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頭蓋底髄膜腫 ( ずがいていずいまくしゅ )の手術について
頭蓋底髄膜腫 (skull base meningioma)とは

 小脳橋角部、斜台、錐体斜台部、錐体部、頭蓋頸椎移行部、頸静脈孔部、テントなどに発生する
 髄膜腫を指します。
 後頭蓋窩以外では、鞍結節部、蝶形骨縁、嗅窩部なども頭蓋底髄膜腫に分類されます。

 
この中で最も難しいのは
錐体斜台部髄膜腫であり、下記の理由で手術は超専門性を要します

 
・錐体斜台部は、頭蓋のほぼ中心にあり、頭蓋底の手術アプローチが必要となります。
  頭蓋底の手術アプローチはどの施設でも行えるものではなく、むしろ、日常的に
  用いている施設は全国的にも一握りの施設ではないかと推測されます。

 ・錐体斜台部髄膜腫は多数の脳神経が腫瘍にからみついており、神経機能温存のために
  術中の脳神経モニタリングが必須です。
  したがって、普段からこの部位の付近を手術していてモニタリングを当たり前に
  行う必要性があります。

 ・髄膜腫は通常は血流に富んでおり、手術に際して出血をコントロールするために、
  可能な限り手術前に血管内治療による腫瘍の栄養血管の塞栓術を行っておく必要性が
  あります。これにも専門性が要求されます。

 錐体斜台部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)の手術に要求される専門性を総括しますと、
  頭蓋底アプローチに熟練しており豊富な経験を有すること、術中神経モニタリングを
  普段から用いていて十分な経験があること、血管内治療がチーム内で行えることが、
  要求される必須事項です。


頭蓋頸椎移行部髄膜腫も錐体斜台部髄膜腫と同様、手術は専門性を要します。
 

河野の手術経験は2022年3月の時点で248例で、国内で群を抜いている症例数です。

[手術のイラスト]  左側

  腫瘍摘出前
  「TUMOR」とある灰色の部分が腫瘍です。腫瘍は頭蓋頸椎移行部に存在します。

   


                     腫瘍摘出後 腫瘍は頭蓋内は全摘し、頭蓋外の椎骨動脈の周囲にわずかに
                              残存させてほぼ全摘できています。


                 





◎舌麻痺で発症した頭蓋底髄膜腫の患者さんの例
        (頭蓋頸椎移行部腫瘍) 手術前
   

 手術後    

       腫瘍は頭蓋底アプローチを用いて、椎骨動脈に癒着している部分をわずかに残してほぼ全摘しました。
       6年を経過しますが、全く腫瘍の再発は見られません。



小脳橋角部髄膜腫

 髄膜腫の中でも、小脳橋角部にできる髄膜腫は、聴力障害・顔面神経麻痺・複視・三叉神経症状・嚥下障害・声嗄れなどの
 神経症状や、歩行障害などの脳幹症状、水頭症を合併した場合には頭痛や嘔吐・意識障害などを呈します。

 一般的には、手術の合併症として、聴力喪失や顔面神経麻痺・複視・三叉神経症状・嚥下障害・声嗄れなどの
 などが説明され、特に術前から聴力が悪い場合には、聴力はあきらめてくださいと言われることが多いようです。

 しかし、当科では、過去の実績から、小脳橋角部の髄膜腫であれば、術後に聴力が改善することをしばしば経験すること
 から、むしろ、聴力をあきらめるどころか手術で改善させようという意図をもって手術をしております。

 当科で手術を行う小脳橋角部髄膜腫は、基本的には若い患者さんで大きな腫瘍ですので、手術の難易度としては、
 かなり高いものばかりですが、以下に挙げる当科の特徴によって、術前に聴力障害のある患者さんの実に38%の
 患者さんで聴力改善、56%は不変、6%で悪化という成績となっております。

 
当科の手術の特徴 
   ・ 小脳橋角部腫瘍を毎週2-3件ずつ手術しており、この部位の手術件数が飛び抜けて多い。
   ・ 術中の厳重な神経モニタリングを徹底して行っており、この体制が完備している。
   ・ あらゆる手術アプローチを普段から使い分けており、ことに頭蓋底髄膜腫に対しては一つのアプローチだけでは
     対応できないことも多い。 
   ・ 血管内治療チームを有しており、手術前の塞栓術を必要に応じて行っている。


このように、小脳橋角部の髄膜腫・錐体斜台部髄膜腫・頭蓋頸椎移行部髄膜腫などの頭蓋底髄膜腫に対しては、
上に挙げたこれらのどの要素が欠けても良い結果は望めません。

特に聴力を手術で悪化させないために、また、むしろ改善させるために、当科では手術のアプローチを以下に示すように
使い分けており、手術後に悪化した例がわずかに6%という成績を出しております(2010年6月の日本聴神経腫瘍研究会で発表)。

注)
Lateral suboccipital approachとありますのは、脳神経外科で通常用いられるもので、特殊なアプローチではありません。
Anterior transpetrosal approachは特殊なアプローチで、限られた施設でのみ行われます。
Combined petrosal approachは頭蓋底外科の究極とも言える極めて特殊なアプローチで、難度が極めて高いために、
      普段から用いている施設は全国的にも10施設に満たず、極めて限られた施設に限定されます。

また、VII・VIIIとありますのは、VIIが第7脳神経である顔面神経、VIIIが第8脳神経である聴神経(内耳神経)を指します。
これら顔面神経と聴神経は多くの場合は一緒に走行していますので、VII・VIIIとまとめて表記してあります。





[Lateral suboccipital approachを用いる場合]



以下、
赤い○印で囲んだ部分は、髄膜腫が内耳道内に進展した部分で、手術後にはその部分がきれいに
切除されていることが示してあります。


            PTA(純音聴力)はわずかな改善ですが、SDS(語音明瞭度)は著明に改善しています。



            PTA(純音聴力)は改善し、SDS(語音明瞭度)も著明に改善しています。





               最後のケースは、術前に右聴力はスケールアウト(聾・ろう)となっていましたが、
               手術の時に改善させることを狙って、決してあきらめずに聴神経を丁寧に腫瘍から
               剥離して保存しました。その結果、術後に有効聴力まで改善しました。
               新潟から来られた患者さんでしたが、大変喜んでくれました。


[Anterior transpetrosal approachを用いる場合]







[Combined petrosal approachを用いる場合]

















以上、いずれも難しいケースの術前と術後のMRIを並べて提示しましたが、いずれもきちんと内耳道内に
進展している部分(赤丸で囲んである部分)もきれいに切除してあることがわかると思います。

頭蓋底髄膜腫でない場合には、それほど専門性を要することはありませんが、頭蓋底・錐体斜台部・小脳橋角部・
頭蓋頸椎移行部の髄膜腫は、上のような切除を行うためには超専門性を要します。

お気軽にご相談ください。

                                  東京医科大学 脳神経外科  河野道宏







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