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ヌーナン症候群
(Noonan Syndrome)

GeneReviews著者: Judith E Allanson, MD and Amy E Roberts, MD.
日本語訳者:洪本加奈(兵庫県立こども病院 臨床遺伝科)、森貞直哉(兵庫県立こども病院 臨床遺伝科)

GeneReviews最終更新日: 2019.8.8 日本語訳最終更新日: 2021.5.7

原文: Noonan Syndrome


要約

疾患の特徴 

ヌーナン症候群は(NS)は特徴的な顔立ち、低身長、先天性心疾患、および程度の様々な発達の遅れを特徴とする。その他の所見としては、幅の広い頚もしくは翼状頚、鳩胸および漏斗胸を伴う胸部形状の異常、停留精巣、多様な凝固異常、リンパ管形成異常、および眼の異常が挙げられる。出生時の身長は通常正常であるが、成人時の最終身長は正常値の下限に近づく。先天性心疾患は50%~80%の人に見られる。肺動脈弁狭窄症(多くの場合、形成不全を伴う)は最も一般的な心疾患であり、20~50%の患者に見られる。肥大型心筋症は、20~30%の人に見られ、出生時から存在する場合と、乳児期や小児期に発症する場合がある。他の形態異常としては、心房中隔欠損、心室中隔欠損、分枝肺動脈狭窄、ファロー四徴症などがある。患者の1/4は軽度の知的障害があり、一般的にNSでは言語障害が一般の人よりも多く見られる。

診断・検査 

NSは主要な臨床症状より診断される。患者の染色体検査は正常である。分子遺伝学的検査では、患者の50%にPTPN11、約13%にSOS15%にRAF1RIT1、5%未満にKRASの変異が同定される。そのほか、BRAFLZTR1MAP2K1NRASなどNSの1%未満で原因と報告されている遺伝子もある。また、数人においてNSに類似した表現型を示す遺伝子もいくつか同定されている。

臨床的マネジメント 

症状に対する治療
NSにおける心血管系異常の治療は通常と同様である。発達障害は早期教育プログラムと個人に合わせた教育により取り組む。出血に対する治療は特定の凝固因子欠乏もしくは血小板凝集異常に起因するかを把握することが治療方針決定に役立つ。成長ホルモン補充療法により成長速度は増加する。

サーベイランス:
様々な臓器、特に心血管系をモニタリングする。

遺伝カウンセリング 

NSのほとんどは常染色体優性遺伝形式である。常染色体優性遺伝形式のNSの多くは新生突然変異によるバリアントをもつが、30-75%で片親の罹患を認める。発端者の同胞のリスクは両親の遺伝的状況に依存する。もし両親のどちらかが罹患者の場合、そのリスクは50%である。両親が非罹患の場合, 同胞のリスクは低い(<1%)と考えられる。罹患者の子どもが遺伝子変異を受け継ぐリスクは50%である。LZTR1の病的バリアントによるNSは、常染色体優性遺伝形式または常染色体劣性遺伝形式で伝わる。常染色体劣性遺伝形式のNSの患者の両親は通常ヘテロ接合体(すなわち、1つのLZTR1病的バリアントを持つ)であり、無症状であるか、またはNSの軽度の特徴を持っている可能性がある。両親が1つのLZTR1病的バリアントのヘテロ接合である場合、罹患者の各同胞は、妊娠時に25%の確率で罹患し、50%の確率で1つのLZTR1病的バリアント(軽度のNSの症状を伴うことがある)を有し、25%の確率で罹患せず保因者でもない。出生前検査は、家系の中でNS関連の病的バリアントが同定されている場合に可能である。

(訳注:本邦における出生前診断は日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査及び診断に関する見解」に従って行われ、本疾患のような生命予後の良い疾患は原則対象とならない。)


診断

Noonan症候群を疑う所見

Noonan症候群(NS)は、以下のような特徴を持つ人が疑われる。

注:米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の Atlas of Human Malformation Syndromesには、様々な人種のNS患者の写真が掲載されている。

1997年にvan der Burgtが作成した診断基準は、 van der Burgt [2007]で発表された。北米ではあまり使用されていないが、研究領域では特に価値があり、イギリスのDyscerneが作成した管理ガイドライン[Noonan Syndrome Guideline Development Group 2010]にも組み込まれている。この臨床管理ガイドラインには、推奨されるベースライン検査と年齢別管理の詳細も記載されている。同様の推奨事項は、 Romano et al [2010]およびRoberts et al [2013]にも記載されている。

診断の確定

NSの診断は分子遺伝学的検査によって表1に示した遺伝子のいずれかにヘテロ接合性の病的バリアントがあるか、LZTR1にホモ接合性の病的バリアントがあることが確認された発端者において確定する。検査方法としては、マルチジーンパネルの使用、単一遺伝子のシークエンス検査、より包括的な網羅的遺伝子検査などがある。

マルチジーンパネルについてはこちらを参照のこと。遺伝子検査を依頼する臨床医のためのより詳細な情報はこちら。

NSは機能獲得型のメカニズムで発症し、遺伝子内の大きな欠失や重複は報告されていないため、遺伝子内の欠失や重複を検査しても診断には至らないと考えられるが、一部の遺伝子では稀な症例が報告されている(表1参照)。

表1
NSに用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 遺伝子の病的バリアントに起因するNSの割合 方法別の検出された病的バリアント2の割合
シークエンス解析3 単一遺伝子の欠失/重複解析4
PTPN11 50%5 約100% 稀な重複6、NSの診断に疑問あり7
SOS1 10%-13%8 100% 不明9
RAF1 5%10 約100% 重複の報告1例11、11名でNSの診断に疑問あり7、欠失の報告1例12
RIT1 5%10 100% 不明9
KRAS <5%13 100% 不明9
NRAS 8名、4家系14 100% 不明9
BRAF <2%15 100% 不明9
MAP2K1 <2%16 100% 不明9
LZTR1 不明17 100% 不明9
Others 情報なし  
  1. 染色体の遺伝子座とタンパク質については、表A.遺伝子とデータベース を参照。
  2. この遺伝子で検出された対立遺伝子のバリアントに関する情報は、「分子遺伝学」を参照。
  3. シークエンス解析では、benign、likely benign、uncertain significance、likely pathogenic、もしくは pathogenicのバリアントが検出される。病的バリアントには、遺伝子内の小さな欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライスサイトバリアントなどがあるが、通常、エクソンや遺伝子全体の欠失/重複は検出されない。シークエンス解析結果の解釈で考慮すべき点については、こちらを参照。
  4. 遺伝子を標的とした欠失・重複解析は、遺伝子内の欠失や重複を検出する。方法としては、定量PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、単一エクソンの欠失や重複を検出するように設計された遺伝子標的マイクロアレイなどがある。
  5. Tartaglia et al [2002]
  6. Shchelochkov et al [2008]Graham et al [2009]Chen et al [2014a]
  7. Lissewski et al [2015]
  8. NSと臨床診断された人のうち、PTPN11の病的バリアントが確認されなかった人の約16%~20%がSOS1の病的バリアントを持っていることが分かっている[Roberts et al 2007Tartaglia et al 2007]。
  9. 遺伝子を標的とした欠失・重複解析の検出率に関するデータはない。
  10. Aoki et al [2016]
  11. Luo et al [2012]
  12. Sana et al [2014]
  13. Schubbert et al [2006]Brasil et al [2010]
  14. De Filippi et al [2009]Cirstea et al [2010]Runtuwene et al [2011]Denayer et al [2012]Kraoua et al [2012]Ekvall et al [2015]
  15. Sarkozy et al [2009]
  16. Nava et al [2007]
  17. Yamamoto et al [2015]Johnston et al [2018]Jacquinet et al [2019]Nakaguma et al [2019]Pagnamenta et al [2019]Perin et al [2019]Umeki et al [2019]
  18. 最近の報告では、RRAS(2人の発端者)[Flex et al 2014]を含む、それぞれ10人未満のNSの表現型に関連するいくつかの遺伝子が追加で報告されている。RASA2(3人の発端者) [Chen et al 2014b]、A2ML1(3人の発端者) [Vissers et al 2015]、SOS2(8人の発端者) [Cordeddu et al 2015Yamamoto et al 2015]、MRAS(5人の発端者) [Higgins et al 2017Motta et al 2019Suzuki et al 2019]などである。

臨床的特徴

臨床的説明

出生前の特徴:孤発例NSのコホートでは父親の年齢が高いことが観察されている[Tartaglia et al 2004a]。一般的な周産期の所見としては、羊水過多、NT(nuchal translucency)の増加や嚢胞性ヒグローマを含むリンパ管形成不全、相対的大頭症、心臓や腎臓の異常などがある [Myers et al 2014]。染色体正常の胎児であっても、NTの増加が見られる場合、5%~15%がPTPN11関連のNSであると推定されている[Bakker et al 2014]。

成長:出生時の体重は、浮腫により一時的に増加することがあるが、通常は正常である。NSの乳児はしばしば摂食障害を起こす。摂食障害の期間は長くはないが、体重増加不良が18ヵ月間続くこともある。

出生時の身長は通常、正常である。出生後の成長障害は、しばしば生後1年から明らかになる [Otten & Noordam 2009]。平均身長はその後、2~4歳から思春期まで3%タイルに沿って推移するが、この時期は成長速度が平均以下となり、思春期の成長スパートが弱まる傾向がある。通常、骨の成熟が遅れるため、20代までの長期的な成長が可能である。

成人の最終身長は、男性で161~167cm、女性で150~155cmと、正常値の下限近くになる。これらの横断的なレトロスペクティブデータから成長曲線が作成されている。ある研究では、罹患者の30%は成人身長が正常範囲内にあるが、女性の50%以上、男性の40%近くは成人身長が3%タイル以下であることが示唆されている[Noonan et al 2003]。

一部の罹患者は、IGF1とIGF-binding protein 3の低下及び誘発試験による反応の低下を認め、成長ホルモン分泌障害または成長ホルモン/インスリン様増殖因子の阻害が示唆される。 PTPN11変異が同定されたNS患者ではシグナル伝達異常に関連する軽度の成長ホルモン抵抗性を認め、代償性に成長ホルモンの分泌が上昇する[Binder et al 2005]。 成長ホルモン(GH)治療については「管理」を参照。

循環器:先天性心疾患の合併頻度に大きな偏りがあるのは、これまで多くの医師がNSの診断に心疾患の存在を必須としてきたためである。先天性心疾患の頻度は50〜80%と推定されている。

精神運動発達:初期の発達マイルストーンは遅れることがあるが、関節可動性の亢進や筋緊張低下の合併がこれに関係していると考えられている。支えなしで座ることができる平均年齢は約10ヵ月、歩くことができる平均年齢は21ヵ月である[Sharland et al 1992]。学童期の子供の約50%は、発達性協調運動障害の診断基準を満たしており[Lee et al 2005a] 、手先の不器用さは、言語的および非言語的知的機能と有意な相関関係がある[Pierpont et al 2009]。

ほとんどの学童期の子どもは普通教育に適応できるが、25%は学習障害があり[Lee et al 2005a] 、10〜15%は支援教育が必要である [van der Burgt et al 1999]。知的能力は、一般的にNSの子どもでは軽度に低下している。IQスコアが70を下回るのは、研究によると6%~23%に見られる [van der Burgt et al 1999Pierpont et al 2015]。言語的パフォーマンスと非言語的パフォーマンスの強さに関しては研究が対立しており、明確なパターンは出ていない [Lee et al 2005aPierpont et al 2009]。言語的または推論プロセスにおける特定の認知障害があることがあり、特別な支援教育と学校配置が必要である。

構音障害は一般的(72%)であるが、通常、言語療法によく反応する。言語の遅れは、難聴、知覚運動障害、または構音障害に関連している可能性がある。最初に言葉を発する平均年齢は約15ヵ月で、簡単な2語のフレーズを発する平均年齢は31~32ヵ月である [Pierpont et al 2010a]。

NSの子どもと大人の言語表現型に関する研究では、一般的にNSでは言語障害が一般集団よりも多く見られ、また、言語障害がある場合には、読解力や記述力の障害リスクが高いことが示された[Pierpont et al 2010b]。言語は、非言語的認知、聴覚能力、発声、運動能力、音韻記憶と有意な相関関係がある。NS患者では、言語の特定の側面が選択的に影響を受けることはなかった。

注意力と遂行機能は、NSの子どもたちにとって最も一般的な神経心理学的課題の1つであるという新たなエビデンスがある[Pierpont et al 2015]。包括的な診断評価ではなく,スクリーニング尺度を用いた研究では,NSの子どもは自閉症スペクトラムのリスクが高いことが示唆されているが,さらなる研究が必要である [Pierpont 2016]。

精神保健:NSの精神健康面の詳細はほとんど報告されていない。行動障害や精神病理学の特定の症候群は観察されず、自尊心は年齢相応である [Lee et al 2005a]。Noonan [2005a] は、51人の成人のコホートにおける問題を記載している:うつ病は23%に見られ、時折、物質乱用や双極性障害が報告されている。同様の所見は、長年にわたって追跡調査された英国の大規模コホートでは報告されていない [Shaw et al 2007]。

11名の罹患者グループの詳細な心理評価では、不安、パニック発作、社会的内向性、乏しい自己認識、感情や情動を表現することの困難(アレキシサイミア)が確認された[Verhoeven et al 2008]。同じ研究チームは、成人期になると、注意力、組織的能力、心理社会的未熟さ、アレキシサイミアなどの軽度の問題が見られるようになるため、社会的認知やパーソナリティの評価が適切になる可能性があることを示唆している[Wingbermuehle et al 2009]。成人のNSを対象としたある研究では、49%がうつ病や不安障害の診断や治療を受けたことがあると報告している[Smpokou et al 2012]。

泌尿器:腎の異常は一般的に軽度であり、NS患者の11%に認められる。腎盂拡張が最も一般的であり、重複腎盂尿管、回転異常、遠位尿管狭窄、腎低形成、片側腎無形成、片側異所性腎、瘢痕化を伴う両側腎嚢胞などの疾患を合併した報告は少ない。

男性の思春期の発達とその後の生殖能力は、正常な場合もあれば、遅延、また不十分な場合もある。造精機能の低下は、男性の60%~80%に認められ、これは停留精巣に関連している可能性がある。しかし、男性の性腺機能に関する研究では、停留精巣の男性と精巣が正常な男性でセルトリ細胞の機能障害が確認されており、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症につながる本質的な異常が示唆されている[Marcus et al 2008]。

女性では思春期発来が遅れることがあり、初潮は平均14.6±1.17歳である。通常妊孕性は正常である。

顔貌の特徴:顔貌の違いは、ある年齢では分かりにくいが、臨床所見として重要である。

出血傾向:NSのほとんどの患者は異常出血やあざの既往がある。初期の研究では、NS患者の約3分の1が1つ以上の凝固異常を有していると報告されていたが、その後の研究では凝固異常の割合が低いことが示唆されている [Derbent et al 2010]。凝固異常は、重度の手術による出血、臨床的には軽度の打撲、あるいは臨床的には影響のない検査値の異常として現れることがある。さまざまな小規模研究では、NS患者の50~89%が出血歴および/または止血検査結果の異常のいずれかを有している一方で、両方を有しているのは10~42%に過ぎないことが示されている[reviewed in Briggs & Dickerman 2012]。

リンパ管:NS患者では様々なリンパ系の異常がみられる。これらは出生前もしくは出生後に, 局所性または広汎性にみられる。手足の背側(足の甲と手の甲)のリンパ浮腫が最も一般的である。まれにみられる所見としては、腸、肺、精巣のリンパ管拡張、胸腔や腹膜の乳糜性滲出液、陰嚢や外陰部の局所的なリンパ浮腫などがある。

NSが示唆される出生前の特徴としては、一過性または持続性の嚢胞性ヒグローマ、羊水過多、そして(稀であるが)胎児水腫が認められることがある[Gandhi et al 2004Yoshida et al 2004bJoó et al 2005

眼:斜視、屈折異常、弱視、眼振のような眼の異常は罹患者の最大95%にみられる。前眼部および眼底病変はあまり一般的ではない。円錐角膜やアクセンフェルト奇形の症例が報告されている[Lee & Sakhalkar 2014Guerin et al 2015]。

皮膚:皮膚の異常、特に伸側面と顔面の毛孔性角化症は比較的多い所見で、時々CFC症候群(「鑑別疾患」参照)で認める所見と同程度に重症の場合もある。

カフェオレ斑と黒子は一般集団よりNSでの頻度が高いとされる。(「遺伝的関連疾患」のLEOPARD症候群を参照)

その他:

Noonan-like / multiple giant-cell lesion syndromeはPTPN11 [Jafarov et al 2005Wolvius et al 2006]]とSOS1  [Beneteau et al 2009Neumann et al 2009]の病的バリアントによって引き起こされる。Noonan-like / multiple giant-cell lesion syndromeの1家系は、巨細胞病変合併がないNSで報告されたPTPN11の変異と同じ変異が同定された[Tartaglia et al 2002]。したがって、巨細胞の増殖が起こるためには、さらなる遺伝的要因が必要であると考えられる。

これらの多発性巨細胞病変は、BRAFMEK1の突然変異によって引き起こされるCFC症候群の患者にも認められる [Neumann et al 2009]。このように、RAS-MAPK経路の制御異常は、巨細胞病変を形成する共通の基本的な分子イベントであり、Noonan like/multiple giant-cell lesion syndromeが独立した存在であることを否定するものである。

遺伝子型‐表現型相関

PTPN11NSの大規模なコホートの解析結果[Tartaglia et al 2001Tartaglia et al 2002]によると、PTPN11の病的バリアントは肺動脈弁縮窄症がある場合に発見されやすく、一方、PTPN11のバリアントに起因するNSの人には肥大型心筋症はあまり見られないことが示唆されている。

その他のコホート解析では、PTPN11の病的バリアントが低身長、外斜視、易打撲性、特徴的な顔貌  [Yoshida et al 2004aZenker et al 2004]、停留精巣 [Jongmans et al 2004]と関連していることが示されている。これとは対照的に、 Allanson et al [2010]の研究では、顔の表現型と遺伝子型の相関を確立することができなかった。

PTPN11の病的バリアントの有無は、発達遅滞の可能性には影響しないが、p.Asn308Aspの病的バリアントを持つ人は、普通教育に適応できる可能性が高いと言われている[Jongmans et al 2004]。

61、71、72、76番のコドンに存在する遺伝子変異は、白血病発症と有意に関連しており、JMMLのリスクがあるNS患者のサブグループが特定されている [Niihori et al 2005]。

NSの中でPTPN11病的バリアントを持つ人では、軽度の成長ホルモン抵抗性を引き起こすポストレセプターシグナル伝達の欠損があるため[Binder et al 2005]、短期間の成長ホルモン(GH)治療の効果が低下する [Binder et al 2005Ferreira et al 2005Limal et al 2006]。しかし、身長データを注意深く見てみると、PTPN11病的バリアントを持つ人は、より重度の低身長を呈しており、したがって、同じように身長が伸びたにもかかわらず、最終的な身長は低くなっていることが明らかになった[Noordam et al 2008]。

胎児水腫やJMMLを含むNSの重篤な特徴を持つ女児におけるPTPN11のインフレームの3塩基欠失(p.Gly60del)が報告されている[Yoshida et al 2004a]。また、p.Asp61delの3塩基欠失は、重症ではなく典型的なNSの子供でも報告がある[Lee et al 2005b]。

SOS1 Tartaglia et al [2007]は、SOS1の病的バリアントを持つ22人のNS患者の表現型はNSのスペクトラムに含まれると結論づけたが、他のNS患者と比較して、これらの患者では外胚葉異常の発生頻度が高く、発育や身長が正常である可能性が高いことを強調した。また、Roberts et al [2007]は、SOS1の病的バリアントを持つ14人のNS患者は、他のNS患者と比べて発育や身長に差がないことを報告している。心中隔欠損症は、PTPN11の病的バリアントを持つ人よりも頻繁に見つかった。この研究では、外胚葉性の所見については特に言及されていない。

Pierpont et al [2009]は、NSの知的能力を研究し、SOS1の病的バリアントを持つ人は、一般的に平均的または高いレベルの能力を持っていると報告している。

RAF1研究では、肥大型心筋症との顕著な相関関係が強調されている。NS患者全体の中での肥大型心筋症の有病率は18%であるのに対して、RAF1の病的バリアントを持つ罹患者の95%がこの特徴を示している。これは、病的な心筋細胞の肥大が、RASシグナルの増加によって起こることを示唆している。RAF1関連のNSの3分の1の人に、複数の母斑、黒子、および/またはカフェオレ斑が報告された。

KRASKRASの病的バリアントに関連する表現型は非典型的な傾向があり、これらの患者では他のNS患者に比べて知的障害の可能性と重症度が高い [Zenker et al 2007] 。 Kratz et al [2009]は、KRASのミスセンスバリアントを持つ2人の血縁関係のない発端者において、頭蓋骨早期癒合症というやや珍しい特徴を報告した。

NRASNRASの病的バリアントを持つ患者はほとんど報告されていない。臨床的特徴は典型的なものであり、特徴的な表現型は観察されていない[Cirstea et al 2010]。

BRAFMAP2K1BRAFMAP2K1に病的バリアントがある人も、外胚葉性の症状が顕著ではあるが、古典的なNSの特徴を持っているようである[Nava et al 2007Nyström et al 2008Sarkozy et al 2009]。

RIT1NSの全体的な肥大型心筋症の有病率(20%)と比較して、RIT1の病的バリアントを持つ人にはより多く見られる(70%~75%)[Aoki et al 2013Yaoita et al 2016]。また、罹患者の分析では、周産期異常、高出生体重、相対的大頭症、カールした毛、色素沈着、手のひらや足の裏のしわなどの有病率が高いが、低身長、外反母趾、知的障害の有病率は低いことが示唆されている[Bertola et al 2014Yaoita et al 2016]。

LZTR1全体的に見て、LZTR1のヘテロ接合型または複合ヘテロ型病的バリアントを原因とするNS患者で報告されている特徴は、典型的な顔立ち、肺動脈弁狭窄症、肥大型心筋症、低身長、発達遅滞など、他の遺伝的原因によるNS患者でよく見られるものである。LZTR1のヘテロ接合型病的バリアントまたは複合ヘテロ型病的バリアントを有する人の表現型をより詳細に評価したところ、複合ヘテロ型病的バリアントを有する人では肥大型心筋症の有病率が高いことが示唆された(複合ヘテロ型病的バリアントを有する症例19/26に対しヘテロ接合型病的バリアントを有する症例5/26)[Pagnamenta et al 2019]。

浸透率

NSの浸透率は、確認バイアスがあることと、軽微な特徴を伴う多様な表現型のため、決定が困難である。成人の罹患者の多くは、より明らかに罹患した子どもが生まれた後に診断される。

命名法

NSの初期の呼称である "男性ターナー症候群 "は、この疾患が女性には見られないという誤った意味合いを持っていた。

1949年、Otto Ullrichは罹患者を報告し、その特徴がBonnevieによって飼育されていたマウス系統の特徴(webbed neckおよびlymphedema)と類似していることを指摘した。“Bonnevie-Ullrich症候群”という言葉が、特にヨーロッパで流行した。

有病率

NSは一般的な疾患であり、1,000人に1人から2,500人に1人の割合で発症すると報告されている。軽度の症状は見過ごされることがある。


遺伝学的に関連する疾

PTPN11

PTPN11RAF1の病的バリアントは、LEOPARD症候群の患者の約93%で確認されている。また、2人の患者にBRAFの病的バリアントが見つかっている[Koudova et al 2009Sarkozy et al 2009]。

KRAS
まれに、KRASの変異がCFC症候群と関連することがある(「鑑別診断」を参照)。

SOS1
SOS1のフレームシフトバリアントは、遺伝性歯肉線維腫症の4世代にわたる単一の家系で報告されている[Hart et al 2002]。この疾患は、上顎および下顎の角化歯肉のゆっくりと進行する良性線維性肥大を特徴とする、まれな形態の歯肉過成長である。SOS1の病的バリアントは、この疾患を持つ他の家族では報告されていない。

RAF1
多発性黒子を伴うNS(LEOPARD症候群)も、RAF1の病的な機能獲得バリアントによって引き起こされる。PTPN11の病的バリアントを持たない罹患家系の約3分の1がRAF1の病的バリアントを持っている。

まれにRAF1の病的ミスセンスバリアントが体細胞癌で観察されることがある( Pandit et al [2007]、参考文献参照)。

BRAF
BRAFの生殖細胞系列の病的バリアントは、通常、CFC症候群に見られる。

MEK1
MEK1の生殖細胞系列の病的バリアントは、CFC症候群によく見られる。

LZTR1
LZTR1のヘテロ接合性機能喪失型病的バリアントは、神経鞘腫Ⅱ型を引き起こし [Piotrowski et al 2014]、典型的には皮下および末梢神経の複数の神経鞘腫、またはあまり一般的ではないが髄膜腫の発症を特徴とする[Jacquinet et al 2019]。

がんと良性の腫瘍:NSの他の所見がない状態で単発の腫瘍として発生する散発性腫瘍(白血病および固形腫瘍を含む)は、生殖細胞系列には存在しないPTPN11KRASNRASBRAFMAP2K1、またはLZTR1の体細胞バリアントを保有している可能性がある。したがって、これらの腫瘍に対する素因は遺伝しない。


鑑別診断

ターナー症候群

女性にのみ見られるターナー症候群は、細胞遺伝学的検査で性染色体異常が証明されることで、NSと区別される。ターナー症候群の表現型は、顔、心臓、発育、腎臓などを考慮すると、実際にはNSとは全く異なる。ターナー症候群では、腎臓の異常がより一般的であり、発達遅延はあまり見られず、左心系の異常が一般的である。

ワトソン症候群

NSと同様に、ワトソン症候群(OMIM 193520)は低身長、肺動脈弁狭窄、様々な知的発達、皮膚の色素変化(例:カフェオレ斑)を特徴とする。ワトソン症候群の表現型は、神経線維腫症Ⅰ型の表現型とも重なっており、この2つは対立関係(allelic)にあることが知られている[Allanson et al 1991]。

Cardio-facio-cutaneousCFC)症候群

CFC症候群とNSは、特徴が最も重なり合っている。CFC症候群は心臓やリンパの所見が類似している [Noonan 2001Armour & Allanson 2008]。CFC症候群では、知的障害はより重度で、中枢神経系の構造的な異常の可能性が高く、皮膚病変はより多彩で、消化器系疾患はより重度で長期間持続し、出血性疾患はまれであるとされている。顔貌は粗くなる傾向があり、長頭症や眉毛の欠如がより頻繁に見られ、青い目はあまり見られない。現在、CFC症候群の原因となる遺伝子は、BRAF(約75%)、MAP2K1およびMAP2K2(約25%)、KRAS(約2%~3%)の4つである。まれに、通常NSに関連する遺伝子に病的バリアントを持つ人がいる [Narumi et al 2008Nyström et al 2008]。

コステロ症候群

コステロ症候群は、NSとCFC症候群の両方に共通する特徴を持っている[Hennekam 2003Gripp et al 2006Kerr et al 2006]。多くのコステロ症候群の患者が分子レベルで研究されているが、PTPN11の病的バリアントは同定されていない[Tartaglia et al 2003aTröger et al 2003]。最も一般的なHRASがん原遺伝子のエクソン2に生じる生殖細胞系列の病的バリアントは、コステロ症候群を引き起こすことが示されている [Aoki et al 2005]。

Noonan syndrome-like disorder with loose anagen hair(OMIM 607721)

SHOC2の生殖細胞系列の病的バリアントは、通常、NSに似た特徴を持つ表現型をもたらし、罹患者のごく一部は古典的なNSの表現型を持つ[Kerr, personal experience]。SHOC2の繰り返し見られるミスセンス変異である4A>Gは、NSに加えて成長ホルモン欠損症の特徴を持つサブグループで発見されており、特徴的な多動行動はほとんどの場合、年齢とともに改善する。髪の毛の異常(抜けやすく、まばらで、細く、成長が遅い髪の毛(粗な成長期毛を含む)、湿疹や魚鱗癬を伴う濃い色の皮膚、開鼻声、そして古典的なNSと比較して僧帽弁形成不全と中隔欠損がより多く見られる[Cordeddu et al 2009]。全エクソン解析により、NSの約5%に病的バリアントが検出される。ほとんどの場合、古典的なloose anagen hairを有する [Cordeddu et al 2009]。

JMMLを伴う、あるいは伴わないヌーナン症候群様症状(OMIM 613563

CBLの生殖細胞系列の病的バリアントは、神経学的特徴が比較的高い頻度で見られ、JMMLになりやすく、心奇形、成長の低下、停留精巣の有病率が低いことを特徴とする様々な表現型を引き起こす [Martinelli et al 2010Niemeyer et al 2010Martinelli et al 2015]。

古典的なNSとの表現型の重なりが大きいため、ほとんどのRASopathy診断遺伝子パネルには、一般的なSHOC2バリアントの検査とCBL遺伝子のシークエンスが含まれている。

その他

NSは、発達の遅れ、低身長、先天性心疾患、特徴的な顔立ちを有する他の症候群・疾患、特に以下のものと区別する必要がある。

神経線維腫症1(NF1)

神経線維腫症1(NF1)は、低身長、学習障害、カフェオレ斑など、NSと共通する特徴を有している。また、まれにNSに似た顔貌を持つ患者もいる。これは、NSとNF1が偶然に併発したことによって生じる可能性がある [Colley et al 1996Bertola et al 2005]。しかし、ほとんどの場合、NF1の病的バリアントを有する人ではNS様の顔貌を呈し、時にはNF1に近い表現型を有する場合もあるようだ [Stevenson et al 2006Nyström et al 2009]。


臨床的マネジメント

初期診断後の評価

NSと診断された人の症状の程度と治療の必要性を確認するために、以下の評価を行うことが推奨される。

症状に対する治療

NSの合併症の治療は、一般的に標準的なものであり、一般の人々の治療と異なるものではない。

ヨーロッパのコンソーシアムであるDyscerneによって管理ガイドラインが作成されている[[Noonan Syndrome Guideline Development Group 2010] (full text)。また、NSサポートグループと協力している米国のコンソーシアムが発表した論文[Romano et al 2010]や、Lancet誌に掲載された論文[Roberts et al 2013]もある。

心血管異常の治療は、一般的には一般人と同様である。経皮的バルーン肺動脈弁形成術で治療した肺動脈弁狭窄症は、NSでない人の肺動脈弁狭窄症に比べて再介入率が高い [Prendiville et al 2014]。肥大型心筋症では早期死亡率も高く、うっ血性心不全で生後6カ月以前に来院した乳児は、予後が最も悪い(2年生存率30%) [Hickey et al 2011Wilkinson et al 2012]。

発達障害に対しては早期の教育プログラムと個人に合わせた教育によって取り組む。

NSの出血性疾患には、さまざまな原因が考えられる。重篤な出血に対する具体的な治療は、凝固因子欠乏症や血小板凝集障害かによって特異的治療が異なる。第Ⅶa因子は、血友病、von Willebrand病、血小板減少症、血栓無力症などによる出血を抑えるために使用される。また、血小板数、プロトロンビン時間および部分トロンボプラスチン時間が正常であったNSの乳児に対して、胃炎による術後の重篤な出血を抑えるために使用されている[Tofil et al 2005]。

成長ホルモン(GH)治療に関する研究は、英国、日本 [Ogawa et al 2004]、オランダ[Noordam 2007Noordam et al 2008]、スウェーデン [Osio et al 2005]、米国[Romano et al 2009]から報告されている。

短期および長期の研究では、治療を受けたNSの子どもたちの身長速度が一貫して有意に増加していることが示されている[Osio et al 2005Noordam et al 2008Romano et al 2009]。

身長SDの増加量は0.6~1.8SDであり、治療開始時の年齢、期間、思春期開始時の年齢、および/またはGH感受性に依存する可能性がある [Osio et al 2005Noordam et al 2008Dahlgren 2009]。

その後の研究では、思春期前のNSによる成長ホルモン欠乏症の小児は、成長ホルモン治療によって、ターナー症候群の少女と同等の割合で成長率が向上するが、特発性成長ホルモン欠乏症で見られる割合よりも低いことが示されている[Lee et al 2015Zavras et al 2015]。

サーベイランス

いずれかの臓器に異常が見つかった場合(「初期診断後の評価」の項を参照)、定期的なフォローアップをすべきであり、生涯にわたるモニタリングが必要となる場合もある。例えば、屈折異常や斜視が見つかった場合には定期的な眼科検査を行い、尿路系に構造的な異常がある場合には尿検査を行う。血液腫瘍や固形腫瘍などの悪性腫瘍に関しては発生率が明らかに増加しているにもかかわらず、サーベイランス戦略は検討されておらず、推奨もされていない。

避けるべき薬物や環境

出血性素因を悪化させる可能性があるため、アスピリン療法は避けるべきである。

リスクのある親族の評価

リスクのある親族の検査については遺伝カウンセリングの項を参照。

研究中の治療法

米国ではClinicalTrials.gov、欧州ではEU Clinical Trials Registerを検索すると、さまざまな病気や症状を対象とした臨床試験の情報が得られる。注:この疾患に対する臨床試験が行われていない場合もある。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

BRAFKRASMAP2K1NRASPTPN11RAF1RIT1SOS1の病的バリアントによるNSは、常染色体優性遺伝形式で発症する。

LZTR1の病的バリアントによるNSは、常染色体優性遺伝形式または常染色体劣性遺伝形式で発症する。

常染色体優性遺伝形式-家族へのリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

同胞の発症リスクは両親の遺伝学的状況に依存する。

発端者の子

NS罹患者の子どもは、50%の確率でNS関連の病的バリアントを受け継ぐ。

その他の血縁者

発端者の母方のおばや、他の母方の血縁者、およびその子孫が女性であった場合、CD40LG変異の保因者であるリスクがあり、男性であった場合、CD40LG関連疾患に罹患しているリスクがある。発端者の母方の血縁者に対する正確なリスクは、家族関係に依存する。

常染色体劣性遺伝形式-家族へのリスク

発端者の両親

発端者の同胞

発端者の子

NS罹患者の子どもは、LZTR1の病的バリアントのヘテロ接合体である。

その他の血縁者

発端者の両親の同胞は、それぞれ50%の確率でLZTR1の病的バリアントをヘテロ接合で持っている。

ヘテロ接合体の検出

リスクのある血縁者に対して保因者診断を行うには、事前に家系内のLZTR1の病的バリアントを特定する必要がある。

遺伝カウンセリングに関連する事項

家族計画

明らかにde novoの病的バリアントを持つ家族における検討事項

常染色体優性遺伝形式のNSの発端者の両親のどちらにもNSに関連する病的バリアントがなく、疾患の臨床症状もない場合、その病的バリアントはde novoである可能性が高い。しかし、父親や母親が異なる場合(例:生殖補助医療)、非公開の養子縁組など、非医学的な要因がある可能性も考慮される。

DNA バンキング

DNA バンキングとは、将来の使用を目的として DNA(通常、白血球から抽出)を保存することである。検査方法や、遺伝子、対立遺伝子、疾患に関する理解が将来的に向上する可能性があるため、罹患者のDNAを保管することを検討する必要がある。

出生前診断・着床前診断

リスクの高い妊娠

リスクの低い妊娠

記載されている超音波検査所見は、高リスク妊娠におけるNSの診断を示唆しているが、非特異的であり、心血管障害や他の染色体異常および染色体に関連しない症候群と関連している可能性がある。

訳注:本邦における出生前診断は日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査及び診断に関する見解」に従って行われ、本疾患のような生命予後の良い疾患は原則対象とならない。)


資源

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここクリック。

Noonan syndrome

Noonan syndrome

Email: info@teamnoonan.org
www.teamnoonan.org

244 Taos Road
Atlandena CA 91001
Phone: 626-676-7694
Email: lisa@rasopathies.org
rasopathiesnet.org

997 Glen Cove Avenue
Suite 5
Glen Head NY 11545
Phone: 800-451-6434 (toll-free)
Fax: 516-671-4055
Email: hgf1@hgfound.org
www.hgfound.org

4200 Cantera Drive #106
Warrenville IL 60555
Phone: 800-362-4423 (Toll-free Parent Help Line); 630-836-8200
Fax: 630-836-8181
Email: contactus@magicfoundation.org
www.magicfoundation.org


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

A
ヌーナン症候群:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体座位 タンパク質 座位特異的データベース HGMD ClinVar
BRAF 7q34 Serine/threonine-protein kinase B-raf BRAF database BRAF BRAF
KRAS 12p12​.1 GTPase KRas KRAS database KRAS KRAS
LZTR1 22q11​.21 Leucine-zipper-like transcriptional regulator 1 LZTR1 @ LOVD LZTR1 LZTR1
MAP2K1 15q22​.31 Dual specificity mitogen-activated protein kinase kinase 1 MAP2K1 @ LOVD MAP2K1 MAP2K1
NRAS 1p13​.2 GTPase NRas NRAS database
NRASbase: Mutation registry for Autoimmune lymphoproliferative syndrome type IV
NRAS NRAS
PTPN11 12q24​.13 Tyrosine-protein phosphatase non-receptor type 11 PTPN11 database
PTPN11base: Database for pathogenic mutations in the SHP-2 SH2 domain
PTPN11 PTPN11
RAF1 3p25​.2 RAF proto-oncogene serine/threonine-protein kinase   RAF1 RAF1
RIT1 1q22 GTP-binding protein Rit1   RIT1 RIT1
SOS1 2p22​.1 Son of sevenless homolog 1 SOS1 database SOS1 SOS1

データは以下の標準的な参考文献から作成されている:遺伝子はHGNCから、染色体座位はOMIMから、タンパク質はUniProtから。リンクが張られているデータベース(Locus Specific, HGMD, ClinVar)の説明はこちらを参照。

B
ヌーナン症候群のOMIMエントリー(OMIMで全てを見る)

163950 NOONAN SYNDROME 1; NS1
164757 B-RAF PROTOONCOGENE, SERINE/THREONINE KINASE; BRAF
164760 RAF1 PROTOONCOGENE, SERINE/THREONINE KINASE; RAF1
164790 NRAS PROTOONCOGENE, GTPase; NRAS
176872 MITOGEN-ACTIVATED PROTEIN KINASE KINASE 1; MAP2K1
176876 PROTEIN-TYROSINE PHOSPHATASE, NONRECEPTOR-TYPE, 11; PTPN11
182530 SOS RAS/RAC GUANINE NUCLEOTIDE EXCHANGE FACTOR 1; SOS1
190070 KRAS PROTOONCOGENE, GTPase; KRAS
600574 LEUCINE ZIPPER-LIKE TRANSCRIPTIONAL REGULATOR 1; LZTR1
605275 NOONAN SYNDROME 2; NS2
609591 RIC-LIKE PROTEIN WITHOUT CAAX MOTIF 1; RIT1
609942 NOONAN SYNDROME 3; NS3
610733 NOONAN SYNDROME 4; NS4
611553 NOONAN SYNDROME 5; NS5
613224 NOONAN SYNDROME 6; NS6
613706 NOONAN SYNDROME 7; NS7
615355 NOONAN SYNDROME 8; NS8
616564 NOONAN SYNDROME 10; NS10

BRAF

遺伝子の構造

BRAFは、C-RAFおよびX連鎖性の遺伝子ARAFによってコードされるA-RAFを含むRAFファミリーのメンバーであるB-RAFをコードしている。BRAFは約190kbに及び、18個のエクソンから構成されている。遺伝子およびタンパク質情報の詳細な概要については、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

NSには4つのバリアント(exon 6 p.Thr241Metとp.Thr241Arg、exon 13 p.Trp531Cys、exon 15 p.Leu597Val)が関連しており、いずれもin vitroでMEKのリン酸化がわずかに増加していた [Sarkozy et al 2009]。2つのエクソン6のバリアント(c.721A>C;p.Thr241Proおよびc.735A>G;p.Leu245Phe)が、多発性黒子を伴うヌーナン症候群で報告されている[Koudova et al 2009Sarkozy et al 2009]。これらのバリアントは、がんの体細胞で病的バリアントとして同定されたことのない新しいものである。2つの病的バリアントはde novoで、1つは家族性であった。

2.
このGeneReviewで取り上げられたBRAFのバリアント

塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.722C>T p.Thr241Met NM_004333​.4
c.722C>G p.Thr241Arg
c.1593G>C p.Trp531Cys
c.1789C>G p.Leu597Val

バリアントの分類についての注意:表に掲載されているバリアントは著者から提供されたものであり、GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類を独自に検証していない。

命名についての注意:GeneReviewsはHuman Genome Variation Society (varnomen.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている。命名規則の説明についてはクイックリファレンスを参照。

正常な遺伝子産物

BRAFのタンパク質産物はB-RAFであり、R-RAFの直接の下流のエフェクターの一つであるセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。RAF/MEK/ERKモジュールは、細胞の増殖、分化、運動、アポトーシス、老化に深く関与している。B-RAFは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1および2(MEK1およびMEK2)という2つの下流エフェクターしか知られていない[Sithanandam et al 1990Solit et al 2006]。

B-RAFの3つの保存領域(CR):

エクソン3-6にはRAS結合ドメイン(RBD)とシステインリッチドメイン(CRD)が、エクソン11-17にはキナーゼドメインがコードされている。

BRAFは、ユビキタスに発現し、766アミノ酸のタンパク質をコードしている。GTP結合したRASに続いて活性化され、二重特異性マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK1およびMEK2)をリン酸化して活性化する。

異常な遺伝子産物
NS関連のバリアントは、主にエクソン6、13、15に観察される(対してCFC関連のBRAFバリアントはエクソン6、12、15、16) [Sarkozy et al 2009]。NS関連のバリアントはCFC関連のバリアントとは異なるが、あるバリアントがNSの表現型と関連し、あるバリアントがCFCの表現型と関連する理由は解明されていない。

KRAS

遺伝子の構造

この遺伝子は、45kbの4つのエクソンから構成されている。代替スプライシングにより、C末端が異なる2つのアイソフォーム(4aと4b)が生成される。転写物の98%はエクソン4aがスプライシングされ、エクソン4bのみがタンパク質への翻訳に利用される。エフェクターまたはスイッチドメインはエクソン1と2にあり、グアニンヌクレオチド交換因子との結合はエクソン3にある。遺伝子とタンパク質の情報の詳細については、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

K-RASの異常とNSとの関連は、胚発生における役割を示す初めてのエビデンスである。これらの機能獲得型変異は、NSに関連するSHP-2のバリアントと同様の生化学的および細胞学的な表現型を示す[Kratz et al 2007]。

正常な遺伝子産物

RASタンパク質は、活性型のグアノシン三リン酸(GTP)結合型と不活性型のグアノシン二リン酸(GDP)結合型の間を循環することで、細胞運命を制御している。RASタンパク質は、細胞の増殖、成長、細胞死に重要な役割を果たすRAS-RAF-MEK-ERK経路の重要な制御因子である。

異常な遺伝子産物

異常なK-RASタンパク質は、成長因子に対する最初の造血前駆細胞の過敏性を誘発し、成長因子への反応や細胞系列特異的な方法でシグナル伝達を阻害する [Kratz et al 2007]。KRASの強い機能獲得型の病的バリアントは、生命とは相容れないものかもしれない。

LZTR1

遺伝子の構造

ZTR1 (leucine-zipper-like transcription regulator 1) は、BTB-kelchスーパーファミリーのメンバーをコードしている。
遺伝子とタンパク質の情報の詳細なまとめは、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

優性遺伝形式のバリアントと劣性遺伝形式のバリアントは、それぞれ、バリアントの種類(ミスセンス vs 活性低下および機能喪失バリアント)または位置(コドン119と287の間のホットスポット領域 vs タンパク質の残りの部分全体)によって説明されるという仮説が立てられている。最近の研究では、劣性遺伝形式のバリアントは一般的にタンパク質の合成/安定性や細胞内局在に影響を与えるのに対し、優性遺伝形式のバリアントはEGF依存性のERK1/2リン酸化を促進することが明らかになっている [Motta et al 2019]。

正常な遺伝子産物

正常な遺伝子産物はゴルジネットワークにのみ局在し、ゴルジ複合体の安定化に役立っていると考えられる。LZTR1は、RAF1-SHOC2-PPP1CB複合体と結合する。

異常な遺伝子産物

ユビキトーム解析により、LZTR1の欠損は、リジン170でのRASのユビキチン化を無効にすることが示された。LZTR1が媒介するユビキチン化は、膜との結合を弱めることでRASシグナルを阻害した[Steklov et al 2018]。LZTR1の不活性化により、内因性KRASのユビキチン化が減少し、細胞膜局在化が促進された [Bigenzahn et al 2018]。

MAP2K1

遺伝子の構造

MEKは多遺伝子ファミリーとして存在している。MAP2K1は約104kbに及ぶ。遺伝子とタンパク質の情報の詳細なまとめは、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

MAP2K1の病的ミスセンス変異は、NSと臨床的に診断された人の2%未満で病因となっている。

正常な遺伝子産物

MAP2K1は、ERK1およびERK2を活性化する能力を持つスレオニン/チロシンキナーゼをコードしている。MAP2K1がコードする正常なタンパク質は、二重特異性マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ1(MEK1)である。MEK1と関連するMEK2(MAP2K2にコードされる)タンパク質は、約85%のアミノ酸の同一性があるが、マウスの発生過程で決定されるように冗長な目的を果たすものではない。

異常な遺伝子産物

NSの3名は、MAP2K1のエクソン2に新規の病的バリアントを持っていた。これらの病的バリアントは、すでにCFC症候群の変異ホットスポットとして同定されているエクソンに見られた[Nava et al 2007]。

NRAS

遺伝子の構造

NRASは、7つのエクソンから構成されており、4.3kbと2kbの2つの主要なNRAS転写産物がある。遺伝子とタンパク質の情報の詳細なまとめは、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

NSとの関連が報告されている病的バリアントは、p.Ile24Asn、p.Pro34Leu、p.Thr50Ile、p.Gly60Gluの4種類である[Cirstea et al 2010Runtuwene et al 2011Denayer et al 2012]。p.Thr50Ileの置換は、2つのスイッチ領域をつなぐβ-2-β-3ループに位置する保存された残基内にある。In vitroでの機能解析の結果、変異したタンパク質は、血清存在下で下流のリン酸化が促進されることがわかった。タンパク質のモデル化によると、p.Thr50は膜のリン脂質の極性頭部と相互作用し、RASの膜配向を制御する領域の不可欠な部分であることが示唆されている。In vitroでの機能解析では、p.Gly60Gluバリアントは、血清存在下で下流のリン酸化が促進され、変異タンパク質は活性型のGTP結合型で構成的に蓄積することが示された [Cirstea et al 2010]。p.Ile24Asnは、高度に保存された残基で発生していることと、de novo originであることから、病的であると分類されている。軽度活性化型の病的バリアントであり、下流のシグナル伝達が亢進し、ゼブラフィッシュの胚では、背骨形成時の細胞移動障害などの発生障害を引き起こすことが示されている[Runtuwene et al 2011]。Pro34は、RASのスイッチI領域に位置しており、この残基の別の病的バリアント(p.Pro34Arg)は、GTP結合型のコンフォメーションで蓄積し、MAPK経路を強く活性化することが示されている [Schubbert et al 2006]。

3.
このGeneReviewで取り上げられたNRASのバリアント

塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.71T>A p.Ile24Asn NM_002524​.4
c.101C>T p.Pro34Leu
c.149C>T p.Thr50Ile
c.179G>A p.Gly60Glu

バリアントの分類についての注意:表に掲載されているバリアントは著者から提供されたものであり、GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類を独自に検証していない。

命名についての注意:GeneReviewsはHuman Genome Variation Society (varnomen.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている。命名規則の説明についてはクイックリファレンスを参照。

正常な遺伝子産物

RASタンパク質は、不活性なGDP結合状態と活性なGTP結合状態の間を循環することで、分子スイッチとして機能している。活性型のRASは、Raf、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ、RAL-GDP解離シミュレーター(GDS)など20種類以上のエフェクターと生産的に相互作用する。これにより、RAF-MEK-MAPKカスケードが活性化され、細胞の増殖、分化、生存が促進される。

異常な遺伝子産物

NSに関連したNRASのp.Thr50Ileまたはp.Gly60Gluの置換体を細胞モデルで発現させると、血清存在下または上皮成長因子(EGF)刺激後にMEKおよびERKのリン酸化が促進された[Cirstea et al 2010]。NSやCardio-facio-cutaneous症候群の原因となる生殖細胞系列のKRAS病的バリアントと同様に、生殖細胞系列NRASの変化は、ヒトのがんで一般的に変化する残基に影響を与えず、がんに関連する体細胞病的バリアントと比較して、in vitroでの細胞内シグナル伝達の異常に対する活性は低いようである(「がんと良性腫瘍」参照)。

PTPN11

遺伝子の構造

この遺伝子は15個のエクソンから構成されている。遺伝子とタンパク質の情報の詳細なまとめは、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

Tartaglia et al [2001]は、NSの原因としてPTPN11の病的バリアントを同定した。PTPN11の病的ミスセンスバリアントは、検査を受けた罹患者の50%に同定された。これらの病的バリアントの95%は、SH2-PTP相互作用面またはその近傍の残基を変化させており、これらの残基は、タンパク質の活性構造と不活性構造の切り替えに関与し、触媒活性化や機能獲得の原因となっている。また、5%の病的バリアントが、結合パートナーからの活性化に対する感度を変化させていた。1つのインフレーム欠失、p.Gly60delが報告されている[Yoshida et al 2004a]。PTPN11の重複や欠失は、まれではあるが、ほとんどの場合、「ヌーナン様」の表現型と関連している[Shchelochkov et al 2008Graham et al 2009Luo et al 2012Chen et al 2014a]。既知の機能獲得型の疾患メカニズム(経路の過活性化)を考えると、遺伝子の欠失や重複が本当にNSを引き起こすかは議論の余地がある[Lissewski et al 2015]。

表4を参照。

4.
選択されたPTPN11病的バリアント

塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.922A>G p.Asn308Asp NM_002834​.3
NP_002825​.3

c.179_181delGTG p.Gly60del
c.181_183delGAT p.Asp61del

バリアントの分類についての注意:表に掲載されているバリアントは著者から提供されたものであり、GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類を独自に検証していない。

命名についての注意:GeneReviewsはHuman Genome Variation Society (varnomen.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている。命名規則の説明についてはクイックリファレンスを参照。

正常な遺伝子産物

PTPN11は、広く発現している細胞外タンパク質であるチロシン-タンパク質ホスファターゼ非受容体タイプ11(SHP-2)をコードしている。SHP-2は、N末端にタンデムに配置された2つのSRC-2ホモロジー2(SH2)ドメイン(N-SH2およびC-SH2)、1つの触媒タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ドメイン、および2つのTPサイトとプロリンリッチストレッチを持つカルボキシ基末端を有する。SH2-PTPの相互作用により、タンパク質は不活性状態に保たれている。このタンパク質は、成長因子、ホルモン、サイトカイン、および細胞接着分子に対する細胞応答の重要な分子である。多様な発生プロセス(心臓の半月弁形成や血球前駆細胞のコミットメントと分化を含む)を制御するいくつかの細胞内シグナル伝達経路で必要とされ、細胞の増殖、分化、移動、アポトーシスを調節する役割を持っている[Tartaglia et al 2002Fragale et al 2004]。

異常な遺伝子産物

チロシン-タンパク質ホスファターゼ非受容体タイプⅡの活性化は、上皮成長因子を介したRAS/ERK/MAPKを刺激し、活性化することで細胞増殖を増加させる[Tartaglia et al 2002Fragale et al 2004]。

RAF1

遺伝子の構造

RAF1は17エクソンで構成されている。遺伝子とタンパク質の情報の詳細なまとめは、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

14-3-3の認識部位としては、エクソン7のp.Arg256、p.Ser257、p.Ser259、p.Pro261のアミノ酸残基がコンセンサスとなっている。NSで同定された病的バリアントの多くはこのCR2ドメインに集まっており、14-3-3結合を阻害し、基底状態でもEGF刺激後でも、野生型タンパク質よりも大きなキナーゼ活性をもつ[Pandit et al 2007]。他の病的バリアントは、CR3のRAF活性化セグメントに存在し、キナーゼ活性が低下または消失している。しかし、これらは依然として構成的なERKの活性化をもたらす。

正常な遺伝子産物

RAF1は、同時にいたるところに発現し、3つのドメインを持つ648アミノ酸のタンパク質をコードしている。3つの保存領域(CR)を有している。CR1(エクソン2-5)は、RAS結合ドメイン(RBD)とシステインリッチドメイン(CRD)をコードしている。CR2はエクソン7に、CR3はエクソン10-17にまたがっており、活性化セグメントをコードしている。この遺伝子は、リン酸化される可能性のある多数のセリンおよびスレオニン残基によって高度に制御されており、その結果、活性化または不活性化される。CR2のp.Ser259残基は特に重要である[Pandit et al 2007]。不活性状態では、RAF1のN末端がC末端のキナーゼドメインと相互作用し、不活性化される。この構造は、リン酸化されたp.Ser259とp.Ser261に結合する14-3-3タンパク質二量体によって安定化される。p.Ser259のリン酸化が解除されると、RAF1とRAS-GTPの結合が促進され、RAF1のMEKキナーゼ活性を介してRAS-MAPKカスケードによるシグナルの伝達が促進される[Pandit et al 2007]。CR1とCR2は共に負の調節機能を持ち、これを除去すると発癌性の活性が生じる。また、キナーゼドメインであるCR3は、14-3-3と結合している。

異常な遺伝子産物

NSに関連したRAF1の病的バリアントは、RAS-GEF活性の増強と14-3-3の結合および自己抑制の低下を介して、RASの活性化と下流シグナル伝達を増加、延長させる。

RIT1

遺伝子の構造

RITは、小さなGTPaseのRASサブファミリーに属している。1q22に位置し、6つのエクソンから構成されている。遺伝子とタンパク質の情報の詳細なまとめは、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

病的ミスセンスバリアントは、NSの約5%を引き起こすと推定されている。NSで報告されている病的バリアントの大半は、RASに対応するswitch Ⅱ領域内に集まっている[Aoki et al 2016]。

正常な遺伝子産物

RIT1タンパク質は,RASと50%の配列共通性を持つが,他のいくつかのRAS様タンパク質に見られるカルボキシル末端のCAAXモチーフを欠いている[Lee et al 1996]。コードされたタンパク質は,細胞のストレスに関連するp38 MAPK依存性のシグナル伝達カスケードの制御に関与している。また、このタンパク質は神経成長因子と協力して、神経細胞の発達と再生を促進する[Wes et al 1996]。

異常な遺伝子産物

機能亢進型のバリアントでは、MEK-ERKシグナルが増加する[Aoki et al 2013]。

SOS1

遺伝子の構造

SOS1は23個のエクソンからなり、150kdのマルチドメインタンパクをコードしている。遺伝子とタンパク質の情報の詳細なまとめは、表Aの遺伝子を参照。

病的バリアント

NSに関連したSOS1の病的ミスセンスバリアントは、RAS-MAPK経路を介したシグナルを増加させるhypermorphicである[Roberts et al 2007]。その大部分は高度に保存された部位に存在している。これらのバリアントは、SOS1の自己抑制の維持に関与する残基をコードするコドンに集まっている。このようなクラスターの一つは、PHドメインをコードするコドンに見られ、DHドメインのコンフォメーションを不安定にすることで、自己抑制コンフォメーションを破壊する可能性がある。別のクラスターは、DHドメインとREMドメインの間のらせん状リンカーをコードするコドンに存在する。3つ目のクラスターは、DHドメインとREMドメインの間の相互作用を媒介する残基のコドンに存在する。

正常な遺伝子産物

SOS1(son of sevenless homolog 1)タンパク質は、RAS-GEF(グアニンヌクレオチド交換因子)ドメイン、保存されたヒストン様フォールディング、Dblホモロジー(DH)ドメイン、プレクストリンホモロジー(PH)ドメイン、らせん状リンカー、RAS交換モチーフ(REM)、およびプロリンリッチ領域から構成されている。Dblホモロジードメインは、RACファミリーの低分子Gタンパク質(RAC-GEF)のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能している可能性がある。SOS1には、Cdc25ドメインにあるエフェクターサイトと、REMドメインとCdc25ドメインで形成されるアロステリックサイトの2つのRAS結合部位がある。アロステリックサイトにRASが結合すると、RAS-GEF活性が増強される。DH-PHモジュールは、この部位へのRASの結合を制御し、RAS-GEF活性の分子内阻害剤として作用していると考えられる。N末端全体がREM-Cdc25ドメインを阻害する統合ユニットとして機能している。

SOS1は、RASに特異的なグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)である。SOS1は、RASに特異的なグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)であり、分子内および分子間の複雑な相互作用により、自己抑制されている。受容体チロシンキナーゼ(RTK)の刺激を受けると、SOS1は細胞膜に集められ、そこで触媒的に活性化された構造を獲得する[Soisson et al 1998]。その後、SOS1はRAS-GDPをRAS-GTPに変換することでRAS-MAPK経路の活性化を触媒することになる。

異常な遺伝子産物

NSに関連したSOS1の病的バリアントは、自己抑制を無効にし、RAS-GEF活性を高めることでRASの活性化と下流のシグナル伝達を増加・延長させる[Roberts et al 2007Tartaglia et al 2007]。

がんと良性腫瘍

NSの他の所見がなく、単一の腫瘍として発生する散発性腫瘍(白血病および固形腫瘍を含む)は、生殖細胞系列には存在しないPTPN11KRASLZTR1NRASBRAF、またはMAP2K1の体細胞ヌクレオチドバリアントを有している可能性がある;したがって、これらの腫瘍に対する素因は遺伝しない。Catalogue of Somatic Mutations in Cancerを参照。

また、エクソン3の病的バリアントは、しばしば急性骨髄性白血病(AML)に発展し、予後不良で芽球が過剰なMDSの小児の19%に見られた。非症候性AML、特に単球サブタイプのFAB-MDは、PTPN11の病的バリアントが原因であることが示されている。これらの病的バリアントはすべて、チロシン-タンパク質ホスファターゼ非受容体タイプⅡ(SHP-2)の機能獲得を引き起こし、RAS-MAPK経路の長期にわたる活性化に起因する細胞増殖の増加という、JMMLの発がんにおける初期の開始病変を引き起こす可能性が高い。

PTPN11病的バリアントに関連する白血病のスペクトルは、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)にまで拡大されている。病的バリアントは、B細胞前駆体ALLの8%の人に観察されたが、T系ALLの小児には観察されなかった[Tartaglia et al 2004b]。さらに、 Bentires-Alj et al [2004]は、乳がん、肺がん、胃がん、神経芽細胞腫を含む固形がんにおけるSHP-2活性化PTPN11病的バリアントを報告している。


更新履歴:

  1. Gene Review著者: Judith E Allanson, MD.
    日本語訳者: 鳴海洋子(群馬県立小児医療センター遺伝科)
    Gene Review 最終更新日: 2008.10.8. 日本語訳最終更新日: 2009.4.5.
  2. GeneReviews著者: Judith E Allanson, MD and Amy E Roberts, MD.
    日本語訳者:洪本加奈(兵庫県立こども病院 臨床遺伝科)、森貞直哉(兵庫県立こども病院 臨床遺伝科)
    GeneReviews最終更新日: 2019.8.8 日本語訳最終更新日: 2021.5.7[in present]

原文: Noonan Syndrome

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