手術紹介

当院では高度救命救急センターを併設しており、最重症の患者さんを24時間365日受け入れています。多摩地区最大の集中治療室ベッド数を持ち、他院からのご紹介も随時受け入れています。激しい交通事故、高所よりの転落事故、列車事故などのいわゆる高エネルギー外傷の方も多く、全身の外傷のうち急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折、びまん性軸索損傷などの頭部外傷に対しては主に脳神経外科で対応しています。また手術室も基本的に24時間対応可能で、頭部を含む複数箇所の外傷に対しても対応ができます。ここでは急性硬膜下血腫・急性硬膜外血腫について紹介します。

急性硬膜下血腫

急性硬膜下血腫とは

頭蓋骨のすぐ内側には頭蓋内で脳を覆っている強い膜があり、硬膜と呼びます。頭部への何らかの外力により、この硬膜の内側で脳の表面に出血が起こると、出血した血液が硬膜の直下で脳と硬膜の間にたまって短時間のうちに脳を圧迫します。これが急性硬膜下血腫です。

診断

頭部外傷の後に比較的短時間で意識障害が進行したり片側の手足の麻痺が出現したりする場合はすぐに頭部CTを行う必要があります。CTでは脳表を被う三日月型の白い影として写し出されます。出血は短時間で形成されて片側の大脳半球の表面を覆うように前後に広がります。

当院での治療の特徴

意識障害がないか軽く脳の圧迫がほとんどないような場合には経過観察を行うこともありますが、一般的には血腫により脳が強く圧迫されるために意識障害や麻痺は進行し、かつ急激な悪化をみることが多く、緊急手術が必要となります。

血腫を除去する方法として、当院では大きく開頭するか頭蓋骨に穴を1カ所のみあける穿頭かの二通りを選択しています。血腫を完全に除去し出血源を確認して止血するためには、開頭して血腫除去を行うのが確実です。しかし、重症の頭部外傷の場合は体全体へのストレスで血管内播種性凝固症候群といわれる血液の凝固障害が発生していることがあります。この場合は体への負担を少なくするために穿頭術にて血腫を排出させ、この凝固障害を輸血療法等で改善させてから開頭術に踏み切るといった治療も行っています。開頭術を行った際に脳の損傷による二次的な脳の脹れが予想される場合は、外減圧術といってあえて開頭した骨を元に戻さず、1〜2ヶ月後に状態が落ち着くのを待ってから骨を戻すという方法を取ります。当院では、術後は集中治療室にて二次的な脳損傷を最小限とするために体温調節療法や、脳浮腫のコントロールのために持続的な全身麻酔法等を積極的に行っております。しかしながら、重症の急性硬膜下血腫の場合は残念ながら緊急手術を行っても救命が困難な場合や重篤な後遺症が残ってしまうことも少なくありません。

急性硬膜外血腫

急性硬膜外血腫とは頭蓋骨と硬膜の間に出血が発生するもので(図)、頭部外傷によって脳を包む硬膜の表面の動脈が切れることがその原因となります。脳そのものの損傷を伴わない場合は血腫が大きくなるのに従って症状が進行するのに対し、伴う場合は受傷の直後から意識障害が出現します。

頭部レントゲンで骨折(図)を認め、頭部CTでは頭蓋骨直下に凸(とつ)レンズ形の白い影として写し出されます(図)。陥没骨折でも発生することがありますが、骨折を認めない例が10%程度存在するといわれています。

治療

血腫が脳を圧迫することで症状が進行性に悪化する場合には緊急に開頭血腫除去術を行います。頭蓋骨を外して血腫を除去し、出血源の止血を行います。出血の量が少なく症状がほどんどないような場合は手術は必要ありませんが、その後に出血が徐々に増えてきて手術が必要になる場合もあります。

早期に適切に診断し治療がなされればその後は良好な経過が期待できますので、頭部打撲後に頭痛や嘔吐が続く場合、意識障害が進行する場合、手足に力が入らない場合などは早めに脳神経外科外来を受診することをおすすめいたします。