ファンコニ貧血
(Fanconi Anemia)

[Synonyms: Fanconi Pancytopenia]

Gene Reviews著者: Parinda A Mehta, MD and Christen Ebens, MD, MPH.
日本語訳者: 幅野愛理(がん研有明病院 臨床遺伝医療部),櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院 遺伝子診療科)

GeneReviews最終更新日:2021.6.3.  日本語訳最終更新日:2022.7.8.

原文 Fanconi Anemia


要約

疾患の特徴 

ファンコニ貧血(FA)は、身体の先天異常、骨髄機能不全、腫瘍リスクの上昇が特徴の疾患である。罹患者の約75%に以下に示す身体の先天異常のうち一つまたは複数が認められる;低身長、皮膚の色素沈着、上肢および下肢の骨格異常、小頭症、眼科および泌尿器系の異常
多くの場合、生後10歳までに、血小板と白血球の減少から始まる進行性の汎血球減少を伴う骨髄機能不全が見られることが特徴である。急性骨髄性白血病の罹病率は50歳までに13%である。固形癌、特に頭頸部、皮膚および泌尿器系の腫瘍は、FA患者においてより高頻度である。

診断・検査 

FAは以下のいずれかで診断される。

  • ジエポキシブタン(DEB)やマイトマイシンC(MMC)などのDNA架橋剤の存在下で培養した細胞において、染色体異常(切断、再構成、ラジアル構造、転座)を検出すること。
  • 分子遺伝学的検査で以下のいずれかが確認された場合に確定される。
    • 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式のFAを引き起こすことが知られている21遺伝子のうちの1つにおける両アレルの病的バリアント
    • 常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式のFAを引き起こすことが知られているRAD51におけるヘテロ接合性病的バリアント
    • X連鎖性遺伝形式のFAを引き起こすことが知られているFANCBにおけるヘミ接合性病的バリアント

臨床的マネジメント 

症状の治療
アンドロジェン(例えば、oxymetholone)の経口投与によってFA患者の約50%において血球数(赤血球、白血球、血小板)の改善が認められ、一部の患者ではG-CSFの皮下投与により好中球数の改善がみられる。血球減少の根治療法は造血幹細胞移植のみであるが、造血幹細胞移植施行後も固形癌の高いリスクは依然として残っており、造血幹細胞移植を施行した患者ではさらにリスクが上昇する可能性もある。これらの治療はすべて危険性を伴うものである。固形癌において、早期発見と外科的切除が依然として治療の主軸である。成長障害、四肢の異常、眼球の異常、腎臓の奇形、性腺機能低下症、甲状腺機能低下症、心臓の異常、および皮膚症状の治療を、専門医が推奨する方法で行う。難聴には補聴器が有用である。必要に応じて鼻腔栄養チューブや胃瘻による補食、ビタミンDの補給、発達遅滞に対する早期介入、学齢期の子供に対する個別的な教育計画、必要に応じた言語療法、作業療法、理学療法、日焼け止めとラッシュガードの適切な使用、必要に応じたソーシャルワークとケアコーディネーションの利用。

一次症状の予防
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種により、女性の婦人科系癌のリスクを低減し、口腔癌リスクも低減する可能性がある。

二次的な合併症の予防
移植片対宿主病のリスクを最小化するために、ドナー移植片のT細胞除去を行う。その後の固形癌発症リスクの低減のため、造血幹細胞移植前に放射線を使用しない前処置を行う。

サーベイランス
小児期を通じて、成長、摂食、栄養、脊椎、眼科的問題の臨床的評価を行う。
毎年の眼科検診;TSH、遊離サイロキシン、25ヒドロキシビタミンD、糖負荷試験、インスリン値を含む、内分泌科医による毎年の評価;思春期終了まで2年ごとのホルモン値の評価、耳毒性薬剤の曝露があった場合は聴覚検診、毎年の発育評価、3〜4ヶ月ごとまたは必要に応じた血球計算、形態学的と細胞学的な評価のための骨髄穿刺と生検、悪性クローンの有無を評価するためのFISHと細胞遺伝学的検査(少なくとも2歳以降毎年行う)、アンドロゲン治療を受けている場合は、3~6ヵ月ごとの肝機能検査と6~12ヵ月ごとの肝臓超音波検査、13歳から毎年の生殖器病変の婦人科的評価、18歳から毎年外陰と腟の検査と子宮頸部細胞診、9~10歳から半年ごとの口腔内腫瘍検査、10歳から毎年鼻腔喉頭鏡検査、6~12ヵ月ごとの皮膚科的評価、BRCA2関連FA患者では毎年腹部超音波と脳MRIを実施。BRCA1BRCA2PALB2BRIP1RAD51C関連FA患者には追加の癌サーベイランスを実施する。

避けるべき環境・薬剤:
造血幹細胞移植の候補者への赤血球または血小板の輸血;造血幹細胞移植が考慮されている場合には血縁者が輸血提供者となること;濾過(白血球の除去)されていない、または放射線照射を受けていない血液製剤;発癌性がありうる毒性物質;HPV関連悪性腫瘍のリスクを高める安全でない性行為;日光への過度な露出;サーベイランスのためだけのレントゲン検査(臨床適応の無いもの)は最低限にすべき。

リスクのある血縁者の評価
身体の先天異常、骨髄機能不全、関連癌の早期診断、治療、管理のために、発端者の同胞に対し、DEB/MMCテスト(染色体断裂試験)、または分子遺伝学的検査(家系内で病的バリアントが同定されている場合)を行う。

遺伝カウンセリング 

Aは、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式(RAD51関連FA)、X連鎖性遺伝形式(FANCB)がある。

常染色体潜性(劣性)FA
患者の同胞は25%の確率で病的バリアントを2つ受け継ぎ罹患する可能性があり、50%の確率で片方の病的バリアントを受け継いで保因者となり、25%は正常遺伝子を2つ受け継いで保因者とはならない。常染色体潜性(劣性)FAの保因者(ヘテロ接合体)は無症状である。しかし、FA関連遺伝子のサブセット(例えば、BRCA1BRCA2PALB2BRIP1RAD51C)のヘテロ接合の病的バリアントは、乳癌や他の癌のリスク上昇と関連している。

常染色体顕性(優性)FA
これまでに報告されたRAD51関連FAの罹患者はすべてde novo RAD51病的バリアントとしてこの疾患を発症していることから、他の家族へのリスクは低いと推定される。

X連鎖性FA
保因者の女性が妊娠ごとに病的バリアントを子に伝える可能性は50%である。病的バリアントを受け継いだ男性は罹患し、女性は保因者となるが通常は罹患しない。

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)とX連鎖性遺伝の場合:
家系における病的バリアントが同定されている場合、リスクのある血縁者の保因者診断と高リスクの妊娠における出生前診断が可能である。
訳注:日本では、本症に対する出生前診断や着床前診断は行われない。いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である。


診断

臨床診断

診断における推奨は2013年のコンセンサス会議で了承された(「ファンコニ貧血診療ガイドライン2020年版」参照)。

疑われる所見

以下のような臨床的・検査的特徴を持つ場合はFAを疑うべきである

  • 身体的特徴(罹患者の75%)
    • 低身長
    • 皮膚の色素沈着(カフェオレ斑または低色素症)
    • 骨格の奇形(親指の低形成、橈骨の低形成)
    • 小頭症
    • 眼の異常
    • 泌尿器の異常
  • 臨床検査所見
    • 大赤血球症
    • ヘモグロビンFレベルの上昇(貧血に先行することが多い)
    • 汎血球減少(特に血小板減少症、白血球減少症、好中球減少症)
  • 病理所見
    • 進行性の骨髄機能不全
    • 成人発症再生不良性貧血
    • 骨髄異形成症候群(MDS)
    • 急性骨髄性白血病(AML)
    • 若年発症の固形癌(頭頸部癌、食道癌、外陰部の扁平上皮癌、子宮頸癌、肝癌等)
    • 化学療法や放射線療法における過度の毒性

確定診断

以下のいずれかを満たす患者においてFAの確定診断となる。

染色体断裂試験

  • ジエポキシブタン(DEB)およびマイトマイシンC(MMC)によるリンパ球の細胞遺伝学的検査による染色体断裂およびラジアル構造の増加。
    注(1):対照の染色体におけるバックグラウンドレベルの染色体異常の頻度はMMCでより不安定であるため、施設によって、DEBを使用するところと、MMCを使用する方針のところとがある。
    (2)リンパ球検査の結果が正常または決定的ではない場合、またモザイクが疑われる場合、皮膚線維芽細胞などの別の細胞で検査を行うことができる。ファンコニ貧血診療ガイドライン参照。
  • 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のFAを引き起こすことが知られている21遺伝子のうちの1つにおける両アレルの病的バリアント、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)のFAを引き起こすことが知られているRAD51におけるヘテロ接合の病的バリアント、またはX連鎖性FAを引き起こすことが知られているFANCBにおけるヘミ接合の病的バリアントの同定(表1を参照)。

分子遺伝学的検査

分子遺伝学的検査によるアプローチには、単一遺伝学的検査と多遺伝子パネル検査の使用が含まれる。

  • 単一遺伝学的検査:まず、FANCAのシーケンス解析が行うことで、小さな遺伝子内欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライスサイトバリアントを検出することができる。使用するシークエンス手法によっては、単一エクソン、複数エクソン、または全遺伝子の欠失/重複が検出されない場合がある。使用したシーケンス手法でバリアントが1つだけ検出された、または全く検出されなかった場合、次のステップとして評定遺伝子の欠失/重複解析を行い、エクソンおよび全遺伝子の欠失または重複を検出する。
  • 多遺伝子パネル検査:単一遺伝学的検査でFANCA 病的バリアントが同定されなかった場合、その他の関連のある遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含む多遺伝子パネル検査も考慮される。
    注:(1)パネル検査に含まれる遺伝子や検査の精度は、検査機関によって異なっているだけでなく、時代とともに変化する。
    (2)多遺伝子パネル検査には本稿で扱っている病態に関連のない遺伝子が含まれている場合もあるため、臨床医はどの多遺伝子パネル検査が症状の遺伝的要因を特定する可能性が最も高く、同時に意義不明なバリアント(VUS)や、根本的な表現型を説明しえない遺伝子における病的バリアントを同定する可能性を限定できるか考慮する必要がある。
    (3)検査機関によっては、臨床医が指定した遺伝子を含むカスタム設計された検査機関独自のパネルや、表現型に焦点を当てたエクソーム解析パネルといった選択肢が存在することもある。
    (4)パネルに使用される手法は、配列解析や、欠失/重複解析、およびシーケンス解析以外の検査が含まれる。
    多遺伝子パネル検査の紹介はこちらを参照。
    遺伝学的検査を依頼する医師向けの詳細情報はこちらを参照。
  • 包括的遺伝学的検査:ファンコニ貧血の特徴を有する個人において、単一遺伝学的検査(および/または多遺伝子パネル検査)で診断が確定しない場合、エクソームシーケンスやゲノムシーケンスを含む、より包括的なゲノム検査(可能な場合)を検討することができる。このような検査は、これまで考慮されなかった診断(例えば、同様の臨床症状をもたらす別の遺伝子、または遺伝子における病的バリアント)を提示または示唆する可能性がある。

包括的遺伝学的検査の紹介はこちらを参照。包括的遺伝学的検査を依頼する臨床医のためのより詳細な情報は、こちらを参照。

表1. ファンコニ貧血の検査で用いられる分子遺伝学的検査の概要
遺伝子1,2 相補性グループ3 FAのうち当該遺伝子の病的バリアントの占める割合4 検出された病的バリアント5の割合(手法別)
シークエンス解析6 遺伝子特異的欠失/重複解析7
BRCA1 FA-S <1% >99% 報告なし
BRCA2 FA-D1 2% >99% 報告なし
BRIP1 FA-J 2% >99% 報告なし
ERCC4 FA-Q <1% >99% 報告なし
FAAP100 FA-Y 1症例 8 >99% 報告なし
FANCA FA-A 60-70% ~60% ~40%
FANCB FA-B ~2% ~70% ~30%
FANCC FA-C ~14% >90% <10%
FANCD2 FA-D2 ~3% <90% >10%
FANCE FA-E ~3% >99% 報告なし
FANCF FA-F ~2% ~85% ~15%
FANCG
(XRCC9)
FA-G ~10% >99% 報告なし
FANCI FA-I ~1% >95% <5%
FANCL FA-L <1% >90% <10%
FANCM FA-M <1% ~75% 1 報告
PALB2 FA-N <1% >95% 1 報告
RAD51 FA-R 2 報告 >99% 報告なし
RAD51C FA-O <1% >99% 報告なし
REV7 (MAD2L2) FA-V 1 報告 >99% 報告なし
RFWD3 FA-W 1 報告 >99% 報告なし
SLX4 FA-P <1% >90% 1 報告
UBE2T FA-T <1% <50% >50%
XRCC2 FA-U 1 報告 >99% 報告なし
Unknown NA <5%    
  1. 遺伝子はアルファベット順で記載
  2. 染色体座位およびタンパク名は「表A. 遺伝子とデータベース」を参照
  3. 遺伝子の同定に先立ち、相補性グループは体細胞ベースの手法に基づいて定義された。相補性解析検査は多遺伝子パネル検査に代わられたが、この用語は一部の文章で使用され続けている
  4. Human Gene Mutation Databaseの購読ベースのプロフェッショナルビューから得られたデータ[Stenson et al 2020]
  5. この遺伝子で検出された病的バリアントの情報は「分子遺伝学」の項を参照
  6. シーケンス解析では、benign、likely benign、uncertain significance、likely pathogenic、 pathogenicのバリアントが検出される。バリアントには、遺伝子内の小さな欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライスサイトバリアントが含まれることがある。シーケンス解析の結果を解釈する際に考慮すべき事については、こちらを参照。
  7. 標的遺伝子の欠失・重複解析では,遺伝子内の欠失や重複が検出できる.検査方法は,定量的PCR,ロングレンジPCR,MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法,単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどである。
  8. 著者の個人的な交流

臨床的特徴

臨床症状

FAの主要な臨床症状は身体の先天異常、血球減少を症状とする進行性の骨髄機能不全、癌罹患性である。しかしながら、身体の先天異常や骨髄機能不全を伴わない患者もいる。

身体的先天異常

FA患者の約75%に身体異常が認められる。

  • 成長障害:出生前および/または出生後の低身長、低出生体重。
  • 皮膚色素異常(40%):全身性色素沈着、カフェオレ斑、白斑
  • 上肢の骨格異常、両側性または片側性(35%)。
  • 親指(35%):欠失または低形成、二分、多指症、3指節拇指、長大、ずんぐり形
  • 橈骨(7%):欠損または低形成(親指の異常を伴う場合のみ)、脈が弱いか欠失
  • 手(5%):平たい母指球、第1中手骨欠損、斜指症、多指症
  • 尺骨(1%):形成異常、短縮
  • 下肢の骨格異常(5%)
  • 足:合趾症、足指の異常、内反足
  • 先天性股関節脱臼
  • 小頭症(20%)
  • 眼部(20%)

小眼球、白内障、乱視、斜視、内眼角贅皮、眼間狭小、眼間隔離、眼瞼下垂

  • 生殖器系の異常
  • 腎臓(20%):馬蹄腎、異所性または骨盤内腎、低形成、異形成、欠失、水腎症または水尿管症
  • 男性(25%):尿道下裂、小陰茎、潜在精巣、無睾丸、無精子症、生殖能の低下
  • 女性(2%):双角子宮、位置異常、小子宮

注:男性では、低精子症又は無精子症のために生殖能は低下する(完全に失うわけではない)。女性では、造血幹細胞移植を受けるか受けないかにかかわらず妊娠は可能である。

  • 内分泌疾患(50%~75%):甲状腺機能低下症(30%~60%)、糖尿病(8%~10%)、高血糖/耐糖能異常(25%~70%)、インスリン抵抗性 [Petryk et al 2015]。
  • 難聴(10%):通常は中耳の骨形成異常による二次性の伝導障害で、形状異常(耳介異形成、狭小耳道、異常耳輪)を伴う場合もある。
  • 先天性心疾患(6%):動脈管開存症、心房中隔欠損、心室中隔欠損、大動脈縮窄、総動脈管縮窄、内臓逆位
  • 消化器(5%)食道・十二指腸・空腸閉鎖、鎖肛、気管食道瘻、輪状膵、消化管回転異常
  • 中枢神経系(3%)小さい脳下垂体、下垂体茎離断症候群、脳梁欠損、小脳形成不全、水頭症、脳室拡大
  • その他
  • 顔貌(2%)三角形状顔面、小顎症、顔面中部低形成
  • 脊椎(2%)二分脊椎、脊柱側弯症、半椎、肋骨異常、尾骨形成不全
  • 頸部(1%)シュプレンガー奇形、Klippei-Fiel奇形、短頚、翼状頚、低い髪の生え際

注:頻度のパーセンテージは1927年から2014年の間に報告された文献に記載の2000例から計算されたもので、多くの文献では身体的記述がなされていないため、おおよその数字である。

発達遅滞・知的障害

発達遅滞や知的障害が10%に見られる。

骨髄機能不全

骨髄機能不全の発症年齢は、同胞間でも非常にばらつきがある。FANCAFANCCFANCGの病的バリアントを有する754人の解析では、平均発症年齢は7.6歳であった。まれに、骨髄機能不全が幼児や小児に見られることがある [Shimamura & Alter 2010]。40歳までに何らかの血液学的な症状を発生するリスクは90%である  [Kutler et al 2003]。

  • 通常、貧血に先行して血小板減少症や白血球減少症が見られる。これらは一般的に大赤血球症、ヘモグロビンFレベルの上昇を伴う。
  • 汎血球減少は一般に進行性である。
  • Sweet症候群(好中球性皮膚浸潤)は、FAの7人中6人において血液疾患の進行と関連していた[Giulino et al 2011]。
  • 骨髄機能不全の重症度は、細胞減少の程度によって分類することができる(表2)。これらの骨髄不全の基準を満たすには、細胞減少が持続し、他の原因によって説明できないことが必要である。

表2.ファンコニ貧血における骨髄機能不全の重症度

  軽症 中等症 重症
好中球絶対数(ANC) <1,500/mm3 <1,000/mm3 <500/mm3
血小板数 150,000-50,000/mm3 <50,000/mm3 <30,000/mm3
ヘモグロビン(Hb)値 ≥8 g/dL <8 g/dL <8 g/dL

癌易罹患性

急性骨髄性白血病(AML)の相対リスクは4つの異なるコホート研究間で約500倍上昇するとされている [Rosenberg et al 2008Alter et al 2010Tamary et al 2010]。複数のコホート研究における競合的リスク解析では、AMLの累積発生率は50歳までに13%であり、ほとんどの人は15歳から35歳の間に診断された。
骨髄異形成症候群(MDS)/AMLの発症リスクの増加は、モノソミー7および、多くは7q欠失に関連している。染色体3q26-q29のクローン性増幅は、MDS/AMLへの進行リスクの増加と関連して報告されている [Neitzel et al 2007Mehta et al 2010]。

固形癌:身体の先天異常がなく、骨髄不機能全を経験していないFA患者では、固形癌が最初の症状として現れることがある。

  • 頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、FA患者において最も一般的な固形癌である。その発生率は一般集団の500〜700倍である。FAにおけるHNSCCは、一般集団で見られるHNSCCとは明確な相違を示す。

FAでのHNSCC:

  • 一般集団よりも早い年齢(20~40歳)で発生する
  • 一般的に口腔(例:舌など)に発生する
  • 進行した状態で発症する
  • 治療に対する反応が乏しい
  • FA患者は、皮膚および泌尿器系の二次癌のリスクが高い。二次癌のパターンは、一般集団のHPV関連HNSCCで観察されるパターンに類似している[Morris et al 2011]。
  • 骨髄不全のためにアンドロゲン治療を受けているFA患者は、肝腫瘍のリスクも高くなる。

各遺伝子と表現型の相関

BRCA2
BRCA2:遺伝子の両アレルにおける病的バリアントは早期の白血病と固形癌と関連が見られる[Hirsch et al 2004Wagner et al 2004Myers et al 2012]。すべての悪性腫瘍の累積発症リスクは、AML、髄芽細胞腫、ウィルムス腫瘍を含めて6歳までに97%である [Alter et al 2007]。

FANCB
近年、FANCBの病的バリアントは、主に早期発症の骨髄機能不全と重度の先天性異常を引き起こすことが示されている。原因バリアントの生化学的および細胞ベースのアッセイにより、臨床的重症度と関連するFANCBの機能特性が明らかになった[Jung et al 2020]。

FANCG
FANCGの病的バリアントは他の病的バリアントに比べて、FANCCよりも重度の骨髄機能不全と白血病の高い発生率に関連する可能性がある [Faivre et al 2000]。

PALB2
固形癌(例えば、髄芽腫、ウィルムス腫瘍)は、PALB2 の病的バリアントと関連している  [Reid et al 2007]。

遺伝型と表現型の相関

FA の臨床スペクトラムは、依然として不均一である。遺伝型と表現型には明確な相関はない。一般に、nullバリアントは機能低下型バリアントと比較して、より重篤な表現型(例えば、身体の先天異常、骨髄機能不全の早期発症、MDS/AML)を呈する。最近、ファンコニ貧血における遺伝型-表現型の関連についての総説が報告された[Fiesco-Roa et al 2019]。

BRCA2
BRCA2の病的バリアントIVS7を持つすべての患者が3歳までにAMLを発症し、他のBRCA2病的バリアントを持つ人でも6歳までにAMLを発症した  [Alter 2006]。
FANCA

FANCAの病的バリアント保持者の間で、nullバリアントをホモ接合で有する患者は、異常FANCAタンパク質を産生するバリアントを有する患者より貧血の発症が早く、白血病の頻度が高くなる[Castella et al 2011]という報告と、それに相反する報告がある[Faivre et al 2000]。
FANCAバリアント(p.His913Pro、p.Arg951Gln、p.Arg951Trp)は、他のFANCAバリアントと比較し、血液疾患進行が遅いとの報告がある[Bottega et al 2018]。

FANCB
短縮型バリアントはしばしばVACTERL-Hを呈する  [McCauley et al 2011]。

FANCC

  • FANCC のc.456+4A>T、p.Arg548Ter、p.Leu554Proバリアントは、c.67delGのようなFANCCの他のバリアントと比較して早期の血液学的症状を呈し先天異常も重篤である[Faivre et al 2005]。しかし、既知のバリアントにおける重症度に影響するその他の因子として、FANCC c.456+4A>Tバリアントではアシュケナジーユダヤ人よりも日本人で表現型が軽症になる傾向がみられる。[Futaki et al 2000]。
  • 病的バリアントのc.67delGとp.Gln13Terでは他の重症なバリアントよりも先天異常の頻度が低く、後期に骨髄機能不全を発症する [Yamashita et al 1996Gillio et al 1997]。
  • サウジアラビアの集団におけるc.165+1G>T創始者変異は、より軽度の表現型と関連している [Hartmann et al 2010]。

有病率

ファンコニ貧血(FA)は、再生不良性貧血の最も一般的な遺伝的原因であり、血液腫瘍の最も一般的な遺伝的原因の1つである。
男女比は1.2:1(p<0.001)である。Rosenberg [2011] らは、FAについて、これまでの報告よりも高い保因者頻度を示した。保因者頻度は、北米で1:181、イスラエルで1:93であった。特定の集団では、アシュケナージユダヤ人(FANCCBRCA2)、北ヨーロッパ人(FANCC)、アフリカ人(FANCA)、サハラ以南の黒人(FANCG)、スペインジプシー(FANCA)等、保持頻度が高い(<1:100)創始者バリアントが存在している。


遺伝学的に関連する疾患

FAAP100FANCBFANCCFANCD2FANCEFANCFFANCGFANCIFANCLREV7/MAD2L2RFWD3SLX4, または UBE2T における生殖細胞系列バリアントは本稿で論じた以外の表現型が関連あることは知られていない。

BRCA1BRCA2BRIP1ERCC4FANCAFANCMPALB2RAD51RAD51C, または XRCC2における生殖細胞系列バリアントに関連するその他の表現型は表3にまとめている。

3. 遺伝子別症候

遺伝子 MOI 症状
BRCA1 AD 遺伝性乳癌卵巣癌(   BRCA1- and BRCA2-Associated Hereditary Breast and Ovarian Cancer 参照)
・膵臓癌(OMIM 613347 & 614320)
・前立腺癌(OMIM 176807)
BRCA2 AD
BRIP1 AD 乳癌・卵巣癌高リスク(OMIM 605882 & OMIM 167000)
ERCC4 AR 色素性乾皮症
AR ファンコニー貧血、色素性乾皮症(XP)/コケイン症候群(CS)複合体、またはXP/CS/ファンコニ貧血の複合体の表現型を持つ個体が報告されている。 (OMIM 278760)
AR XFEプロゲロイド症候群(OMIM 610965)
FANCA AD 乳癌・卵巣癌高リスク[Del Valle et al 2020]
FANCM AR 精子産生不全、早発性卵巣不全 (OMIM 618086 & 618096)
PALB2 AD 乳癌・卵巣癌高リスク (OMIM 114480)
AD 膵臓癌高リスク  (OMIM 613348)
RAD51 AD 先天性鏡像運動症
RAD51C AD 乳癌・卵巣癌易罹患性 (OMIM 613399)
XRCC2 AR 精子産生不全、早発性卵巣不全 (OMIM 619145 & 619146)

散発性の癌(多発性扁平上皮癌、その他の癌、悪性黒色腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、膠芽腫、びまん性大B細胞リンパ腫、ユーイング肉腫、AML  [Nalepa & Clapp 2018]、膵神経内分泌腫瘍[Zheng et al 2021]など)はFAの他の所見がなく、単一腫瘍として発生する場合、生殖細胞系列に存在しないFA関連遺伝子の体細胞バリアントを持つことが多い。FA関連遺伝子のバリアントは、癌抑制遺伝子としても、癌遺伝子(特にFANCD2 )としても機能することがある。このような状況では、これらの腫瘍に対する易罹患性は遺伝しない。FA関連遺伝子の体細胞バリアントと散発性の癌について、2つの論文でレビューされている [Nalepa & Clapp 2018Niraj et al 2019]。

鑑別診断

他の染色体切断症候群患者由来の細胞も高頻度の染色体断裂をおこすが、DEBに反応して染色体断裂が起こるのはFA患者由来の細胞のみである。染色体切断症候群の例と、FAの鑑別診断に考慮すべき他の疾患については、表4を参照.

4. ファンコニ貧血の鑑別診断で注目される遺伝子と疾患

遺伝子 疾患名 遺伝形式 染色体断裂 臨床的特徴
ATM 毛細血管拡張性運動失調症 (A-T) AR A-T患者由来の細胞は、高確率で自然に染色体断裂を示す可能性がある 進行性小脳失調症、眼球運動麻痺、コレオアテトーシス、結膜毛細血管拡張、免疫不全、頻繁な感染症、癌易罹患性、電離放射線に対する過敏性
ATR
CENPJ
CEP152
CEP63
DNA2
NIN
NSMCE2
RBBP8
TRAIP
セッケル症候群(Seckel syndrome) (OMIM PS210600) AR DNA架橋剤1(MMC、DEB)による染色体断裂が見られる場合がある 成長障害、知的障害を伴う小頭症、特徴的な顔貌;汎血球減少症やAMLと関連することがある。
BLM ブルーム症候群(BSyn) AR BSyn患者由来の細胞は、高確率で自然に染色体断裂を示す可能性がある 出生前後の重度な成長障害、免疫異常、日光過敏性、インスリン抵抗性、小児期に発生する多くの癌易罹患性
NBN ナイミーヘン症候群(Nijmegen breakage syndrome, NBS) AR MMCで染色体断裂を示す可能性あり 低身長、進行性小頭症(認知機能障害を伴う)、女性の早発卵巣不全、副鼻腔肺感染、癌(特にリンパ腫)易罹患性
NF1 神経線維腫症Ⅰ型 AD 染色体断裂との関連はない カフェオレ斑、腋窩・鼠径部ソバカス、皮膚神経線維腫、虹彩小結節、脈絡膜ソバカスの多発
RBM8A 2 橈骨欠損血小板減少症(TAR症候群) AR 染色体断裂との関連はない 両側橈骨欠失、両手親指の存在、一般に一過性である血小板減少症
  1. Andreassen et al [2004]
  2. 橈骨欠損血小板減少症(TAR症候群)の診断は、RBM8A活性減弱型病的バリアントと、トランスの機能喪失型バリアント(多くの場合、染色体1q21.1領域の最小で200kbの欠失だが、分子遺伝学的検査でヘテロ接合性RBM8A病的バリアントを検出する場合もある)の検出により確定する。

VACTERL 関連(脊椎欠損、鎖肛、食道閉鎖を伴う気管食道瘻、橈骨・腎臓形成不全;OMIM 192350)も鑑別診断で考慮されることがある。VACTERL 関連は、DEB と MMC による染色体断裂試験で FA と区別することができる。VACTERL 関連の分子的原因は不明である。


臨床的マネジメント

初期診断後の評価

FAと診断された患者の重症度と管理の必要性を確定するために、表5にまとめた評価(診断のために行った検査の一部として実施されていない場合)が推奨される(2020年コンセンサスガイドライン[全文]も参照)。

5. ファンコニ貧血患者における初回診断後の推奨評価項目

  評価項目 コメント
成長 成長評価;内分泌科医による検査 内分泌科医が推奨する追加検査(成長ホルモン値、骨年齢レントゲン写真)
筋・骨格 四肢の異常、股関節脱臼、首・脊椎の異常、脊柱側弯症の臨床的評価 必要に応じて整形外科医に紹介
眼科医による検査  
生殖器 腎臓・泌尿器 超音波検査 腎臓専門医、婦人科専門医、泌尿器科医を紹介
内分泌 内分泌専門医による診察、甲状腺機能検査、脳下垂体異常のための脳MRI検査 内分泌専門医が推奨する追加検査(グルコース負荷試験、脂質、下垂体および性腺機能の評価)。
聴力検査 必要に応じて耳鼻科医に紹介
心臓・血管 心エコー図;モヤモヤ病の脳MRI&血管造影 必要に応じて循環器専門医に紹介
消化器 閉塞性消化管奇形(例:食道閉鎖症、十二指腸閉鎖症、不全肛門、分岐肛門)、気管食道瘻、腸管奇形、環状膵臓などの場合は消化器専門医による緊急診察と手術が必要。
必要に応じた栄養/摂食の評価
消化器内科医、管理栄養士、外科医への紹介
発達 発達評価(特に小児と学齢期の子供に重要) 必要に応じて神経科医や発達・行動専門の小児科医に紹介する
血液内科
腫瘍
血液内科医による評価:全血球数、胎児ヘモグロビン、血液型、血液・生化学検査(肝臓、腎臓、鉄分の状態を評価)、骨髄穿刺による細胞形態、FISH、細胞遺伝学的検査、生検による細胞の評価など FA 患者の骨髄は、核・細胞質の同期異常、巨核球の低血球化、赤血球の二核化などの異形成の徴候を示すことがある。これらの特徴は、FA 患者の MDS の評価に経験のある血液病理医が、真の MDS と鑑別する必要がある。
造血幹細胞移植を考慮した、患者、同胞、両親のHLA型判定  
遺伝カウンセリング 遺伝医療の専門家によるもの1 患者や家族にFAの性質、遺伝形式、解釈を伝え、医学的・個人的な意思決定を促す。
患者支援&情報資源 評価する。
Parent to Parent などのコミュニティやオンラインリソース(「資源」の項参照)利用。
親支援のためのソーシャルワークの関与の必要性。
訪問看護の必要性。
 

FA = ファンコニ貧血、GI =消化管、HLA = ヒト白血球抗原、MOI = 遺伝形式、MDS = 骨髄異形成症候群

  1. 臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー、認定遺伝看護師

症状の治療

治療に関する推奨事項は、2014年のコンセンサス会議で合意され、2020年に更新された(全文)。

表6. ファンコニ貧血の患者に対する症状の治療

項目 治療 考慮事項/その他
成長障害 内分泌科医による治療  
四肢の異常と
その他の整形外科的症状
  • 整形外科医による管理
  • 理学療法、作業療法
 
眼球異常 眼科医による管理  
腎奇形 腎臓専門医/泌尿器科医による管理  
生殖器異常 婦人科医または泌尿器科医による管理  
甲状腺機能低下症 内分泌科医による治療  
難聴 補聴器が有用である可能性
耳鼻咽喉科医による
早期介入、または学区を通じた地域のヒアリングサービス
心臓の異常 循環器専門医と外科医による治療  
栄養 必要に応じて鼻腔栄養チューブや胃瘻による栄養補給
ビタミンDの補給
嚥下障害の臨床症状や徴候がある場合、臨床栄養評価の閾値は低い
発達 発達遅滞のための早期介入
学齢期の子供への個別教育計画
必要に応じた療法(言語、理学、作業)
 
皮膚所見 日焼け止めやラッシュガードの使用
皮膚科専門医による治療
 
家族/コミュニティ
  • 家族を地域の資源、介護家族支援に繋げるための、ソーシャルワーカーの関与
  • 複数の専門医の予約、医療機器、薬剤、消耗品を管理の調整
・緩和ケア/在宅看護の必要性の評価(継続的に行う)
・アダプティブ・スポーツやスペシャルオリンピックスへの参加を検討

DD=発達遅滞、OT=作業療法、PT=理学療法

アンドロゲン投与

アンドロゲン投与によって(少なくとも一過性ではあるが)FA患者の約50%で赤血球数や血小板数の改善がみられる。ヘモグロビン濃度が8g/dLを下回る、または血小板数が30,000/mm3を下回る(「重症」-表2参照)場合、アンドロゲン療法が検討されうる。オキシメトロン療法は、オステオポンチンの転写を抑制し、ファンコニマウスの造血幹細胞の循環を誘導することから、本剤の作用の重要な潜在的メカニズムとして、オステオポンチンの抑制が示唆されている[Zhang et al 2015]。

  • オキシメトロンで、一日に体重1㎏あたり2-5mgを経口投与する。
  • 血球数を注意深くモニターすることによってアンドロゲン投与量を必要最低限まで減量する。
  • FAに使用される他の合成アンドロゲンは、アジアではスタノゾロロン、北米ではオキサンドロロンとダナゾールがある。

アンドロゲンの副作用は、男性化、肝毒性(肝酵素値上昇、胆汁うっ滞、肝ペリオーシス(血液貯留嚢胞による血管病変)、肝腫瘍)などがある。アンドロゲンを服用している人は、肝腫瘍のモニター、定期的な肝機能検査を受けて、異常がないかを確認する必要がある。肝機能検査は、3~6ヵ月ごとに、肝臓超音波検査は、6~12ヵ月ごとに行う必要がある。3~4ヵ月後に反応が見られない場合は、アンドロゲンを中止する必要がある [Scheckenbach et al 2012Rose et al 2014Paustian et al 2016]。

血球増殖因子(G-CSF
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与は、一部の患者で好中球数の改善がみられる。G-CSF投与量は、好中球数を1,000/mm3以上に維持できる、最低限量と最低頻度に容量設定する必要がある。
注:(1) G-CSFの投与開始前に骨髄穿刺による生検を行い、治療中は6ヶ月ごとにモニターする必要がある。(2) G-CSFの投与はFA専門家と相談しながら行うこと。

造血幹細胞移植(HSCT
再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病を含むFAの血液学的な症状の治癒のためにはHSCTが唯一の治療法である。HSCTはMDSや白血病の発症前、つまり造血機能の補充のために何度も輸血を繰り返す以前に行うのが理想である [Mehta et al 2010Ebens et al 2017]。FA患者は化学療法や放射線療法に対して感受性が高く、特別な前処置が必要であり、HSCTはFA患者へのHSCTに習熟した病院で行うべきである。

多施設共同研究により、骨髄不全および/またはMDSのために代替ドナー(血縁・非血縁のドナー不一致例を含む)および化学療法のみの移植前処置を用いて移植を受けた45人のFAにおいて、1年生存率が80%であったと報告されている。骨髄不全で移植された10歳未満患者の生存率は91.3%(±5.9%)とさらに良好であった [Mehta et al 2017]。

フルダラビンは移植片不全の発生率を低下させ、適合同胞ドナー設定における移植前処置にて放射線照射を回避することができた [MacMillan et al 2015]。代替幹細胞ドナーのレシピエントの移植成績は、適合同胞ドナーの移植成績の水準を達成している [Mehta et al 2017Ebens et al 2018]。
生体内または生体外での移植片操作に対する新しいアプローチは、許容できない水準の移植片対宿主病(GVHD)を起こすことなく、半合致ドナーからの移植を可能にする[Bonfim et al 2017Strocchio et al 2021Zubicaray et al 2021]。

MDS/AML
MDS/AML の治療は依然として困難である。化学療法、導入化学療法を伴うまたは伴わない造血幹細胞移植、および治験などの選択肢がある。化学療法は、重篤で長期にわたる、または不可逆的な骨髄抑制を引き起こす可能性があるため、FAの経験豊富な施設と連携して実施する必要がある。造血幹細胞移植の計画は、化学療法を開始前に立てておく必要がある。FA患者におけるAMLに対する化学療法レジメンに関する公表されている報告は乏しく、長期的なフォローアップが行われていないため、全体的な転帰に対する有益性が不明確であるという点で限界がある[Mehta et al 2007Talbot et al 2014Mitchell et al 2014]。最近発表されたEBMT(欧州血液骨髄移植学会)の経験では、造血幹細胞移植前に完全寛解を達成することが生存に有益であることが示唆されている [Giardino et al 2020]。

固形癌
悪性腫瘍を示唆する症状がある場合には、迅速かつ積極的な検査が必要である。
早期発見と外科的切除が、依然として治療の主軸である。FA患者では、化学療法や放射線療法に伴う毒性が高いため、治療は困難である。FA患者に対する標準用量または減量した用量での化学療法に関するデータは限られており、重篤または致死的な毒性および治療成績不良の報告がある [Masserot et al 2008Tan et al 2011Spanier et al 2012Kutler et al 2016]。生殖器癌と診断された患者は、直ちに婦人科腫瘍医に紹介し、FAの専門家と治療を調整する必要がある。

一次症状の予防
女性における婦人科癌のリスク低減のため、また口腔癌のリスク低減の可能性があるため、9歳以上の女性にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種が推奨されている。

二次的な合併症の予防
造血幹細胞移植を受けたFA患者でGVHDを発症した人の、治療後10年間での頭頸部癌の発症率は28%(GVHDのない人は0%)であり、この知見はGVHDリスクを最小化することの重要性を提示している [Guardiola et al 2004]。以前の研究で報告されたGVHDのリスク上昇は、ドナー移植片のT細胞除去によって著しく減少した [Chaudhury et al 2008MacMillan et al 2015]。

造血幹細胞移植に成功した患者は、ベースラインのリスク上昇に加えて、固形癌のリスクも上昇する [Rosenberg et al 2005]。二次癌の長期合併症に放射線が寄与することが知られているため、最近では、非血縁ドナーの場合でも放射線を用いない移植前処置を行うことが注目されている。ドイツ、ブラジル、トルコ、および米国のグループは、単施設および多施設の研究において、化学療法のみの移植前処置を用いた代替ドナーによる優れた治療成績を報告している。ドイツの研究では、中央値30ヶ月のフォローアップで88%の生存率と正常な造血が確認された。米国の多施設共同前向き試験でも、同様の優れた治療成績が示された。骨髄系悪性腫瘍の患者や、不一致の血縁者/半合致移植を受けた患者を含む全コホートの1年生存率と無病生存率は、追跡期間中央値41ヶ月の時点でそれぞれ80%と77.7%であった。低用量ブスルファン含有移植前処置を用いて骨髄不全に対する造血幹細胞移植を受けたすべての幼児(年齢<10歳)が生存していた [Bonfim et al 2015Chao et al 2015Mehta et al 2017]。

サーベイランス
2022年コンセンサスガイドライン参照(全文)

7. FA患者で推奨されるサーベイランス

症状 評価 頻度
成長 成長・摂食・栄養の評価 小児期の受診時ごと
脊柱側弯症 脊椎検査
斜視
白内障
眼科医による検査 小児期は毎回の診察
その後は1年毎
内分泌症状1 内分泌評価
  • TSH/FT4
  • 25-ヒドロキシビタミンD
    2時間グルコース負荷試験、インスリン値
毎年
思春期とホルモンレベル 思春期が終わるまでは2年毎
難聴 聴力検査 診断時および耳毒性のある薬剤
(例:化学療法剤)に曝露された場合は
定期的に実施する
発達 発達評価 小児期は毎年
汎血球減少症 血球数 安定期は3-4ヶ月に1回、
必要に応じてそれ以上の頻度で実施2,3
骨髄異形成症
  • 骨髄穿刺/生検による形態・細胞の評価
  • FISH、細胞遺伝学的検査による悪性クローン出現の評価
  • 少なくとも年1回(2歳以降)
  • GCSF投与中の患者においては、可能であれば6ヶ月毎に骨髄穿刺/生検を行う。
  • Sweet症候群を発症した患者を含め、
    血液症状の進行を確認する
肝機能障害
アンドロゲン療法による治療
肝機能検査 アンドロゲン投与を受けている患者は3-6ヶ月に1回
腫瘍を含むアンドロゲン関連変化に対する肝臓超音波検査 アンドロゲン投与を受けている患者は6-12ヶ月に1回
生殖器の癌 生殖器病変に対する婦人科的評価 13才から毎年
徹底した外陰部検査と子宮頸癌検診 18歳または性行為開始時から年1回
生殖器病変が疑われる場合は生検を行う 前癌病変、悪性病変の既往のある患者は3-6ヶ月に一度
口腔・頭頸部癌
首の癌
FAに詳しい歯科医、口腔外科専門医、耳鼻咽喉科医による検査 9-10歳頃より6ヶ月に一度
前癌病変、悪性病変の既往のある患者は2-3ヶ月に1回
鼻咽頭喉頭鏡 10歳より毎年、または造血幹細胞移植後1年以内
嚥下困難や痛みのある方の食道癌の評価  
皮膚癌 皮膚科医による評価 6-12ヶ月ごと
BRCA2関連FA4,5 腹部超音波検査、脳MRI 診断時から年1回(新生児を含む)
  1. 例:甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症
  2. 原因不明の血球数の変化(例:急性感染症、投薬による抑制)は、直ちに全血球計算と骨髄検査(FISH、細胞遺伝学的検査)を行い、評価する必要がある。
  3. 血球数の増加は、MDS/AML の発症、あるいは、まれである幹細胞における生殖細胞病的バリアントの復帰変異(体細胞系列の幹細胞モザイク)のいずれかであることを認識することが重要である。これらの患者は、MDS/AMLの場合は直ちに造血幹細胞移植を行うか、少なくとも1~2ヶ月に一度の全血球計算と6ヶ月に一度の細胞遺伝学的骨髄検査による厳重な監視を継続する必要がある。
  4. 神経芽腫、脳腫瘍、腎臓腫瘍
  5. PALB2関連FA患者に対しては、コンセンサスガイドラインがない場合、これらのがんサーベイランスの推奨事項を考慮することができる。

FA患者に対する追加がんサーベイランス

FAに関連する遺伝子の中には、乳癌易罹患性遺伝子として知られているものがある。BRCA1BRCA2BRIP1PALB2、およびRAD51Cである。これらの遺伝子のいずれかの病的バリアントがありFAを発症している患者は、これらの遺伝子でヘテロ接合性の病的バリアントを有する個人向けに作成されたNCCNスクリーニングガイドラインを遵守するべきである。これらの管理は遺伝の専門診療科で実施されるべきである。現在までのところ、これらの遺伝子の両アレルの病的バリアントによるFA患者における乳癌のリスクは確立されておらず、乳癌スクリーニングに関する追加の推奨事項は決定されていない。

避けるべき薬剤/環境

輸血
血液製剤はサイトメガロウイルス(CMV)感染の可能性がなく、放射線照射されたものでなければならない。
感作の可能性を低減するため、HSCTを考えている場合には血縁者が輸血のドナーとなることは避けるべきである。
輸血が必要になった場合は、移植を検討する必要がある。

避けるべき有害物質
腫瘍形成に関与しているとされる喫煙、副流煙、アルコールなどは避けるべきである。

過度な日光への露出
日焼け止めや日焼け防止用の衣服を使用し、紫外線への露出は制限する。

安全でない性行為
HPVに関連した悪性腫瘍のリスクを増加させる。

サーベイランスを目的としたX線検査

FA患者では放射線への感受性が増大するため、サーベイランスのための放射線検査は臨床適応がない場合は避けるべきである。しかしながら、手首、臀部、脊髄における異常のように、年齢に伴って生じる骨の異常を監視するための最低限の骨格のサーベイランスは考慮するべきである。

リスクのある親族における評価

FAに関連した身体の先天異常、骨髄機能不全、および関連癌に対する適切なサーベイランスが有益である血縁者をできるだけ早期に特定するため、患者の同胞を評価することは適切である。評価には以下が含まれる。

・家系内で病的バリアントが明らかである場合は、分子遺伝学的検査
・DEB/MMCを用いたリンパ球の細胞遺伝学的検査

乳癌の易罹患性
FAに関連する遺伝子のいくつかは、乳癌易罹患性遺伝子として知られている(「遺伝的に関連する疾患」の項を参照)。既知の乳癌易罹患性遺伝子に病的バリアントを有することが判明した家系構成員は、NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast, Ovarian, and Pancreatic  (無料会員登録とログインが必要)で推奨される癌スクリーニングを実施するべきである。および、遺伝医療専門家のケアの下で実施するべきである。

早期診断と治療を目的としたリスクのある親族の評価に関する情報は、「遺伝カウンセリング」の項を参照。

妊娠のマネジメント

造血幹細胞移植の有無にかかわらず、FA患者の女性は妊娠可能である [Nabhan et al 2010Tsui & Crismani 2019]。妊娠の際は産科医と血液専門医によるハイリスク妊娠としての管理が必要である。

研究中の治療法

遺伝子治療
FANCAを標的とした遺伝子治療の初期段階の臨床試験が、レンチウイルスベクターを用いて、米国のワシントン大学/ Fred Hutchinsonがん研究センター、スタンフォード大学、スペインのバルデブロン大学病院研究所、中国のShenzhen Geno免疫医学研究所など世界中の施設で実施されている。
また、米国国立心肺血液研究所は、FANCC-FA患者を対象にレトロウイルスベクターによる自家CD34+幹細胞導入の第I相試験を完了した(結果待ち)。
骨髄採取から得られたCD34+幹細胞の修正を目指している試験もあるが、前臨床モデルで有利であることが示されたG-CSFとプレリキサフォーの併用による末梢血動員を検討しているものもある[Río et al 2017]。

HSCT
多施設共同研究(シンシナティ小児医療センター、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター、フレッド・ハッチンソンがん研究センター)では、ファンコニ貧血(造血幹細胞移植適応として骨髄不全に加え、MDSや白血病の患者を含む)に対する、化学療法のみの条件付けレジメンにおけるリスク調整後のバスルファン投与量について調査を行っている。

造血幹細胞移植における生体外 T 細胞受容体α/β除去は、GVHD リスクを低減し、造血幹細胞移植後の免疫抑制を回避するために、ミネソタ大学でさらなる研究を実施している。

第Ⅰ/Ⅱ相試験では、骨髄破壊を助け、化学療法/放射線毒性を軽減するために、抗cKIT抗体を造血幹細胞移植の条件として組み入れる予定である。この試験は、造血幹細胞移植の適応症として骨髄不全を有する2歳以上の患者を対象に、幹細胞産物のT細胞受容体α/β除去と組み合わせて実施される(Jasper Therapeuticsがカリフォルニア州スタンフォード大学をスポンサーとしている)。

造血のサポート
現在、米国では、FAの小児および成人の骨髄機能不全を対象に、抗酸化剤のケルセチン、抗高血糖薬のメトホルミン、トロンボポエチン模倣剤のeltrombopagの第I/II相試験が進行中である。

扁平上皮癌(SCC
Cincinnati Children's Hospital Medical Centerでは、FA患者におけるSCCの予防を目的とした抗酸化物質ケルセチンの第II相試験も現在進行中である。

米国ではClinicalTrials.gov 、欧州ではEU Clinical Trials Registerを検索すると、さまざまな疾患や症状に関する臨床試験の情報を入手することが可能である。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

FA関連遺伝子は、常染色体潜性(劣性)遺伝、常染色体顕生(優性)遺伝(RAD51関連FA)、X連鎖遺伝(FANCB関連FA)がある。

家系内メンバーのリスク-常染色体潜性(劣性)FA

発端者の両親

  • 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のFAの子を持つ両親は、FAの原因となる変異アレルの絶対保因者となる。
  • 両親ともにFA関連病的バリアントをヘテロ接合体で有していることを確認し、高い信頼性の再発リスク評価をするために、発端者の両親に対して分子遺伝学的検査を行うことが推奨される。
  • 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のFAを持つ子供の片親のみに病的バリアントが検出された場合、以下の可能性を考慮する必要がある。
    • De novo病的バリアント:発端者で同定された病的バリアントの1つが、発端者でde novoとして発生した、またはモザイクの親で接合後de novoイベントとして発生した[Jónsson et al 2017]。
    • 病的バリアントを有する親染色体の片親アイソダイソミーにより、発端者の病的バリアントがホモ接合であること。

ヘテロ接合体は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のFAのリスクはない。しかし、FA関連遺伝子のサブセット(例えば、BRCA1BRCA2PALB2BRIP1RAD51C)のヘテロ接合体バリアントは乳癌や他の癌のリスク上昇と関連している(「遺伝的に関連する疾患」の項とBRCA1- and BRCA2-Associated Hereditary Breast and Ovarian Cancerを参照のこと)。

発端者の同胞 

  • 常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のFAの同胞は、それぞれ、25%の確率で両方の病的変異アレルを受け継いで発症し、50%の確率で片方の変異アレルを受け継いで保因者となり、25%の確率で正常アレルを二つ受け継いで保因者とはならない。
  • ヘテロ接合体にはFAのリスクはない。しかし、FA関連遺伝子のサブセット(例えば、BRCA1、BRCA2、PALB2、BRIP1、およびRAD51C)のヘテロ接合体バリアントは、乳癌および他の癌のリスク増加と関連している[Seal et al 2006, Berwick et al 2007, Reid et al 2007](「遺伝的に関連する疾患」の項およびBRCA1- and BRCA2-Associated Hereditary Breast and Ovarian Cancerを参照のこと)。

発端者の子

常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のFA患者の子は絶対保因者である。

他の家族構成員

発端者の両親の同胞はそれぞれが50%の確率で保因者である。

ヘテロ接合体の検出

リスクのある親族に対するヘテロ接合体検査、家族内のFA関連病的バリアントを事前に同定する必要がある。
常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のFA関連病的バリアントをヘテロ接合で持つ人は、DEB/MMC検査(染色体断裂試験)では検出できない。

家系内メンバーのリスク-常染色体顕性(優性)FA

発端者の両親

  • 現在までに報告されているRAD51関連FAのすべての発端者は、de novo RAD51病的バリアントとして本疾患を発症している。
  • 発端者の両親には、遺伝的状態を確認し、高い信頼性再発リスクカウンセリングを可能にするため、分子遺伝学的検査が推奨される。
    発端者で同定された病的バリアントが両親のいずれでも同定されない場合、以下の可能性を考慮する必要がある。
  • 発端者がde novoの病的バリアントを有している。注:以下の場合、病的バリアントは「de novo」として報告される。(1) 発端者で発見された病的バリアントが親のDNAで検出されない (2) 親の身元確認検査で生物学的母性および父性が確認された。親の身元確認検査が行われない場合、そのバリアントは「assured de novo」として報告される[Richards et al 2015]。

発端者は生殖細胞系列(または体細胞系列と生殖細胞系列)のモザイクを持つ親から病的バリアントを受け継いだ。注:親の白血球DNAの検査は、体細胞モザイクのすべての例を検出しない可能性があり、生殖細胞のみに存在する病的バリアントを検出することはできない。

発端者の同胞

発端者の同胞のリスクは、発端者の両親の遺伝学的状態によって異なる。
発端者の親が発端者で同定された病的バリアントを有している場合、同胞がその病的バリアントを受け継ぐリスクは50%である。
発端者で同定されたRAD51病的バリアントが両親のどちらかの白血球DNAで検出されない場合、親の生殖細胞モザイクの理論的可能性から、兄弟への再発リスクは1%と推定される [Rahbari et al 2016]。(RAD51関連FAでは、親の生殖細胞モザイクはこれまで報告されていない)。

発端者の子孫

RAD51関連FAの患者の子供は,50%の確率で病的バリアントを遺伝すると推定されるが,RAD51関連FAの患者は1人しか成人に達しておらず、子孫は報告されていない。

他の家系構成員

これまでに報告されたRAD51関連FAの発端者はすべてde novo RAD51病的バリアントとしてこの疾患を有していることから、他の家系構成員へのリスクは低いと推定される。

家系内メンバーのリスク―X連鎖FA

男性患者(発端者)の両親

  • X連鎖性FA男性の父親は、本疾患を発症しておらず、FANCB病的バリアントのヘミ接合体でもないので、評価/検査の必要はない。
  • 一人以上の罹患者を持つ家系では、罹患した男性の母親は絶対保因者である。

注:女性に罹患した子供が一人以上いて、他に罹患した血縁者がおらず、白血球DNAからFANCB病的バリアントが検出されない場合、生殖細胞モザイクである可能性が高いと考えられる。

  • 男性が唯一の罹患者である場合(すなわち、散発例)、母親は保因者であるか、罹患男性がde novo FANCB病的バリアントを有するか(この場合、母親は保因者ではない)、母親が体細胞/生殖細胞モザイクである可能性がある。
  • 母親の遺伝的状態を確認し、高い信頼性の再発リスク評価を可能にするために、母親の分子遺伝学的検査が推奨される。

発端者の同胞:

兄弟姉妹のリスクは、母親の遺伝的状態によって異なる。

  • 発端者の母親が病的バリアントを持っている場合、各妊娠における病的バリアントを受け継ぐ確率は50%である。
  • 病的バリアントを受け継いだ男性の兄弟姉妹は影響を受けるでしょう。病的バリアントを受け継いだ男児は罹患者となり、病的変異を受け継いだ女児は保因者となり、通常発症しない。
  • 家系内の唯一の男性罹患者(孤発例)の母親の白血球DNAにFANCB病的バリアントが検出されない場合、母親の生殖細胞系列モザイクの可能性があるため、同胞のリスクは低いものの、一般集団よりも高くなる。

発端者の子

男性はすべての女性の子供には病的バリアントを受け継ぎ、男性の子供には受け継がない。しかしながら、現時点でFANCBに関係するFA患者男性は生殖年齢まで生きることができなく、さらに、多くのFA患者男性は不妊である可能性もある。さらに、FANCBは精子形成の制御に必須であることが証明されており、罹患マウスは不妊である [Kato et al 2015]。

その他の家系構成員

発端者の母方叔母はFANCB病的バリアントのヘテロ接合体(キャリア)であるリスクがあり、叔母の子どもは性別によって保因者となるか罹患するリスクがある。

注:分子遺伝学的検査により、de novo病的バリアントが生じた家系員を特定できるかもしれない-この情報は家族の遺伝学的リスク状態を決定するのに役立つ。

保因者診断(ヘテロ接合体の検出)

FAの保因者はDEB/MMCテストでは診断できない。
保因者診断は家系内の病的バリアントが同定された後に可能になる。

遺伝カウンセリング関連事項

早期発見と治療目的のリスクのある親族の診断のための情報は、マネジメントとリスクのある親族の診断の項目を参照

発端者の同胞

FA患者の25-40%は身体異常を伴わないため、早期の診断と身体的異常、骨髄機能不全、関連癌の適切なモニターのためには罹患者のすべての同胞にDEB/MMCテスト(染色体断裂試験)を行うことが推奨される。

家族計画

  • 遺伝的なリスクを決定し、出生前検査の実施可能性を議論するのに最適なタイミングは、妊娠前である。
  • 罹患しているかリスクのある若い家系構成員に遺伝カウンセリング(子供への遺伝の可能性と生殖に関するオプションに関する議論を含めて)を行うことは適切である。

DNAバンキング 

DNAバンキングは、将来使用する可能性を見越してDNA(通常は白血球から抽出した)を保存しておくことである。検査方法や遺伝子、バリアント、疾患に対する理解が将来的に改善されることが予想されるので、DNAバンキングを考慮すべきである。

出生前診断・着床前診断

分子遺伝学的診断

罹患家族でFA関連の病的バリアント(複数可)が同定されると、リスクの高い妊娠のための出生前診断やFAの着床前診断(PGT)が可能となる。PGTは、リスクのある胚をFAに罹患しておらず、罹患同胞とHLAが一致するものとして同定することに成功している[Kahraman et al 2014Rechitsky et al 2020]。

染色体断裂

FAのリスクが大きい妊娠においては、絨毛膜絨毛(CVS)採取または羊水検査によって得られる胎児細胞を用いてDEB/MMCによる染色体断裂の増加を見る細胞遺伝学的検査を行うことによって出生前診断も可能であるが[Auerbach et al 2003];家系における病的バリアントが同定されている場合は、分子遺伝学的検査による出生前診断を用いる。

胎児の超音波診断

FAに伴う胎児の異常を診断するために超音波検査が可能である。しかしながら、超音波検査はFAの診断ではない。FAに特徴的な先天性異常の多くは超音波検査では検出できないもので、FA以外の疾患による異常が検出される場合もある[Gandhi et al 2019]。

出生前診断の利用については、医療従事者間や家族内で考え方の違いが存在する可能性がある。ほとんどの施設では出生前診断の利用は個人の判断であると考えるだろうが、これらの問題について議論することは有用であると考えられる。

訳注:日本では,本症に対する出生前診断や着床前診断は行われない。いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である。

 


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

  • Fanconi Anemia Cell Repository

Department of Medical and Molecular Genetics
3181 Southwest Sam Jackson Park Road L103
Oregon Health & Science University
Portland OR 97201
Phone: 503-494-6888

  • Fanconi Anemia Research Fund, Inc. (FARF)

1801 Williamette Street
Suite 200
Eugene OR 97401
Phone: 888-326-2664 (Toll-free Family Support Line); 541-687-4658
Fax: 541-687-0548
Email: info@fanconi.org
www.fanconi.org

  • International Fanconi Anemia Registry (IFAR)

The Rockefeller University
1230 York Avenue
New York NY 10065
Phone: 212-327-8862
Fax: 212-327-8262
Email: auerbac@rockefeller.edu
International Fanconi Anemia Registry (IFAR)

  • National Cancer Institute Inherited Bone Marrow Failure Syndromes (IBMFS) Cohort Registry

Phone: 800-518-8474
Email: NCI.IBMFS@westat.com
www.marrowfailure.cancer.gov


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

A .ファンコニ貧血:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体 タンパク質 遺伝子座特異的データベース HGMD ClinVar
BRCA1 17q21​.31 Breast cancer type 1 susceptibility protein BRCA1 homepage - LOVD  BRCA1 BRCA1
Database of BRCA1 and BRCA2 sequence variants that have been clinically reclassified by a quantitative integrated evaluation 
Breast Cancer Information Core (BRCA1) 
BRCA1 @ ZAC-GGM
BRCA2 13q13​.1 Breast cancer type 2 susceptibility protein BRCA2 homepage - LOVD  BRCA2 BRCA2
Database of BRCA1 and BRCA2 sequence variants that have been clinically reclassified using a quantitative integrated evaluation 
Breast Cancer Information Core (BRCA2) 
Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCD1 - BRCA2) 
BRCA2 @ ZAC-GGM
BRIP1 17q23​.2 Fanconi anemia group J protein BRIP1 @ LOVD  BRIP1 BRIP1
Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCJ - BRIP1)
ERCC4 16p13​.12 DNA repair endonuclease XPF ERCC4 database ERCC4 ERCC4
FAAP100 17q25​.3 Fanconi anemia core complex-associated protein 100   FAAP100 FAAP100
FANCA 16q24​.3 Fanconi anemia group A protein Fanconi Anemia Mutation Database (FANCA) FANCA FANCA
FANCB Xp22​.2 Fanconi anemia group B protein FANCB @ LOVD  FANCB FANCB
Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCB)
FANCC 9q22​.32 Fanconi anemia group C protein Fanconi Anemia Mutation Database (FANCC) FANCC FANCC
FANCD2 3p25​.3 Fanconi anemia group D2 protein Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCD2) FANCD2 FANCD2
FANCE 6p21​.31 Fanconi anemia group E protein Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCE) FANCE FANCE
FANCF 11p14​.3 Fanconi anemia group F protein Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCF) FANCF FANCF
FANCG 9p13​.3 Fanconi anemia group G protein Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCG) FANCG FANCG
FANCI 15q26​.1 Fanconi anemia group I protein Fanconi Anemia Mutation Database (FANCI) FANCI FANCI
FANCL 2p16​.1 E3 ubiquitin-protein ligase FANCL Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCL) FANCL FANCL
FANCM 14q21​.2 Fanconi anemia group M protein Fanconi Anaemia Mutation Database (FANCM) FANCM FANCM
MAD2L2 1p36​.22 Mitotic spindle assembly checkpoint protein MAD2B   MAD2L2 MAD2L2
PALB2 16p12​.2 Partner and localizer of BRCA2 PALB2 database PALB2 PALB2
RAD51 15q15​.1 DNA repair protein RAD51 homolog 1 RAD51 database RAD51 RAD51
RAD51C 17q22 DNA repair protein RAD51 homolog 3 RAD51C @ LOVD RAD51C RAD51C
RFWD3 16q23​.1 E3 ubiquitin-protein ligase RFWD3   RFWD3 RFWD3
SLX4 16p13​.3 Structure-specific endonuclease subunit SLX4 SLX4 @ LOVD SLX4 SLX4
UBE2T 1q32​.1 Ubiquitin-conjugating enzyme E2 T   UBE2T UBE2T
XRCC2 7q36​.1 DNA repair protein XRCC2 XRCC2 @ LOVD XRCC2 XRCC2

データは、HGNCの遺伝子、 OMIMの染色体座、UniProtのタンパク質を標準として編集している。リンク先のデータベース(Locus Specific、HGMD、ClinVar)については、こちらを参照。

表B .ファンコニー貧血のOMIM登録 (OMIMの全文)

113705 BRCA1 DNA REPAIR-ASSOCIATED PROTEIN; BRCA1
133520 EXCISION REPAIR, COMPLEMENTING DEFECTIVE, IN CHINESE HAMSTER, 4; ERCC4
179617 RAD51 RECOMBINASE; RAD51
227645 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP C; FANCC
227646 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP D2; FANCD2
227650 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP A; FANCA
300514 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP B; FANCB
300515 FANCB GENE; FANCB
600185 BRCA2 DNA REPAIR-ASSOCIATED PROTEIN; BRCA2
600375 X-RAY REPAIR CROSS COMPLEMENTING 2; XRCC2
600901 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP E; FANCE
602774 RAD51 PARALOG C; RAD51C
602956 FANCG GENE; FANCG
603467 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP F; FANCF
604094 MITOTIC ARREST-DEFICIENT 2 LIKE 2; MAD2L2
605724 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP D1; FANCD1
605882 BRCA1-INTERACTING PROTEIN 1; BRIP1
607139 FANCA GENE; FANCA
608111 FANCL GENE; FANCL
609053 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP I; FANCI
609054 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP J; FANCJ
609644 FANCM GENE; FANCM
610355 PARTNER AND LOCALIZER OF BRCA2; PALB2
610538 UBIQUITIN-CONJUGATING ENZYME E2 T; UBE2T
610832 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP N; FANCN
611301 FANCONI ANEMIA-ASSOCIATED PROTEIN, 100-KD SUBUNIT; FAAP100
611360 FANCI GENE; FANCI
613278 SLX4 STRUCTURE-SPECIFIC ENDONUELEASE SUBUNIT; SLX4
613390 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP O; FANCO
613897 FANCF GENE; FANCF
613899 FANCC GENE; FANCC
613951 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP P; FANCP
613976 FANCE GENE; FANCE
613984 FANCD2 GENE; FANCD2
614082 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP G; FANCG
614083 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP L; FANCL
614087 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP M; FANCM
614151 RING FINGER AND WD REPEAT DOMAINS-CONTAINING PROTEIN 3; RFWD3
615272 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP Q; FANCQ
616435 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP T; FANCT
617243 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP V; FANCV
617244 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP R; FANCR
617247 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP U; FANCU
617784 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP W; FANCW
617883 FANCONI ANEMIA, COMPLEMENTATION GROUP S; FANCS

表A .ファンコニ貧血:遺伝子とデータベース 参照


分子病態

ファンコニ貧血(FA)に関与し、また各表現型による相補的グループを構成する少なくとも23の遺伝子が同定されている。FA関連遺伝子がコードするタンパク質は、「FA経路」または「FA-BRCA経路」と呼ばれる共通の経路において機能していると考えられ、DNA架橋剤への細胞の抵抗性を調節している [Taniguchi & D'Andrea 2006D'Andrea 2010Deans & West 2011Kee & D'Andrea 2012]。
この経路の破壊は、FAで見られる一般的な細胞および臨床の症状を引き起こす[D'Andrea 2010Nakanishi et al 2011Williams et al 2011Crossan & Patel 2012Kim & D'Andrea 2012]。
FANCA, FANCB, FANCC, FANCE, FANCF, FANCG, FANCL, FANCMの8つのタンパク質とFAAP24  [Ciccia et al 2007] , FAAP100  [Ling et al 2007] は核複合体(FA 複合体)を形成する。この複合体はマルチサブユニットからなるユビキチンリガーゼ複合体で、2つのFAタンパク質(FANCD2とFANCI)のモノビキチン化はFA複合体依存的である  [Garcia-Higuera et al 2001Smogorzewska et al 2007]。
DNA損傷や細胞周期のS期に応答して、このFA複合体がFANCD2とFANCIタンパク質のモノユビキチン化を促進する。モノユビキチン化されたFANCD2およびFANCIは、BRCA1、BRCA2、PALB2、RAD51などのタンパク質を含む核内局所に移動する。FANCIはFANCD2と配列が類似しており、両者はタンパク質複合体(ID複合体)を形成する[Smogorzewska et al 2007]。FANCD2とFANCIは相互依存的にモノユビキチン化される[Smogorzewska et al 2007]。FAN1ヌクレアーゼはモノユビキチン化されたFANCD2に結合して、その酵素活性を誘導することが示されている [Huang & D'Andrea 2010]。無細胞系を用いて、in vitroでの架橋修復が再現されている [Knipscheer et al 2009]。

さらに、FAコア複合体はBLM、RPA、トポイソメラーゼIIIαとともに、BRAFT (BLM, RPA, FA, and topoisomerase IIIα) と呼ばれるより大きな複合体を形成し[Meetei et al 2003] 、これはブルーム症候群に関連している。FANCMは、FAコア複合体とBLM複合体という分離可能な複合体の両方に存在する[Deans & West 2009]。

BRCA2(以前はFANCD1として知られていた)は乳癌易罹患性をもたらす癌抑制因子であり [Howlett et al 2002] 、明確な臨床表現型を持つ [Wagner et al 2004Alter et al 2007Myers et al 2012]。BRCA2タンパク質の安定性と局在は、別の乳癌感受性遺伝子であるPALB2(以前はFANCNとして知られていた)がコードするPALB2タンパク(BRCA2のパートナーおよび局在化) [Xia et al 2006]によって制御されている [Reid et al 2007]。別の乳癌感受性遺伝子 [Seal et al 2006]であるBRIP1(以前はBACH1またはFANCJ)[Cantor et al 2001]もFAと関連している[Levitus et al 2005Levran et al 2005Litman et al 2005]。
BRCA2、PALB2、BRIP1はFANCD2タンパク質のモノユビキチン化やFANCD2の核内foci形成には必須ではないが、細胞のMMCまたはDEBへの抵抗性には必要である。
BRCA2は、FANCGとFANCD2を含む複数のFAタンパク質サブ複合体において発見されており[Wilson et al 2010]、FANCD2はモノユビキチン化の下流で働くという単純な考え方があてはまらないことを示唆している。CHK1によるFANCD2のリン酸化はBRCA2との反応に必須であることが示されている [Zhi et al 2009]。FANCJとFANCD2はfoci形成において機能的に相互作用していることが示されている[Zhang et al 2010]。

FAの病態の改善は、非相同末端結合(NHEJ)経路内の因子の負の制御が関連していると報告されている[Adamo et al 2010]。これらのデータから、FAの病態の多くは、NHEJの自由な働きが不正確な修復を促進することに起因していることが示唆される。一方で、FAの相同組み換え修復におけるFAの関与は、BRCA1、BRCA2、RAD51Cとの相互作用によって確立されている。
FANCD2はPCNAやpol Kとも相互作用することが示されており、相同組換えの一種である損傷乗り越え合成が、病変部のバイパスにおけるFAタンパク質の最も直接的な機能である可能性が示唆されている[Ho & Schärer 2010Song et al 2010]。

疾患の発症メカニズム:機能喪失

8. ファンコニ貧血 遺伝子別の注目すべき病的バリアント

遺伝子1 参照配列 DNA ヌクレオチドの変化 (別名2) 予測されるタンパク質の変化 コメント[参照文献]
FANCA NM_000135​.4 
NP_000126​.2
c.1115_1118delTTGG p.Val372AlafsTer42 北欧人に多い
c.2738A>C p.His913Pro 進行の遅い血液疾患と関連
 [Bottega et al 2018]
c.2852G>A p.Arg951Gln
c.2851C>T p.Arg951Trp
FANCC  NM_000136​.3 
NP_000127​.2
c.456+4A>T
(IVS4+4A>T)
アシュケナージ・ユダヤ人に多く、日本人コホートでも報告されている3
c.37C>T p.Gln13Ter 北欧人に多い3
c.67delG
(322delG)
p.Asp23IlefsTer23 北欧・南イタリアに多い3
c.165+1G>T 「遺伝型と表現型の相関」の項を参照
c.1642C>T p.Arg548Ter 北欧・南イタリアに多い3
c.1661T>C p.Leu554Pro 「遺伝型と表現型の相関」の項を参照
FANCG NM_004629​.2 
NP_004620​.1
c.307+1G>C
(IVS3+1G>C)
韓国人・日本人に多い
c.925-2A>G
(IVS8-2A>G)
ブラジルと北欧に多い
c.1183_1192del10
(1184-1194del)
p.Glu395TrpfsTer5 Demuth et al [2000]
c.1480+1G>C
(IVS11+1G>C)
p.Trp599ProfsTer49 フランス系カナダ人、北欧系に多い [Auerbach et al 2003]

表中のバリアントは、著者から提供されたものであり、GeneReviewsのスタッフはバリアント分類を独自に検証したわけではない。
GeneReviewsはHuman Genome Variation Society (varnomen.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている。命名法の説明については、クイックリファレンスを参照。

  1. 表 1 の遺伝子をアルファベット順に表示
  2. 現在の命名規則に従わない変異体指定
  3. 「遺伝型と表現型の相関」の項を参照。

 

更新履歴:

  1. Gene Review著者: Blanche P Alter, MD, MPH, FAAP and Gary Kupfer, MD
    日本語訳者: 福島久代(札幌医科大学大学院修士課程遺伝カウンセリングコース),櫻井晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
    Gene Review 最終更新日: 2013.2.7. 日本語訳最終更新日: 2016.7.21
  2. Gene Reviews著者: Parinda A Mehta, MD and Christen Ebens, MD, MPH.
    日本語訳者: 幅野愛理(がん研有明病院 臨床遺伝医療部),櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院 遺伝子診療科
    GeneReviews最終更新日:2021.6.3.  日本語訳最終更新日:2022.7.8. [ in present]

原文 Fanconi Anemia

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