聴神経腫瘍




                                                                                         
  東京警察病院 脳神経外科における
                            

        
          聴神経腫瘍の手術適応

  聴神経腫瘍の治療に、現在のところ、こうでなければならないといった決めごとや
ガイドラインはありません。
各施設、各医師によって、治療方針はさまざまなのが現状です。
その最も大きな要因と考えられるのが、
聴神経腫瘍の手術が難しく、術者によって全く成績に
差が出てしまう
ことです。したがって、良好な手術成績をおさめている施設では自信をもって
手術をお勧めするでしょうし、また、患者さんの紹介が集まりますが、そうでない場合には
経過観察や他の治療法 (放射線治療)を勧める傾向が強いようです。
  手術をしなくて済むという利点が強調されがちな放射線治療 (ガンマナイフ・サイバーナイフ・
定位的リニアック)についても、十分な歴史を持っておらず、また、照射線量も近年さらに減量
しているために、今後本当に現在の線量で将来にわたって腫瘍増殖をコントロールできるのか
については誰も知り得ないことです。
  手術をすれば、ほぼ腫瘍の再発を恐れることなく日常生活をおくれることがほとんどですが、
放射線治療では腫瘍はなくなりません。したがって、50歳未満までの患者さんには一部の例外を
除いて基本的には放射線治療はおすすめしていません。


  
さて、当科における聴神経腫瘍の手術適応についてお示ししますが、まずは、ひとえに
聴神経腫瘍と言っても、大きさだけをとってみても内耳道内に限局する小さなものから脳幹を
圧迫して生命を脅かす巨大なものまで全く異なるジャンルを総称しており、これに聴力の状態、
年齢などの要素を考慮しますと、お一人お一人、治療方針が違ってきて不思議ではないことが
わかると思います。
  当科では、まず、以下のケースを手術適応からはずしています。
 ・ 偶然発見された、全く聴力障害のない聴神経腫瘍
 ・ 70歳以上の患者さんの聴神経腫瘍 (ただし、脳幹の圧迫が著明な腫瘍を除く)
 ・ 患者さんが、手術を希望しない場合や全身麻酔に支障のある疾病をお持ちの場合

  次に、上記に該当しない場合に患者さんについての考え方についてですが、
まずは、当科が考える「聴神経腫瘍の手術の3つのジャンル」につきご理解頂きます。


 
@ ハイクラスの手術
      
小さな、有効聴力の保たれている聴神経腫瘍に対して、
         
全摘+顔面機能温存+聴力温存 を目指すことのできる手術。
      
       下のような内耳道内腫瘍や小さめの聴神経腫瘍が対象となります。


              


 
A 中クラスの手術
      
脳幹に達するぐらいの中等度の大きさの聴神経腫瘍に対して、
         
全摘ないしほぼ全摘+顔面機能温存 を目指す手術

       下のように脳幹に接触したり、脳幹を軽度圧迫する、中ぐらいの
       大きさの聴神経腫瘍が対象となります。


               


 
B 生命を救う手術
      
脳幹を強く圧迫する大きな聴神経腫瘍に対して、
         
ほぼ全摘ないし部分摘出+顔面機能温存 を目指す手術

       下のように脳幹を著明に圧迫偏位させる大きな聴神経腫瘍が対象です。


           


 
以上の「3つの手術ジャンル」をご理解頂ければ、次の考え方も納得頂けると思います。

 ・ 小さい腫瘍で、すでに聴力が廃絶している場合には、その時点では手術適応はなく、
   経過観察を行い、増大傾向が見られれば手術または放射線治療をお勧めする。
 ・ 70歳前の患者さんですでに中等度の大きさを有する聴神経腫瘍が発見された場合は、
   全身麻酔のリスクが心配される時期 (75歳以上)になって「生命を救うための手術」と
   ならないよう、経過観察よりは手術をお勧めする。
 ・ 20-30歳代のお若い患者さんの場合には、一生のうちどこかの時点で治療を要する確率
   が高いため、全く症状のない小さな聴神経腫瘍か、すでに有効聴力を失っている患者さん
   を除いては、基本的には放射線治療よりは手術を勧める。
   しかし、
腫瘍が小さくて有効聴力が残っていたとしても、50歳代以降の患者さんには、
   まずは経過観察を勧めており、腫瘍の増大のスピードがある程度あることが確認された
   場合には手術あるいは放射線治療をお勧めする
ことがあります。
   基本的には、小さい聴神経腫瘍は「手術の絶対適応ではない」ため、患者さんが将来の
   ことまで含めてよく考えた結果、自ら望まれて手術を希望された場合に行っています。

   反対に、脳幹を圧迫している中等度から大きな聴神経腫瘍は、基本的には「手術の絶対適応」
   です。3cmを越えるような腫瘍に関しては、いたづらに経過を見ていても特に利益はなく、
   きちんと切り取ることが理想的です。


  最後に、当科の聴神経腫瘍に対する最も基本的な考え方について御紹介いたします。
  当科の手術成績はこちらをご参照下さい。


当科の最も基本的な考え方
  
  最も理想的な状態とは・・・腫瘍がなく、症状もないこと。

   ・ 腫瘍がない状態を作り出すためには・・・手術で全摘すること。

        手術で全摘するためには・・・腫瘍が小さい方が確率が高くなる

   ・ 症状がない状態を得るためには・・・手術前の症状が極力軽いことが前提。
            また、腫瘍が小さい方が手術による機能保存の確率が高くなる。 

        手術前の症状が軽いためには・・・早期発見、また発見されてから手術までに
                             症状の悪化がないことが条件。

        腫瘍が小さいためには・・・早期発見、早期治療



 ということで、最も理想的な状態を作り出すためには、基本的には症状が軽いうちの小さな
聴神経腫瘍を手術によって切り取ることが必要と考えています。しかし、年齢や増大のしかたや
患者さんのおかれている社会的・生活的環境、患者さんご自身やご家族の考え方などによって、
画一的に論じることなどはできず、お一人お一人について、最も理想的な治療を考えることが
必要なのではないかと考えています。

 聴神経腫瘍と診断された患者さんが、このページを御覧になって、
この腫瘍に対しては、さまざま
な要素が複雑にからみあって治療方針が各施設・各医師によって全く異なることをご理解頂く

ことを切に願います。




    聴神経腫瘍に関する詳細な説明についてはこちらをご参照ください。報道関係はこちらです。



    東京警察病院脳神経外科部長・脳卒中センター長 河野道宏のページへ





聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍関連のメニュー


   「聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍の説明」
        聴神経腫瘍の他、顔面神経鞘腫・三叉神経鞘腫・頸静脈孔神経鞘腫などの
       小脳橋角部腫瘍について解説。


   「聴神経腫瘍の手術適応」
   
    東京警察病院 脳神経外科の手術適応。 

   「聴神経腫瘍、小脳橋角部腫瘍の手術方法の特徴と解説」
      
聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍に対する種々の手術アプローチの利点と欠点を
       はじめとして特徴を解説。


    「聴神経腫瘍、小脳橋角部腫瘍の手術方法の使い分け
        聴神経腫瘍に対する種々の手術アプローチの使い分け方、小脳橋角部腫瘍の
       種類に合った手術方法につき解説。


   「聴神経腫瘍手術の実際」
       患者さんが手術のイメージを理解しやすいよう、イラストで説明

   
「聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍のモニタリング」
     
  聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍を手術する際に用いられる術中神経モニタリングにつき解説。

    
「聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍・頭蓋底腫瘍の診療実績」
      
 東京警察病院 脳神経外科の2年間の診療実績。

    「聴神経腫瘍の手術成績」
      
 東京警察病院 脳神経外科 河野道宏の手術成績。

    「初診・セカンドオピニオン外来スケジュール」

    テレビ東京の番組で
「神の手」福島孝徳教授に信頼される医師の1人に挙げられました。
       TV内容

    「神の手」福島孝徳教授とのセミナー


       リーフレット



   ご質問等ございましたらお気軽にご相談ください。








                 

                         
   


TOP>>Menu>>手術適応
聴神経腫瘍に関する詳細な説明についてはこちらをご参照ください。報道関係はこちらです。
 東京警察病院脳神経外科部長・脳卒中センター長 河野道宏のページへ