手術紹介

脳出血

当院では年間脳出血症例を110〜120例ほど治療しています。脳出血は神経症状と出血量の大きさなどで手術適応が決められ、当院では全体の4割弱の患者様が外科治療を受けています。

脳出血とは

脳出血(あるいは脳内出血)は突然脳実質を破壊し脳内を出血成分で占拠する疾患であり、脳卒中全体からみれば約2割弱の頻度で出現します。脳出血の原因としては高血圧症が基礎にあることが多く、また最近では抗血栓薬などを内服していることがあり、その場合の脳出血は大きくなりやすく予後が悪いことが知られています。治療法としては、機能予後や意識障害の改善が見込まれれば外科的治療法が選択される場合が多く、軽症例や重篤例については内科的治療法が選択されます。

発生部位とその症状


脳出血の発生する部位によってもおこり得る症状は異なります。高血圧性脳出血が高頻度に出現しうる部位は、被殻、視床、皮質下、小脳、脳幹などが知られており、当施設での脳出血症例内訳もそれに矛盾しません。

脳出血の治療

内視鏡手術症例 頭部CT
術前(上段)、術翌日(中段)、退院時(下段)

脳出血急性期は手術による血腫除去や、降圧剤による血圧のコントロールが行われます。血小板や血液凝固系の異常を合併し出血傾向が認められる場合、血小板や新鮮凍結血漿などの血液製剤を投与したり、大きな脳出血であれば頭蓋内圧亢進の軽減作用目的で高張グリセロールの投与を行ったりもします。
中等度の重症度で、機能予後や意識障害の改善が見込まれれば外科的治療法が選択される場合が多く、軽症例や重篤例(深昏睡例)は内科的治療法が選択されます。しかしその線引きは議論の余地がいまだ多く、外科治療か内科治療かの選択については、患者さまのご年齢や発症前の日常生活、脳卒中の既往、凝固能(抗血栓薬内服状況)、患者さまや御家族のご意向など、ご本人様を取り巻く全体を考えた上で我々は治療を行っています。

当院では内視鏡による血腫除去も行っております。視床出血や尾状核出血、脳室内出血などで脳室内への血腫穿破が多く圧迫が強い場合に脳室内の血腫を除去し、閉塞性水頭症を改善させることができます。抗血栓薬を内服している場合などには止血が困難となるため開頭術が優先されますが、体への負担が少なく短時間で手術が可能であり良好な成績を上げています。

我々は24時間、脳出血急性期の対応をしており、外科治療および内科治療に取り組んでおります。破壊性病変である脳出血の性質から、助かっても重い後遺症が残ることもありますが、急性期を乗り越えれば脳内の血腫が消退し、正常脳への圧迫解除とリハビリテーションによる脳の可塑(かそ)性により、意識や神経機能の回復が得られる場合が多く見うけられます。急性期治療と早期からのリハビリテーションを行うことで、患者さまの生活自立度ができるだけ改善されるように最大限の診療を行っています。