[Synonyms:DNMT3A Overgrowth Syndrome]
Gene Reviews著者: Philip J Ostrowski, MD and Katrina Tatton-Brown, MD.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
GeneReviews最終更新日: 2022.6.30. 日本語訳最終更新日: 2024.1.12.
原文: Tatton-Brown-Rahman Syndrome
疾患の特徴
Tatton-Brown-Rahman症候群(TBRS)は、年齢・性別を合わせた平均値と比較したときの身長ないし頭囲が+2SD以上、肥満/体重過多、軽度から重度の知的障害、関節過可動性、筋緊張低下、行動/精神医学的問題、脊柱後側彎、癲癇発作を特徴とする過成長/知的障害症候群である。TBRS罹患者は、粗野さを伴う丸い顔、真横に走る太く低位の眉、上下的に細い眼瞼裂、目立つ上顎切歯といった微妙な形態異常を有する。顔の特徴は10歳代で最もはっきりわかるようになる。TBRSでは、急性骨髄性白血病の発生リスクが高まるようである。関連性はそれほど明らかなものではないものの、大動脈基部拡張や急性骨髄性白血病以外の血液腫瘍、固形腫瘍とも関連を有する可能性がある。
診断・検査
発端者におけるTBRSの診断は、これを示唆する所見があることに加え、分子遺伝学的検査でDNMT3Aの病的バリアントのヘテロ接合が確認されることで確定する。
臨床的マネジメント
症状に対する治療:
治療は支持療法が中心で、症状に合わせて進められる。発達遅滞/知的障害、行動/精神医学的問題、癲癇、関節過可動性、脊柱後側彎、睡眠時無呼吸、停留精巣、急性白血病などはすべて、標準的な方法で治療が行われる。
定期的追跡評価 :
成長パラメーター、発達の進行状況、行動、運動能力、自助能力に関するモニタリングを来院ごとに行う。新しい神経症状、癲癇発作、睡眠時無呼吸と血液悪性腫瘍の徴候・症候に関する評価を来院ごとに行う。造血器腫瘍をうかがわせる徴候・症候がみられる場合には、白血球分画を含む全血算その他の検査を、躊躇なく行う。TBRS罹患者の造血器腫瘍のスクリーニングに関する合意済のガイドラインは存在しない。
遺伝カウンセリング
TBRSは常染色体顕性遺伝疾患であるが、通常は、de novoの病的バリアントに起因して生じる。稀ながら、片親からのDNMT3A病的バリアントの継承に起因して生じた例もみられる。TBRS罹患者の子がDNMT3Aの病的バリアントを継承する可能性は50%である。家系内に存在するDNMT3Aの病的バリアントが特定されている場合は、出生前検査や着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
Tatton-Brown-Rahman症候群(TBRS)に関する合意済の臨床診断基準は、今のところ公表されていない。
本疾患を示唆する所見
次のような臨床所見、ならびに家族例を有する例については、TBRSを検討する必要がある。
臨床症候所見
上記2つに加えて、
家族歴
TBRSは通常、de novoの病的バリアントに起因して生じる。そのため、発端者の大多数は孤発例(すなわち、家系内で唯一の発生例)である。ただ、非罹患者であるモザイクの片親からの継承例[Xinら2017,Balciら2020]、ならびに罹患者である片親からの継承例を含む家族性の例[Lemireら2017]も複数報告されており、稀には常染色体顕性の形式での継承が生じることが示唆されている。
診断の確定
発端者におけるTBRSの診断は、これを示唆する所見がみられることに加え、分子遺伝学的検査でDNMT3Aに病的バリアント(likely pathogenicのバリアントを含む)が同定されることで確定する(表1参照)。
注:(1)アメリカ臨床遺伝ゲノム学会(ACMG)/分子病理学会(AMP)のバリアントの解釈に関するガイドラインによると、「pathogenic」のバリアントと「likely pathogenic」のバリアントとは臨床の場では同義であり、ともに診断に供しうるものであると同時に、臨床的な意思決定に使用しうるものとされている[Richardsら2015]。本セクションで「病的バリアント」と言うとき、それは、あらゆるlikely pathogenicまでを包含するものと理解されたい。
(2)DNMT3Aにヘテロ接合性の意義不明のバリアントが同定された場合、それは、本疾患の診断を確定するものでも否定するものでもない。
分子遺伝学的検査のアプローチとしては、表現型に合わせて、遺伝子標的型検査(単一遺伝子検査、マルチ遺伝子パネル)と網羅的ゲノム検査(エクソームアレイ,ゲノムシーケンシング)を組み合わせるやり方が考えられる。
遺伝子標的型検査の場合、臨床医の側で関与が疑われる遺伝子の目星をつけておく必要があるが、ゲノム検査の場合、その必要はない。「本疾患を示唆する所見」に記載した特徴的所見を有する例については遺伝子標的型検査(「方法1」参照)で診断がつくものと思われるが、TBRSの診断にまで思い至らない例については、ゲノム検査(「方法2」参照)で診断がなされることになろう。
方法1
表現型からTBRSが示唆されるようであれば、使用する分子遺伝学的検査のアプローチは、単一遺伝子検査、あるいはマルチ遺伝子パネルといったものになろう。
TBRSに特徴的な表現型や顔の特徴を有している場合、本疾患を経験したことのある臨床医であれば、最初の検査として、遺伝子内の小欠失/挿入、ならびにミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントを検出するためのDNMT3Aの配列解析を選択することになろう。
注:シーケンシングの手法によっては、単一エクソン、複数エクソン、遺伝子全体の欠失/重複が検出されない場合がある。検査に用いたシーケンシングの手法でバリアントが検出されなかった場合、次の段階として行うべきものは、エクソン単位あるいは遺伝子全体の欠失や重複を調べるための遺伝子標的型欠失/重複解析である。
疾患の遺伝的原因の特定に際して、むしろ大多数の臨床医は、DNMT3Aその他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含む過成長/知的障害用マルチ遺伝子パネルのほうを選択するのではないかと思われる。非限定型の配列解析(「方法2」参照)に対する遺伝子パネル法の利点は、現況の表現型と直接関係のない遺伝子に生じた意義不明のバリアントや病的バリアントの検出を抑えられるところにある。
注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、このGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。
マルチ遺伝子パネル検査の基礎的情報についてはここをクリック。遺伝子検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。
方法2
表現型からだけでは、数ある遺伝性知的障害疾患と区別がつきにくい場合、あるいは、臨床医がTBRSの表現型のことをよく知らないといった場合であれば、網羅的ゲノム検査(この場合、臨床医の側で疑わしい遺伝子の目星をつけておく必要はない)が検討されることになる。エクソームシーケンシングが広く用いられているが、ゲノムシーケンシングを使用することも可能である。
網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。ゲノム検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。
表1: Tatton-Brown-Rahman症候群で用いられる分子遺伝学的検査
遺伝子1 | 方法 | その手法で病的バリアント2,3が検出される発端者の割合 |
---|---|---|
DNMT3A | 配列解析4 | 90%超5 |
遺伝子標的型欠失/重複解析6 | 10%未満7 |
臨床像
Tatton-Brown-Rahman症候群(TBRS)の主要症候は、過成長と軽度から重度の知的障害である。その他に多くみられる症候としては、関節過可動性、肥満/体重過多、筋緊張低下、行動/精神医学的問題、脊柱後側彎、癲癇発作などがある。現在までに、90人を超える数のDNMT3Aに病的バリアントを有する例が報告されている[Tatton-Brownら2014,Tlemsaniら2016,Kosakiら2017,Lemireら2017,Shenら2017,Xinら2017,Tatton-Brownら2018,Sweeneyら2019,Balciら2020,Hageら2020,Tenorioら2020,Yokoiら2020]。以下に述べる本疾患の表現型に関する記載は、こうした報告、ならびに著者自身の行った罹患者家族からの聞き取りを基にしたものである。
表2:Tatton-Brown-Rahman症候群でみられる代表的症候
症候 | その症候を有する罹患者の割合 | コメント |
---|---|---|
知的障害 | 100% | 軽度から中等度が多い。 |
過成長1 | 80%超 |
|
関節過可動性 | 75%近く | |
体重過多2 | 65%近く | |
筋緊張低下 | 55%近く | |
行動/精神医学的問題 | 50%近く | 自閉症スペクトラム障害が最も多い。 |
脊柱後側彎 | 30%近く | |
癲癇発作 | 20%近く | |
停留精巣 | 男性の20%近く | |
心血管疾患 | 10%近く | 先天性心疾患が多いものの、大動脈基部拡張もみられる。 |
脳室拡大 | 10%未満 | |
Chiari奇形 | 10%未満 | |
悪性腫瘍 | 5%近く | 急性骨髄性白血病が最も多い3。 |
成長
罹患者の80%超で過成長が認められる。ただ、罹患者の間には臨床的多様性がみられ、過成長がないとしても、必ずしもTBRSではないということにはならない。
出生時の測定値については、比較的情報が少ないものの、通常、過成長は幼児期から現れる。出生時の値がわかっている例について言うと、平均出生時体重は+1.3SD(-1.1SDから+4.0SD)、平均出生時頭囲は+2.3SD(+0.6SDから+6.5SD)、平均出生時身長は+1.6SD(0.0SDから+4.4SD)であった[Tatton-Brownら2018]。
発達遅滞(DD)ならびに知的障害(ID)
現在までに報告されている全例が、軽度から重度に至るまでの、ある程度の発達遅滞/知的障害を伴っている。罹患者すべてについて重症度の報告がなされているわけではないが、詳細な報告がなされているもの(n=83)では、その大多数が軽度から中等度の間の知的障害を有していた。
子どもたちは普通学級に通い、いくらかの支援、例えば、教育上のニーズを示した一覧(「臨床的マネジメント」の項を参照)が必要になることがあったとしても、成人期には独立した生活を営むことが期待され、自分の家庭をもつものと目される。
子どもたちは言語を獲得しており、高度な支援の下に普通学級に通うことができる場合もあるが、多くは、特別支援学級に通うか、要支援者用教育プログラムのもとに置かれることになる。成人期に独立した生活を営む可能性は低く、保護施設に住む、あるいは、さまざまな追加的支援を受けながら生活することになる。
学校では特別支援教育が必要で、成人期においても大きな支援が必要となる可能性が高い。
その後、より少数のコホート(n=18,7-33歳)で、認知・行動プロファイルのより詳細な報告が行われている[Laneら2020]。全般的概念化能力(General Conceptual Ability)の平均スコアは53(範囲は39-76)であった。言語的推論能力に比べて、非言語的推論能力や空間的推論能力のほうにより大きな障害がみられた。
行動の問題
TBRS罹患者にみられる行動上の問題としては、自閉症スペクトラム障害に起因するものが最も多くみられる。
一部の罹患者に報告されているその他の行動上の問題としては、以下のようなものがある[Tatton-Brownら2018,Tenorioら2020]。
筋骨格症候
全身性の関節過可動性が、TBRSで多くみられる症候である。筋骨格の痛みや関節の不安定性を伴うことがあるものの、関節脱臼は稀である。脊柱後側彎は、罹患者の約30%にみられる[Tatton-Brownら2018]。広く開大した趾間も多く報告されているものの、正確な発生頻度についてはよくわかっていない[Tatton-Brownら2018]。
筋緊張低下
TBRSでは、大多数の罹患者に筋緊張低下がみられ[Tatton-Brownら2018]、理学療法を要する場合がある。 癇
癲癇発作は、TBRS罹患者の約20%にみられる[Tatton-Brownら2018]。熱性と無熱性、両方の発作が報告されている。発作の種類、初発年齢、TBRS罹患者に特に有効な抗痙攣薬があるかどうかといった点については、十分な情報がない現状である。
神経画像
TBRSに特異的で、一貫してみられる異常は知られていない。脳のMRIでこれまでに特定されたことのある異常には、脳室拡大とChiari奇形がある[Kosakiら2017,Tatton-Brownら2018]。
腎尿路生殖器の異常
TBRS男性の約20%に停留精巣がみられる[Tatton-Brownら2018]。TBRS罹患者の数例で報告されているその他の異常としては、膀胱尿管逆流と尿道下裂がある[Tatton-Brownら2018,Tenorioら2020]。
悪性腫瘍
TBRS罹患者罹患者の生殖細胞系列においてみられるDNMT3Aの病的バリアントのスペクトラムが、孤発性で非症候群性の悪性腫瘍中にみられる病的バリアントのスペクトラムと類似していることが明らかになっている[Shenら2017]。ただ、個人としてのTBRS罹患者に悪性腫瘍が生じるリスクを正確に把握するには、データが不足している現状である。現在までにTBRS罹患者8人で血液悪性腫瘍が報告されていることから考えると、おおよそ4%といったレベルであるように思われる[Hollinkら2017,Ferrisら2022](「遺伝型-表現型相関」と「癌ならびに良性腫瘍」の項を参照)。
TBRS罹患者にある特定の癌がみられた1例報告が複数存在するものの、他に同じ癌の発生例がみられないため、こうした腫瘍がTBRSに起因するものか、それともたまたま両者が同時に起こった稀な例だったのかといった点は不明である。報告されている腫瘍は以下の通りである。
なお、この例はトランケーションを引き起こすCLTCの病的バリアントを併せて有していた。
顔面症候
TBRSについては、他の過成長疾患(例えば、Sotos症候群)ほど明瞭な形で顔の特徴が現れることは少ないものの、それでも罹患者の大部分に共通してみられる顔面症候というものが存在する。顔面症候の特徴は思春期に最も顕著にみられ、幼児期や成人期ではそれほど目立たない。具体的には、以下のような特徴がみられる[Tatton-Brownら2018]。
その他の関連症候
より低頻度で罹患者に現れる症候を以下に示す。中には、1例でのみ認められた症候もいくつか含まれている。こうした症候がTBRSに起因して生じたものか、それともたまたま両者が同時に生じた稀な例なのかという点については、今後の確認を待つ必要がある。
大動脈基部拡張が、TBRSの数例で報告されている[Tatton-Brownら2018,Tenorioら2020,Cecchiら2022]。大動脈解離や心臓突然死の報告はみられないが、大動脈拡張が進行性のものか非進行性のものかという点は、今後、解明すべき課題である。今のところ、TBRSに関連してしばしば現れるものとして文献の形にまではまとめていないものの、先天性心疾患(心房中隔欠損,心室中隔欠損,動脈管開存遺残)の報告を複数の家族から受けている。発生頻度の数字を明らかにするための縦断的研究が現在進行中である。それらより少なく、罹患例の報告が1例にとどまる心血管症候としては、次のようなものがある[Kosakiら2017,Tatton-Brownら2018,Cecchiら2022]。
中枢性睡眠時無呼吸がTBRSの数例で報告されている[Tatton-Brownら2018,Balciら2020]。
これまでに、TBRS罹患者で、咬合異常、齲歯、歯の叢生が報告されている[Tatton-Brownら2018,Paz-Alegríaら2020]。
先天性横隔膜ヘルニアが1例で報告されている[Balciら2020]。
体位性起立性低血圧、ならびに不定期に生じる四肢の血管運動不安定性が、4例で報告されている[Balciら2020]。
予後
TBRSが寿命に影響するかどうかについては、データが不足している。障害をもつ成人の多くが遺伝学的検査を受けていないこと、DNMT3Aの変異が臨床的表現型の形で現れることが初めて認識されたのが2014年である[Tatton-Brownら2014]ことから考えて、本疾患を有している成人は診断や報告がなされないままになっている例が多いと思われる。
遺伝型-表現型相関
悪性腫瘍
散発性、非症候群性の悪性腫瘍(「癌ならびに良性腫瘍」の項を参照)の場合と同様、TBRS罹患者で悪性腫瘍を生じた例(n=8)において最も多くみられる病的バリアントも、882番目のアルギニン残基(Arg882,R882)に生じるミスセンスバリアントで、これが、悪性腫瘍を生じた8人中5人にみられている。このことから示唆されることは、この残基に影響が及ぶ生殖細胞系列の病的バリアントを有する例で、特に悪性腫瘍のリスクが高まるのではないかということである(「分子遺伝学」の項を参照)。
精神医学的問題
TBRS罹患者の精神医学的問題に関する報告は、数が比較的少ないものの、報告されているものに限って言うと、その大多数(5人中4人)がDNMT3Aのメチル基転移酵素ドメイン内に病的バリアントを有するものであった[Tatton-Brownら2018,Tenorioら2020](「分子遺伝学」の項を参照)。
頻度
TBRSの発生頻度は不明である。これまでに90を超える例が文献で報告されている[Tatton-Brownら2014,Tlemsaniら2016,Kosakiら2017,Lemireら2017,Shenら2017,Xinら2017,Tatton-Brownら2018,Sweeneyら2019,Balciら2020,Hageら2020,Tenorioら2020,Yokoiら2020]。
2p23.3領域のより大きな欠失
Okamotoら[2016]は、DNMT3Aならびに隣接遺伝子を含む2p23.3の、より大きな欠失(1.5Mb)を示す1例を報告している。その主たる症候は、TBRS罹患者でみられるものと同じであった。
Heyn-Sproul-Jackson症候群(OMIM 618724)
生殖細胞系列におけるDNMT3Aの病的バリアントのヘテロ接合の中に、Heyn-Sproul-Jackson症候群の形で現れるもののあることが知られている。これは、小頭症を伴う小人症を特徴とし、TBRSとは真逆の表現型を呈するものとして報告されている[Heynら2019]。TBRSはDNMT3Aの機能喪失型病的バリアントに起因して生じるが、これと対照的に、Heyn-Sproul-Jackson症候群は、DNMT3AのPWWPドメインのC末端部に発生する一連の機能獲得型病的バリアントに起因して生じる[Heynら2019]。
散発性腫瘍
腫瘍以外にTatton-Brown-Rahman症候群にみられる所見を一切有さず、腫瘍単独の形で生じる単発性腫瘍(成人急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群を含む)において、体細胞性(すなわち、生殖細胞系列にはみられない)にDNMT3Aの病的バリアントを認めることがしばしばある。こうした例において、これらの腫瘍の素因が継承されることはない。DNMT3Aの体細胞に生じるバリアントは、クローン性造血[Jaiswalら2014]や、急性骨髄性白血病[Leyら2010]をはじめとする血液悪性腫瘍の1つのドライバーとなっていることがわかっている。詳しくは、「癌ならびに良性腫瘍」の項を参照されたい。
表3:過成長・知的障害を伴いTatton-Brown-Rahman症候群との鑑別を要する疾患
遺伝子 | 疾患名 | 遺伝形式 | 臨床的特徴 |
---|---|---|---|
BRWD3 | BRWD3関連-知的障害を伴う過成長 (OMIM 300659) |
XL |
|
CHD8 | CHD8関連-知的障害を伴う過成長1 | AD |
|
EED | Cohen-Gibson症候群 (「EED関連過成長」のGeneReviewを参照) |
AD |
|
EZH2 | EZH2関連Weaver症候群 (「EZH2関連過成長」のGeneReviewを参照) |
AD |
|
FMR1 | 脆弱X症候群 | XL |
|
GPC3 GPC4 |
Simpson-Golabi-Behmel症候群 | XL |
|
NFIX | Malan症候群 (OMIM 614753) |
AD |
|
NSD1 | Sotos症候群 | AD |
|
SUZ12 | SUZ12関連-知的障害を伴う過成長 (OMIM 618786) |
AD |
|
Tatton-Brown-Rahman症候群(TBRS)については、これまで臨床的管理のガイドラインは公表されていない。
全身の健康状態という点では、TBRS罹患者の大半は良好である。そのため、著者らは、より実用的な管理のアプローチを推奨している。具体的には、診断時に行う最初の時点の記録としての一連の評価、考えられる合併症に関する患者/家族への教育、定期的に症候を再評価して必要なら治療を行うといったことである[Tatton-Brownら2018]。
最初の診断に続いて行う評価
Tatton-Brown-Rahman症候群と診断された罹患者については、疾患の範囲やニーズを把握するため、診断に至る過程ですでに実施済ということでなければ、表4にまとめたような評価を行うことが推奨される。
表4:Tatton-Brown-Rahman症候群罹患者において最初の診断後に行うことが推奨される評価
系/懸念事項 | 評価 | コメント |
---|---|---|
体格 | 体重,身長,頭囲の測定 | 巨軀の評価を目的として行う。 |
発達 | 発達評価 |
|
精神/行動 | 神経精神医学的評価 | 12ヵ月超の罹患者について:睡眠障害,注意欠陥多動性障害,不安,自閉症を窺わせる徴候などの行動上の懸念に関するスクリーニング |
神経 | 神経学的評価 |
|
筋骨格 | 整形外科/物理療法・リハビリテーション/理学療法・作業療法的評価 | 以下の評価を含むものとする。
|
心血管 | 最初の時点の記録としての心エコー | 心臓の構造異常や大動脈拡張に関する評価を目的として行う。 |
呼吸器 | 睡眠ポリグラフ | 臨床症候から睡眠時無呼吸が疑われるときは、睡眠時無呼吸に関する評価 |
腎尿路生殖器 | 男性について、停留精巣の評価 | 反復性の尿路感染の既往をもつ例については、膀胱尿管逆流に関する評価1を検討する。 |
血液/リンパ | 白血球分画を含む全血算の検討 |
|
遺伝カウンセリング | 遺伝の専門医療職2の手で行う。 | 医学的、個人的な意思決定の用に資するべく、本人や家族に対し、TBRSの本質、遺伝形式、そのもつ意味についての情報提供を行う。 |
家族への支援,情報資源 | 以下の必要性に関する評価を行う。
|
症候に対する治療
表5:Tatton-Brown-Rahman症候群罹患者の症候に対する治療
症候/懸念事項 | 治療 | 考慮事項/その他 |
---|---|---|
肥満 | 栄養士への紹介、ならびに生活習慣に関する指導が推奨される。 | |
発達遅滞/知的障害 | 「発達遅滞/知的障害の管理に関する事項」の項を参照。 | |
行動/精神疾患 | 心理士/精神科医による標準治療 | |
癲癇 | 経験豊富な神経内科医による抗痙攣薬を用いた標準治療 |
|
関節過可動性 | 理学療法・作業療法を含む標準治療 | |
脊柱後側彎 | 整形外科医による標準治療 | |
先天性心疾患/大動脈拡張 | 心臓病専門医による標準治療 | |
睡眠時無呼吸 | 耳鼻咽喉科医ないし睡眠医学専門医による標準治療 | |
停留精巣 | 泌尿器科医による標準治療 | |
急性白血病 | 血液内科医/がん専門医による標準治療 | |
家族/地域社会 |
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|
癲癇と診断された子どもに対する非医療的介入・対処の戦略に関する情報については、「Epilepsy Foundation Toolbox」を参照。
発達遅滞/知的障害の管理に関する事項
以下に述べる内容は、アメリカにおける発達遅滞者、知的障害者の管理に関する一般的推奨事項を挙げたものである。ただ、そうした標準的推奨事項は、国ごとに異なったものになることもあろう。
0-3歳
作業療法、理学療法、言語治療、摂食治療、乳児のメンタルヘルスサービス、特別支援教育、感覚障害支援が受けられるよう、早期介入プログラムへの紹介が推奨される。これは、アメリカでは連邦政府が費用を負担して、罹患者個人の治療上のニーズに対する在宅サービスが受けられる制度で、すべての州で利用可能である。
3-5歳
アメリカでは、地域の公立学区(訳注:ここで言う「学区」というのは、地理的な範囲を指す言葉ではなく、教育行政単位を指す言葉である)を通じて発達保育園に入ることが推奨される。入園前には、必要なサービスや治療の内容を決定するために必要な評価が行われ、その上で、運動、言語、社会性、認知等の機能の遅れをもとに認定された子どもに対し、個別の教育計画(IEP)が策定される。通常は、早期介入プログラムがこうした移行を支援することになる。発達保育園は通園が基本であるが、医学的に不安定で通園ができない子どもに対しては、在宅サービスの提供が行われる。
全年齢
各地域、州、教育関係部局が適切な形で関与できるよう、そして、良好な生活の質を最大限確保する支援を親に対してできるよう、発達小児科医とよく話をすることが推奨される。
押さえておくべき事項がいくつかある。
運動機能障害
粗大運動機能障害
微細運動機能障害
摂食、身だしなみ、着替え、筆記などの適応機能に問題が生じる微細運動技能の障害に関しては、作業療法が推奨される。
コミュニケーションの問題
表出言語に障害をもつ罹患者に対しては、それに代わるコミュニケーション手段(例えば、拡大代替コミュニケーション[AAC])に向けての評価を検討する。AACに向けた評価は、その分野を専門とする言語治療士の手で行うことが可能である。この評価は、認知能力や感覚障害の状況を考慮に入れながら、最も適切なコミュニケーションの形を決めていこうというものである。AACの手段としては、絵カード交換式コミュニケーションシステムのようなローテクのものから、音声発生装置のようなハイテクのものまで、さまざまなものがある。一般に信じられていることとは反対に、AACはスピーチの発達を妨げるようなものではなく、むしろ理想的な言語発達に向けた支援を与えてくれるものである。
社会/行動上の懸念事項
小児に対しては、応用行動分析(ABA)をはじめとする自閉症スペクトラム障害の治療で用いられる治療的介入の導入に向けた評価を行うとともに、実際にそれを施行することがある。ABA療法は、個々の子どもの行動上の強みと弱み、社会性に関する強みと弱み、適応性に関する強みと弱みに焦点を当てたもので、ふつう、行動分析に関する学会認定士との1対1の場で行われる。
発達小児科医を受診することで、両親に対し、適切な行動管理の指針を指導したり、必要に応じ、注意欠陥多動性障害に用いられる薬剤をはじめとする処方を行ったりといったことが可能になる利点がある。
深刻な攻撃的、破壊的行動に関して懸念があるときは、小児精神科医への相談という形での対応が考えられる。
定期的追跡評価
表6:Tatton-Brown-Rahman症候群罹患者で推奨される定期的追跡評価
系/懸念事項 | 評価 | 実施頻度 |
---|---|---|
体格 | 乳児期から小児期にかけて、頭囲を含めた成長パラメーターの測定 | 来院ごと |
発達 | 発達の進行状況ならびに教育的ニーズのモニタリング | |
精神/行動 | 不安、注意力、攻撃的ないし自虐的行動に関する評価 | |
神経 |
|
|
筋骨格 | 可動性や自助能力に関し、物理療法・作業療法・理学療法の面からの評価 | |
呼吸器 | 睡眠時無呼吸の徴候・症候に関する評価 | |
血液/リンパ | 血液悪性腫瘍の徴候・症候に関する評価を行い、臨床的に必要と思われたときは、躊躇なく白血球分画を含む全血算その他の検査を行う。 | |
家族/地域社会 | 家族の感じているソーシャルワーカーの支援(例えば、緩和や息抜きのケア,在宅看護,その他の地域資源)やケアの調整の必要性に関する評価 | |
心血管 | 大動脈基部の拡張指数を評価するための心エコー | 大動脈基部の大きさ、心臓病専門医のアドバイス、ヘルスケアの枠組み、経年的検査データといったものに従って、継続的監視を行う。 |
リスクを有する血縁者の評価
リスクを有する血縁者に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。
研究段階の治療
さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「Clinical Trials.gov」、ならびにヨーロッパの「EU Clinical Trials Register」を参照されたい。
注:現時点で本疾患に関する臨床試験が行われているとは限らない。
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
Tatton-Brown-Rahman症候群(TBRS)は、通常de novoの病的バリアントに起因して生じる常染色体顕性遺伝疾患である。
家族構成員のリスク
発端者の両親
* 注:親の白血球DNAを検査することで、体細胞モザイクの全例でそれが判明するというわけではない。また、生殖細胞系列単独のモザイクの場合は、一切これで検出されることはない。
* DNMT3Aの病的バリアントを体細胞・生殖細胞系列両方のモザイクで有する片親については、症候が軽度ないしごく軽微にとどまる可能性がある。
発端者の同胞
発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の遺伝的状態によって変わってくる。
それは、片親が生殖細胞系列モザイクである可能性が残っているからである[Xinら2017]。
発端者の子
TBRS罹患者の子は、DNMT3Aの病的バリアントを継承する50%の可能性を有する。
他の家族構成員
他の血縁者の有するリスクは、発端者の両親の状態によって変わってくる。仮に、片親がDNMT3Aの病的バリアントを有していたということになれば、その片親の血族にあたる人はすべてリスクを有することになる。
関連する遺伝カウンセリング上の諸事項
家族計画
出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査
家系内に存在するDNMT3Aの病的バリアントが同定されている場合は、出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査を行うことが可能となる。
出生前検査の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。現在、多くの医療機関では、出生前検査を個人の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。
GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここをクリック。
分子遺伝学
分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。
表A:Tatton-Brown-Rahman症候群:遺伝子とデータベース
遺伝子 | 染色体上の座位 |
タンパク質 |
HGMD |
ClinVar |
---|---|---|---|---|
DNMT3A | 2p23.3 | DNA(シトシン-5)メチル基転移酵素 | DNMT3A | DNMT3A |
データは、以下の標準資料から作成したものである。遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。
表B:Tatton-Brown-Rahman症候群関連のOMIMエントリー(閲覧はすべてOMIMへ)
602769 | DNA METHYLTRANSFERASE 3A; DNMT3A |
615879 | TATTON-BROWN-RAHMAN SYNDROME; TBRS |
分子レベルの病原性
DNMT3Aは、シトシン残基を5-メチルシトシンへとメチル化する反応を触媒するDNAメチル基転移酵素ファミリーの中の1つをコードしている。酵素としてのDNMT3Aは、配偶子形成の際の親起源のメチル化の確立に関与する[Kanedaら2004]と同時に、胚発生の際の再メチル化においても一定の役割を果たしている[Okanoら1999]。
マウスモデルならびにヒトにおけるメチル化研究にて、TBRSの病的バリアント(病的ミスセンスバリアント,トランケーション型バリアント,遺伝子全体の欠失)により特徴的な低メチル化パターンが生じることが明らかになっており、こうした病的バリアントがメチル基転移酵素の活性喪失につながることがわかっている[Smithら2021]。これは、遺伝子発現に広く影響を及ぼすものと考えられる。
トランケーション型バリアント、スプライス部位バリアント、遺伝子全体の欠失は、いずれもハプロ不全を通じて疾患を引き起こすことになると考えられている。
これまでに報告されている病的ミスセンスバリアントはDNMT3Aの中の3つの機能ドメイン(プロリン-トリプトファン-トリプトファン-プロリン[PWWP]ドメイン,ATRX-DNMT3A-DNMT3L型ジンクフィンガー[ADD]ドメイン,DNAメチル基転移酵素ドメイン)内に集中している。このことから、これらのドメインの機能に影響が及ぶことで疾患が生じている可能性が高いものと考えられる[Tatton-Brownら2018,Tenorioら2020]。
機能喪失型の病的バリアントと違い、本疾患でみられる病的ミスセンスバリアントは、いずれもよく似た低メチル化パターンを示すという研究結果[Smithら2021]も、上記の病原メカニズムを裏打ちするものとなっている。また、変異したDNMT3Aは、単に酵素活性が低くなるというだけでなく、Arg882を変化させるバリアントについては、野生型のDNMT3Aを積極的に不活性化するドミナントネガティブ効果をも併せもつというデータが存在する[Russler-Germainら2014]。Arg882を変化させるバリアントは、他のバリアントに比べ低メチル化の程度が強いことがわかっており[Smithら2021]、単発の悪性腫瘍内でこのバリアントが多く同定される背景には、こうした理由があるようにも思われる。
精神医学的問題を有するTBRS罹患者に関して言うと、メチル基転移酵素ドメインの触媒機能の異常により、脳内の代謝経路に変化が生じているのではないかということが示唆されている[Tenorioら2020]。ただ、これが明確な形での1つの遺伝型-表現型相関と言えるものであるのか否かという点の確認は、TBRS罹患者の成人期に至るまでの経年的観察を含めたさらなる研究を待つ必要がある。
疾患の発症メカニズム
疾患の発症メカニズムは機能喪失型である。TBRSにおいても、単発の急性骨髄性白血病においても多くみられるArg882(R882)の病的バリアントは、これに加えてドミナントネガティブ効果を発揮している可能性がある。
DNMT3A特異的な検査技術上の考慮事項
DNMT3Aの体細胞バリアントは、クローン性造血や孤発性の造血器腫瘍でみられる[Leyら2010,Jaiswalら2014]。このことから、末梢血サンプルから得られた集団データベースに濃縮されている可能性が考えられる。これは、バリアントの解釈に重要な意味をもつもので、集団内での出現頻度を論じる上では注意が必要である。
一般集団においてバリアントがみられるといっても、それは生殖細胞系列ではなく体細胞のこととも考えられるので、集団データベースにバリアントがみられるとしても、それは必ずしも病原性の存在を意味するものとは言えない。
表7:DNMT3Aの注目すべき病的バリアント
参照配列 | DNAヌクレオチドの変化 | 予測されるタンパク質の変化 | コメント[参考文献] |
---|---|---|---|
NM_175629.2 NP_783328.1 |
c.2645G>A | p.Arg882His | 単発の急性骨髄性白血病で最も多くみられる体細胞バリアント[Leyら2010];TBRSの生殖細胞系列バリアントとしても報告されている[Tatton-Brownら2018,Balciら2020]。 |
c.2644C>T | p.Arg882Cys | 単発の急性骨髄性白血病で多くみられる体細胞バリアント[Leyら2010];TBRSの生殖細胞系列バリアントとしても報告されている[Tlemsaniら2016,Tatton-Brownら2018]。 | |
c.2246G>A | p.Arg749His | メチル基転移酵素ドメイン内のアルギニン残基で、ここに生じた生殖細胞系列の複数の病的バリアントが報告されている[Tatton-Brownら2018]。 | |
c.2245C>T | p.Arg749Cys | メチル基転移酵素ドメイン内のアルギニン残基で、ここに生じた生殖細胞系列の複数の病的バリアントが報告されている[Tatton-Brownら2018]。 | |
c.2207G>A | p.Arg736His | メチル基転移酵素ドメイン内のアルギニン残基で、ここに生じた生殖細胞系列の複数の病的バリアントが報告されている[Tatton-Brownら2018,Tenorioら2020]。 | |
c.2711C>T | p.Pro904Leu | C末端のプロリン残基で、ここに生じた生殖細胞系列の複数の病的バリアントが報告されている[Tatton-Brownら2018,Balciら2020]。 |
上記のバリアントは報告者の記載をそのまま載せたもので、GeneReviewsのスタッフが独自に変異の分類を検証したものではない。GeneReviewsは、Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に準拠している。
命名規則の説明については、Quick Referenceを参照のこと。
癌ならびに良性腫瘍
DNMT3Aは、クローン性造血のドライバー遺伝子として[Jaiswalら2014]、そしてまた、一般集団における血液悪性腫瘍のドライバー遺伝子として知られている。単発の急性骨髄性白血病(AML)罹患者の20%超に、この遺伝子の体細胞病的バリアントがみられるという[Leyら2010]。こうした例の50%超において、Arg882(R882)残基の変化がみられるとされる[Leyら2010]。DNMT3Aのバリアントは、AMLの予後不良性を判定する独立予測因子となっている[Leyら2010,Papaemmanuilら2016]。DNMT3Aの変異は、クローン性造血の初期のイベントであり、悪性化素因ではあるものの、それ自体、単独で悪性化を牽引するわけではないとするデータが存在する[Papaemmanuilら2016]。
Gene Reviews著者: Philip J Ostrowski, MD and Katrina Tatton-Brown, MD.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
GeneReviews最終更新日: 2022.6.30. 日本語訳最終更新日: 2023.1.16.[in present]