概要

平成24年度から、厚生労働省の「革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業」が開始されました。この事業では、革新的な医薬品や医療機器などの実用化に向けて、その審査に必要なガイドラインを早期に作成します。

またそのような審査を行う(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)と大学の間で人材交流を行うことにより、最先端技術についての安全性と有効性を評価できる人材を育成します。

アルツハイマー病治療薬の開発促進

東京大学医学部附属病院では「アルツハイマー病治療薬の臨床評価基準策定のためのレギュラトリーサイエンス研究」として、PMDAとの密接な連携のもと、以下の研究を進めています。

  1. バイオマーカー(用語解説)を活用したアルツハイマー病治療薬の臨床評価基準策定のための調査研究
  2. モデリング&シミュレーション(用語解説)を活用したアルツハイマー病の臨床効果予測モデルの構築のための研究

今後、J-ADNI(Japanese Alzheimer’s Disese Neuroimaging Initiative)の研究などで蓄積されつつあるデータを有効に活用して、アルツハイマー病治療薬の臨床評価のあり方について国際的に提言し、わが国における新規治療薬の開発を促進することを目指しています。

研究成果

この事業の中間的な成果として、現時点でのアルツハイマー病治療薬の臨床評価および臨床開発に関する考え方・留意すべき事項と今後の課題をとりまとめ、推進室およびPMDAのホームページで公開するとともに、国内外で発表いたしました。

1.Alzheimer's Association International Conference 2014(2014年7月)

2.第55回日本神経学会学術大会(2014年5月)

3.Alzheimer's Association Research Roundtable(2014年5月)

4.American Society for Clinical Pharmacology and Therapeutics 2014 Annual Meeting(2014年3月)

5.The 16th Asia Pacific Regional Conference of Alzheimer’s Disease International(2013年12月)

6.第34回日本臨床薬理学会学術総会(2013年12月)

7.第32回日本認知症学会学術集会(2013年11月)

用語解説

バイオマーカー

疾患の診断や進行度、薬剤の治療効果などを反映する指標であり、たんぱく質・ペプチドなどの分子、血圧などの生理学的指標、遺伝子情報、X線画像などが含まれる。アルツハイマー病のバイオマーカーとしては、脳脊髄液中のAβ・タウ、PETイメージング、MRI画像などがある。

モデリング&シミュレーション

薬物動態、薬力学、バイオマーカー、臨床効果等の関係を数理的にモデル化する。モデルを用いて臨床試験のシミュレーションを行い、適切な臨床試験デザインの検討や医薬品開発における意思決定に利用する。