ICD-10やICIDHとICFの関係

ICIDHとICF

ICIDHの作成時(1980年)には英語で、日本語の「障害」にあたる包括的な言葉がなかったので、それをImpairment(機能障害), Disability(能力障害), Handicap(社会的不利)という3つの言葉で表現していました。

しかし、これらの否定的な部分だけの「障害」定義では限界があることもはっきりしてきました。例えば:

そこで、ICFでは、発想を転換して、生理的・心理的機能、解剖学的構造、いろいろな活動内容といった、全ての人に共通するものを基準とすることにしました。つまり、普遍的な人間の様々な生命・生活に関する機能の分類を作るという全く違った発想の分類をつくることになりました。そして、これをFunctioningと呼ぶことにしました。これによって:

その中で、これまでICIDHで扱われていた領域を再定義しました。つまり、それは、Functioningの否定的側面だけを扱っていたということです。そして、Impairment(機能障害), Disability(能力障害), Handicap(社会的不利)の全てをまとめて、当初は「Disablement」と呼ぶようになり、それが最終的により自然な「Disability」と呼び方に落ち着きました。

なお、FunctioningにもDisabilityにも、ICIDHと同様に3つのレベルがあります。それらは次の3つのレベルです。

ICFとICD(国際疾病分類)

ICFが、人の機能の普遍的な分類となったことにより、WHO(世界保健機関)の中でもその重要性が高まりました。つまり、次のような問題意識に対して、ICFがニーズを満たすものとなったのです。

このような応用可能性の広がりに伴って、2000年10月になって、この分類がHealthの分類でもある、という位置づけになりました。これにより、それまで、International Classification of Functioning and Disabilityという名称で落ち着きかけていたものが、最後の最後で、International Classification of Functioning, Disability and Healthに最終決定されたのです。

おそらく、WHOの中では、このような動きは前からあったのでしょうか、ICIDHの改定に関わってきた人たちにすると、突然のことで、「健康の分類」という観点での検討は不十分という印象です。特に、環境因子の分類は、障害者問題に特化したものであることは否めません。

WHOの中では、ICD-10とICFは2大分類という対等な分類としての位置づけであり、担当部署も同じ、国際的な会議も一括して扱うようになっています。米国やカナダの様子を見ても、健康分類として保健統計に使う意図での検討が進められています。しかし、わが国では、まだまだ、ICFは依然として障害福祉の領域のものとしか扱われていないようです。

ICD-10が150年の歴史で10版を重ねたものであるのに対して、ICFはICIDHから数えても20年で第2版です。しかも、健康分類としての検討はほとんどなされていない、というものなので、限界は確かにありますが、これは21世紀の健康問題を考えるにあたって不可欠のものになるのは確実と思われます。


関連したメモ

パワーポイント

就労支援関係者向けにICFの説明をした時のスライドです。ICFの概略については、就労支援とは関係なく、ご覧いただけると思います。


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Yuichiro Haruna
yharuna-tky@umin.ac.jp