看護理工学会 利益相反管理綱領
2021年 8月
看護理工学会
利益相反委員会
はじめに
看護理工学会は,看護学,医学,工学・理学とその周辺領域において,それぞれの専門領域を深めつつ互いに協調連携することで,新たな学術分野,ケアに貢献する新技術の創成,それらにもとづく社会への貢献を目的とし,その目的を達するための事業を行っている.
- 学会・学術集会、講演会、研究会、講習会、展示会、見学会等の開催
- 機関誌、その他刊行物の発行
- 広くケアの発展向上および看護理工学の体系化に関わる調査、研究及びその褒賞
- 学術・技術の発展に向けた人材育成
- 社会貢献に向けた啓蒙普及の推進
- 機器の規格化・標準化ならびに資格制度に関する事業
- 内外の関連学術団体との連絡及び提携
- 前各号に掲げる事業に附帯又は関連する事業
上記のような看護理工学会における活動は,しばしば企業や営利を目的とする団体との産学連携により行われる.また看護学と理工学の相互の連携により活動が推進される場合も多い.このようなとき,研究 ・教育・開発を促進する組織としての社会的責務と,連携に伴い生じる個人の利益が衝突・相反する状態が発生しうる.すなわち,経済的な関係(資金供与など)をはじめとして,政治上あるいは宗教上の信念,所属組織との関わり,学術的傾倒,人間関係等について,公正かつ適正な判断が損なわれる,あるいは損なわれるのではないかと第三者から懸念されかねない事態,すなわちConflict Of Interest (COI)が発生することがあり得る.これら利害関係により関わる人々の人権や生命が危険にさらされる可能性がある.また活動方法,評価がゆがめられ,公正な受け止めがなされないことも起こる.
このようなことを回避するため,看護理工学会の会員は,正確性・公平性が脅かされる場合あるいは疑われる可能性がある場合には,経済的な関係(資金供与など),政治上あるいは宗教上の信念,所属組織との関わり,学術的傾倒,人間関係等について必要な情報を開示する.Conflict Of Interest (COI)が会員に生じること自体に問題があるのではなく,学会や所属機関がそれらを適切に観測,管理することにより学会活動の質と信頼性を確保し,透明性と先進性を担保した産学連携・分野間連携を推進していくことが重要である.
本綱領の目的は、学会活動において適切な利益相反管理がなされるよう,推奨される利益相反管理指針と運用のために利用可能な最低限の様式等を示すことである.作成に際しては,2019年から2021年にわたり,看護理工学会の利益相反委員会における会議やメールで議論し,倫理委員会,編集委員会,会則検討委員会と協調して検討したうえで,必要最低限の指針と簡約的な手続様式を提示した.
本綱領で示す指針と手続きは,毎年度,利益相反委員会にて必要な見直しを行うこととする.
看護理工学会利益相反管理指針
2021-08-31
1. 対象となる活動および対象者看護理工学会の会員が行う活動のうち,企業や営利を目的とする団体が関与する活動をはじめとして,あらゆる学会活動が対象となりうる.特に学会で主催するセミナーや講習会,学術集会等で研究成果を発表する際,学会誌へ投稿する際には,COI 申告書(あるいは相応する記述)の提出および会員への開示を義務付ける.
- 学会理事・監事・各種委員会委員・学術集会会長・学術集会実行委員長およびセミナー責任者等
- 学術集会・講習会・セミナー等の発表者・共同演者・座長,学術集会プログラム委員長,および論文投稿者・共著者,学会誌原稿筆者,ニュースレター原稿の筆者
- その他の学会活動,学会に関連する連携活動等を担当する者
学会利益相反委員会委員長は,学会の理事・監事および各種委員会委員等に対して,企業,非営利法人組織,財団法人等とのConflict Of Interest (COI)に関する申告書の利益相反委員会への提出を義務付ける.また学会誌への論文や原稿の投稿を行う者は投稿規定に従い所定の個所にCOI状態について記載する.さらに,学術集会や講習会,セミナーで発表する者は,学術集会等の定めるところに基づき演題に関連するCOI状態を開示する.
- 学会の理事・監事および各種委員会委員等は,就任時および毎年学会年度開始時にCOI申告書を利益相反委員会に提出する.
- 過去5年以内に関連する企業あるいは営利を目的とする団体に所属した経歴がある場合,利益相反委員会委員長に COI 申告書にてその時期,組織名,役職名等を報告することを義務付ける.
- 学術集会会長,学術集会実行委員長等は,就任時に COI 申告書を利益相反委員会に提出する.
- 利益相反委員会はCOI申告書を学会事務局にて5年間保管する.
利益相反に関して疑義が生じた場合,例えば第三者から利益相反委員会へ疑義が提出されたときは,利益相反委員会委員長は利益相反委員会をすみやかに招集し,疑義が生じている当該会員らに対して,十分なヒアリング等を行って事実確認を行い,理事会へ結果を申述する.理事会は,申述書をもとに対応を審議し,当該会員へ通知する.当該会員が説明責任を果たせない場合には,演題発表差し止め,論文撤回を含め,当該活動の停止等を検討する.
参考資料
- 厚生労働省:臨床研究法における利益相反管理ガイダンス (Webアクセス; 2021-08-13)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000196146.pdf - 日本看護系学会協議会 (JANA) CO I管理ガイドライン (ver. 1.0) (Webアクセス; 2021-08-13)
https://www.jana-office.com/news/pdf/news20210324_2.pdf - 医学系研究の利益相反(COI)に関する共通指針 (Webアクセス; 2021-08-13)
https://www.naika.or.jp/jsim_wp/wp-content/uploads/2020/04/coi_kaitei2020_4.pdf