経節という部位に腫瘍がほぼ必ず存在するため、
     この部分の操作が必須
   2) 顔面神経麻痺が高度であればきちんと腫瘍を切り取って、

     
他の神経を用いて顔面神経再建術を併せて行う必要があること
   3) 難聴が出現したり、進行してきている場合には、
聴力温存も考慮
     しなければならない
  
  という特徴があり、これを同時に可能とするためには
中頭蓋窩法が適しています
  (図5参照)。


   

         
聴神経腫瘍


        














         
                              図 3

               
            海綿静脈洞に進展するテント髄膜腫に対して、海綿静脈洞 (赤矢印)
            ギリギリの切除を行ったケース。拡大中頭蓋窩法を用いています。









聴神経腫瘍
TOP>>Menu>>手術アプローチの使い分け


頭蓋底髄膜腫の場合
は、
    (詳しくは頭蓋底髄膜腫のページをご参照ください)

   1) 腫瘍の大きさと発生部位
   2) 海綿静脈洞やメッケル腔という特殊な部位に進展が見られるかどうか
   3) 患者さん個々の静脈系の発達具合の特徴

  などを参考にして患者さんごとに最も適した手術アプローチを選択して用いています
   (図3参照)。


聴神経腫瘍 (前庭神経から発生する神経鞘腫)の場合


 * まずはじめに当科の聴神経腫瘍に対する手術適応をお知りになりたい方は
   こちらをご参照ください。

 
  1) 聴力温存を目指す場合とそうでない場合
   2) 腫瘍の大きさや内耳道への進展具合
   3) 患者さん個々の静脈系の発達具合の特徴

  などを参考にして患者さんごとに最も適した手術アプローチを選択して用いています
   (図2参照)。







            

        

        

                              図 2

   
     聴力保存を企図しない患者さんの聴神経腫瘍に対して、経迷路法 (赤矢印)にて全摘したケース

聴神経腫瘍の手術アプローチの使い分け