リンチ症候群
(Lynch Syndrome)

[Synonyms: HHNPCC遺伝性非ポリポーシス大腸がん( Hereditary Non-Polyposis Colon Cancer]

GeneReviews著者: Wendy Kohlmann ,MS and Stephan B Gruber ,MD ,PhD
日本語訳者:箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学)  櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)

GeneReviews最終更新日: 2021.2.4 日本語訳最終更新日: 2021.4.21

原文 Lynch Syndrome


要約

疾患の特徴

Lynch症候群は大腸がん (CRC )および 子宮体部 ,卵巣 ,胃 , 小腸 ,尿路, 胆 菅 , 脳(通常,膠芽腫)および皮膚(脂腺腺腫,脂腺がん,ケラトアカントーマ) ,膵,前立腺のがんのリスクが上昇することを特徴とする .がんのリスクおよび発症年齢は,関連する遺伝子によって幅がある.Lynch症候群の患者において,その他の様々ながん腫(乳房,肉腫,副腎皮質がんなど)が報告されている.しかしながら, これらのがんのリスクが高まることを示す十分なデータはない.

診断・検査 

Lynch症候群は ,発端者において ,分子遺伝学的検査によって ,生殖細胞系列のMLH1MSH2MSH6PMS2のいずれかの遺伝子にヘテロ接合性の病的バリアント ,もしくはEPCAM遺伝子の欠失が同定されれば ,確定診断となる .

臨床的マネジメント 

症状の治療:
大腸腺腫:1-2年ごとに大腸内視鏡でフォロー し,内視鏡的ポリープ切除術を完遂する. 結腸がんに ついては ,臨床的状況や年齢などの要因に応じて、部分切除または拡大切除を選択する.直腸がんの患者に対しては, 直腸切除術または全大腸切除術が適応となる .その他の腫瘍については ,一般集団のマネジメントと同様に行う .

一次症状の予防:
予防的子宮および両側卵管卵巣摘出術は ,出産を終えた後に考慮されうる .定期的な大腸内視鏡検査とポリープ切除術が予防的措置として有効であるため ,Lynch症候群であることがわかっている人に対する大腸がん発症前の予防的大腸切除術は ,一般的には推奨されない .Lynch症候群に対するアスピリン療法がCRCのリスクを減らすことが示されている.

サーベイランス
1~2年 ごとの前がん 病変のポリープ切除術を含む大腸内視鏡検査 .開始年齢は20~25歳の間 ,もしくは家系内で最も早く大腸がんと診断された年齢よりも2~5歳若い年齢の ,いずれか早いほうに準ずる .女性に対しては子宮体がん,卵巣がんの症状について 教育を行う.1~2年ごとに経腟超音波検査や子宮体部細胞診を考慮する.アジア系の祖先 を持つ胃がんの家族歴のある者に対しては,30~35歳になったら, 3~5年ごとの上部消化管内視鏡検査を検討する.必要に応じて適切な治療を行うために,生検でH pylori感染の有無を評価するべきである.遠位小腸がんに対しては,カプセル内視鏡や小腸腸管造影を考慮する.尿路上皮 がんの家族歴がある人には,顕微鏡的血尿を特定するために,尿細胞診による尿検査を検討する.膵 がんの家族歴がある人には,超音波内視鏡検査とMRI/MR 胆管膵臓撮影を交互に行う膵 がんスクリーニングを検討する。

避けるべき化学物質/環境:
肥満,喫煙,2型糖尿病,高コレステロール

リスクのある血縁者に対する評価
発端者においてLynch症候群の診断が確定すれば ,早期のサーベイランスと介入を受けることが有益である第一度近親者を明らかにするために ,Lynch症候群に関連する病的バリアントを調べる分子遺伝学的検査を提案するべきである .18歳未満のリスクのある血縁者に対するLynch症候群の分子遺伝学的検査は一般的に推奨されないが ,がん発症歴が早い家系では ,18歳になる前に発症前検査をすることも考慮されうる .

遺伝カウンセリング 

Lynch症候群は常染色体優性遺伝の形式をとり ,生殖細胞系列のMLH1MSH2MSH6PMS2のいずれかの遺伝子にヘテロ接合性の病的バリアント,もしくはEPCAM遺伝子の欠失を原因とする.MLH1 がメチル化によって先天的に不活性化しているLynch症候群患者は,典型的には孤発例であるが,高メチル化が非メンデル遺伝形式によって受け継がれている家系も報告されている.患者の大部分は親から 病的バリアントを受け継いでいる .しかしながら ,不完全浸透であること ,がんの発症年齢にばらつきがあること ,スクリーニングまたは予防的手術により発がんリスクが軽減されること ,あるいは早期死亡といったことから ,発端者がLynch症候群の原因遺伝子に病的バリアントを有していても ,その親が必ずしもがんを発症しているとは限らない .Lynch症候群患者の子どもは50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ .リスクのある妊娠に対し ,家系内における病的バリアントが同定されていれば ,出生前診断は可能である .

訳注:日本では ,本症に対する出生前診断や着床前診断は行われない .いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である .


診断

Lynch症候群のコンセンサスとなる臨床診断基準は確立されていない.

Lynch症候群が疑われる所見

以下の状態があてはまる発端者では ,Lynch症候群を疑うべきである:

注 :分子遺伝学的検査は ,理想的にはLynch症候群関連がんの患者から始める .しかしながら ,家系によっては 生存している罹患者がいない ,あるいは罹患者が検査を望まないこともありうる .

注:PREMM5 [Kastrinos et al 2017] や MMRPredict [Barnetson et al 2006],MMRPro [Chen et al 2006]を含む ,いくつかのリスク評価モデルにより ,表 .1に記載されている遺伝子のいずれかに生殖細胞系列の病的バリアントが検出される可能性が予測される .いくつかのデータによると,PREMM5予測モデルでは,2.5%以上を閾値とすることが有用であることが示唆されている.
*改訂ベセスダガイドラインおよび全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)ガイドライン より引用;ここをクリック(無料の登録とログインが必要)

Lynch症候群の集団スクリーニング戦略

Lynch症候群のスクリーニングのガイドラインがNCCNから発表された .ここをクリック(無料の登録とログインが必要) .

スクリーニングの手引きには以下のものが含まれる:

腫瘍組織における標的分子遺伝学的検査

散発性CRCの約15%でMMR欠失があることが示されている.CRCのうち,どれがLynch関連生殖細胞系列病的バリアントによるものではないかを判断するためには,MSI(-high)を有するすべてのCRC、またはIHCでMLH1/PMS2が検出されない腫瘍について、追加の腫瘍組織検査を行う必要がある .標的腫瘍組織検査は以下のもの が挙げられる:

注 :プロモーターのメチル化によるMLH1の先天的な不活性化でない限り,Lynch症候群関連がんでは , MLH1 プロモーターの高度メチル化はみられない(鑑別診断の散発性大腸がんを参照) .

注 :(1) 体細胞のBRAF病的バリアント c.1799T>A (p.Val600Glu; NM_004333.4)  はLynch症候群 患者の大腸腫瘍組織ではめったに 起こらないが,全CRCの約15%にみられる(鑑別診断の散発性大腸がんを参照) .(2) BRAF 病的バリアントは散発性の 子宮体がんで は一般的ではない .それゆえ ,BRAF検査は , 子宮体がんにおいて散発性であるか ,Lynch症候群に関連するかを鑑別するためには有用ではない .(3)最近では,腫瘍組織のMLH1プロモーターメチル化検査の方が,体細胞のBRAFp.Val600Gluの標的配列解析よりも,Lynch症候群のスクリーニング検査としては有用であると考えられている [Newton et al 2014].

確定診断

発端者では ,表1に記載されている遺伝子のいずれかにヘテロ接合性の生殖細胞系列病的バリアントが検出されることによって ,Lynch症候群の確定診断となる .
注釈:表1に記載されている遺伝子のいずれかにヘテロ接合性の意義不明なバリアントが検出されても,この疾患の診断の確定または除外にはならない.
分子遺伝学的検査には ,マルチジーンパネルまたはDNAメチル化 試験があり (Option 1参照) , 単一遺伝子検査 (Option2参照) , 包括的ゲノム検査  (Option 3参照) も考慮してもよい.

オプション1(推奨)

MLH1 , MSH2 , MSH6PMS2 (表1参照)および他の関連遺伝子(鑑別診断参照),EPCAMの欠失解析を含むマルチジーンパネル が,表現型を説明できない遺伝子の意義不明または病的バリアントの同定を制限しつつ,最も合理的なコストで遺伝的状態を同定できると考えられる [Idos et al 2019Heald et al 2020] .注釈:(1)マルチジーンパネルに含まれる遺伝子や検査の精度は ,検査機関によって異なっているだけでなく ,時代とともに変化する .(2)マルチジーンパネルには ,このGeneReviewで扱っている病態に関連のない遺伝子が含まれている場合もある . (3) 検査機関 によっては臨床医が指定した遺伝子を含むカスタム設計された検査機関 独自のパネルや ,表現型に焦点を当てたエクソーム解析パネルといった選択肢が存在することもある .(4)こうした検査で用いられる手法には ,配列解析 ,欠失・重解析 ,他の非配列の基礎検査がある .

マルチジーンパネル に関する概論はここをクリック .遺伝学的検査を発注する臨床医向けのより詳細な情報についてはコチラを参照のこと .

MLH1プロモーターのDNAメチル化 試験.Lynch症候群はプロモーターのメチル化によるMLH1の先天的な不活性化を原因とすることもある.このエピ変異は通常すべての組織においてみられ,ほとんどは孤発例(家系内 に1人だけ発症)であるが,少数の家系において,MLH1プロモーターのメチル化が遺伝することが報告されている.

オプション2(推奨度は低い)

単一遺伝子検査 腫瘍組織におけるIHC検査では ,特定のMMR遺伝子の機能が失われている可能性が高いことを示唆する ,1つ以上のMMR遺伝子の発現の消失が見られることがある(表2参照) .しかしながら ,この関連は100%ではなく ,他のMMR遺伝子やMMR遺伝子以外のものを含む,1つ以上の遺伝子について調べる必要がある可能性がある .そのため ,マルチジーンパネルを用いた分子遺伝学的検査の方が, 単一遺伝子検査より費用対効果が高くなることもよくある .

オプション3

エクソーム解析やゲノムシークエンスなどの ,包括的 なゲノム検査も(利用可能な場合)考慮される .このような検査は ,事前に考慮されなかった診断を提供あるいは示唆しうる(例:異なる遺伝子または ,類似の臨床症状を引き起こす病的バリアント) .このオプションを選ぶ場合は,関連のある遺伝子がきちんとカバーされていること,表現型に基づいて分析をおこなうことが重要である.

包括的なゲノム 検査についての詳細は ,ここをクリック .遺伝学的検査を発注する臨床医向けの ,より詳細な情報についてはコチラを参照のこと .

表1 Lynch症候群に用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 この遺伝子の病的バリアントに原因があると考えられるLynch症候群の割合2 この方法により検出可能な病的バリアント3
有する割合
配列解析4,5,6 遺伝子標的欠失重複解析5,6,7
MLH18 15%-40% 80%-90% 10%-20%
MSH2 20%-40% 60%-80% 20%-40%
MSH6 12%-35% 90%-100% 0%-10%
PMS29,10 5%-25% 45%-80% 9 20%-55% 9
EPCAM11 <10% 報告なし 100% 12
  1. 表 A .遺伝子と染色体座位とタンパク質のデータベース参照
  2. 大腸がんおよび子宮体がんのLynch症候群ユニバーサルスクリーニングによって示されたデータ
  3. 分子遺伝学の項の ,この遺伝子上のアレルのバリアント検出情報参照
  4. 配列解析で検出される変異は非病的バリアント ,おそらく非病的バリアント ,意義不明な バリアント ,おそらく病的バリアント ,病的バリアントがある .病的バリアントには小規模な遺伝子内欠失/挿入やミスセンス ,ナンセンス ,スプライス部位 バリアントが含まれる . エクソンや全遺伝子の欠失/重複 の検出には特定の配列データ解析,または別の分子学的手法を用いることが必要となる(脚注7参照) .配列解析結果に対する解釈はここをクリック .
  5. Smith et al [2016]van der Klift et al [2016]Yurgelun et al [2017]
  6. 特定の創始者バリアントによって集団ごと に過剰発現が起こるため,割合は変化する可能性がある.
  7. 標的遺伝子の欠失/重複解析では,遺伝子内の欠失や重複が検出できる.検査方法は,遺伝子パネルの特定のデータ解析や定量的PCR,ロングレンジPCR,MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法,単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどである.
  8. 体細胞における機能的なアレルのヘテロ接合性の喪失(LOH)を伴うMLH1のメチル化による 先天的な不活性化 が ,Lynch症候群の稀な原因として報告されている .こういった症例では ,MLH1の配列解析や重複/欠失解析では検出されない(分子遺伝学の項参照) .
  9. PMS2と偽遺伝子の相同性が高いため ,この遺伝子の検査や結果の解釈は難しい .PMS2の病的バリアントが家系内に疑われる場合は ,PMS2解析のACMGガイドラインに準拠している 検査機関で ,この遺伝子検査の専門的技術を持つところを選択するべきである [Hegde et al 2014] .PMS2の解析には、ロングレンジPCR,相補的DNA配列解析などが考案されている [Li et al 2015aJansen et al 2020].
  10. PMS2における 大規模な再 構成を シークエンスして同定する 方法は 経時的に発展し改良されてきており ,罹患集団において各方法で検出された病的バリアントの割合を決定することは困難である .配列解析によるバリアントの同定の方がより一般的であるが,大規模な 再 構成はこの遺伝子の病的バリアントの 20%-50% を占める可能性がある [van der Klift et al 2010 , Vaughn et al 2010 , Smith et al 2016van der Klift et al 2016] .
  11. EPCAMは ミスマッチ修復遺伝子ではないが ,3’領域の 生殖細胞系列の欠失は ,下流に近接するMSH2を高度にメチル化することで転写抑制させる [Niessen et al 2009 , Goel et al 2011 , Kuiper et al 2011] .
    12 .EPCAMの生殖細胞系列 の欠失は ,近接するMSH2のアレルを高度にメチル化することで転写抑制させる .近接するMSH2のアレル自体は変異していない(分子 学的病因の項参照) .欠失解析を含まないEPCAMの配列解析はLynch症候群の診断には適切ではない .大規模な再構成の検出方法を利用するべきである(脚注7参照).

表 2 .腫瘍組織検査結果とその解釈 ,および追加検査 のオプション

腫瘍検査1 考えられる病因 追加検査のオプション3,4,5
免疫組織染色 MSI BRAFV
600E2
MLH1
MLH1 MSH2 MSH6 PMS2 プロモーターのメチル化
+ + + + MSS    
  • 散発性がん
  • 他の遺伝性腫瘍症候群
なし6
+ + + + MSI-High    
  • 散発性がん
  • MMR遺伝子の生殖細胞系列病的バリアント
  • MMR遺伝子の生殖細胞系列検査または生殖細胞系列/腫瘍組織ペア解析
  • 生殖細胞系列検査が陰性でペア解析を実施していなければ,腫瘍組織のMMR遺伝子検査を考慮
        MSI-High    
  • 散発性がん
  • MMR遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアント
 
  • IHC
  • IHCができない場合,MMR遺伝子の生殖細胞系列検査または生殖細胞系列/腫瘍組織ペア解析
  • 生殖細胞系列検査が陰性でペア解析を実施していなければ,腫瘍組織のMMR遺伝子検査を考慮
- + + -      
  • 散発性がん
  • MLH1生殖細胞系列の病的バリアント
  • PMS2生殖細胞系列の病的バリアント(稀)
  • 腫瘍組織のBRAF標的検査と/またはMLH1プロモーターのメチル化検査
  • BRAF/MLH1メチル化がなければ,MMR遺伝子の生殖細胞系列検査または生殖細胞系列/腫瘍組織ペア解析
  • 生殖細胞系列検査が陰性でペア解析を実施していなければ,腫瘍組織のMMR遺伝子検査を考慮
- + + -   陽性  
  • 散発性がん
  • MLH1生殖細胞系列の病的バリアント(稀)
  • MLH1の先天的なエピ変異
  • 若年発症(50歳未満)または明らかな家族歴がある場合:MMR遺伝子の生殖細胞系列検査
  • 上記以外:追加の検査なし
  • 若年発症のみ:先天的なMLH1のエピ変異検査7
   
- + + -   陰性 陽性
  • 散発性がん
  • MLH1生殖細胞系列の病的バリアント(稀)
  • 先天的なMLH1のエピ変異
- + + -   陰性 陰性
  • MLH1生殖細胞系列の病的バリアント
  • PMS2生殖細胞系列の病的バリアント(稀)
  • 散発性がん
  • MMR遺伝子の生殖細胞系列検査または生殖細胞系列/腫瘍組織ペア解析
  • 生殖細胞系列検査が陰性でペア解析を実施していなければ,腫瘍組織のMMR遺伝子検査を考慮
         
+ - - +      
  • MSH2/EPCAM生殖細胞系列の病的バリアント
  • MSH6生殖細胞系列病的バリアント(稀)
  • 散発性がん
+ + + -      
  • PMS2生殖細胞系列病的バリアント
  • MLH1生殖細胞系列病的バリアント
  • 散発性がん
+ - + +      
  • MSH2/EPCAM生殖細胞系列の病的バリアント
  • 散発性がん
+ + - +      
  • MSH6生殖細胞系列病的バリアント
  • MSH2/EPCAM生殖細胞系列の病的バリアント
  • 散発性がん(治療の影響8)
  • MMR遺伝子の生殖細胞系列検査または生殖細胞系列/腫瘍組織ペア解析
  • 生殖細胞系列検査が陰性でペア解析を実施していなければ,腫瘍組織のMMR遺伝子検査を考慮
  • 必要に応じて,MSI検査あるいは治療していない腫瘍組織で再度IHCを考慮
- + + +      
  • 散発性がん:MLH1プロモーターのメチル化,MLH1または PMS2体細胞病的バリアント
  • MLH1生殖細胞系列病的バリアント
  • PMS2生殖細胞系列の病的バリアント
  • 腫瘍組織のBRAF標的検査と/またはMLH1プロモーターのメチル化検査
  • BRAF/MLH1メチル化がなえれば,MMR遺伝子の生殖細胞系列検査または生殖細胞系列/腫瘍組織ペア解析
  • 生殖細胞系列検査が陰性でペア解析を実施していなければ,腫瘍組織のMMR遺伝子検査を考慮
- - - -      
  • MMR遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアント
  • 散発性がん
  • BRAF標的検査と/またはMLH1プロモーターのメチル化検査および,MMR遺伝子の生殖細胞系列検査または生殖細胞系列/腫瘍組織ペア解析(MLH1のメチル化検査を含む)
  • 生殖細胞系列検査が陰性でペア解析を実施していなければ,腫瘍組織のMMR遺伝子検査を考慮

Gupta et al [2019]から引用

空欄は,検査が未実施もしくはその結果が検査手順に影響しないことを意味する.
+ =正常なタンパク染色,- =タンパク染色が消失,IHC=免疫組織化染色,MMR=ミスマッチ修復,MSI=マイクロサテライト不安定性,MSS=マイクロサテライト安定

  1. 大腸がんおよび子宮体がんにおける腫瘍組織検査手順である.他のリンチ症候群関連腫瘍での有効性に関してはデータが乏しい.
  2. BRAFの検査は大腸がん以外の腫瘍には適さない.
  3. MMR欠失が認められる腫瘍の45-68%は,体細胞の両アレルの病的バリアントによる.体細胞で両アレルの病的バリアントが同定された場合,罹患者およびその血縁者は,Lynch症候群としてではなく,がんの家族歴に応じて管理されるべきである.
  4. 生殖細胞系列の遺伝学的検査を実施する前に,適切な検査前遺伝カウンセリングを実施するべきである.
  5. 生殖細胞系列病的バリアントの検査についての情報は,表1を参照.マルチジーンパネルは,MLH1MSH2MSH6PMS2,およびEPCAMを含むことが推奨される.他の大腸がんの原因となる遺伝子(MUTYHPOLEPOLD1NTHL1など)も考慮するべきである(鑑別診断の項参照).
  6. 検査に使われた検体が散発性大腸がん(たまたま併発したリンチ症候群に関係しないがん)であった可能性もあるので,家族歴が濃厚な場合(アムステルダム基準を満たしている場合など)や他に遺伝性腫瘍症候群の特徴がみられる場合は,発端者に対して追加の検査,もしくは他の罹患家系員に対して腫瘍組織検査が必要になる場合がある.
  7. 先天的なMLH1のエピ変異を調べる検査は,血液や他の正常組織を用いてMLH1プロモーターの高メチル化を解析する.
  8. 直腸腫瘍においてMSH6のIHCが染まらない場合は,治療(NAC;術前補助化学療法)の影響が考えられる.

疾患の特徴

臨床像

Lynch症候群の罹患者は大腸がん,および子宮体部,卵巣,胃,小腸,尿路,胆管,脳(通常,膠芽腫),皮膚(脂腺腺腫,脂腺がん,ケラトアカントーマ),膵,前立腺などのがんの発症リスクが上昇する(表3).

表3.一般集団と比較した70歳までのLynch症候群罹患者の遺伝子ごとのがん発症リスク

がんの部位 一般集団の74歳までのリスク1 70歳までのがんのリスク2,3
MLH1 MSH2 MSH6 PMS2 EPCAM
男女 男女
全体 20% 78% 64% 77% 71% 62% 28% 22%  
大腸 2% 4 44% 53% 42% 46% 20% 12% 3% 75%5
子宮体部 1% 4 35%   46%   41%   13% 12%5
卵巣 0.7% 11%   17%   11%   3%
1% 8% 16% 10% 16% 2% 4% 4%  
小腸 <1%
尿管,腎臓 <1% 3% 4% 13% 16% 6% 2%    
膀胱 <1% 3% 5% 7% 9% 1% 4%    
前立腺 4%    7%    16%    5% 5%  
<1% 2% 1% 2% 4% 1% 2%    
乳房 5% 4 11%   13%   11%   8%  
  1. 全世界的なデータから算出した両性を合算した累積リスク(0-74歳). [Bray et al 2018Ferlay et al 2018]; 地域特有のがんのリスクについては gco​.iarc.fr/today/fact-sheets-cancers を参照.
  2. 臓器特異的がんのリスクは,独立したテストおよびclass4(病的の可能性の高い)とclass5(病的)の6,350人を51,646年×人追跡した調査 [Dominguez-Valentin et al 2020]を含む検証コホートを用いた国際多施設共同前向き観察研究(Prospective Lynch Syndrome Database)を基に算出.
  3. EPCAMの欠失におけるがんのリスクのデータは限定的である(遺伝子ごとの表現型との関連の項参照).
  4. USの一般集団の生涯(生誕~死亡)累積がんリスクは,大腸がん4%,子宮体がん3%,乳がん13%である [Siegel et al 2020].
  5. 2020年12月現在, Prospective Lynch Syndrome DatabaseからEPCAMに関するデータは出ていない.この表の情報はKempers et al [2011]から入手したものである.この著者らによると,CRCのリスクはMLH1MSH2のヘテロ接合体と同様であるとみている.

Dowty et al [2013]では,高度な統計分析を用いて,Lynch症候群の(表3にあるような)平均的ながんのリスクは,正確なリスク分布を表しているわけではないことを明らかにした.例えば,Lynch症候群のCRCの平均リスクは30-40%であるが,CRCのリスクが低い(<10%)人がかなりの割合でいる一方,同様にかなりの割合でCRCリスクの高い (>80%)人もいる.がんのリスク分布は,遺伝的および/または環境的要因により変化する.

大腸がん(CRC).MLH1 および MHS2 の病的バリアントに関連するCRCのリスクは,MSH6 または PMS2の病的バリアントに関わるリスクよりも著しく高い.留意点として,コホート研究に基づくリスク計算は,とりわけPMS2においてProspective Lynch Syndrome Databaseよりも高い(9-20% vs 3%).MSH6 および PMS2の病的バリアントの大腸がん発症平均年齢もまた,MLH1 および MHS2 の病的バリアントに関連するCRCの発症よりも遅く,MLH1MHS2 では44歳だが,MSH6 で42-69歳,PMS2で61-66歳である [Gupta et al 2019NCCN 2020].これらのデータにより,若年発症の家族歴がない限り,MSH6PMS2の病的バリアント保有者よりもMLH1 またはMHS2 の病的バリアント保有者の方が,より早期にCRCのスクリーニングを開始した方がよいことを示している.

MSI(マイクロサテライト不安定性)のCRCは,MSS(マイクロサテライト安定性)の腫瘍より予後は良好な傾向にあり,活発な抗腫瘍免疫反応を反映している可能性がある.免疫チェックポイント阻害剤のような抗腫瘍免疫反応を支持する治療は,MSI-highの腫瘍で非常に奏効を示す.

Lynch症候群患者では,CRCの再発リスクが高まる.計871人を平均91カ月追跡したものを含む6つの研究のメタアナリシスでは,結腸部分切除をした患者では23%が異時性のがんを発症したが,結腸切除術(亜全摘または回腸S状結腸吻合術)を実施した患者では6%だった.部分切除を選択するMLH1 またはMHS2 の病的バリアント保有者の異時性CRCのリスクは43%と高い.現存するデータでは,MSH6の病的バリアント保有者では,異時性CRCのリスクは低く,PMS2の病的バリアント保有者ではまったくないか無視できる程度と考えられる.

子宮体がん.Prospective Lynch Syndrome Databaseによれば,子宮体がんの発症リスクは MSH2 MSH6の病的バリアントが最も高く(70歳までにそれぞれ46%,41%),次にMLH1 (35%)であり,コホート研究も同様である[Gupta et al 2019]. PMS2の病的バリアント保有者では,研究によって12-26%と幅がある.

子宮体がんの診断時年齢中央値はMLH1 ,MSH2PMS2では47~50歳で,MSH6では53~55歳である.先に大腸がんを発症したLynch症候群女性のその後の子宮体がんの発症リスクは,大腸がん診断後10年以内で26%と推定される[Obermair et al 2010].CRCの場合と同様,子宮体がんでもMSIは予後良好である [Ramchander et al 2020].

大腸がんと子宮体がんの両方を発症したLynch症候群女性において,約50%は子宮体がんが先に発症する[Lu et al 2005].

MLH1MSH2 ,MSH6の生殖細胞系列病的バリアントを有する女性の卵巣がんのリスクは,70歳までに11-17%である.コホート研究で示されたリスクは,より幅広い.PMS2の生殖細胞系列病的バリアントを有する女性の卵巣がんのリスクは相対的に低い.Lynch症候群関連卵巣がんの診断年齢中央値は43-46歳と報告されている.Lynch症候群関連卵巣がんは,ほとんどが類内膜の組織型である [Crosbie et al 2020].境界悪性卵巣腫瘍はLynch症候群とは関連がないようである[Watson et al 2001].

胃および小腸がん.MLH1 および MHS2 の病的バリアント保有者の胃および小腸がんのリスクは8-16%である.MSH6PMS2の病的バリアント保有者のリスクは相対的に低い.Lynch症候群で最も頻度の高い腸管型腺がんは[Aarnio et al 1997],CDH1の病的バリアントに起因する遺伝性びまん性胃がんによくみられるびまん性胃がんとは組織型が異なる[Guilford et al 1999].しかし,Capelle ら[2010]は,Lynch症候群関連胃がんの20%はびまん性であると報告している.

小腸では,十二指腸と空腸の発生率が最も高く,上部消化管内視鏡検査で約50%の頻度で発見される[Schulmann et al 2005].小腸がんの大部分が腺がんである[Rodriguez-Bigas et al 1998Schulmann et al 2005].
尿路系がん.Lynch症候群関連尿路系がんで最も一般的なのは,尿管,腎盂,腎臓の移行上皮がんである.膀胱がんのリスクもLynch症候群の患者で上昇する[Dominguez-Valentin et al 2020].尿路系がんのリスクは,性別と関連する遺伝子によって様々である(表 3参照).Lynch症候群ですでに大腸がんの診断を受けた患者は,膀胱がん(7%)および他の尿路系がん(腎,腎盂,尿管)のリスク(13%)も上昇する [Win et al 2013].

前立腺がん.転移性前立腺がんの男性692名のうち4名(0.5%) [Pritchard et al 2016],および遺伝学的検査を未検の前立腺がん男性1,501名のうち26名(1.7%)にミスマッチ修復(MMR)遺伝子の病的バリアントが検出された [Pritzlaff et al 2020].Prospective Lynch Syndrome Databaseでは,MHS2 の病的バリアントを有する男性の前立腺がんのリスクは16%,他のMMR遺伝子の病的バリアントを有する男性では,5-7%と推定している.前立腺がんの診断年齢中央値は59-63歳である [Gupta et al 2019].

脳腫瘍.デンマーク国立遺伝性非ポリポーシス大腸がん登録のデータでは,288のLynch症候群家系のうち41家系(14%)で原発の脳腫瘍が確認され,主にMHS2 病的バリアントの家系であった.

組織型は膠芽腫が最も多く(56%),続いて星細胞腫(22%),乏突起膠腫(9%)が続く [Therkildsen et al 2015]

Lynch症候群の患者にみられる脂腺腫瘍には,脂腺腺腫,脂腺上皮腫,脂腺がん,ケラトアカントーマが含まれる.Lynch症候群に関連した脂腺腫瘍は一般的にMSI-highを呈する[Entius et al 2000Machin et al 2002].Lynch症候群での脂腺腫瘍は1~9%に検出されているが,現存するデータは限定的である [Ponti et al 2006South et al 2008Ferreira et al 2020].

膵がん.多くの膵がんコホート研究で,MMR遺伝子の病的バリアントが同定されている [Grant et al 2015Salo-Mullen et al 2015Takeuchi et al 2018Yurgelun et al 2019].

その他のがん

乳がん.Prospective Lynch Syndrome Databaseのデータからは,他のコホート研究 [Gupta et al 2019]で示されているのと同様に,70歳までのリスクは3-18%と示されており,一般集団よりはわずかに増加する.現在のところ,乳がんの集団的なスクリーニングを推奨したり,乳がんの既往歴や家族歴に基づいたスクリーニングを支持するのに十分なエビデンスはない.

その他の発がんリスク.他にいくつかのがんがLynch症候群で発症すると報告されている.一部の症例において,腫瘍組織のMSIおよび/またはIHC検査によって,大腸以外のがんと罹患者の生殖細胞系列病的バリアントが一致することが示されている.これらの所見は,MMR遺伝子の病的バリアントの存在ががんの発症に寄与することを示唆しているが,これらのがんの発症リスクがLynch症候群において上昇すると結論付けるためのデータはまだ十分ではない.

Lynch症候群の亜型

Muir-Torre症候群は,いずれもLynch症候群によくみられる,皮脂腺腫瘍と1種類以上の内臓の悪性腫瘍を併発する,Lynch症候群の稀な亜種である.皮脂腺腫瘍には,脂腺腺腫,脂腺上皮腫,脂腺がん,ケラトアカントーマが含まれる [John & Schwartz 2016] .

Turcot症候群は,CRCあるいは1つ以上の大腸腺腫に中枢神経腫瘍を併発した患者を示すのに用いられた用語である.Turcot症候群は通常いずれかのMMR遺伝子の病的バリアント,あるいはAPC病的バリアントを原因とする(鑑別診断の項およびAPC関連ポリポーシスを参照).中枢神経腫瘍の病理像によって根底にある遺伝的要因を区別するのに役立つ:APC病的バリアントは髄芽腫と,MMR遺伝子の病的バリアントは膠芽腫と関連することが多い.

先天性のMMR欠失(CMMRDは,MLH1MSH2MSH6またはPMS2の両アレルの病的バリアントにより,幼少期よりがんを発症しやすくなる稀な症候群である.罹患者はしばしば10代より前にCRCあるいは小腸がんを発症する.CMMRD患者146名のレビューでは,大腸腺腫が最も頻繁にみられた所見であった[Wimmer et al 2014].罹患者における皮膚の表現型は,そのほとんどにカフェオレ斑が現れる神経線維腫症I型と非常に類似する[Wimmer 2012Bakry et al 2014].血液がんと脳腫瘍も報告されている [Wimmer & Etzler 2008Durno et al 2010Bakry et al 2014].
CMMRDを疑う家族歴の特徴として,Lynch症候群の家族歴,両親が近親婚である,および/または少なくとも一人の親がLynch症候群の臨床所見を呈するなどが挙げられる.しかしながら,CMMRDと確定診断された小児の多くがLynch症候群の家族歴がないため,この診断は家族歴がないからといって除外されるべきではない[Bakry et al 2014].欧州のコンソーシアムは,CMMRDの検査をする際の臨床基準を作成した [Wimmer et al 2014Suerink et al 2020].

遺伝子と表現型の関連

Lynch症候群に関連する遺伝子の種類によって,がんの発症リスクは様々である(表3参照).
MSH6 およびPMS2の生殖細胞系列病的バリアントでは,浸透率が低く,CRCの診断がより高齢であると推定される[Goodenberger et al 2016Haraldsdottir et al 2017].

MLH1

MLH1の病的バリアントのヘテロ接合体ではCRCのリスクが最も高いが,大腸がん以外のリスクはMSH2のヘテロ接合体よりも低い.MLH1は先天的なエピ変異によって抑制されることもある(MLH1プロモーターのメチル化).この場合,現存するエビデンスからは,先天的なMLH1のエピ変異は,様々な種類の原発腫瘍のリスクが高く,若年発症であるなど,重度のLynch症候群の表現型を呈することが示唆されている [Pinto et al 2018].

MSH2

MSH2の病的バリアントのヘテロ接合体では大腸以外のがんのリスクが高い.MSH2病的バリアントは他の3つのMMR遺伝子の病的バリアントに比べて,Muir-Torre亜型のLynch症候群の罹患者で高頻度に報告されている[Everett et al 2014Lamba et al 2015Jessup et al 2016].

MSH6

MSH6の病的バリアントを有する患者のCRCでは, MLH1またはMSH2の病的バリアントを有する罹患者よりも発症が遅く,がんが遠位大腸に局在する傾向がある.MSH6の病的バリアントを有する患者では, MSH2のヘテロ接合体よりCRCのリスクはやや低く,子宮体がんのリスクはほぼ同様であることが報告されている.MSH6はモノヌクレオチドリピートの修復に優先的に関与しており,モノヌクレオチドマーカーはすべてのMSIパネルに含まれているわけではないため,MSI検査でMSH6関連のがんが見逃される可能性がある.

PMS2

PMS2の病的バリアントのヘテロ接合体は,いずれのLynch症候群関連がんにおいても,リスクが最も低い(22%) [Dominguez-Valentin et al 2020] .しかしながら,CRCの全体のリスクは低いが,発症年齢が低いことは変わらない.PMS2の病的バリアントを有する234名を調べた研究では,8%が30歳より前に大腸がんと診断されている[Goodenberger et al 2016].

EPCAM

エピジェネティックにMSH2 の転写抑制を起こすEPCAM欠失は,大腸がんのリスクを著しく上昇させる. EPCAM欠失があると,一般的にCRCの発症年齢が若く,CRCの累積リスクは75%に達する. MSH2の病的バリアント保有者に比べ,EPCAM欠失例の方が子宮体がんなどの消化器以外の腫瘍を発症することは稀である[Kempers et al 2011].

遺伝型と表現型の関連

EPCAM大腸以外のがんのリスクは欠失の程度に依存する.EPCAMの3’側の欠失による大腸以外のがんのリスクは低いが,MSH2を含む欠失の場合は,MSH2遺伝子内の病的バリアントと同様である[Tutlewska et al 2013].

浸透率 

EPCAMあるいはMMR遺伝子の病的バリアントに関連したCRCおよび大腸以外のがんの浸透率は100%より少ない(表 3参照).ゆえに,がんの要因となるMMR遺伝子の病的バリアントやEPCAM欠失があっても,がんを発症しない場合がある.

病名

Lynch症候群は遺伝性非ポリポーシス大腸がん(hereditary non-polyposis colorectal cancer,HNPCC)とも呼ばれることがある.しかしながら,最近では,HNPCCはLynch症候群をはじめとするMMR欠失型およびMMR陽性型の遺伝性非ポリポーシス大腸がんを(遺伝的な要因が同定されていなくても)包括している一方,Lynch症候群の診断は, EPCAMまたはMMR遺伝子の病的バリアント,あるいは先天的なMLH1のエピ変異の同定が必要とされる.

頻度

一般集団におけるLynch症候群の頻度は1:279と推定されている(MLH1 が1/1,946, MSH2が1/2,841, MSH6が1/758, PMS2が1/714) [Win et al 2017].
Lynch症候群は全CRCのおよそ3%,子宮体がんの3%を占めている [Moreira et al 2012Jiang et al 2019Kahn et al 2019Dong et al 2020] .


遺伝学的に関連する疾患

GeneReview に記載されている疾患の他に,MLH1MSH2MSH6PMS2の生殖細胞系列病的バリアントに関連する表現型は知られていない.

EPCAMの病的バリアントは,常染色体劣性疾患である先天性腸上皮異形成症を伴う5型下痢症(DIAR5)の原因となる (OMIM 613217).

散発性腫瘍(大腸及び子宮体がんを含む)では(MSIおよび/またはIHC分析によって)ミスマッチ修復(MMR)の欠失が見られるが,これはメチル化あるいは両アレル性のMLH1MSH2MSH6PMS2の体細胞性病的バリアントによるものであって,生殖細胞系列にはみられず,これらの腫瘍の要因は遺伝性ではない[Haraldsdottir et al 2014].


鑑別診断

遺伝性腫瘍症候群

表4. Lynch症候群の鑑別診断にあがる大腸がんのリスクを高める遺伝性腫瘍症候群

遺伝子 疾患 遺伝形式 ポリープ 大腸がん 他の関連がん/ 臨床的特徴
リスク 発症年齢中央値
RPS20 RPS20-関連遺伝性非ポリポーシス CRC1 AD なし 高い (MMR 陽性腫瘍) 成人 他の関連がんや臨床的特徴はない
APC 家族性腺腫性ポリポーシス (FAP)
APC-関連ポリポーシス参照.)
AD 大腸・胃・十二指腸の腺腫 (累計100個を超えるポリープ) 治療しなければ100%
  • 39歳(34-43歳)
  • ポリープの診断: 16歳 (7-36歳)
  • CHRPE
  • 骨腫, 過剰歯, 歯牙腫
  • デスモイド, 類表皮嚢胞
  • 髄芽腫, 甲状腺乳頭がん, 肝芽腫, 膵・胃・十二指腸がんのリスク↑
軽症型家族性腺腫性ポリポーシス (AFAP)
APC-関連ポリポーシス参照.)
AD 大腸・胃・十二指腸の腺腫 (累計10-100個のポリープ) 80歳までに70% 50歳
  • 上部消化管の所見や甲状腺・十二指腸がんのリスクは FAPに類似.
  • その他の消化管外の所見は通常みられない.
  • デスモイド腫瘍はAPCの3’のバリアントに関連する
POLE ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(Polymerase proofreading-assoc polyposis ; PPAP)
(OMIM 615083参照.)
AD 大腸腺腫 (累計0-100個のポリープ)
  • 70歳までに30-40%2
  • ポリポーシスのないCRCも発症しうる.
  • 注: ほとんどの CRCは MSS; MSI highもありうる.
50歳2
  • 子宮体部,卵巣,脳,乳房や他のタイプのがんのリスク ↑
  • 上部消化管の腺腫
POLD1 ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(Polymerase proofreading-assoc polyposis ; PPAP)
(See OMIM 612591参照.)
AD 大腸腺腫 (累計0-100個のポリープ)
  • 70歳までに50-60%2
  • ポリポーシスのないCRCも発症しうる.
  • 注: ほとんどの CRCは MSS; MSI highもありうる.
35-40歳2
  • 子宮体部,卵巣,脳,乳房や他のタイプのがんのリスク ↑
  • 上部消化管の腺腫
MUTYH MUTYH ポリポーシス AR
  • 大腸腺腫 (累計10-100個以上のポリープ)
  • 過形成 &/or 鋸歯状ポリープも起こりうる.
  • 十二指腸腺腫
  • 60歳までに43-63%
  • 未治療の場合の生涯リスク80-90%
  • ポリポーシスのないCRCも発症しうる.
  • 注: ほとんどの CRCは MSS; 稀に MSI high.
48歳
  • 十二指腸腺腫は一般的,十二指腸がんのリスク↑
  • 卵巣および膀胱悪性腫瘍のリスク↑
  • 他の所見:甲状腺結節、副腎の良性病変、顎骨嚢胞、CHRPE
NTHL1 NTHL1 腫瘍症候群 AR
  • 大腸腺腫 (累計1-100個のポリープ)
  • 過形成 &/or 鋸歯状ポリープも起こりうる.
  • 十二指腸腺腫
生涯リスクは高い 61歳3
  • 様々な原発腫瘍のリスクが高い
  • 60歳までの大腸以外のがんのリスク~35-78%
  • 乳がん・子宮体がんおよびその他の腫瘍:子宮頸部,膀胱尿路上皮がん、髄膜腫、不特定の脳腫瘍、基底細胞がん、頭頸部扁平上皮がん、および血液悪性腫瘍のリスク↑
MSH3 MSH3-関連ポリポーシス (OMIM 617100) AR
  • 大腸腺腫 (累計10-100個のポリープ)
  • 十二指腸腺腫
不明 成人4 良性および悪性新生物のリスク↑;甲状腺腺腫,乳腺の乳管内乳頭腫および嚢胞,胃がん,星細胞腫
MLH3 MLH3-関連ポリポーシス 5 AR 大腸腺腫 (累計10-100個以上のポリープ) 不明 48-52歳 乳がんのリスク↑
BMPR1A
SMAD4
若年性ポリポーシス症候群 (JPS) AD 消化管内の過誤腫性ポリープ (胃,小腸,結腸・直腸) 60歳までに68% 42歳
  • 上部消化管および膵がんのリスク↑
  •  SMAD4 の病的バリアントの一部で,JPSに遺伝性出血性毛細血管拡張症を併発するものもある
STK11 Peutz-Jeghers 症候群 AD 消化管内のPeutz-Jeghers型の過誤腫性ポリープ (特に小腸に多いが,胃,結腸・直腸にもできる) 39% 42-46歳
  • Peutz-Jeghers型の過誤腫性ポリープは,腎盂,気管支,胆嚢,鼻腔,膀胱,尿管など,消化管以外の場所にもできる.
  • 皮膚粘膜の色素沈着(メラノサイト斑)
  • 性腺腫瘍
  • 消化器がんおよび,乳,卵巣,子宮頸部,子宮体部,膵,精巣がんのリスク↑
 GREM1上流の重複 遺伝性混合ポリポーシス症候群(OMIM 601228) AD 2つ以上の組織型を呈する多発ポリープ (腺腫,過形成/鋸歯状,若年性), &/or重複した組織的特徴を持つ個々のポリープ (非定型の若年性で組織学的特徴が混在しているもの) CRCのリスク↑ (推定不明)
  • 40代6
  • ポリープの診断: 20代後半以降 (思春期発症の報告もあり)
不明
RNF43 RNF43関連鋸歯状ポリポーシス (OMIM 617108) AD 大腸の鋸歯状ポリポーシス(累計0-100個以上のポリープ) CRCのリスク↑ (推定不明) 成人 大腸以外の臨床的所見は報告されていない

AD = 常染色体優性遺伝;AR = 常染色体劣性遺伝;CHRPE = 先天性網膜色素上皮肥大;CRC = 大腸がん,MSI = マイクロサテライト不安定性;MSS = マイクロサテライト安定

  1. Nieminen et al [2014]
  2. Buchanan et al [2018]. リスク推定を考える上ではヘテロ接合体の数が限られているので,データの解釈には注意が必要.
  3. Grolleman et al [2019] NTHL1の両アレルに病的バリアントを有する33名のデータ
  4. Adam et al [2016]MSH3の両アレルに病的バリアントを有する4名のデータ.1名は55歳にCRCを発症.
  5. Olkinuora et al [2019] は,3名のフィンランド人および1名のスウェーデン人で,MLH3 c.3563C>G (p.Ser1188Ter) を同定した.実験のデータは,創始者由来であることを支持している.
  6. Lieberman et al [2017]

CRCの中等度のリスクとなる遺伝子

マルチジーンパネルには,CRCの中等度のリスクに関連する遺伝子やバリアントの検査が含まれることもある.これらのバリアントの多くは,ヘテロ接合体に対する臨床的マネジメントの明確なガイドラインが存在しない.多くの場合,中等度の浸透率のバリアント検査から情報を得たことによるリスク管理は,家族歴だけに基づくものと変わらない.中等度リスクのバリアントはCRCのリスクを約2倍に増加させるが,一度近親者にCRCがいる場合のリスクと同様である [Powers et al 2019].

中等度のCRCリスクに関連する,最もよく知られたバリアントを表5に記載する [Yurgelun et al 2017].Katona et al [2018]は,それぞれのバリアントごとのCRCの推定リスク [Ma et al 2014] と平均リスクの人の推定CRCリスクに基づいたカウンセリングの枠組みを決めた.

表5.CRCの中等度リスクと関連することでよく知られた遺伝子

遺伝子 病的バリアント CRCリスク1
APC p.Ile1307Lys2 4%
CHEK2 c.1100del 3.8%
CHEK2 p.Ile157Thr 3.2%
MUTYH3 すべての生殖細胞系列MUTYH病的バリアント 2.4%4
  1. Katona et al [2018];  70歳までの累積リスク
  2. アシュケナージ系ユダヤ人の~7%にみられる.このバリアントをもつ人では,ポリポーシスはみられない.
  3. 生殖細胞系列ヘテロ接合性のMUTYHバリアントは,一般集団の~2%にみられる [Yurgelun et al 2017]; MUTYHポリポーシスの,生殖細胞系列MUTYH病的バリアントヘテロ接合体の項も参照のこと.
  4. 片アレルのMUTYH病的バリアントのCRC推定リスクについては議論のあるところで,この人たちのCRCリスクが一般集団より高いのかどうかについては,コンセンサスは得られていない.NCCNの専門家は,主に家族歴に基づくCRCスクリーニングを推奨している.具体的な推奨事項については,www​.nccn.org を参照のこと(無料の登録とログインが必要).

散発性大腸がん

高齢者では,散発性のMMR欠失腫瘍は一般的にみられる(主に女性).これらの腫瘍は,MLH1のプロモーターのメチル化によるMLH1タンパクの発現消失を示し,CpG island のメチル化異常(CpG island methylator phenotype;CIMP) や,BRAFの体細胞性の活性化ホットスポット発がんバリアントに関連した鋸歯状発がん経路と強く関連している.

稀ではあるが,腫瘍組織でMLH1プロモーターのメチル化が同定された場合,先天的なMLH1のエピ変異の解析が推奨される.
Lynch症候群に関連する生殖細胞系列病的バリアントが同定されず,体細胞性のMLH1プロモーターのメチル化があれば,散発性のがんであると思われる.これらの患者に対するマネジメントやサーベイランスは,がんの家族歴に基づいて行われるべきである.


臨床的マネジメント

最初の診断後の評価項目

Lynch症候群と診断された人において,疾患の程度や必要とされるものを確かめるために,表6にまとめた評価方法が推奨される.

表6.Lynch症候群と診断された人に推奨される最初の診断後の評価項目

臓器/関連事項 評価項目 補足
大腸がん 大腸内視鏡検査および前がん病変のポリープがあれば除去1 20-25歳または家系内でCRCと診断された一番若い年齢より2-5年早い年齢の,どちらか若い方から始める
子宮体がん 女性に対して,子宮体がんの症状について教育する (子宮の不正出血や閉経後出血など). 症状に対する評価は,1-2年毎の子宮内膜生検をおこなう 2
子宮内膜生検によるスクリーニング2 30-35歳の間に開始する
卵巣がん 女性に対して,卵巣がんに関連する症状について教育する  (骨盤や腹部痛,膨満感,腹囲↑,食欲不振,早期満腹感,頻尿・尿意切迫感など). 症状が数週間に渡って認められ,最初の状態から変化のある場合は,速やかに医師の診察を受けるべきである.
胃・十二指腸がん
  • 胃がんの家族歴のある人やアジア系では上部消化管内視鏡検査を考慮する.
  • 必要に応じて適切な治療を行うために、生検で H pylori 感染を評価するべきである3
40歳から開始する
遠位小腸 カプセル内視鏡や小腸造影検査を考慮する. 症状のある人に対して
尿路系がん(腎盂、尿管&/or膀胱) 尿路上皮がんの家族歴がある場合、顕微鏡的血尿を特定するために尿細胞診での分析を考慮する4 30-35歳の間に開始する
膵がん 膵がんの家族歴のある病的バリアント保持者には,EUSと MRI/MRCPを交互にまたはいずれかによる膵がんスクリーニングを考慮する. 50歳から開始する5
遺伝カウンセリング 遺伝の専門家による6 罹患者やその家族に対して,医療的および個人的な意思決定を支援するために,Lynch症候群の病態やMOI,その人に対する影響などについて情報提供する.

CRC = 大腸がん; EUS = 超音波内視鏡; MOI =遺伝形式; MRCP = MR胆管膵管撮影

  1. Lynch症候群では近位大腸がんが多くみられるため,軟性S状結腸内視鏡よりも大腸内視鏡検査が推奨される.
  2. 経腟超音波および子宮内膜生検の効果を調べた研究では,これらによって子宮体がんの死亡率減少は示せていない.子宮体がんの早期発見・予防戦略の費用対効果についての系統的レビューでは,予防的手術の方が,経腟超音波やCA-125,子宮内膜生検によるスクリーニングよりも効果的でなおかつ低コストであった [Sroczynski et al 2020].しかしながら,予防的手術をしない患者では,子宮体がんサーベイランスとして,1-2年ごとの子宮内膜生検をおこなってもよい[Bercow & Eisenhauer 2019Gupta et al 2019NCCN 2020].
  3. これまでの研究では,胃・十二指腸がんのサーベイランスによる,これらのがんの早期発見や帰結の改善を支持するものはないが,胃・十二指腸がんは,Lynch症候群患者では,大腸および婦人科系がんの次に多いため,定期的な上部消化管内視鏡検査はガイドラインに記載されるべきである.
  4. Lynch症候群における尿路系がんのサーベイランスを支持する明確なエビデンスはない.サーベイランスは,尿路系がんの家族歴に基づいて考慮する.
  5. 病的な生殖細胞系列バリアントが同定された側の家系内の,第一度または第二度近親者に膵がん患者がいる場合,50歳(または外分泌系膵がんが家系内で最も早く診断された年齢より10年若い年齢)からサーベイランスを開始する.
  6. 臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー,または遺伝看護専門看護師

症状に対する治療

表7.Lynch症候群患者の症状に対する治療

症状/関連事項 治療
大腸腺腫 1-2年毎の大腸内視鏡によるフォローおよび内視鏡的ポリープ切除の徹底
大腸がん 臨床的シナリオや年齢などの要素に応じて,部分的あるいは拡大大腸切除術が提示される.直腸腺がんの場合は、直腸切除術または直腸全摘術の適応となる.
その他の腫瘍 一般集団と同様の管理をおこなう.

一次病変に対する予防

出産完了後に,予防的に子宮および両側卵管卵巣摘出術を考慮してもよい.
ポリープ切除術を伴う大腸内視鏡スクリーニングは大腸がんの予防に有効であるため,予防的大腸摘出術(がん発症前の大腸切除)は通常Lynch症候群には推奨されていない.

アスピリン療法はLynch症候群におけるCRCのリスクを低減することが示されている. 経験上,または複数のコンセンサスの得られた声明,NCCN, Mallorca ガイドライン, CRCのためのthe US Multi-Society Task Forceなどの専門家の検討を複合的にとらえると,Lynch症候群の管理において,個人の健康状態や併存疾患などをふまえた上で,アスピリンの使用を考慮してもよいことが示唆されている[Vasen et al 2013Giardiello et al 2014Gupta et al 2019].CAPP2試験では600mg/日使用しているが,これは散発性CRCのリスク減少に有効とされる75mg/日を大きく上回っている.研究者らは、1日600mgのアスピリンを25ヵ月間服用することで、55.7ヵ月後のCRCの発症リスクが大幅に減少することを見出した(HR=0.42, 95% CI 0.19-0.86; p=0.02) [Burn et al 2011].最近になって同じ研究者たちからCAPP2試験の10年の追跡データが報告されている.それによると,アスピリン服用者では,プラセボ群と比較して顕著にCRCリスクが低減された(HR=0.65, 95% CI 0.43-0.97; p=0.035) [Burn et al 2020].現在,CRCリスクを低減させるアスピリンの最小使用量を同定することを目的として,CAPP3試験がおこなわれている.

サーベイランス

表8.Lynch症候群患者に推奨されるサーベイランス

臓器/関連事項 検査 頻度
大腸がん 前がん病変のポリープ切除を伴う大腸内視鏡1 20-25歳または家系内でCRCと診断された一番若い年齢より2-5年早い年齢の,どちらか若い方から開始し,1-2年毎に実施
子宮体がん 女性に対して,子宮体がんの症状について教育する (子宮の不正出血や閉経後出血など). 毎年
経腟超音波検査と子宮内膜生検を考慮2 1-2年毎
卵巣がん 女性に対して,卵巣がんに関連する症状について教育する  (骨盤や腹部痛,膨満感,腹囲↑,食欲不振,早期満腹感,頻尿・尿意切迫感など). 毎年
胃・十二指腸がん
  • 胃がんの家族歴のある人やアジア系では上部消化管内視鏡検査を考慮する.
  • 必要に応じて適切な治療を行うために、生検で H pylori 感染を評価するべきである3
30-35歳の間に開始し,3-5年毎
遠位小腸 カプセル内視鏡や小腸造影検査を考慮する. 症状のある人に対して
尿路系がん腎盂、尿管&/or膀胱) 尿路上皮がんの家族歴がある場合、顕微鏡的血尿を特定するために尿細胞診での分析を考慮する4 30-35歳の間に開始し,毎年
膵がん 膵がんの家族歴のある病的バリアント保持者には,EUSと MRI/MRCPを交互にまたはいずれかによる膵がんスクリーニングを考慮する. 毎年
その他のがん
  • その他のLynch症候群関連がんに対する特別な推奨スクリーニングはない.
  • 一般的なスクリーニングガイドラインに従い,健康状態の変化や持続的な症状があれば,速やかに医師の診察を受ける.
その他のがんの若年発症の家族歴がある場合は,その発症よりも早い年齢からスクリーニングを開始する.

  CRC = 大腸がん; EUS = 超音波内視鏡; MRCP = MR胆管膵管撮影

  1. Lynch症候群では近位大腸がんが多くみられるため,軟性S状結腸内視鏡よりも大腸内視鏡検査が推奨される.
  2. 経腟超音波および子宮内膜生検の効果を調べた研究では,これらによって子宮体がんの死亡率減少は示せていない.子宮体がんの早期発見・予防戦略の費用対効果についての系統的レビューでは,予防的手術の方が,経腟超音波やCA-125,子宮内膜生検によるスクリーニングよりも効果的でなおかつ低コストであった [Sroczynski et al 2020].しかしながら,予防的手術をしない患者では,子宮体がんサーベイランスとして,1-2年ごとの子宮内膜生検をおこなってもよい[Bercow & Eisenhauer 2019Gupta et al 2019].
  3. 上部消化管内視鏡は,最近Lynch症候群のサーベイランスとして推奨され始めている [Kumar et al 2020Ladigan-Badura et al 2021].しかしながら,おそらく発表されている研究が少なく,過去のデータではLynch症候群における内視鏡サーベイランスの有用性は否定されていたため [Renkonen-Sinisalo et al 2002Haanstra et al 2015],すべてのLynch症候群に対するサーベイランスガイドラインにではなく,特定のリスク因子 [ Gupta et al 2019参照]のある人に対して,となっている.
  4. Lynch症候群における尿路系がんのサーベイランスを提唱するデータは限られている.サーベイランスは,尿路系がんの家族歴に基づいて考慮する.

避けるべき化学物質/環境

肥満,喫煙,2型糖尿病,高コレステロールはLynch症候群の大腸がんリスクを高めるというエビデンスが蓄積されてきている.その関連の方向性や関連の強さは,一般集団でみられるものと同様である [Win & Scott 2016Dashti et al 2019].
リスクのある血縁者の評価

家系内にLynch症候群関連の病的バリアントが分子遺伝学的検査によって同定された場合,治療および予防的措置を迅速に開始すべき人をできるだけ早期に同定するために,すべての第一度親近者(親,同胞,子)の遺伝的状態をはっきりさせることは大切である.
Lynch症候群関連がんを早期に認識することは,適切なタイミングでの介入と最終的な結果の改善に役立ちうる.

一般的に,Lynch症候群の分子遺伝学的検査は18歳未満のリスクのある者に対しては推奨されていない.しかし,家系内にがんの早期発症歴があれば,発症前診断を考慮するべきである.Lynch症候群関連の病的バリアントを有する未発症者に対しては,20~25歳の間もしくは家系内でもっとも早い診断年齢よりも2~5年若い年齢でスクリーニングを開始するべきである[Gupta et al 2019].それゆえ,家系内にがんの早期発症歴があれば,18歳よりも早く検査することが適当となることもある.

遺伝カウンセリングの目的に関する,リスクのある血縁者の検査の問題については,遺伝カウンセリングの項を参照のこと.

妊娠中の管理

妊娠する前にがんのスクリーニング計画を決めるのが理想的である.罹患女性には,妊娠しようとする前に,がんのスクリーニング検査を受けて現状を確認することが勧められる.罹患女性が妊娠中にがんと診断された場合,がんの治療選択肢および胎児への潜在的影響について相談するべきである.

現在研究中の治療

Lynch症候群のサーベイランスにおける,色素内視鏡vs 狭帯域光観察(NBINarrow band imagingvs高精細白色光大腸内視鏡検査.色素内視鏡に対する大腸内視鏡の画像モダリティの違いを比較した研究が2つある.Lynch症候群患者138名が参加した研究では,NBIの後にインジゴカルミン色素内視鏡を連続して実施したところ,腺腫検出率(ADR; adenoma detection rate)はNBI単独では20.3%だったのに対し,両方を用いると30.4%であった.検出力の差10.1%は,事前に設定した非劣性の想定範囲である5%以内を達成しなかった[Cellier et al 2019]. Lynch症候群患者256名が参加したもう1つの研究である,インジゴカルミン色素内視鏡vs 高精細白色光大腸内視鏡のランダム化比較試験では,白色光大腸内視鏡(28.1%; 95% CI 21.1%-36.4%)と比較して,汎結腸色素内視鏡によって検出されたADR (34.4%; 95% CI 26.4%-43.4%)に有意差はなかった(p=0.28) [Rivero-Sánchez et al 2020].2つの研究とも,色素内視鏡の方が扁平または矮小な腺腫をよく同定できたが,抜去時間が長かったと報告されている.

経口避妊薬と子宮体がん.疫学研究では,1年以上経口避妊薬を使用することによって子宮体がんのリスクを大幅に低減できることが示されている (HR 0.39,95% CI 0.23 - 0.64) [Dashti et al 2015].これまでのところ,経口避妊薬が子宮体がんのリスクにどのように影響するかを検討する前向き試験は実施されていない.Lynch症候群女性に対して3ヶ月の経口避妊薬投与を実施したところ,子宮内膜の増殖を低減したという研究が1つだけある [Lu et al 2013].今のところ,経口避妊薬はLynch症候群女性に対して推奨されていないが,一般的な産婦人科的なマネジメント目的や家族計画のために日常的に用いられている.こういったデータは,経口避妊薬がLynch症候群女性に対しても一般集団と同様に利益をもたらすであろうことを支持している.

Lynch症候群関連がんに対する免疫療法.免疫系に作用して働かせる免疫チェックポイント阻害剤の登場によって,Lynch症候群関連(およびMSI-highとMMR欠失)がんの治療は画期的に変化する.抗PD1モノクローナル抗体を用いたMSI-highの転移性Lynch症候群関連がんの治療に関する最近の研究では,大腸がんに限らず,70%以上の疾病制御率を示している [Le et al 2015Le et al 2017Overman et al 2017].

広範な疾患や症状の臨床研究に関する情報は,アメリカではClinicalTrials.govを,ヨーロッパではwww.ClinicalTrialsRegister.euを参照のこと.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

多くの患者において,Lynch症候群は,MLH1,MSH2,MSH6,PMS2またはEPCAMのヘテロ接合性生殖細胞系列病的バリアントを原因とし,常染色体優性遺伝形式をとる.

先天的なMLH1のメチル化による不活性化を原因とするLynch症候群の症例は孤発例(家系内に1人だけ発症)にみられるが,高メチル化が非メンデル遺伝形式で遺伝している家系も報告されている[Hitchins et al 2011Hitchins 2015].
注釈:家族歴に基づくLynch症候群の診断では,(先天的なMLH1のエピ変異の可能性以外にも)様々な因子が隠れている可能性がある.リスクのある血縁者の中には,スクリーニングと前がん病変ポリープの除去や予防的手術によって大腸または子宮体がんを予防していたり,がんの発症よりも前に,他の原因で亡くなっているかもしれない.

家族構成員のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の同朋のリスクは両親の遺伝学的状態による:

発端者の子

他の家族構成員

他の家系員におけるリスクは発端者の両親の遺伝学的状況による:(多くの家系でみられるように)片方の親が病的バリアントを有していれば,彼または彼女の家系員はリスクがある(家族歴または分子遺伝学検査は,母方・父方のどちらにリスクがあるかを見極める一助となる).

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断,早期治療を目的とするリスクのある血縁者に関する情報は,マネジメントリスクのある血縁者に対する評価を参照のこと.

家族計画 

遺伝的ながんのリスク評価と遺伝カウンセリング.分子遺伝学的検査に関わらず,がんのリスクアセスメントを通しての,リスクのある血縁者の同定に関する医学的,心理社会学的および倫理的影響の包括的な説明については,Cancer Genetics risk Assessment and Counseling-for health professionals(National Cancer InstituteのPDQ®の一部,)を参照のこと.
発症前検査.(リスクのある未発症成人に対する検査)

未成年者に対する発症前検査(18歳未満の未発症者に対する検査)

Lynch症候群の確定診断のついている家系内で,症状のある人に対しては年齢にかかわらず検査を考慮することが適切である.

DNAバンキングは,将来的に使用するためにDNA(通常は白血球から抽出されたもの)を保管しておくことである.遺伝子やアレルの変異,疾患についての検査手法や理解が将来向上する可能性があるため,その時のために罹患者のDNAを保管することは考慮すべきである.

出生前診断および着床前の遺伝学的診断

家系内におけるLynch症候群関連病的バリアントが同定されていれば,出生前診断および着床前の遺伝学的診断は可能である.

医療の専門家の間や家族内においても,出生前診断に対する考え方の相違が存在しうる.ほとんどの施設では出生前診断を行うか否かの決断は両親に委ねているが, これらの問題を議論することは有益である.
(訳注:日本ではLynch症候群における出生前診断および着床前診断は行われていない)


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここクリック。

リンチ症候群-患者家族会

www.cgaicc.com

www.hcctakesguts.org

P.O.Box 5456
Vacaville CA 95688
Phone: 707-689-5089
Email: info@lynchcancers.com
Lynch Syndrome International

Lynch syndrome

6116 Executive Boulevard
Suite 300
Bethesda MD 20892-8322
Phone: 800-422-6237 (toll-free)
Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
Genetics of Colorectal Cancer (PDQ®)

250 Williams Street Northwest
Atlanta GA 30303
Phone: 800-227-2345 (toll-free 24/7); 866-228-4327 (toll-free 24/7 TTY)
www.cancer.org

1414 Prince Street
Suite 204
Alexandria VA 22314
Phone: 877-427-2111 (toll-free); 703-548-1225
Fax: 202-315-3871
Email: info@fightcolorectalcancer.org
www.fightcolorectalcancer.org

1200 G Street Northwest
Suite 800
Washington DC 20005
Phone: 877-422-2030 (Toll-free Helpline); 202-434-8980
Fax: 866-304-9075 (toll-free)
www.ccalliance.org

www.insight-group.org


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表 A. Lynch症候群:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体座位 タンパク質 座位特異的データベース HGMD ClinVar
EPCAM 2p21 上皮細胞接着分子 EPCAM homepage - 大腸がん遺伝子バリアントデータベース EPCAM EPCAM
MLH1 3p22.2 DNAミスマッチ修復タンパク Mlh1 MLH1 homepage -大腸がん遺伝子バリアントデータベース
MLH1 @ ZAC-GGM
MLH1 MLH1
MSH2 2p21-p16 DNAミスマッチ修復タンパクMsh2 MSH2 homepage -大腸がん遺伝子バリアントデータベース
MSH2 @ ZAC-GGM
MSH2 MSH2
MSH6 2p16.3 DNAミスマッチ修復タンパク Msh6 MSH6 homepage -大腸がん遺伝子バリアントデータベース
MSH6 @ ZAC-GGM
MSH6 MSH6
PMS2 7p22.1 ミスマッチ修復エンドヌクレアーゼPMS2 PMS2 @ LOVD
PMS2 @ ZAC-GGM
PMS2 PMS2

データは以下の標準的参照資料をもとに作成した:遺伝子はHGNC,染色体座位はOMIM,タンパク質は UniProt.リンクが提供されたデータベース(座位特異性,HGMD ,ClinVar )の詳細についてはここをクリック.

表 B.Lynch症候群に関するOMIMの情報

114500 COLORECTAL CANCER; CRC
120435 LYNCH SYNDROME I
120436 DNA MISMATCH REPAIR PROTEIN MLH1;MLH1
158320 MUIR-TORRE SYNDROME; MRTES
185535 EPITHELIAL CELLULAR ADHESION MOLECULE; EPCAM
276300 MISMATCH REPAIR CANCER SYNDROME 1; MMRCS1
600259 PMS1 HOMOLOG 2, MISMATCH REPAIR SYSTEM COMPONENT; PMS2
600678 MutS HOMOLOG 6; MSH6
609309 MutS HOMOLOG 2; MSH2
609310 COLORECTAL CANCER, HEREDITARY NONPOLYPOSIS, TYPE 2; HNPCC2
613244 COLORECTAL CANCER, HEREDITARY NONPOLYPOSIS, TYPE 8; HNPCC8

分子学的病因

Lynch症候群はミスマッチ修復(MMR)経路に関わる遺伝子の病的バリアントが原因である.この経路は,一塩基ミスマッチや挿入・欠失ループの認識と除去の役割を果たす.4つのMMR遺伝子における病的バリアントはLynch症候群を引き起こす[Peltomäki 2003].MMR遺伝子はミスセンスバリアント,切断型バリアント,スプライス部位バリアント,大規模な欠失あるいはゲノム再編成によって機能障害が生じる.さらに,MSH2そのものに変異がなくても,MMR遺伝子ではないEPCAMの欠失によって,近接するMMR遺伝子であるMSH2が不活性化され,MMR経路が破綻する.

疾患発症メカニズム.機能欠失型

表9.Lynch症候群:遺伝子ごとの,検査施設で考慮すべき点

遺伝子1 特に考慮すべき点
EPCAM 最後のエクソンを含むEPCAMの広範囲の欠失のみがLynch症候群の原因となる.その他のEPCAMのバリアントはLynch症候群に関係しない [Arnold et al 2020].
MLH1 機能的なアレルの体細胞性のヘテロ接合性の喪失を伴う,メチル化による先天的なMLH1 プロモーターの不活性化が,Lynch症候群の稀な原因として報告されている. MLH1 プロモーターのメチル化はほとんどの症例が孤発例(家系内で1人だけ発症)だが,いくつかの家系で高メチル化が受け継がれていることが報告されている [Hitchins 2015]. MLH1 プロモーターのメチル化は,MLH1の配列解析や重複/欠失解析では検出できない.
PMS2  PMS2の分子学的解析は,複数の偽遺伝子が存在するため,より複雑である.PMS2と配列の相同性の高いゲノム領域が存在することは,従来の解析を困難にしていた. ロングレンジPCRや 相補的DNA 配列解析, NGS検査の具体的な解決策が出てきたことで,PMS2の病的バリアントと偽遺伝子を区別することが可能となった[Li et al 2015aLee et al 2020].
  1. 遺伝子はアルファベット順に記載.

遺伝子の特筆すべきバリアント.表10には,それぞれの集団における創始者バリアントあるいはよくみられる病的バリアントを記載した.

表10.Lynch症候群:遺伝子の特筆すべきバリアント

遺伝子1 参照配列 DNA 塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 補足 / 集団2
EPCAM NM_002354​.2
NP_002345​.2
c.859-1462_*1999del4909
(del exons 8-9)
-- オランダ
c.858+2478_*4507del8674
 (del exons 8-9)
--
c.858+2568_*4596del8673
 (del exons 8-9)
-- スペイン
c.858+2488_*7469del11626
 (del exons 8-9)
--
c.859-1860_*25547del (EPCAM del exons 8-9 & MSH2 del exons 1-3) --
c.859–1430_*2033del (del exons 8-9) -- イタリア
MLH1 NM_000249​.3
NP_000240​.1
c.1731+2247_1897-402del (del exon 16) p.Pro579_Glu633del フィンランド
c.454-1G>A --
c.112A>C p.Asn38His オランダ
c.306+5G>A -- スペイン; 中程度の浸透率
c.1865T>A p.Leu622His
c.1896+280_*8935del11626 (MLH1 del exons 17-19 & LRRFIP2 del exons 26-29) -- ポルトガル
c.545+3A>G -- イタリア, カナダのケベック人 (イタリア人の祖先を持つ) & ブラジル
c.589-2A>G -- US & イタリア
c.731G>A p.Gly244Asp イタリア
c.1558+1G>T --
c.2252_2253delAA p.Lys751SerfsTer3
c.2269dupT p.(*757LeuextTer33)
c.1731G>A p.Ser556ArgfsTer14
c.1489dupC p.Arg497ProfsTer6 ドイツ
c.1667+2_1667+8delTAAATCAinsATTT デンマーク
c.2142G>A p.Trp714Ter スイス
c.2195_2198dupAACA p.His733GlnfsTer14 カナダのケベック人
c.1831_1832delAT p.Ile611CysfsTer2
c.1039-2329_1409+827del3527 p.Thr347LysfsTer8
c.1381A>T p.Lys461Ter US
c.2044_2045delAT p.Met682ValfsTer11 プエルトリコ
c.392C>G p.Ser131Ter マケドニア共和国
1.8-kb deletion of exon 11 -- 中国
c.793C>T p.Arg265Cys 台湾
c.1758dupC p.Met587HisfsTer6 韓国
MSH2 NM_000251​.2
NP_000242​.1
c.942+3A>T -- 世界中にみられる
c.388_389delCA p.Gln130ValfsTer2 ポルトガル, 南アメリカ
c.2152C>T p.Gln718Ter ポルトガル
c.2063T>G p.Met688Arg スペイン
c.[2635-3C>T; 2635-5T>C] --
c.-3568_*28336del36681
(del exons 4-8)
--
c.*4136_*13502del9366
(del exon 7)
--
c.-11844_1077-6021delins(155)
(del exons 1-6)
-- イタリア
c.1277−1180_1386+2226del3516insCATTCTCTTTGAAAA)
(del exon 8)
--
c.1276+198_1386+3761del19280
(del exon 8)
--
c.1786_1788delAAT p.Asn596del デンマーク
c.-823_1076+5984del
(del exons 1-6)
US
c.1906G>C p.Ala636Pro アシュケナージ系ユダヤ人
c.1165C>T p.Arg389Ter カナダのケベック人
c.2185_2192delATGTTGGAinsCCCT p.Met729ProfsTer2 チリ
c.1457_1460delATGA p.Asn486fsTer10 中国(広東)
MSH6 NM_000179​.2
NP_000170​.1
c.467C>G p.Ser156Ter オランダ
c.651dupT p.Lys218Ter
c.1614_1615delTCinsAG p.Tyr538Ter
c.2983G>T p.Glu995Ter フィンランド
c.1346T>C p.Leu449Pro スウェーデン
c.2931C>G p.Tyr977Ter
c.3959_3962delCAAG p.Ala1320GlufsTer6 アシュケナージ系ユダヤ人
c.3984_3987dupGTCA p.Leu1330ValfsTer12
PMS2 NM_000535​.6
NP_000526​.2
c.989-1G>T -- ノルウェイ
c.736_741delCCCCCTins11 p.Pro246CysfsTer3 US
c.137G>T p.Ser46Ile US
c.1A>G p.Met1?
c.903G>T p.Lys301Asn
c.989-296_1144+706del1158
(del exon 10)
p.Glu330_Glu381del オーストラリア
c.2002A>G p.Ile668Val イヌイット

表に掲載されているバリアントは著者らから提供された.GeneReviews のスタッフはバリアントの分類分けの検証はおこなっていない.
GeneReviews はHuman Genome Variation Societyの標準的な命名規則に従っている(varnomen​.hgvs.org).命名法の解説については,Quick Reference を参照のこと.


更新履歴:

  1. Gene Review著者: Wendy Kohlmann, MS and Stephan B Gruber, MD, PhD
    日本語訳者: 岩泉守哉(浜松医科大学消化器内科)
    Gene Review 最終更新日: 2011.8.11 日本語訳最終更新日: : 2012.7.8
  2. Gene Review著者: Wendy Kohlmann, MS and Stephan B Gruber, MD, PhD
    日本語訳者: 江田肖(瀬戸病院遺伝診療科, 櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療室)
    Gene Review 最終更新日:2014.5.22.日本語訳最終更新日: 2016.12.22
  3. Gene Reviews著者:  Wendy Kohlmann , MS and Stephan B Gruber , MD , PhD
    日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学 ) ,櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)
    AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司)
    Gene Reviews 最終更新日: 2018.4 .12 日本語訳最終更新日: 2018 .10 .10
  4. GeneReviews著者: Wendy Kohlmann ,MS and Stephan B Gruber ,MD ,PhD
    日本語訳者:箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学)  櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)
    GeneReviews最終更新日: 20 21 . 2. 4 日本語訳最終更新日: 2021.4.21 [in present]

原文:Lynch syndrome

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