c
[Synonyms:CDKN2A-Related Melanoma-Astrocytoma Syndrome (CDKN2関連黒色腫・星状細胞腫症候群), Familial Atypical Multiple Mole Melanoma Syndrome (家族性非定型多発性黒色腫症候群), Melanoma-Pancreatic Cancer Syndrome (黒色腫・膵臓癌症候群)
Gene Reviews著者: JMichelle F Jacobs, MS, CGC, Andrea M Murad, MS, CGC, Nicole D Cho, MS, CGC, Kelly B Cha, MD, PhD, Elena M Stoffel, MD, MPH, and Tobias Else, MD.
日本語訳者:櫻井晃洋(斗南病院ゲノム医療センター)
GeneReviews最終更新日:2025.7.17 日本語訳最終更新日: 2026.8.27
原文: CDKN2A Cancer Predisposition
疾患の特徴
CDKN2Aがん易罹患性素因は、多発性皮膚黒色腫、膵臓がん、および神経膠腫や星状細胞腫などの腫瘍を発症するリスクの上昇を特徴とする。罹患者の中には、母斑の総数が多い(多くの場合50個以上)場合や、異型母斑が見られる場合があるが、異型母斑の数や程度は大きく異なる可能性がある。
診断・検査
CDKN2Aがん易罹患性素因の診断は、分子遺伝学的検査によって発端者にCDKN2Aのヘテロ接合性生殖細胞系列病的バリアントを確認することで確定する。
臨床的マネジメント
症状に対する治療:
黒色腫、膵臓がん、その他のがんに対する標準治療。
回避すべき薬剤/環境:
紫外線への曝露、特に日焼けや日焼けサロン、喫煙。
リスクのある血縁者の評価:
リスクのある血縁者に対しては、家系内のCDKN2A病的バリアントの分子遺伝学的検査が推奨される。CDKN2A病的バリアントを有する血縁者には、生涯にわたる定期的な経過観察を提供する。遺伝的状態が不明なリスクのある血縁者は、乳幼児健診/健康診断の際に皮膚検査を受けるべきである。
遺伝カウンセリング
CDKN2Aがん易罹患性素因は常染色体顕性遺伝疾患であり、CDKN2A病的バリアントを1コピー持つ人がこの疾患を発症する。CDKN2Aがん易罹患性素因を持つ人のほとんどは、親から生殖細胞系列病的バリアントを受け継いでいる。CDKN2A病的バリアントを持つ親はがんと診断されたことがある場合もない場合もある。CDKN2A病的バリアントによるがん易罹患性素因を持つ人の子は、50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ。罹患した家族でCDKN2A病的バリアントが特定されると、リスクのある血縁者に対する予測検査(発症前診断)が可能になる。
以下の臨床所見および家族歴を有する発端者においては、CDKN2Aがん易罹患性素因を疑うべきである。
臨床所見
家族歴 年齢を問わず、第一度または第二度近親者2名以上が黒色腫および/または膵臓がんに罹患している。
診断の確定
CDKN2Aがん易罹患性素因の診断は、分子遺伝学的検査によって発端者にCDKN2Aのヘテロ接合性生殖細胞系列病的(または病的の可能性が高い)バリアントを確認することで確定する(表1参照)。
注記: (1) 米国臨床遺伝・ゲノミクス学会(ACMG)および分子病理学会(AMP)のバリアント解釈ガイドラインによれば、臨床現場において「病的バリアント」と「病的の可能性が高いバリアント」は同義であり、いずれも診断的意義があるとみなされ、臨床的判断に用いることができる。本GeneReviewにおける「病的バリアント」への言及は、病的の可能性が高いバリアントを含むものと理解される。(2)意義不明のヘテロ接合型 CDKN2Aバリアントが同定されたとしても、それだけでは診断を確定または除外することはできない。
分子遺伝学的検査のアプローチには、遺伝子標的検査(単一遺伝子検査、多遺伝子パネル)と包括的な ゲノム検査(エクソームシーケンス、ゲノムシーケンス)の組み合わせが含まれる場合がある。遺伝子標的検査では、臨床医が関与している可能性のある遺伝子を特定する必要があるが(オプション1を参照)、包括的ゲノム検査ではその必要はない(オプション2を参照)。
オプション1
単一遺伝子検査 CDKN2Aのシーケンス解析を行い、ミスセンスバリアント、ナンセンスバリアント、スプライス部位バリアント、および小さな遺伝子内欠失/挿入を検出する。注:使用するシーケンス方法によっては、単一エクソン、複数エクソン、または全遺伝子の欠失/重複が検出されない場合がある。通常、使用するシーケンス方法でバリアントが検出されない場合は、次のステップとして、エクソンおよび全遺伝子の欠失または重複を検出するために、遺伝子標的欠失/重複解析を実施する。
CDKN2Aおよびその他の関心のある遺伝子 (「鑑別診断」を参照)を含むがん易罹患性素因多遺伝子パネルは、表現型の原因となりえない遺伝子の病的バリアントや病的意義不明バリアントの検出を減らしつつ、病態の遺伝学的原因を同定できる可能性が最も高い。注: (1) パネルに含まれる遺伝子および各遺伝子に対する検査の診断感度は検査機関によって異なり、時間の経過とともに変化する可能性がある。(2) 一部の多遺伝子パネルには、本GeneReviewで論じられている疾患とは関連のない遺伝子が含まれている場合があるため、臨床医は、根本的な表現型を説明しない遺伝子における病的バリアントや意義不明のバリアントの同定を最小限に抑えつつ、当該疾患の遺伝的原因を特定する可能性が最も高い多遺伝子パネルを選択する必要がある。(3) 一部の検査機関では、パネルオプションとして、検査機関が独自に設計したカスタムパネルや、臨床医が指定した遺伝子を含む表現型に焦点を当てたカスタムエクソーム解析などが含まれる場合がある。(4) パネルで使用される手法には、シーケンス解析、欠失・重複解析、および/またはその他の非シーケンシングベースの検査が含まれる場合がある。
多遺伝子パネルの概要については、こちらをクリック。遺伝学的検査を依頼する臨床医向けのより詳細な情報については、こちらを参照のこと。
オプション2
包括的ゲノム検査では、臨床医が候補遺伝子を特定する必要はない。エクソームシーケンスが最も一般的に用いられるが、ゲノムシーケンスも可能である。CDKN2Aの生殖細胞系列病的バリアントは、 p16INK4A、p14ARF、または両方のタンパク質に影響を与える可能性がある (「分子病態」を参照)。現在までに報告されているp16INK4Aに影響を与えるCDKN2A病的バリアント(ミスセンス、ナンセンスなど)の大部分はコーディング領域内にあり、エクソームシーケンスで特定される可能性が高い。p14ARFに影響を与えるCDKN2Aの病的バリアントは、イントロンまたは3'非翻訳領域にある可能性が高い [ Chan et al 2021 ]。
包括的ゲノム検査の概要については、こちらをクリック。ゲノム検査を依頼する臨床医向けのより詳細な情報については、こちらを参照のこと。
| 遺伝子1 | 方法 | 病的バリアント検出率 2 |
|---|---|---|
| CDKN2A | シーケンス解析3 | 約95%4 |
| 遺伝子特異的欠失/重複解析5 | 約5% 4 |
CDKN2Aがん易罹患性素因は、多発性皮膚黒色腫、膵臓がん、および神経膠腫や星状細胞腫などの他の腫瘍を発症するリスクの上昇を特徴とする。罹患者の中には、母斑の総数が多い(多くの場合 50 個以上)異型母斑を持つ人もいるが、異型母斑の数と範囲は大きく異なる場合がある [ Ipenburg et al 2016、Soura et al 2016 ]。300 家族以上の罹患者でCDKN2Aの病的バリアントが同定されている[ Berwick et al 2006、Soura et al 2016、Kimura et al 2021、Overbeek et al 2021、Ibrahim et al 2023 ]。この疾患に関連する表現型の特徴に関する以下の記載は、これらの報告に基づいている。
| がんの種類 | 一般人口のリスク | 悪性腫瘍のリスク | コメント | |
|---|---|---|---|---|
| p16INK4aアイソフォーム | p14ARFアイソフォーム | |||
| 黒色腫 | 最大3% | 28%~76%1 | リスクは地理的な位置や日照量によって影響を受ける可能性がある2 | |
| 膵臓がん | 2% | 15%~20%3 | 該当なし | 喫煙歴によってリスクが影響を受ける可能性がある4 |
| 神経系腫瘍 | 0.001%5 | 該当なし | 上昇6 | グリオーマ、星状細胞腫を含む |
皮膚黒色腫 CDKN2Aがん易罹患性素因を持つ人に最もよく見られる関連悪性腫瘍である。患者はしばしば生涯に複数の皮膚黒色腫を発症する。研究によると、CDKN2Aがん易罹患性素因を持つ人の皮膚黒色腫の発症年齢の中央値は、散発性皮膚黒色腫(診断時の年齢の中央値は60代半ば)と比較して低く、40歳前後であることが示されている[ van der Rhee et al 2011、Soura et al 2016 ]。最初の皮膚黒色腫の発症年齢は非常にばらつきがあり、9歳での報告がある[ Goldstein et al 2018 ]。これらの報告は検出バイアスの影響を受けている可能性がある。一部の人では黒色腫の発症年齢はもっと高い場合があり、浸透率は100%ではない。患者はしばしば複数の母斑を持ち、その中には非定型的な特徴を持つものもある。しかし、これらは黒色腫の前駆病変ではなく、黒色腫の潜在的な危険因子と考えられている。黒色腫は、CDKN2Aがん易罹患性素因の有無にかかわらず、正常な皮膚に最も多く発生する[ Soura et al 2016 ]。表在拡大型および結節型黒色腫は、散発性黒色腫の患者よりもCDKN2Aがん易罹患性素因のある患者でより多く見られる可能性がある。CDKN2Aがん易罹患性素因のある患者と散発性皮膚メラノーマの患者の間で転移のリスクに明らかな差はない[ Hornbuckle et al 2003、Soura et al 2016 ]。
膵臓がんCDKN2Aがん易罹患性素因を持つ人に報告されている2番目に多い悪性腫瘍で、一般集団の約12倍(生涯リスク15~20%)というリスクが広く認められている[ Kimura et al 2021、Klatte et al 2022 ](NCCNガイドライン、Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast, Ovarian, Pancreatic, and Prostate Version 2.2025 [login required; accessed 1-8-25])。発表された研究のメタ解析では、生殖細胞系列CDKN2A病的バリアントを持つ人の膵腺管がんのリスクは12~47倍に上昇することが示唆されている[Pantaleo et al 2023]。この数値の広い幅の背景には、検出バイアスや集団特異的データの影響を受けるコホートが含まれている。CDKN2A病的バリアントを有する人の膵臓がんの発症平均年齢は65歳から71歳である[ Goldstein et al 2000、Lynch et al 2002]。CDKN2A病的バリアントを有する人の膵臓がんの発症平均年齢が、散発性膵臓がんと比較して有意に低いかどうかは不明である。
神経系腫瘍 p14ARFを破壊する生殖細胞系CDKN2Aバリアントは、グリオーマ、多形性膠芽腫、星状細胞腫、神経鞘腫、神経腫、シュワン細胞腫、髄膜腫のリスク上昇と関連しているが、その報告は比較的まれである[ Toussi et al 2020、Chan et al 2021 ]。
その他のがんCDKN2Aの生殖細胞系列病的バリアントを有する人では、頭頸部扁平上皮がん、肉腫、食道がん、肺がん、乳がん、非黒色腫皮膚がん(特にp14ARFに影響を与えるCDKN2A病的バリアントを有する場合)など、他のがんも報告されている[ Chan et al 2021 ]。しかし、CDKN2Aバリアントが原因なのか、あるいはこれらのがんが散発性なのかを判断するにはデータが限られている。
遺伝型と表現型の相関
CDKN2Aの病的バリアントは、p16INK4、p14ARF、または両方のタンパク質に影響を与える可能性がある(「分子病態」を参照)。p14ARFに影響を与える病的バリアントを持つ個体で報告されているがんのスペクトルは、p16INK4Aに影響を与える病的バリアントを持つ個体よりも広い[ Chan et al 2021 ]。
CDKN2Aの病的バリアント p.Arg112dupは、膵臓がん、肺がん、頭頸部がん、胃食道がんのリスク上昇と関連しており、そのリスクは喫煙歴によって修飾される[ Goldstein et al 2007、Helgadottir et al 2014 ]。
両アレル性CDKN2A病的バリアント 両アレル性 CDKN2A病的バリアントを有する個体は文献で2例しか報告されていない。1例は54歳で腺がんを発症し、異型母斑や黒色腫の既往歴はなかったと報告されている一方、もう1例は多数の異型母斑と7つの黒色腫を有していた[ Pavel et al 2003 ]。
浸透率
CDKN2Aによるがん易罹患性素因の浸透率は100 %未満であり、生涯リスクは黒色腫で28%~76%、膵臓がんで10%~15%である(表2参照)。
有病率
CDKN2Aがん易罹患性素因の真の有病率は現時点では不明である。複数の原発性黒色腫を有する人のうち、黒色腫の家族歴のない人の約5%、黒色腫に罹患した家族が3人以上いる人の約10%に生殖細胞系列CDKN2A病的バリアントが認められる[ Bruno et al 2022 ]。CDKN2Aの病的バリアントは、膵管腺がん全体の0.1%~2.5%、家族性膵臓がん(第 1 度近親に2名の膵臓がん)の人の2.2%~3.3% で確認されている[ Paranal et al 2024 ]。
CDKN2Aがん易罹患性素因の有病率は、創始者バリアントにより特定の集団で上昇する可能性がある(表7参照)。
このGeneReviewで議論されている表現型以外に、CDKN2Aの生殖細胞系列病的バリアントに関連する表現型は知られていない
CDKN2AとCDKN2Bを含む9p21.3領域の連続遺伝子欠失が報告されている。この欠失を有する個体の症例報告は、生殖細胞系列のヘテロ接合型 CDKN2AおよびCDKN2B病的バリアントに関連する個々のリスクを上回るがんリスクを示しており、がんリスクに関してこの連続遺伝子欠失の相加効果と一致する[ Jensen et al 2022 ]。これらの連続遺伝子欠失はまれであるため、臨床的意義は十分に理解されていない。関連するがん/腫瘍として、神経線維腫、骨巨細胞腫、肉腫、黒色腫、星状細胞腫が報告されている。
CDKN2Aがん易罹患性素因の他の所見がない状態で単発性腫瘍として発生する散発性腫瘍(神経系、肺、皮膚、尿路、上気道消化管、副腎皮質癌、非皮膚扁平上皮癌を含む) には、生殖細胞系列には存在しないCDKN2Aの体細胞病的バリアントが含まれていることが多い[ Trietsch et al 2014、Zheng et al 2016、Hamid et al 2019、Tian et al 2022、Fan et al 2024 ]。このような状況では、これらの腫瘍に対する素因は遺伝しない。
フマラーゼ(FH)欠損症(フマル酸尿症)
FH欠損症は稀少な常染色体潜性遺伝代謝疾患であり、生殖細胞系列における両アレル性FH病的バリアントにより引き起こされる。FH欠損症は新生児期~乳児早期の重篤な脳症で特徴づけられ、摂食不良、体重増加不良、成長障害、筋緊張低下、不活発、けいれん、重度の発達遅滞、脳の発達異常をきたすのが特徴である。フマル酸尿も認められる。
最近のデータでは特定のFH病的バリアントがFH欠損症を引き起こすことがある一方でHLRCC関連腫瘍のリスクは上昇しないことが示唆されている。
両アレル性FH バリアントによる散発性腫瘍
他のFH腫瘍易罹患性症候群所見がみられないなかで生じた散発性腫瘍(例:FH欠損性子宮平滑筋腫[Liu et al 2020, Kipnis et al 2024])において体細胞系列に両アレル性FHバリアント(生殖細胞系列にはない)が認められたことがある。
黒色腫および/または膵臓がんに関連するその他のがん/腫瘍素因症候群は表3に記載されている。
| 遺伝子 | がん感受性症候群 | 遺伝形式 | 関連するがん易罹患性素因 |
|
|---|---|---|---|---|
| CDKN2Aによるがん易罹患性素因との重複 | その他 1 | |||
ATM |
AD |
膵臓 |
||
BAP1 |
AD |
皮膚黒色腫 |
|
|
BRCA1 |
AD |
膵臓がん |
|
|
BRCA2 |
AD |
|
|
|
CDK4 |
皮膚悪性黒色腫感受性3(OMIM 609048) |
AD |
皮膚黒色腫 |
|
MITF |
皮膚悪性黒色腫感受性8(OMIM 614456) |
AD |
皮膚黒色腫 |
腎がん |
MLH1 |
AD |
膵臓がん |
|
|
PALB2 |
PALB2関連膵臓がん感受性 2 |
AD |
膵臓がん |
|
POT1 |
AD |
皮膚黒色腫 |
|
|
PTEN |
AD |
皮膚黒色腫 |
|
|
STK11 |
AD |
膵臓 |
|
|
TERT |
皮膚悪性黒色腫感受性9(OMIM 615134) |
AD |
皮膚黒色腫 |
|
TP53 |
AD |
|
|
|
AD =常染色体顕性遺伝
| 系統/懸念事項 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 黒色腫 | 黒色腫の皮膚科検査 | 診断時1から開始 |
| 膵臓がん | 磁気共鳴胆管膵管造影または超音波内視鏡検査 2 | 40歳から、または家族内で最初に診断された膵臓がんの年齢より10歳若い年齢のいずれか早い方から開始3, 4 |
| 神経系腫瘍 | 全身および脳のMRI検査 | 神経系腫瘍の家族歴がある患者において、p14ARFアイソフォームに影響を与えるCDKN2A病的バリアントを有する場合に考慮する3 |
| 遺伝カウンセリング | 遺伝学専門家による5 | 家系図を入手し、患者とその家族にCDKN2Aがん易罹患性素因の性質、発生機序、および影響について情報を提供することで、医療および個人的な意思決定を促進する。 |
症状の治療
CDKN2Aによるがん易罹患性素因の治療は、散発性黒色腫、膵臓がん、その他のがんと同様の、標準的な治療法である。
経過観察
既存の症状や支持療法に対する個人の反応、新たな症状の出現を監視するために、表6にまとめられた評価が推奨される。現在までに、p14ARFまたは p16INKに影響を与えるCDKN2A病的バリアントを有する個体に対する具体的なサーベイランスガイドラインは発表されていないが、p14ARFを破壊する病的バリアントを有する個体に対しては、年1回の全身および脳MRIを検討される(NCCN ガイドライン、Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast, Ovarian, Pancreatic, and Prostate Version 2.2025 を参照のこと)
| 系統/懸念事項 | 評価 | 頻度 |
|---|---|---|
| 黒色腫 | 黒色腫の皮膚科診察 |
|
| 自己皮膚検査 | 毎月 | |
| 膵臓がん | 磁気共鳴胆管膵管造影または超音波内視鏡検査 2 |
|
| 神経系腫瘍 | 全身および脳のMRI検査 | 神経系腫瘍の家族歴があり、p14 ARFアイソフォームに影響を与えるCDKN2A病的バリアントを有する患者については、毎年検査を検討する。3 |
回避すべき薬剤/環境
以下を避ける。
リスクのある血縁者の評価
リスクのある血縁者に対して、家族性CDKN2A病的バリアントの分子遺伝学的検査が推奨される。CDKN2A病的バリアントを有する家族には、生涯にわたる定期的な経過観察が提供される。病的バリアントを受け継いでいない家族およびその子のがんリスクは、一般集団と同様である。
一般的に、18歳未満のリスクのある血縁者に対してはCDKN2Aがん易罹患性素因に関する遺伝学的検査は推奨されない。ただし、家族に早期発症型黒色腫の既往歴がある場合(黒色腫は9歳という若年発症例も報告されている[ Goldstein et al 2018 ])、または検査を強く希望する個人や家族がいる場合は、予測(発症前)検査を検討すべきである。遺伝学的状態が不明なリスクのある家族は、乳幼児健診や健康管理の際に皮膚検査を受ける必要がある。
遺伝カウンセリングを目的とした、リスクのある血縁者の検査に関する問題については、「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。
研究中の治療法
膵臓がんスクリーニング-5研究(CAPS5; NCT02000089) この研究は、CDKN2Aの生殖細胞系列病的バリアントを有する40歳以上の個人を対象としている。磁気共鳴胆管膵管造影および/または超音波内視鏡による膵臓画像検査、CA19-9の測定、および/または膵消化液中のバイオマーカーの評価が含まれる。この研究では、膵消化液中の早期がんマーカーの存在、膵消化液と膵嚢胞液の比較、疾患の進行と有病率、および腫瘍マーカーとしてのCA19-9濃度の診断性能を測定する[ Abe et al 2020、Canto et al 2020、Kumar et al 2021、Kohi et al 2022 ]。
CDKN2Aがん易罹患性素因を有する個人を対象としたその他の臨床試験には、がんの診断を受け、既知の生殖細胞系列CDKN2A 病的バリアントを有する個人に対する個別化がん治療が含まれる可能性がある。CDKN2Aは通常、p16INK4およびp14ARFシグナル伝達を阻害する[ Danishevich et al 2023 ]。CDKN2Aの喪失は、p16INK4およびp14ARFシグナル伝達の阻害の解除につながり、CDKN2A関連がんに対してp16 INK4およびp14ARFのいくつかの薬理学的阻害剤が検討されている。現在または最近の薬剤試験は、特定の腫瘍タイプに限定される場合があり(追加の適格基準がある場合もある)、以下が含まれる。
臨床試験に関する情報にアクセスするには、米国ではClinicalTrials.gov 、欧州ではEU臨床試験登録簿を検索のこと。
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」 -編集者注
遺伝形式
CDKN2Aがん易罹患性素因は常染色体顕性遺伝疾患である。
家族構成員のリスク
発端者の両親
発端者の同胞
発端者の同胞のリスクは、発端者の両親の遺伝的状態によって異なる。
発端者の子
その他の家族構成員
その他の家族へのリスクは、発端者の両親の状態によって異なる。親がCDKN2A病的バリアントを持っている場合、その親の家族もリスクを有する可能性がある。
関連する遺伝カウンセリング上の諸事項
早期診断および治療を目的とした、リスクのある血縁者の評価に関する情報については、「臨床的マネジメント、リスクのある血縁者の評価」を参照のこと。
予測(発症前)検査(無症状の、リスクのある個人に対する検査)
未成年者に対する発症前検査
一般的に、CDKN2Aがん易罹患性素因の遺伝学的検査は、18歳未満のリスクのある個人には推奨されない。しかし、CDKN2Aがん易罹患性素因のある個人における黒色腫のサーベイランスを開始する年齢に関する現行の公表されたガイドラインはない。したがって、早期発症黒色腫の家族歴がある場合や、検査に対する個人または家族の強い希望がある場合は、発症前検査を検討することが適切である。
CDKN2A病的バリアントによるがん易罹患性素因が確定診断されている家族においては、年齢に関わらず、症状のある個人に対して検査を検討することが適切である。
遺伝性がんリスク評価とカウンセリング
分子遺伝学的検査の有無にかかわらず、がんリスク評価によってリスクの高い個人を特定することによる医学的、心理社会的、倫理的な影響に関する包括的な説明については、「がん遺伝学的リスク評価とカウンセリング・医療従事者向け」( PDQ® 、米国国立がん研究所の一部)を参照のこと。
家族計画
出生前検査および着床前遺伝学的検査
罹患している血縁者でCDKN2A病的バリアントが特定されれば、出生前および着床前遺伝学的検査の実施が可能となる。
出生前および着床前遺伝学的検査の利用に関しては、医療従事者間や家族内でも見解の相違があるかもしれない。ほとんどの医療従事者は、出生前検査および着床前遺伝子検査の利用を個人の判断に委ねるべきであると考えているが、これらの問題について話し合うことは有益であろう。
GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここをクリック。
分子遺伝学
分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。
| 遺伝子 | 染色体座位 | タンパク質 | 座位特異的データベース | HGMD | ClinVar |
|---|---|---|---|---|---|
| CDKN2A | 9p21.3 | サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A | CDKN2aデータベースプロジェクト LOVD - サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A(CDKN2A) |
CDKN2A | CDKN2 |
データは、以下の標準的な参考文献から収集されている:遺伝子はHGNC、染色体座はOMIM、タンパク質はUniProt。リンクが掲載されているデータベース(Locus Specific、HGMD、ClinVar)の説明については、こちらをクリック。
| 155601 | 皮膚悪性黒色腫感受性2;CMM2 |
| 600160 | サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A;CDKN2A |
| 606719 | メラノーマ・膵臓がん症候群 |
分子病態
CDKN2Aは、細胞周期調節因子として機能する2つの主要タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A(p16INK4とも呼ばれる)と腫瘍抑制因子ARF(p14ARFとも呼ばれる)をコードする腫瘍抑制遺伝子である。p16INK4はサイクリン依存性キナーゼを阻害し、最終的にRBの腫瘍抑制機能を高める。一方、p14ARFはMDM2の機能を阻害し、TP53の活性化を高める。細胞レベルでは、CDKN2A産物の活性化は、細胞周期停止や細胞老化などの腫瘍抑制効果をもたらす。
疾患発症のメカニズム 機能喪失
CDKN2Aに特化した検査上の技術的考慮事項 CDKN2A はp16INK4とp14ARFをコードしており、これらは異なる第1エクソンを使用するが、第2エクソンは同じであるため、異なるオープンリーディングフレームとなる。p14 ARFは第2エクソンで終結するが、p16 INK4は第2エクソンに続いて第3エクソンも含む。
| 参照配列 | DNAヌクレオチド変化(別名 1) | 予測されるタンパク質変化(別名 1) | コメント [参考] |
|---|---|---|---|
| NM_000077.5 NP_000068.1 |
c.159G>C | p.Met53Ile | ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアの集団における創始者バリアント [ Lang et al 2005、Goldstein et al 2007 ] |
| c.225_243del19 | p.Ala76CysfsTer64 | オランダの創始者バリアント。この集団における病的バリアントの75%~90%を占める[ Goldstein et al 2007、Overbeek et al 2021 ] | |
| c.301G>T | p.Gly101Trp | フランス、スペイン、イタリアの集団における創始者バリアント [ Ciotti et al 2000、Ghiorzo et al 2004、Goldstein et al 2007 ] | |
| c.335_337dupGTC | p.Arg112dup (Arg112_Leu113insArg) |
|
|
| NM_000077.5 | c.458-105A>G (IVS2-105A>G) |
-- | 欧州の創始者バリアント[ Harland et al 2001、Majore et al 2004、Goldstein et al 2007 ] |
表に記載されているバリアントは著者らから提供されたものである。GeneReviewsスタッフは、これらのバリアントの分類について独自に検証を行っていない。
GeneReviewsは、ヒトゲノム変異学会(varnomen.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている。命名法に関する説明については、「クイックリファレンス」を参照のこと。
Gene Reviews著者: JMichelle F Jacobs, MS, CGC, Andrea M Murad, MS, CGC, Nicole D Cho, MS, CGC, Kelly B Cha, MD, PhD, Elena M Stoffel, MD, MPH, and Tobias Else, MD.
日本語訳者:櫻井晃洋(斗南病院ゲノム医療センター)
GeneReviews最終更新日2025.7.17 日本語訳最終更新日: 2026.8.27.
[in present]
原文: CDKN2A Cancer Predisposition
| 印刷用 | ||
| X POST | ||