ここ4−5年で大きく変わった臨床情報【消化器疾患領域】

はじめに

Twitterでフォローしている @3naiblood さんが「ゆる募:ここ4-5年で大きく変わった臨床情報」とやったところ多くの情報が寄せられました。ご本人がブログで大まかにまとめてくださっています。それを眺めながら、気になるところを調べたものをメモっていこうと思います。


消化器疾患領域

急性膵炎ガイドライン改定(2021)

(蘇生輸液は行うが、volume statusをみて・蛋白分解酵素阻害薬❌広域抗菌薬❌抗潰瘍薬❌・早期経腸栄養)

急性膵炎の初期輸液として,細胞外液(乳酸リンゲル液など)を用いることを推奨する。(推奨度 1,エビデンスレベル C)

軽症から中等症の急性膵炎における RCT(RCT)31)では,ブプレノルフィン(初回投与 0.3 mg 静注,続い て 2.4 mg/日の持続静脈内投与)は除痛効果に優れており,以前より非麻薬性鎮痛薬に指摘されてきた Oddi 括約筋の収縮作用による病態の悪化も認められず,Oddi 括約筋弛緩作用をもつアトロピン硫酸塩の併用も必 要なかったと報告されており,急性膵炎の疼痛コントロールに有用と考えられる。

軽症例に対しては感染性合併症の発生率・死亡率は低く,予防的抗菌薬は必要ない。 推奨度 1,エビデンスレベル A

重症例や壊死性膵炎に対する予防的抗菌薬投与は,発症早期(発症後 72 時間以内)の投与に より生命予後を改善する可能性がある。 推奨度 2,エビデンスレベル B

急性膵炎に対する,蛋白分解酵素阻害薬(ガベキサートメシル酸塩)の経静脈的投与による生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない。重症例に対する大量持続点滴静注の効果については,さらなる検討が必要である。現時点で明確な推奨度を決定できない,エビデンスレベル B

ヒスタミン H2 受容体拮抗薬(シメチジン)には,急性膵炎に対する直接的な有効性は認めら れない。膵炎合併症発生率は改善せず,疼痛の持続期間を増悪させる恐れがあるため,消化 管出血のリスク等がなければ使用すべきではない。 推奨度 2,エビデンスレベル A

軽症例では,中心静脈栄養を行うことは推奨されない。 推奨度 1,エビデンスレベル B

重症例でも,完全静脈栄養(経口または経腸栄養を併施しない)は可能な限り回避すべきで ある。 推奨度 1,エビデンスレベル B

・DAAの登場でC型肝炎がなおる時代になった。

C型肝炎治療ガイドライン

・ピロリ陰性の胃底線型胃がんへの注目。

 

ここ4-5年で大きく変わった臨床情報【循環器・腎臓・糖尿病・呼吸器疾患領域】

はじめに

Twitterでフォローしている @3naiblood さんが「ゆる募:ここ4-5年で大きく変わった臨床情報」とやったところ多くの情報が寄せられました。ご本人がブログで大まかにまとめてくださっています。それを眺めながら、気になるところを調べたものをメモっていこうと思います。


【循環器・腎臓・糖尿病領域】

・SGLT2iが心不全と腎不全のくすりになった。

・副作用のeuglycemic DKA(正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス)に注意。

・1年以上安定している虚血性心疾患合併心房細動はOAC(OAC: 経口抗凝固薬)単剤投与が標準治療になった。(血栓高リスクを有する場合は除く)

・ 弁置換術をされた方の心房細動は今までは全て弁膜症性心房細動と定義されていたのが生体弁の場合は非弁膜症性心房細動と定義されるようになった(DOACが使用可能)

・ARNIの登場;(angiotensin receptor-neprilysin inhibitor);「エンレスト®錠」(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物「エンレスト」)効能効果は「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」

・CKDや透析患者の腎性貧血に対する経口薬(HIF-PH阻害薬)の登場

・持続血糖モニターの進歩。インスリンポンプの進歩。--これはその通り

・GLP-1製剤が増えて、インスリンとの合剤や経口薬ができた。ーーリンク先に飛ばそう


心不全の治療

ステージCでEF<40%で薬物治療

・ 基本薬がACE阻害薬かARB +ベータブロッカー+MRA(ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト)

・ ACE阻害薬かARB → ARNI (サクビトリルバルサルタン、エンレスト)

上記に加えてSGLT2阻害薬 (〜フロジン)

心不全のステージ

とりあえずACCF/AHAのステージング

Aはリスク因子ありの状態

Bは無症状

Cは有症状

Dは治療抵抗性

 

正常血糖ケトアシドーシス

こちらのリンクの記述がわかりやすいです

 

虚血性心疾患合併心房細動

 

機械弁への置換がなされた患者さんの心房細動はワルファリンが推奨

 

エンレスト

4. 効能又は効果

〈エンレスト錠50mg・100mg・200mg〉

慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

〈エンレスト錠100mg・200mg〉

高血圧症

5. 効能又は効果に関連する注意

5.1 本剤は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬から切り替えて投与すること。[2.2 参照],[8.1 参照],[17.1.1 参照],[17.1.2 参照]〈慢性心不全〉

〈高血圧症〉

    1. **5.3 過度な血圧低下のおそれ等があり、原則として本剤を高血圧治療の第一選択薬としないこと。

 

CKDや透析患者の腎性貧血に対する経口薬(HIF-PH阻害薬)の登場

わが国では世界に先駆けて HIF-PH 阻害薬が透析患者の腎性貧血の治療薬として 2019 年 11 月 20 日に発売され,2020 年 8 月 26 日には別の HIF-PH 阻害薬 2 剤が保存期の慢性腎臓病患者の腎性貧血治療薬として最初の薬価収載を受けている。

HIF-PH阻害薬(○○デュスタット)

5剤がPMDAのホームページで検索できる

エナロイ錠2mg / エナロ…
製造販売元/日本たばこ産業株式会社販売元/鳥居薬品株式会社更新日:2021年12月01日処方箋医薬品
エベレンゾ錠20mg / エ…
製造販売/アステラス製薬株式会社提携/FibroGenInc.更新日:2021年10月13日処方箋医薬品
ダーブロック錠1mg / ダ…
製造販売元/グラクソ・スミスクライン株式会社販売元/協和キリン株式会社更新日:2021年12月17日処方箋医薬品
バフセオ錠150mg / バフ…
製造販売元/田辺三菱製薬株式会社更新日:2021年09月01日処方箋医薬品
マスーレッド錠5mg / マ…
製造販売元/バイエル薬品株式会社更新日:2021年04月22日処方箋医薬品

日本腎臓学会のrecommendation

1 )どのような患者に使用することが望ましいか(ESAからの切り替えも含め)

腎性貧血は十分な鉄補充の後,ESA もしくは HIF-PH 阻害薬を用いて管理する。保存期 CKD のターゲットヘモグロビンは 11~13 g?dL,透析期 CKD のターゲットヘモグロビンは 10~12?dL を参考値として,個々の症例の病態に応じた目標 Hb 値を定め治療する。ESA と HIF-PH 阻害薬の選択は,個々の患者の状態や嗜好,通院頻度,ポリファーマシーや服薬アドヒアランス等に応じて,医師が判断する。

ん?【個々の患者の状態云々に応じて医師が判断する】とうことは、学会としては特にESA(Epoの類)との使い分けを判断するような基準はないということか。まぁ透析に入っている人なら透析の際に一緒に投与できるのではないかとおもったり、実際にはどうなんでしょうかね。

GLP-1受容体作動薬(とインスリンの合剤)

 

気管支喘息治療ガイドライン ミニマムエッセンス

インダカテロール酢酸塩・グリコピロニウム臭化物・モメタゾンフランカルボン酸エステル (エナジア)とかいうICS/LAMA/LABAのトリプル吸入ができた。

●長期管理薬(コントローラー)の使用に関する注意点
①吸入ステロイド薬(ICS):最も効果的な抗炎症薬である。副作用は、口腔・咽頭カンジダ症、嗄声などで全身性の副作用は少ない。妊娠自体に影響しない。喘息患者の呼吸器感染症の頻度を上げる証拠はない。最大呼気位(最大限呼出したところ)から最大吸気位(最大限吸入したところ)まで吸入し、約10秒間息こらえをしてゆっくり吐き出す。デバイス毎に吸入の強さが適切となるように指導する(はやく深く:フルタイド®ロタディスク®・ディスカス®、アドエア®ディスカス®/深く力強く:パルミコート®、シムビコート®、アズマネックス®/ゆっくり:キュバール®、オルベスコ®、フルタイド®エアゾール、アドエア®エアゾール)。
②長時間作用性β2刺激薬(LABA):吸入薬、貼付薬、経口薬があり、必ずICSと併用する(単独使用は禁忌)。ICSにLABAを併用すると相乗効果が得られる。
③吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β2刺激薬配合剤:ICSとLABAを個別に吸入するよりも有効性が高い。アドヒアランスを向上させてLABAの単独使用を防ぐ。
④ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA):気管支拡張作用と抗炎症作用を有し、ICSに併用すると有効性が高い。アレルギー性鼻炎合併喘息、運動誘発喘息、アスピリン喘息患者の管理において有用である。
⑤テオフィリン徐放製剤:気管支拡張作用を有する。ICSとの併用で相乗効果が得られる。副作用や過剰投与(中毒)を回避するには100mg錠を2~3回/日で開始し、効果が不十分なら保険診療上の常用量である200mgを2回/日まで増量する。重症例では、専門医と相談の上さらに500~600mg/日へと100mg単位(分2~3)で増量できる(レセプト上の詳記を必要とする場合がある)。血中濃度は5~15μg/mLが目標であるが、患者によっては適正な血中濃度でも、それ以下でも中毒症状が生じることがあるので400mg/日の時点で血中濃度のモニタリングをする。
⑥抗IgE抗体(オマリズマブ):高用量ICSと複数の気管支拡張薬の併用下でもコントロール不十分で総血清IgE値が30~700 IU/mL、通年性吸入抗原が証明されている場合に投与する。約60%で奏効するとされる。4か月間投与後に効果判定を行う。

糖尿病治療ガイドラインへのリンク

目次
本ガイドラインの読み方
「糖尿病診療ガイドライン2019」策定に関する委員会
序文
「糖尿病診療ガイドライン2019」策定にあたって / 利益相反に関して
本書の構成 / CQ・Q一覧
CQ・ステートメント・推奨グレード一覧
略語一覧
診療ガイドライン策定の方法論
1.糖尿病診断の指針
2.糖尿病治療の目標と指針
3.食事療法
4.運動療法
5.血糖降下薬による治療(インスリンを除く)
6.インスリンによる治療
7.糖尿病自己管理教育と療養支援
8.糖尿病網膜症
9.糖尿病(性)腎症
10.糖尿病(性)神経障害
11.糖尿病(性)足病変
12.糖尿病(性)大血管症
13.糖尿病と歯周病
14.肥満を伴う糖尿病(メタボリックシンドロームを含む)
15.糖尿病に合併した高血圧
16.糖尿病に合併した脂質異常症
17.妊婦の糖代謝異常
18.小児・思春期における糖尿病
19.高齢者の糖尿病(認知症を含む)
20.糖尿病における急性代謝失調・シックデイ(感染症を含む)
21.2型糖尿病の発症予防
付録 1.糖尿病と癌
付録 2.糖尿病と骨代謝
付録 3.膵臓・膵島移植
付録 4.日本における大規模臨床試験

成人ギラン-バレー症候群: 病因、臨床的特徴、及び診断

成人ギラン-バレー症候群: 病因、臨床的特徴、及び診断 (某成書からの資料の翻訳)

被験者背景

文献レビュー: 2021年10月まで。

序文-急性免疫介在性多発ニューロパチーは、本疾患の初期の記述の著者らの後にエポニーム・ギラン・バレー症候群(eponim Guillain-Barre syndrome: GBS)に分類される。GBSは、急性後天性脱力の最も一般的な原因の1つであり、しばしば先行する感染症により誘発される。GBSは呼吸不全や自律神経機能不全を合併することがある。

本稿では、GBSの病因、臨床的特徴、及び診断について考察する。GBSのその他の側面については、別途示す。

↓(成人におけるギラン・バレー症候群: 治療及び予後を参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-treatment-and-prognosis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓(小児のギラン・バレー症候群: 疫学、臨床像、及び診断を参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-children-epidemiology-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓(小児のギラン・バレー症候群: 治療及び予後を参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-children-treatment-and-prognosis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

病因-GBSによる急性多発神経障害は、先行する感染症やその他の事象に対する免疫反応が末梢神経上の共有エピトープと交差反応する(分子擬態)ときにしばしば誘発される[1、2]。すべての有髄神経(運動神経、感覚神経、脳神経、交感神経)が侵されることがある。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/1,2

↓病理-病理学的変化の範囲及び程度は臨床型のGBSに依存する。一般的な急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy: AIDP)型の患者は、電気診断検査及び腓腹神経生検におけるリンパ球浸潤で顕著な脱髄を認める一方で、急性運動軸索型ニューロパチー(acute motor axonal neuropathy: AMAN)などの他の病型の患者は、リンパ球浸潤又は補体活性化を伴わない顕著な軸索喪失を示し、変性神経線維はほとんど認められない[3(後述「ギラン・バレー症候群の変異型」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/3

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

・脱髄 – AIDP及びミラーフィッシャー症候群(MFS)の亜型では、限局性の炎症反応がミエリン産生シュワン細胞又は末梢ミエリンに対して発現する[4-6]。脱髄は、血液神経関門が欠損している神経根のレベルで始まると考えられている。硬膜付着部での血液-神経関門の崩壊により、血漿蛋白の脳脊髄液への漏出が生じる。神経上膜および神経内膜の小血管(主に静脈)に活性化T細胞が浸潤すると、マクロファージを介する脱髄が起こり、ミエリンおよびシュワン細胞への補体および免疫グロブリンの沈着が認められる[5,7,8]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/4-6

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/5,7,8

脱髄は、神経に沿った電気的跳躍伝導を遮断する。これにより伝導が遅くなり、筋力低下が起こります。その後に、より広範囲に及ぶが斑状の末梢神経脱髄が起こり、電気伝導ブロックが加わると、さらなる脱力が起こり、異なる神経内または神経間で不均一な伝導が遅延する電気生理学的証拠が生じる。軸索変性は二次的なバイスタンダー反応として発現し、その程度は炎症反応の強度と関連する。

末梢神経の再ミエリン化は数週間から数ヵ月かけて回復する。しかし、一部の患者では、重度の軸索変性が重なっており、回復が著しく遅延し、不完全である。

・軸索喪失-軸索膜上のエピトープに対する免疫反応により、急性軸索型GBS: AMAN及び急性運動及び感覚軸索ニューロパチー(acute motor and sensory axonal neuropathy: AMSAN)が発現する[4]。これらの型は米国では比較的まれであるが、アジアではGBSの発現率が高い。(後述「急性軸索性ニューロパチー」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/4

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1231966761

軸索型GBSでは、抗体及び補体を介した体液性免疫応答が直接的な軸索膜損傷をもたらす[9,10]。炎症性浸潤がみられない。主な免疫プロセスは、ランビエ絞輪(神経に沿ったミエリン鞘の連続する分節間の短い間隔)に作用し、傍結節性のミエリン剥離、結節の延長、ナトリウムチャネルの機能不全、及びイオン/水のホメオスタシスの変化によって引き起こされる伝導ブロックを伴う軸索の関与をもたらす[11]。この過程は一部の症例では急速に回復する可能性があるが、他の症例では軸索変性に進行する場合もある。運動神経は、前根、末梢神経、及び終末筋内運動神経小枝に関与する[12]。運動感覚変異では、感覚神経も侵される。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/9,10

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/11

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/12

↓自己抗体及び分子擬態-GBSは、先行する感染又は末梢神経上の共有エピトープとの交差反応(分子擬態)により誘発される。末梢神経上のエピトープと反応する自己抗体は、GBSの多くの症例で急性感染後の免疫誘発因子と考えられる[1,2,13-15]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/1,2,13-15

日本では1990年にAMANと先行するCampylobacter jejuni感染、及びGM1モノシアロガングリオシドに対する抗体との関連性が報告され、GBSにおけるCampylobacter抗体及び抗ガングリオシド抗体の役割に対する関心が高まった[16-18]。その後に報告されたC. jejuniに関する報告では、分子擬態下でのGBS発現における自己抗体の機序的役割についてさらに洞察が得られている[19]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/16-18

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/19

C. jejuni感染はGBSの最も一般的な既往歴であり、急性胃腸炎の主な原因である[20]。(下記の「感染症」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/20

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2546552464

C. jejuniは、GM1、GD1a、GalNac-GD1a、及びGD1bを含む特定のガングリオシドに対する抗体を産生することが可能であり、これらはAMAN及びAMSANと強い関連性がある[21]。免疫グロブリン(immunoglobulin: Ig)G抗GM1抗体を保有するAMAN患者から分離されたC. jejuni株は、GM1ガングリオシドの末端四糖類と同一のオリゴ糖構造を示した[22]。剖検では、AMANにおいてIgGが脊髄前根の軸索膜に沈着することが示され[21]、IgGがAMANの発現において重要な因子であることが示されている[9]。(後述「急性軸索性ニューロパチー」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/21

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/22

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/21

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/9

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1231966761

同様に、C. jejuni感染でも、動眼神経ミエリンの一部であるGQ1bガングリオシドに対する抗体が産生される[23]。GQ1b抗体は、MFS及びBickerstaff脳幹脳炎(Bickerstaff brainstem encephalitis: BBE)などの眼筋麻痺を特徴とする亜型で認められることが多い[23, 24]。GQ1bと交差反応するGT1aに対する抗体も球形のGBSと関連している[25,26]。(下記「GQ1b症候群」及び以下「まれな変異型」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/23

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/23,24

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/25,26

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3028976841

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1368025300

GBSを合併していないC. jejuni腸炎患者は、特異的抗ガングリオシド抗体を産生しない[17]。ガングリオシドの発現や宿主の免疫遺伝学的因子を修飾するC. jejuniのリポサッカライド生合成遺伝子における遺伝子多型は、GBSの発現に関与すると考えられる[27]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/17

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/27

また、GBSとインフルエンザ菌、マイコプラズマ・ニューモニエ、及びサイトメガロウイルスの感染との間にも関連がある。サイトメガロウイルス感染では、GM2ガングリオシドに対する抗体産生、並びに重度の運動及び感覚障害が認められた。その他の感染症は、GBSにおける特異的抗ガングリオシド抗体及び神経学的パターンとの関連性は認められていないが、これらの関連性は詳細に報告されていない[12,22]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/12,22

これらの抗ガングリオシド抗体は、GBSにおける急性疾患との関連性が認められること、及び血漿交換などの免疫介在性療法がGBSの有効な治療法であることから、GBSの原因となる病原性成分であると考えられる[28]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/28

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-treatment-and-prognosis?sectionName=IMMUNOMODULATORY+THERAPY&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H715015132&source=see_link – H715015132

(成人におけるギラン・バレー症候群: 治療及び予後の項参照) 事象-いくつかの臨床試験では、3分の2までの患者に気道感染又は消化管感染の既往がある[10, 29]。International Guillain Barre Syndrome Outcome Study (IGOS)では、患者の76%がGBS前4週間に器質化事象を報告した[30]。その内訳は、上気道感染が35%、胃腸炎が27%であった。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/10,29

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/30

感染

↓Campylobacter jejuni感染-C. jejuni胃腸炎はGBSの最も一般的な原因であり、約25%の症例で同定される[20,31]。注目すべきは、C. jejuniに感染した患者の70%のみが、GBS発症前12週間以内に下痢性疾患を報告したことである。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/20,31

スウェーデンの1件の試験では、C. jejuni感染の症候性エピソード後の2ヵ月間にGBSを発現するリスクは、一般集団のリスクの約100倍であり、C. jejuni腸炎患者の約0.03%にGBSが発現すると推定された[32]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/32

C. jejuni感染には顕著な地理的相違がある。日本では特定のC. jejuni株がGBS(O-19株)および南アフリカ(O-41株)と関連しているが、欧州では関連していない[33,34]。同様に、先行するC. jejuni感染率はGBSの形態によって異なり、急性運動軸索ニューロパチー(AMAN)および急性運動および感覚軸索ニューロパチー(AMSAN)症例の約60~70%および急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)症例の30%までに認められる[35,36]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/33,34

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/35,36

さらに、カンピロバクター関連GBSは他の誘因を有する患者と比較して予後不良であり、回復が遅く、神経学的障害が残存することが明らかになっている[20]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/20

↓ その他の感染症- 複数の報告で、他のインフルエンザ様疾患に続いてGBSリスクの増大が認められている[29, 37-40]。英国での1件の試験では、インフルエンザ様疾患発症後90日以内のGBSの相対リスクは7.4であった(95% CI 4.4~12.4)[37]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/29,37-40

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/37

・サイトメガロウイルス-先祖のサイトメガロウイルス感染症もまた、GBSとの関連性が認められている[41-43]。一例として、オランダで実施された308名の患者を評価したケースコントロール研究では、サイトメガロウイルスを含む最近の感染症の血清学的証拠が、他の神経疾患を有する患者と比較して、GBSを発現した患者で有意に多く認められた[44]。ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus: HIV)感染症の患者は本シリーズから除外した。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/41-43

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/44

・インフルエンザA及びB – GBSを発症した中国人患者150名を対象とした試験では、インフルエンザA及びBがC. jejuni感染後に最も多く認められ、それぞれ17%及び16%であった。インフルエンザB型は、インフルエンザA型と比較して人工呼吸器が必要となる頻度が高い純粋な運動器型のGBSと関連しており、通常、重症度は低い[31,45]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/31,45

HIV-GBSもHIV感染に関連して発現し、その大部分は免疫不全ではない患者で発現する。しかしながら、GBSはHIV感染のいずれの段階でも起こり得る[46]。GBSは、急性HIVセロコンバージョン後及び強力な抗レトロウイルス療法による免疫再構築後に報告されている[47]。HIV感染患者のGBSの臨床経過及び予後は、HIV感染のない患者のGBSと同様であると考えられる。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/46

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/47

・COVID-19ウイルス-コロナウイルス病2019年(COVID-19)に関連する感染前後のGBSの症例が数例報告されているが、直接的な因果関係は確立されていない[48-50]COVID-19感染に関連するGBSは、臨床像、電気診断的評価、及び治療に対する反応において、古典的なGBSと類似していると考えられる[51,52]。(「COVID-19: 神経学的合併症及び神経学的状態の管理」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/48-50

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/51,52

 

https://www.uptodate.com/contents/covid-19-neurologic-complications-and-management-of-neurologic-conditions?sectionName=Guillain-Barr%C3%A9+syndrome&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H740526394&source=see_link – H740526394

COVID-19に対するワクチン接種とGBSとの関連性については、別途示す。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H994917382

 

https://www.uptodate.com/contents/covid-19-vaccines-to-prevent-sars-cov-2-infection?sectionName=Guillain-Barre+syndrome&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H3742812494&source=see_link – H3742812494

(「ワクチン接種」及び「COVID-19: SARS-CoV-2感染予防ワクチン」の項参照)、「ギラン-バレー症候群」、・ザイカウイルス-ザイカウイルス感染とGBSの関連性については報告されているが、直接的な因果関係は確立されていない。本問題については、他項で詳述する。(「ザイカウイルス感染症: 概要」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/zika-virus-infection-an-overview?sectionName=Guillain-Barr%C3%A9+syndrome&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H506945238&source=see_link – H506945238

・その他-水痘-帯状疱疹ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、E型肝炎、チクングニアウイルス、日本脳炎ウイルス、及びインフルエンザ菌、大腸菌、及び肺炎マイコプラズマに感染した後に、GBSが発現することが報告されている[44,53-58]。GBSの引き金としてのこれらの感染性病原体の重要性は不明である。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/44,53-58

ワクチン接種-ワクチン接種後にGBSを発症した例もあるが、関連するリスクはわずかであるか、又はごくわずかであると考えられる。いくつかの試験では、ワクチン接種とその後のGBSリスクとの関連性は認められていない。一例として、1992-1993年又は1993-1994年のいずれかのインフルエンザワクチン接種を受けた患者は、GBSのリスクが有意に増大することはなかったが、この2シーズンを組み合わせると、インフルエンザワクチン接種により、100万名中約1名のGBS患者が新たに発症することが示唆された[59]。対照的に、1994年から2006年までのノーザンカリフォルニア州の医療データベースを分析したレトロスペクティブ研究では、6週間又は10週間のリスク間隔を設けたかどうかにかかわらず、いずれのワクチン接種後も偶発的なGBSのリスク増大は認められなかった[60]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/59

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/60

通常の予防接種スケジュールでは、GBSのリスクはほとんどないか、全くないと考えられる。1992年から2000年にかけて180万名の患者が登録された英国の253件の一般診療施設の大規模データベースを分析した1件の試験では、228件のGBS事象が発現した[61]。あらゆる予防接種から42日以内にGBSが発現した患者は7名(3.1%)であり、調整後の相対リスクは1.03(95% CI 0.48~2.18)であった。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/61

ワクチン接種後のGBSリスクは、急性感染によるGBSリスクと比較して大幅に低いと考えられる[62,63]。さらに、ワクチン接種による急性疾患の予防により、感染誘発性のGBSを減少させることができる。ワクチン接種とGBS再発との関連性は認められていない[64,65]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/62,63

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/64,65

↓インフルエンザワクチン接種-米国では、GBSリスクの増大は1976年に豚インフルエンザワクチンと関連していたが、そのリスクの重症度については意見が分かれている[29,40]。その後のデータから、インフルエンザワクチン接種はGBSリスクが低いか、あるいはごくわずかであることが示唆され、ワクチン接種の安全性が裏付けられている。6種類の有害事象モニタリングシステムからのデータのメタアナリシスでは、米国で用いられている2009年のH1N1インフルエンザA型ワクチンは、GBSリスクのわずかな増加と関連していた(相対リスク[RR]2.35、95% CI 1.42~4.01)[66]。GBS過剰症例の数は、ワクチン接種を受けた100万人あたり1.6名と推定された。ケベック州の集団ベースのコホート研究では、2009年秋のH1N1ワクチン接種を評価し、ワクチン接種後8週間(調整後RR 1.80、95% CI 1.12~2.87)及び4週間(RR 2.75、95% CI 1.63~4.62)にGBSリスクのわずかではあるが有意な増加が認められた[67]。本ワクチンに起因するGBS過剰症例の数は、100万件あたり約2件であった[37,38]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/29,40

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/66

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/67

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/37,38

他の臨床試験では、インフルエンザワクチン接種に関連するGBSのリスクは確認されていない[37,68-70]。欧州の多国間自己対照ケースシリーズでは、インフルエンザ感染後にGBSリスクの上昇がみられたが、インフルエンザワクチン接種後には上昇はみられなかった[69]。さらに、インフルエンザ様疾患による交絡を調整したところ、汎発性H1N1ワクチン[68-70]とGBSとの関連は認められなかった。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/37,68-70

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/69

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/68-70

過去3ヵ月間にGBSを発症したか、ワクチン接種に起因するGBSを発現した患者[65,71,72]を除き、GBS歴はインフルエンザワクチン接種の厳密な禁忌とみなすべきではない。GBS患者の管理については、別途考察する。(成人における「ギラン・バレー症候群: 治療及び予後」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/65,71,72

 

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-treatment-and-prognosis?sectionName=Subsequent+immunizations&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H1143161012&source=see_link – H1143161012

インフルエンザワクチン接種に関連するGBSのリスクは、ワクチン接種を受けた100万人あたり約1~2名のGBS過剰症例であり、自然発生するインフルエンザがもたらす健康リスクと比較して大幅に低い[40]。季節性インフルエンザ予防のためのインフルエンザワクチン接種については、別途詳細にレビューする。(成人の季節性インフルエンザワクチン接種を参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/40

 

https://www.uptodate.com/contents/seasonal-influenza-vaccination-in-adults?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓髄膜炎菌ワクチン接種-GBSの症例が、四価髄膜炎菌結合型ワクチンMCV4(Menactra)の投与後に報告されている。本問題は、髄膜炎菌ワクチンの推奨事項と併せて、個別に考察する。(「小児及び成人の髄膜炎菌ワクチン接種」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/quadrivalent-meningococcal-conjugate-vaccine-menacwy-d-menacwy-crm-menacwy-tt-drug-information?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

 

https://www.uptodate.com/contents/meningococcal-vaccination-in-children-and-adults?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓遺伝子組換え帯状疱疹ワクチン接種-製造販売後観察試験において、ワクチン接種後42日間にGBSの発現が認められている[73]。これらの症例は、65歳以上の成人に投与される100万回分のワクチン接種あたり3件のリスク増加を示す。(「帯状疱疹予防接種」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/73

https://www.uptodate.com/contents/vaccination-for-the-prevention-of-shingles-herpes-zoster?sectionName=Adverse+events&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H2393847301&source=see_link – H2393847301

● アデノウイルスベクターCOVID-19ワクチン-GBSの症例は、米国およびヨーロッパにおいてAd26.COV2.S (Janssen/Johnson & Johnson)およびChAdOx1 nCoV-19/AZD1222(AstraZeneca) COVID-19ワクチンで観察されている[74-78]。米国では、ワクチン接種から6週間以内に123例が1320万回投与された[78]。この所見は、他のCOVID-19ワクチンでは報告されていない。この可能性のあるリスクについては、別途詳述する。(「COVID-19: SARS-CoV-2感染予防ワクチン」の項、「特定のワクチンの免疫原性、有効性、及び安全性」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/74-78

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/78

https://www.uptodate.com/contents/covid-19-vaccines-to-prevent-sars-cov-2-infection?sectionName=IMMUNOGENICITY%2C+EFFICACY%2C+AND+SAFETY+OF+SELECT+VACCINES&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H4048778065&source=see_link – H4048778065

米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)及び米国疾病管理予防センター(United States Centers for Disease Control and Prevention: CDC)は、

https://vaers.hhs.gov/のオンライン又は800-822-7967の電話でワクチン接種後にGBSが発現した可能性のある症例を開業医に報告するよう求めている。

https://www.uptodate.com/external-redirect.do?target_url=

https%3A%2F%2Fvaers.hhs.gov%2F&token=8m3rK0tzv73hmwLVujPJP2ExUaq%2FDfXBz50uj1EPWpI%3D&TOPIC_ID=5137

その他の誘因-手術、外傷、又は骨髄移植などの他の誘因となる事象の後にGBSを発現する患者はわずかである[79,80]。GBSは、ホジキンリンパ腫、全身性エリテマトーデス、及びサルコイドーシスなどの全身性疾患とも関連している[81]。いくつかの薬剤がGBSの引き金となることが報告されており、これらの薬剤には以下のものがある:

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/79,80

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/81

↓腫瘍壊死因子α拮抗薬療法[82]

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/82

↓ タクロリムス及びスラミン[83]

https://www.uptodate.com/contents/tacrolimus-drug-information?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/suramin-united-states-available-via-cdc-drug-service-investigational-drug-ind-protocol-only-drug-information?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/83

↓ イソトレチノイン [84]

https://www.uptodate.com/contents/isotretinoin-drug-information?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/84

↓免疫チェックポイント阻害剤[85-88]

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/85-88

疫学-GBSは世界中で発現しており、総発現率は100,000件/年[1,2,89,90名]あたり1~2名である。いずれの年齢層にも発症するが、発症率は約20%増加し、10歳以上では10歳ごとに増加する。さらに、発生率は女性よりも男性でわずかに高い。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/1,2,89,90

GBSの変異型には地域差があり、脱髄型が多いアジアでは北米や欧州と比較して軸索型が多い。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

臨床的特徴-GBSの典型的な臨床的特徴は、進行性および対称性の筋力低下、深部腱反射の欠如または低下である。さらに、患者さんには感覚症状や自律神経障害が認められる場合もあります。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2459374368

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

(下記の「検査所見」及び「ギラン・バレー症候群の変異型」を参照)症候の時間経過-初期症状が明らかになることがあり、患者は典型的には症候発現後数日から1週間以内に受診する。GBS症状は、典型的には2週間の期間にわたって進行する。発症4週後までに、90%以上の患者が最下点に達する[91]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/91

4~8週間で進行する場合は、亜急性炎症性脱髄性多発根神経炎(subacute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy: SIDP)と呼ばれることがある。8週間以内にGBS症状を発現した患者の管理については、別途考察する。(成人におけるギラン・バレー症候群: 治療及び予後の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-treatment-and-prognosis?sectionName=APPROACH+TO+PATIENTS+WHO+RELAPSE+OR+WORSEN&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H1800570108&source=see_link – H1800570108

8週間を超える疾患の進行は、慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy: CIDP)の診断と一致する。(成人におけるギラン・バレー症候群: 治療及び予後の項参照)、後述の「予後」及び「慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー」の項参照。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-treatment-and-prognosis?sectionName=PROGNOSIS&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H20&source=see_link – H20

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H16

症状が発現して24時間以内又は4週間後に最低値に到達した場合は、別の診断を考慮すべきである[92]。(下記「鑑別診断」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/92

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H15

診察所見-米国及び欧州で実施されたGBS患者の試験では、GBSの中で最もよく認められる型である急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy: AIDP)の患者が主に報告されている[81,91]。こうした症状には以下のものがあります。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/81,91

筋力低下 – GBSの筋力低下は、疾患の重症度および臨床的サブタイプによって、歩行困難の程度から全肢、顔面、呼吸器、および延髄のほぼ完全な麻痺まで様々である。

↓四肢の筋力低下-古典的には、腕の近位部と遠位部および脚の筋力低下が弛緩する。筋力低下は通常、対称性で脚から始まるが、患者の約10%では上肢または顔面筋から始まる。ほとんどの患者は最下点までに両腕と脚の筋力低下に進行する[91]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/91

↓脳神経症状及び延髄症状-AIDPでは50%以上に顔面神経麻痺が発現し、最終的には50%に口腔咽頭筋力低下が発現する[91]。患者の約15%に眼運動麻痺が発現する。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/91

眼筋麻痺を含む脳神経症状も、いくつかの型のGBSの診断的特徴である(後述「GQ1b症候群」参照)。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3028976841

GBSでは10~30%に換気補助を必要とする重度の呼吸筋筋力低下が発現する[30,91,93]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/30,91,93

深部腱反射- 診察時には、患者の約90%に腕又は脚の深部腱反射の低下又は消失が認められる[91名]。ほとんどの患者は、症状が最下点まで進行するにつれて反射低下を発現する。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/91

ただし、一部のGBS患者では、正常あるいはさらに深部腱反射の亢進がみられることがある[94]。これらには、急性軸索性ニューロパチーおよびBickerstaff脳幹変異型の患者がある。GBSにおける正常な反射作用は、呼吸器疾患ではなく先行する下痢を報告する患者とも関連している[94,95]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/94

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/94,95

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

また、反射亢進は地理的に変動があり、日本で軸索型に関連することが報告されている[94,95]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/94,95

その他の所見-AIDP患者の一部では、他の神経症状や自律神経機能不全も発現することがあり、GBSの一部の変異型では顕著な特徴となることがある(後述「ギラン・バレー症候群の変異型」を参照)。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

↓感覚障害-手足の感覚障害は80%以上の患者に報告されているが、診察時の感覚異常はしばしば軽度である。

典型的には背部および四肢に位置する神経根の炎症による疼痛もまた主な特徴であり、急性期にあらゆる型のGBS患者の3分の2で報告されている[96,97]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/96,97

↓自律神経障害-自律神経機能不全の有病率は、GBS患者の38~70%である[98,99]。GBS患者187名を対象とした2020年のレトロスペクティブレビューでは、最もよく認められた自律神経症状は[99名]であった:

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/98,99

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/99

・イレウス(42%)

・高血圧(39%)

・低血圧(37%)

・発熱(29%)

・頻脈又は徐脈(27%)

・尿閉(24%)

自律神経障害のある患者では、心原性合併症、低ナトリウム血症、及び身体障害の負担が増大する傾向が認められた[99]。自律神経障害を有する患者の死亡率は6%であったのに対し、自律神経障害を有さない患者では0%であった。重篤な自律神経機能不全も突然死と関連している[100]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/99

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/100

自律神経障害によると考えられる抗利尿ホルモン不適合分泌症候群は、GBSにまれに認められる合併症である[101-103]。United Stations Nationwide Inpatient Sample Dataでは、SIADHはGBSの入院患者で対照群と比較して有意に高頻度であった(5名対1%未満)[101]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/101-103

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/101

↓まれな特徴 – GBSのまれな特徴として、脳脊髄液(cerebrospinal spinal fluid: CSF)蛋白の重度の上昇を伴う乳頭浮腫、顔面筋麻痺、難聴、髄膜刺激徴候、声帯麻痺、及び精神状態の変化がある[79]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/79

さらに、可逆性後白質脳症症候群としても知られる後部可逆性脳症症候群が、成人及び小児のGBSと関連しており、自律神経障害による急性高血圧との関連性が示唆されている[104-106]。(「可逆性後白質脳症症候群」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/104-106

https://www.uptodate.com/contents/reversible-posterior-leukoencephalopathy-syndrome?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

ギラン・バレー症候群の変異型-歴史的には、GBSは単一の疾患と考えられていた。現在では、いくつかの変異型を伴う不均一な症候群として認識されている[2]。GBSの変異型は、臨床的、病態生理学的、及び病理学的特徴を鑑別することにより同定される。よくみられる変異型には以下のものがある:

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/2

↓急性運動軸索型ニューロパチー

↓急性運動及び感覚軸索性ニューロパチー

↓ミラーフィッシャー症候群(MFS)

↓Bickerstaff脳幹脳炎(Bickerstaff brainstem encephalitis: BBE)

より一般的な変異型と共通する特徴を一部共有する、あるいは複数のGBS変異型と重複する特徴を有する、まれなGBSの病型も報告されている。(下記「まれな変異型」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1368025300

GBSの臨床型は地域によって異なる。International Guillain-Barre Outcome Study (International Guillain-Barre Outcome Study: IGOS)に登録された最初の1000名の解析では、感覚運動変異は北米及び南米の患者でバングラデシュ又はその他のアジア諸国の患者と比較して多かった(69名対29名対43%)[30]。対照的に、純粋な運動性変異体は、他のアジア諸国又は北米及び南米の患者と比較して、バングラデシュの患者でより一般的であった(69名対24名対14名)。MFSはバングラデシュの患者の1%にのみ認められたが、北米及び南米の患者の11%、並びにアジア諸国の患者の22%に認められた。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/30

急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー-AIDPはGBSで最もよくみられる型である。米国及び欧州では、AIDPは症例の約85~90%を占める。典型的な臨床的特徴は、深部腱反射の消失または低下を伴う進行性の対称性の筋力低下である。(上記「臨床像」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2

急性軸索性ニューロパチー-AMAN及びAMSANは、GBSの主な軸索型である。これらの型は中国、日本、及びメキシコでよく認められるが、米国では推定5~10%のGBS症例を含む[30,107]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/30,107

↓急性運動軸索性ニューロパチー-AMANは1986年に最初に認識された[108名]。ほとんどの症例はC. jejuni感染に先行し、アジア、特に若年者で発症する[21,30,109]。AMANは夏季に多くみられる。病理は、主に軸索喪失を伴う。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/108

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/21,30,109

一部のAMAN患者では、深部腱反射が温存される場合がある[110]。この形態のGBSは、運動神経の選択的関与によりAIDPと区別される。感覚神経は侵されない。急性骨髄性白血病はより急速に進行することがあるが、AMANの臨床像は他の点ではAIDPの臨床像と類似している。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/110

電気診断学的検査で初期の軸索障害は、神経伝導検査での複合筋活動電位(compound muscle action potential: CMAP)の振幅の減少として認められる。

AMANの発現は、末梢神経軸索に存在するガングリオシドGM1、GD1a、GalNac-GD1a、及びGD1bに対するIgG抗体と関連している[21]。これらの抗ガングリオシド抗体は分子擬態によりC. jejuni感染により誘導される。病態生理は、抗体及び補体を介した様々な重症度の神経軸索損傷による。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/21

↓急性運動及び感覚軸索ニューロパチー-AMSANは、より重篤なAMANであり、感覚線維及び運動線維の両方が、顕著な軸索変性に冒され、しばしば回復の遅延及び不完全を引き起こす[35]。臨床的には、AMSANはAMANと類似するが、さらなる感覚症状を伴う。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/35

AMSAN患者を対象とした電気診断的検査では、CMAP振幅及び感覚神経活動電位(sensory nerve activity potential: SNAP)の強度の低下又は消失が認められる。これらの患者における軸索変性は、広範な能動的脱神経針電極筋電図検査(active denervation electrode polector myography: EMG)により証明される。

また、AMSANは、GM1、GD1a、GalNac-GD1a、及びGD1bに対する抗ガングリオシド抗体[111]と関連している。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/111

GQ1b症候群-四肢の筋力低下ではなく、眼球運動障害(眼筋麻痺)及び運動失調を特徴とするGBSの変異型は、GQ1b抗体の血清反応陽性と関連することが多い。GQ1b抗体は、脳神経と眼筋の神経筋接合部に直接作用すると考えられる[112]。GQ1bガングリオシドは、動眼神経ミエリンの構成成分である[23]。これらの病型は抗GQ1b症候群と呼ばれ、MFS、BBE、及び咽頭-頸部-上腕(pharyngeal-cervical-brachial: PCB)症候群の亜型[113]がある。主な原因は脱髄であると考えられる[114]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/112

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/23

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/113

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/114

↓ミラー・フィッシャー症候群-眼筋麻痺、運動失調、及び反射消失を特徴とする臨床型MFSは、米国及び欧州で約5~10%、及びアジアで20%の症例に発現する[30,115]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/30,115

MFSの典型的な症状は、運動失調および反射消失を伴う眼筋麻痺であるが、MFSを呈する患者の約1/4に四肢筋力低下が発現する[115,116]。不完全型には、運動失調を伴わない急性眼筋麻痺、及び眼筋麻痺を伴わない急性運動失調性ニューロパチーがある[1,117]。一部のMFS患者は、散大した固定瞳孔を生じる[118]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/115,116

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/1,117

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/118

MFS患者の85~90%にGQ1b(神経のガングリオシド成分)に対する抗体が認められる[119,120]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/119,120

MFS患者を対象とした電気診断的検査では、感覚伝導速度の低下を伴わない感覚反応の低下又は消失が明らかになる場合がある[121]。臨床的に筋力低下のある患者では、AIDPに典型的な神経伝導検査で異常(遠位潜時の延長、又は運動反応の時間的分散を伴う伝導ブロックなど)が認められることがある。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/121

↓Bickerstaff脳幹脳炎-BBEは、眼筋麻痺および運動失調を伴う脳症を特徴とするGQ1b症候群である。BBE患者62名を対象としたシリーズでは、45%に顔面筋力低下、34%に瞳孔異常を含む球症状が認められた[122名]。BBE患者53名を対象としたレビューでは、約半数に軽度の四肢筋力低下が認められた[113名]。反射は40%が正常か活発であった。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/122

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/113

BBEは、臨床的特徴を共有することでMFSと関連するだけでなく、抗GQ1b抗体とも関連しており、静脈内免疫グロブリン(intravenous immune globulin: IVIG)又は血漿交換[123, 124]にも反応する。

https://www.uptodate.com/contents/immune-globulin-intravenous-subcutaneous-and-intramuscular-drug-information?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/123,124

スペインのBBE患者12名を対象とした初期の電気生理学的特性(10日以内)をレトロスペクティブにレビューしたところ、5名(42%)にSNAP振幅の低下、3名(25%)に瞬目反射の異常、脱髄の徴候なし、及び運動伝導系のまれな異常が認められた。興味深いことに、これらの患者のうち3名は、一部のAMAN変異型の症例[125]と同様に、可逆的伝導障害を示唆する一連の神経生理学的検査でSNAP振幅の正常化を示した。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/125

↓咽頭-頸部-上腕筋力低下-GBSのPCB変異体は、嚥下障害を伴う口腔咽頭、頸部、及び肩の筋肉の急性筋力低下を特徴とする[126,127]。本剤はMFS又はBBE [126,128]と重複することがある。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/126,127

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/126,128

下肢筋力低下および下肢反射は通常[126,127]であるが、必ずしも[129]保存されているわけではないため、PCB変異を有する患者も顔面筋力低下を有する場合があるが、AIDP患者と区別される場合がある。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/126,127

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/129

PCBとの関連性を示唆する死亡後や臨床病理学的変化はみられないが、詳細な連続神経伝導検査ではAMANと同様、限局性の神経損傷が認められる[1,126,127]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/1,126,127

PCB患者100名を対象とした試験では、半数にGQ1bと交差反応することが多いIgG抗GT1a抗体(延髄機能不全に関連する)が認められ、1/4にGM1又はGD1aに対するIgG抗体が認められたが、これらはAMANで認められることが多い[26,126]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/26,126

まれな変異型 – GBSにはさらにまれに認められる変異型があり、以下のものがある:

↓不全対麻痺-不全対麻痺型は典型的には軽度のGBSで、診察時に下肢に限局する筋力低下および反射低下を特徴とする[127,130]。500名近くのGBS患者のコホートにおいて、40名の患者が不全対麻痺の臨床経過を示した[130名]。これらの患者では、70%以上の患者で上肢の筋力低下がみられたが、上肢の神経障害は反射低下(73%)及び神経伝導異常(89%)で同定されることが多かった。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/127,130

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/130

↓急性汎自律神経障害-患者は、GBSと一致する孤立性の急性自律神経機能不全及び反射低下を呈することがある[131]。症状には、下痢、嘔吐、めまい、腹痛、イレウス、起立性低血圧、尿閉、瞳孔異常、不変の心拍数、並びに発汗、流涎、及び流涙の減少がある。反射は消失または減弱し、感覚症状がみられることがある。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/131

汎自律神経障害患者は、IVIGなどのGBSに用いられる免疫調節療法に反応する可能性がある[131,132]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/131,132

↓純粋な感覚性GBS-孤立性の感覚異常を伴うGBSはまれであり、本質が不均一である[133]。反射はみられず、軽度の運動障害がみられることがある。GD1bに対する抗体との関連が指摘されている[134]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/133

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/134

感覚性GBSは、神経線維の病理学的所見により、急性感覚性脱髄性多発ニューロパチー、急性感覚性大線維軸索障害-神経節障害、及び急性感覚性小線維ニューロパチー-神経節障害の3つのサブタイプに分類される[133]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/133

感覚性GBSが疑われる患者は、非対称性の感覚消失及び重度の運動失調を示す可能性が高い急性の腫瘍随伴性感覚神経障害について評価すべきである。(「感覚消失患者へのアプローチ」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/approach-to-the-patient-with-sensory-loss?sectionName=Sensory+neuronopathies&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H9&source=see_link – H9

↓顔面両麻痺および遠位四肢感覚異常-ケースシリーズでは、四肢の感覚異常を伴う急性発症の両側性顔面筋力低下患者が報告されている[128,135,136]。その他の延髄症状は典型的にみられず、電気診断検査ではGBSと一致する脱髄性病変を示唆する異常が認められる。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/128,135,136

↓急性球麻痺-患者は、反射消失、眼筋麻痺、運動失調、及び顔面神経麻痺を呈することもあり、頸部及び四肢の筋力低下はない[48]。このまれな型は、MFSとPCBのGBS変異体の両方と重複する。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/48

診断的評価 – GBSの初期診断は、本症候群と一致する臨床的特徴に基づく: 進行性、主に対称性の筋力低下の急性発症で、深部腱反射の低下または消失。筋力低下は、歩行困難の軽度なものから、四肢筋、顔面筋、呼吸筋、及び延髄筋のほぼ完全な麻痺まで、様々である。症状は数日から4週間かけて進行するのが典型的である。(上記「臨床像」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2

GBSの臨床診断は、脳脊髄液(cerebrospinal fluid: CSF)や電気診断学的検査[72]などの診断検査の結果により裏付けられる。いずれの患者も、髄液検査のための腰椎穿刺を実施する。非定型症状のある患者では、初回の髄液検査で診断がつかない場合は常に、電気診断的検査と画像検査を実施する(アルゴリズム1)。これらの診断検査は、他の診断を除外するのにも役立つ[137]。(後述「脳脊髄液分析」及び「電気診断学的検査」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/72

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F134174&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/137

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H11

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H829093397

診断基準- GBSの診断基準は、もともと1978年に米国国立神経障害・脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke: NINDS) [138]により研究用に提案され、臨床で広く用いられている。これらの基準は専門家の合意に基づき、GBSの理解の進歩を反映するように経時的に変更されている[72,139]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/138

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/72,139

必要な特徴として:

↓両腕および/または両脚の進行性筋力低下。下肢の軽微な筋力低下から四肢全体の麻痺(体幹、延髄、顔面筋、および外眼筋麻痺を含む)に及ぶ。

↓四肢脱力又は深部腱反射低下

支持的特徴として、以下のものがある:

↓数日から4週間に及ぶ症状進行

↓比較的対称的で両側性の症状

↓体幹または四肢の疼痛

↓脳神経症状又は徴候

↓自律神経機能不全

↓軽度の感覚機能不全

↓症状発現時に発熱なし

↓脳脊髄液中の蛋白が増加し、白血球数が正常から軽度に増加(通常5細胞/mm3未満)

↓ GBSと一致する電気診断学的異常

↓ 病勢進行の停止から2~4週間後に回復し始める

イタリアの疫学試験では、GBS患者の84%がNINDSの基準を満たし、16%が変異型症候群であった[140]。要求される基準を満たさないGBS患者は、典型的には、GBS変異型の他の変異型の1つと一致する症状を有する。例として、急性運動軸索ニューロパチー(acute motor axonal neuropathy: AMAN)の患者は、急性かつ進行性の対称性四肢筋力低下を示す場合があるが、反射は保持される場合がある。ミラーフィッシャー症候群(Miller Fisher syndrome: MFS)の患者は、反射低下を伴う急性進行性の眼筋麻痺を有するが、四肢筋力低下はない。(前述「検査所見」及び「ギラン・バレー症候群の異型」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/140

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2459374368

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

GBSまたはその変異型の診断基準を満たさない症状を有する患者は、代替原因の有無を評価する必要がある。(後述「一部の患者に対する追加診断検査」及び後述「鑑別診断」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1516507001

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H15

世界保健機関は、Zikaウイルス感染が疑われる地域において、GBSの症例定義にはBrighton基準(表1)を用いることを推奨している[141]。Brighton基準は、臨床試験用に作成され、ほとんどのGBSの変異型を除外するものである(「Zikaウイルス感染症: 概要」参照)。

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F107091&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/141

https://www.uptodate.com/contents/zika-virus-infection-an-overview?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

脳脊髄液分析-脳脊髄液分析のための腰椎穿刺はすべての患者で実施し、GBSの診断を確認し、症状の他の原因を除外する必要がある。GBS患者における腰椎穿刺に伴う典型的な所見は、白血球数が正常なCSF蛋白の上昇である。この所見はアルブミン細胞学的解離と呼ばれる。蛋白の上昇は、近位神経根レベルでの血液-神経関門の透過性亢進によるものと考えられる。

↓CSF蛋白の上昇は、大部分の患者で45~200mg/dL (0.45~2.0g/L)であったが、1000mg/dL (10g/L)に及ぶ蛋白の上昇も報告されている[79]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/79

アルブミン細胞解離は症状の発現からの時間によって異なる。50~66%の患者に症状が発現してから1週間以内に発現し、3週間目には75%以上の患者に発現すると考えられる[1,79,142,143]。患者の1/3~1/2にCSF蛋白が正常であることが、発症から1週間以内に検査を実施した場合に確認されるため、GBSの診断を除外することはできない[91]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/1,79,142,143

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/91

↓髄液細胞数は典型的には正常(すなわち、5細胞/mm3未満)であるが、50細胞/mm3まで上昇することがある。しかし、少数のGBS患者ではCSF細胞数の軽度な上昇が認められる。1件の試験では、セル数はそれぞれ87%が5 cells/mm3未満、9%が5~10 cells/mm3、2%が11~30 cells/mm3、2%が30 cells/mm3以上であった[79]。同様に、494名の成人G-BS患者を再検討したところ、15%に5~50 cells/mm3 の軽度の髄液細胞増加が認められ、50 cells/mm3を超える髄液細胞増加は認められなかった[91]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/79

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/91

脳脊髄液細胞増加は、GBSとHIV感染症を併発している患者でよくみられる[46]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/46

CSFのルーチンのGBS分析には、細胞数、分画、蛋白、グルコース、グラム染色、及び培養がある。初回のルーチン検査の結果で重大な細胞増加又は他の代替診断を示唆する所見が認められた場合は、可能な限り詳細な分析のために残存脳脊髄液を保存する。(下記「鑑別診断」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H15

電気診断学的検査-電気診断学的検査は、神経伝導検査(neuro conduction study: NCS)及び筋電図検査(electromyography: EMG)から構成され、大部分の患者においてGBSの診断を裏付けるとともに、神経機能不全の性質及び重症度に関する予後情報を得るために実施される。これらの検査は診察時および数週間後に連続的に実施し、回復をモニタリングする。ただし、髄液検査でアルブミン細胞解離が認められる典型的な症状を有する患者のGBSの診断には、電気診断検査は不要である。さらに、状況によっては検査が利用できないことがあり、疾患の経過の初期には所見が正常となる場合がある。電気診断結果は、技術的及び電気的アーチファクトのため、又は患者が鎮静状態にあり、随意運動活性の評価に参加できない場合、集中治療又は他の入院患者では制限される可能性がある。

初診時に実施する電気診断検査で診断がつかない場合は、初回検査の1~2週間後に再検査を実施することがある。典型的には、筋力低下の発現から約3~4週間後に異常所見が最も顕著になる[144]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/144

一般的な脱髄性GBSの診断を裏付ける異常所見の進行は[145-148]を含む:

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/145-148

↓初期の所見として、F波の延長又は欠如、及びH反射の欠如

↓遠位潜時の延長と運動反応の時間的分散を伴う伝導ブロック

↓ 神経伝導速度に対する有意な反応の減速または消失。 3週目または4週目まで認められない

↓動員又は除神経が減少した筋力低下を示す針EMG

腓腹筋温存療法は、長さに依存した神経障害では通常観察されないため、特記すべきこととして、GBSの疑いを強めるものである[149]。顔面神経NCSや瞬目反射検査などの補助的検査を実施し、GBSや延髄症状のある患者では伝導異常を示すことがある。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/149

電気診断的検査は、脱髄(例、急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー)や軸索(例、AMAN)の病態生理を同定することにより、GBSの主な変異型を同定するのにも有用である[72]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/72

↓脱髄型のGBSは、F波潜時の延長、遠位運動潜時の延長、伝導ブロック、時間的分散、及び運動神経伝導速度の低下などの脱髄の特徴により支持される[144]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/144

↓GBSの軸索型は、遠位運動振幅及び/又は感覚振幅の減少により支持される[144]。脱髄型とは対照的に、感覚神経への浸潤は典型的にみられず、F波はみられないことがあるが、有意に延長するわけではない。さらに、伝導速度の有意な遅延、遠位潜時の延長、又は時間的分散はみられない。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/144

しかし、軸索型における遠位側の低いCMAP振幅は、GBSの脱髄型に典型的な特徴である伝導ブロックと関連している可能性がある[150]。軸索型における伝導遮断は典型的には可逆的であり、CMAP振幅は機能の早期回復に伴い急速に改善する[150~152]。可逆性伝導ブロックに関連するAMANを鑑別する電気生理学的診断は、GBS開始後3~6週目に実施する方が、最初の2週間ではなく信頼性が高い[153-155]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/150

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/150-152

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/153-155

電気診断学的検査で分類されたInternational Guillain-Barre Outcome Studyの参加者745名のうち、52%に脱髄性の病態生理学的所見、10%に軸索内の3%に特定できない神経が認められたのに対し、29%に明らかな電気診断的検査での異常は認められなかったが、7%に電気診断検査での異常は認められなかった。全体として、GBSの軸索変異を認める患者は、脱髄を認める患者と比較して年齢が低かった[30]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/30

また、特定のGBS変異を認める患者の電気診断的所見についても上記で考察した。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

(前述「ギラン・バレー症候群の変異型」を参照)臨床検査-急性脱力の他の原因をスクリーニングするために、すべての患者に対して初回スクリーニング臨床検査を実施する。以下を含む:

↓ 全血球数及び白血球分画

↓包括的代謝プロファイル

↓赤血球沈降速度(ESR)

↓血清グルコース及びグリコシル化ヘモグロビン

急性脱力のその他の原因を評価するための追加検査は、特異的な症状、危険因子、及び臨床状況によって必要となる場合がある(表2)。(後述「鑑別診断」及び「多発ニューロパチーの概要」参照)。

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F64055&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H15

https://www.uptodate.com/contents/overview-of-polyneuropathy?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

一部の患者に対する追加の診断検査-非定型的な臨床的特徴を有する患者、又は脳脊髄液分析及び電気診断学的検査で不明確な結果が得られた患者については、GBSの診断を裏付けるため、及び代替の可能性を除外するために、抗体検査及び神経画像検査を実施する。

臨床現場では、自己抗体検査-抗ガングリオシド抗体検査がGBSの変異型を示唆する非定型症状の患者の同定に有用であると考えられる(前述の「ギラン・バレー症候群の変異型」を参照)。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

急性軸索型ニューロパチー(AMAN、急性運動・感覚軸索型ニューロパチー: acute motor and sensory axonal neuropathy: AMSAN)患者の血清中には、抗GM1 IgG抗体及び抗GD1a抗体が認められることが多いことが報告されている[21, 156]。抗GalNac-GD1a及び抗GD1bも軸索型のGBSと関連している[157,158]。サイトメガロウイルス(cytomegalovirus: CMV)関連GBS患者の30~50%に抗GM2 IgM抗体が認められているが、GBSを認めないCMV患者でも抗GM2抗体が認められる[159,160]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/21,156

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/157,158

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/159,160

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1231966761

GQ1bに対する血清IgG抗体はMFSの診断に有用であり、感度は85~90%である。GQ1bに対する抗体は、動眼神経ミエリンの一部であり、Bickerstaff脳幹脳炎患者、咽頭-頸部上腕(pharyngeal-cervical brachial: PCB)変異型患者、及びその他の眼不全麻痺を伴うGBS患者でも認められることがある[119,120]。PCB遺伝子変異を有する患者では、GQ1b抗体と交差反応する抗GT1a抗体が報告されている[26]。(前述「GQ1b症候群」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/119,120

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/26

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3028976841

一部のPCB型GBS患者では、GM1又はGD1aに対する抗体が認められることがある。これらの抗体は、顕著な運動麻痺を呈するAMAN患者でも認められることが多い[26,126]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/26,126

画像診断-画像診断は典型的には非定型症状のある患者にのみ用いられ、他の原因を除外する。これには、顕著な早期の腸又は膀胱の機能不全を有する患者、感覚レベルを示す患者、及び症状発現から24時間以内に臨床的最下点に達する患者が含まれる。また、脳脊髄液検査及び電気診断検査で確証が得られない場合には、GBSの臨床症状を有する患者に対しても画像検査が必要である。(下記「鑑別診断」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H15

画像診断でGBSの症状を評価される患者の大半は、造影剤を用いて脳と脊椎の磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging: MRI)を実施する。延髄脱力及び/又は四肢麻痺を有する患者は、脳及び頚椎のMRI検査を実施するのが典型的である。一方、横断性脊髄炎又は脊髄症のその他の原因がないか評価するため、下肢筋力低下を有する患者は、胸部及び腰椎のMRI検査を実施する。

さらに、GBSと一致する特徴は、脊椎または神経の画像診断で同定されることがある:

↓MRI-脊髄MRI (画像1)では、脊髄髄腔内神経根及び馬尾の肥厚及び増強が明らかになることがある[161-164]。前脊髄神経根が選択的に侵されることがあるが、前脊髄神経根と後脊髄神経根の両方が侵される場合もある。

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F114440&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/161-164

MFSの例外的な症例では、脊髄後柱の異常が報告されている[164]。脳MRIでは、動眼神経、外転神経、及び顔面神経の増強がみられる(画像1)[162,163,165]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/164

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F114440&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/162,163,165

↓超音波検査-末梢神経超音波検査により、GBSに関連する構造的変化を同定することができる。GBS患者は、頸部神経根が急激に拡大し、回復期間中の連続超音波検査で末梢神経の断面積が徐々に改善することがある[166-168]。超音波検査で感覚神経の分布を確認し、神経根及び迷走神経を一過性に拡大させることは、GBSと慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチーの鑑別に有用であると考えられ、6ヵ月後の超音波検査による神経の正常化により、GBSの診断がさらに確認される[169]。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/166-168

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/169

鑑別診断-GBSの鑑別診断には、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: CIDP)及びその他の急性多発ニューロパチー、並びに脊髄、神経筋接合部、及び筋肉の疾患がある(表3)。

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F80040&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

顕著な眼筋麻痺及び運動失調を特徴とするGBSの変異型の鑑別診断には、さらに脳及び脳幹の病態がある。(後述「ミラーフィッシャー症候群の鑑別診断」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H21

以下の特徴から、GBSの診断は疑わしい:

↓脱力感は症状発現から24時間未満又は4週間を超えて進行し、最下点に達する

↓感覚レベル(脊髄根レベル以下の感覚の減退又は喪失)

↓非対称性脱力

↓発現時に腸及び膀胱の機能不全、又は重症化し、持続性となる

↓肺機能不全、発症時に四肢筋力低下がほとんど、又は全くないもの

↓孤立性の感覚徴候、又は発現時に筋力低下なし

↓発現時発熱

↓脳脊髄液(CSF)中の白血球数>50/mm3

これらの所見を認める患者は、症状の他の原因がないか評価する必要がある。例えば、中枢性の原因が感覚レベルの存在、著明な腸/膀胱機能不全、又は症状発現から24時間以内に進行する脱力感により疑われる場合には、脳及び/又は脊椎の磁気共鳴画像法(MRI)が必要となることがある。一方、感覚症状が顕著な患者及び発症時に発熱が認められる患者では、臨床検査の実施が必要となる場合がある(表2)。脳脊髄液中の白血球数が>50 mm3の患者では、横断性脊髄炎などの炎症状態の評価が必要である(表4)。

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F64055&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F88912&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1516507001

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー-急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy: AIDP)と脱髄型GBS、及びCIDPとの間に時間的連続性が認められる。

↓AIDPは、典型的には2~4週間以内に最下点に達する単相性の亜急性疾患である。(前述「症状の経時変化」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2254080758

↓亜急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(subacute inflammatory demyelinating polyneuropathy: SIDP)は、4~8週間の最下点に達する症状に対して一部の著者が用いている用語である。

↓CIDPは進行し続けるか、8週間を超えて再発します。(慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー: 病因、臨床的特徴、及び診断を参照)。

https://www.uptodate.com/contents/chronic-inflammatory-demyelinating-polyneuropathy-etiology-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

このようにGBSとCIDPを経時的に任意に描出することは、実際には困難である場合がある。経時的な患者の診察、連続電気診断検査、又は末梢神経超音波検査は、臨床経過がAIDP又はCIDPの経過であるかどうかを明らかにするのに役立つ[169]。(上記「電気診断学的検査」及び上記「画像診断」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/169

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H829093397

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3777576043

GBSとCIDPの鑑別には特徴が有用である:

↓GBSの発症は通常容易に特定されるが、CIDPの発症は一般的にはっきりしない。

↓GBS群ではCIDP群と比較して高い頻度で事象が発現することが確認されている(GBS群で約70%、CIDP群では30%未満)。

↓CIDPを示唆する症状がGBSを超えて発現した後の最初の数週間の臨床的特徴は[170]:

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/170

・急性再燃又は増悪が3回以上発現

・症状発現8週間以上後に悪化

・歩行能力が保持される軽度の症状

・脳神経障害又は頻回の呼吸器障害のいずれかが発現しないこと

当初AIDPと診断された患者の約2~5%に慢性再発性脱力が発現する。(成人におけるギラン・バレー症候群: 治療及び予後の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-treatment-and-prognosis?sectionName=APPROACH+TO+PATIENTS+WHO+RELAPSE+OR+WORSEN&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H1800570108&source=see_link – H1800570108

その他の多発ニューロパチー-いくつかの多発ニューロパチーは、突然の症状発現により、GBSと似た症状を示すことがある。臨床状況、診察およびリスク因子によって示されるスクリーニング臨床検査、ならびに脳脊髄液の分析と神経伝導試験から得られたデータを組み合わせることで、通常、多発ニューロパチーのその他の原因を同定または除外することが十分である。

具体的な病因には以下のものがある:

↓チアミン(ビタミンB1)欠乏症-栄養欠乏症又は慢性的なアルコール摂取によるチアミン欠乏症の成人は、典型的には対称性の遠位運動性及び感覚性多発ニューロパチーを呈する。(「水溶性ビタミンの概要」の「欠乏症」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/overview-of-water-soluble-vitamins?sectionName=Deficiency&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H7&source=see_link – H7

↓急性ヒ素中毒-ヒ素中毒患者は遠位部に感覚優位の神経症状を呈することがある。環境曝露歴及び関連する皮膚又は爪の変化が認められることがある。尿中の検査はヒ素の毒性を同定するのに有用である。(「ヒ素暴露及び中毒」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/arsenic-exposure-and-poisoning?sectionName=Neurologic+manifestations&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H10&source=see_link – H10

↓毒性神経障害-n-ヘキサンなどの毒性物質(「膠様嗅覚ニューロパチー」に分類される)への暴露は、急性多発ニューロパチーを引き起こす可能性がある。(「多発ニューロパチーの概要」の「毒性」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/overview-of-polyneuropathy?sectionName=Toxic&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H6425488&source=see_link – H6425488

↓ライム病-ボレリア症の神経学的発現は様々であり、末梢性多発神経障害、脳神経麻痺(例、顔面神経麻痺)、及び運動失調がある。臨床検査および髄液検査でライム病を同定する。

https://www.uptodate.com/contents/clinical-manifestations-of-lyme-disease-in-adults?sectionName=Neurologic+manifestations&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H10&source=see_link – H10

(「成人におけるライム病の臨床症状」の項参照)↓ダニ麻痺-ダニ麻痺の患者は延髄又は四肢の筋力低下を呈することがある。症状は非対称性である。典型的には臨床検査および髄液検査は正常である。典型的には、埋没したダニを除去した後速やかに症状が改善する。(「ダニ麻痺」の項、「臨床的特徴」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/tick-paralysis?sectionName=CLINICAL+FEATURES&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H5&source=see_link – H5

↓全身性血管炎-末梢神経血管炎は、個々の末梢神経の分布において感覚線維及び運動線維の多発性単神経炎を示す可能性がある。疾患の病理は非対称性であるが、血管炎が急速に進行し融合性の神経病変を伴う場合、臨床像は対称性の上行性筋力低下を伴うGBSに類似することがある。さらに、患者さんには重度の四肢痛、並びに発熱、体重減少、及びその他の臓器障害などの全身症状が認められる場合もあります。血清学的検査、電気生理学的検査、及び神経と筋肉の生検が診断につながる。

https://www.uptodate.com/contents/clinical-manifestations-and-diagnosis-of-vasculitic-neuropathies?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

(「血管炎性神経障害の臨床症状及び診断」参照) ↓ HIV/AIDS- HIV及び重症の免疫抑制又はAIDS患者は、急性及び進行性の腰仙部多発神経根障害を発現することがある。これは、サイトメガロウイルスなどの日和見感染によるものと考えられる。脱力は非対称的であり、患者は腸および/または膀胱の機能不全を発現することがある。脳脊髄液は典型的にリンパ球性細胞増加を示す。(「多発神経根障害: 脊椎管狭窄症、感染性、癌性、及び炎症性神経根症候群」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/polyradiculopathy-spinal-stenosis-infectious-carcinomatous-and-inflammatory-nerve-root-syndromes?sectionName=Polyradiculopathy+in+HIV+and+AIDS&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H179723&source=see_link – H179723

↓サルコイドーシス-サルコイドーシス患者は、ときに他の全身症状がなく、末梢性多発ニューロパチー及び/又は脳神経障害を呈することがある。血液または脳脊髄液中のアンジオテンシン変換酵素レベルの上昇と脳または脊椎の画像検査での髄膜の増強は、診断を支持する。(「神経サルコイドーシス」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/neurologic-sarcoidosis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓ポルフィリン症-急性間歇性ポルフィリン症は進行性の感覚および運動ニューロパチーを呈することがある。症状は上肢から始まり、自律神経機能不全や腹痛と関連することがある。症状が現れた時点で採取したサンプルを用いてポルホビリノーゲンのスポット尿検査を実施すれば、ほとんどの急性ポルフィリン症患者を同定できるであろう。(「急性間歇性ポルフィリン症: 病因、臨床像、及び診断」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/acute-intermittent-porphyria-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓レプト髄膜リンパ腫-髄膜の悪性腫瘍が末梢神経障害を発現することがあるが、頭痛、脳症、又は脳神経麻痺などの他の神経症状を発現することがある。(「二次性中枢神経系リンパ腫の臨床症状及び診断」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/clinical-presentation-and-diagnosis-of-secondary-central-nervous-system-lymphoma?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓腫瘍随伴症候群-末梢運動または感覚運動ニューロパチーは、全身癌患者に発現しうる。全身性の癌であることが判明している患者や、脳症などの他の神経学的徴候を有する患者では、診断が疑われることがある。診断的評価には、悪性腫瘍の画像検査、脳脊髄液の分析、及び特異的抗体検査がある。(「神経系の腫瘍随伴症候群の概要」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/overview-of-paraneoplastic-syndromes-of-the-nervous-system?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

脊髄障害-脊髄圧迫または急性横断性脊髄炎による急性脊髄障害は、脊髄疾患の急性期に反射が低下することがあるため、GBSと混同されることがある。横断性脊髄炎を支持する特徴として、早期の腸および膀胱の機能不全、診察時の感覚レベル、および髄液白血球数の増加がある(表4)。脊椎MRIは通常、急性脊髄症と一致する限局性脊髄病変の同定に有用である。

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F88912&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/transverse-myelitis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/disorders-affecting-the-spinal-cord?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

(「横断性脊髄炎」及び「脊髄を侵す疾患」参照)、筋萎縮性側索硬化症、進行性脊髄性筋萎縮症、及び灰白髄炎などの運動ニューロン障害もまた、GBSに類似することがある。これらについては別途考察する。(筋萎縮性側索硬化症及びその他の運動ニューロン疾患の臨床的特徴、並びに「筋萎縮性側索硬化症及びその他の型の運動ニューロン疾患の診断」及び「脊髄性筋萎縮症」並びに「ポリオ及びポリオ後症候群」の「ポリオ」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/clinical-features-of-amyotrophic-lateral-sclerosis-and-other-forms-of-motor-neuron-disease?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/diagnosis-of-amyotrophic-lateral-sclerosis-and-other-forms-of-motor-neuron-disease?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/spinal-muscular-atrophy?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/poliomyelitis-and-post-polio-syndrome?sectionName=POLIOMYELITIS&search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&anchor=H3&source=see_link – H3

神経筋接合部障害-ボツリヌス中毒、重症筋無力症、及びランバート-イートン筋無力症候群を含む神経筋接合部の疾患は、いずれも急性筋力低下を呈するが、感覚徴候又は症状は認められない。ボツリヌス中毒は、大きな反応のない瞳孔や便秘と関連するが、一部のGQ1b症候群患者では、同様の瞳孔異常が認められることがある。反復神経刺激による筋電図検査と適切な臨床検査は診断を明らかにするのに役立つ。

https://www.uptodate.com/contents/diagnosis-of-myasthenia-gravis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/lambert-eaton-myasthenic-syndrome-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/botulism?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3028976841

(上記「重症筋無力症の診断」及び「Lambert-Eaton筋無力症候群: 臨床的特徴及び診断」並びに「ボツリヌス中毒」及び「GQ1b症候群」参照)筋障害-急性多発性筋炎、皮膚筋炎、壊死性ミオパチー、及び重症疾患ミオパチーは、GBSと同様の急性及び対称性の筋力低下を示し得る。筋障害のある患者は、筋肉痛又は関節痛、及び特徴的な皮膚所見を訴えることがある。筋力低下の原因となる筋障害は、臨床検査および電気診断検査、ならびに筋生検により支持される。重篤な疾患によるミオパチー(しばしば神経障害を併発する)は、典型的には集中治療を受けている患者において、急性麻痺として発現する。(成人における皮膚筋炎及び多発性筋炎の臨床症状及び「特発性炎症性ミオパチーの概要及びその対処法」並びに「重症疾患に関連する神経筋脱力症」の項参照)。

https://www.uptodate.com/contents/clinical-manifestations-of-dermatomyositis-and-polymyositis-in-adults?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/overview-of-and-approach-to-the-idiopathic-inflammatory-myopathies?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/neuromuscular-weakness-related-to-critical-illness?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

ミラーフィッシャー症候群-ミラーフィッシャー症候群(Miller Fisher syndrome: MFS)の鑑別診断は、他の型のGBSでみられる四肢筋力低下を伴わないことが多い運動失調を伴う顕著な眼筋麻痺により、脳幹部脳卒中と誤診されることがある。MFS症状の緩徐な発現と進行性は、急性脳卒中との鑑別に役立つ場合がある。(前述「GQ1b症候群」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3028976841

また、MFSの鑑別診断には他の脳障害も含まれる。以下を含む:

↓ウェルニッケ脳症-ウェルニッケ脳症患者-ウェルニッケ脳症患者は通常、脳症及び眼振を有するが、通常、MFSとは関連しない特徴を有する。注目すべきは、抗GQ1b抗体に関連する急性前庭症候群[171]で眼振が報告されていることである。神経画像検査は、脳卒中を除外し、ときにウェルニッケ脳症患者で認められる間脳、中脳、及び脳室周囲の急性病変を明らかにするのに有用である。(「ウェルニッケ脳症」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis/abstract/171

https://www.uptodate.com/contents/wernicke-encephalopathy?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

↓重症筋無力症-脳神経異常を呈する可能性がある重症筋無力症及びその他の神経筋接合部障害は、MFSと間違われる可能性がある。反復神経刺激による適切な臨床検査および電気診断検査は、MFSと神経筋接合部障害の鑑別に有用である。

https://www.uptodate.com/contents/clinical-manifestations-of-myasthenia-gravis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/diagnosis-of-myasthenia-gravis?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/electrodiagnostic-evaluation-of-the-neuromuscular-junction?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

(「重症筋無力症の臨床症状」及び「重症筋無力症の診断」並びに「神経筋接合部の電気診断学的評価」の項参照)社会ガイダンス-世界各国及び地域から選定されたガイドライン及び政府主催のガイドラインへのリンクを別途提供する。

https://www.uptodate.com/contents/society-guideline-links-guillain-barre-syndrome?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

5th~6thの読影レベルで、患者が特定の状態に関し得る4~5つの主要な質問に答える、基本的な患者教育断片が単語で書かれている(Society guideline: Guillain-Barre syndrome”参照)。これらの記事は、概観を概観したい患者さんや、読みやすい短い資料を好む患者さんに適しています。基本的な患者教育以外にも、より長く、より高度で、より詳細なものがあります。これらの記事は、10thから12thのグレードの読み取りレベルで作成され、詳細な情報を希望し、一部の医学専門用語で快適である患者にとって最善である。

本トピックに関連する患者教育論文を紹介する。私たちは、これらのテーマをあなたの患者さんに印刷したり、電子メールで送信することをお勧めします。(また、「患者情報」及び注目するキーワードを検索することにより、様々な被験者に対する患者教育論文の位置を確認することができます。

↓基本テーマ(「患者教育: ギラン・バレー症候群(基礎知識)を参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-the-basics?search=Guillain-Barre+Syndrome&topicRef=5137&source=see_link

要約及び推奨事項

↓定義及び発症機序-急性免疫介在性多発ニューロパチーはギラン・バレー症候群(eponim Guillain-Barre syndrome: GBS)に分類される。GBSによる急性多発ニューロパチーは、先行する事象に対する免疫反応が末梢神経上の共有エピトープと交差反応する(分子擬態)際に発現する。(前述「序文」及び前述「発生病理」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1609001756

↓ 先行要因 – 大部分の患者は、GBS施行前4週間に先行する感染症又はその他の事象を報告する。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1625733692

上気道感染及び胃腸炎が最もよくみられる感染症であり、カンピロバクター-ジェジュニ胃腸炎がGBSの原因菌として最もよく認められる(前述「既往歴」参照)。↓疫学-GBSは世界中で発生し、年間100,000名あたり1~2名の発現率である。発生率は約20%増加し、10年に1回増加する。(前述「疫学」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H284586891

↓臨床的特徴-GBSの典型的な臨床的特徴は、深部腱反射の欠如又は低下を伴う進行性及び対称性の筋力低下である。さらに、患者さんには感覚症状や自律神経障害が認められる場合もあります。(上記「臨床像」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2

•GBSの症状は通常、2週間かけて進行します。症状が発現して24時間以内又は4週間後に最低値に達する場合は、別の診断を考慮しなければならない。

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2254080758

GBSは、臨床的特徴と病理学的特徴を区別することにより同定される異型症候群である。急性炎症性脱髄性多発ニューロパチーは、GBSの最も一般的な型である。よくみられる変異型には、急性運動軸索ニューロパチー、急性運動および感覚軸索ニューロパチー、ミラー・フィッシャー症候群、およびBickerstaff脳幹脳炎がある。(前述「検査所見」及び「ギラン・バレー症候群の異型」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H2459374368

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H3472308466

↓診断的評価 – GBSの初期診断は、症候群と一致する臨床的特徴に基づく: 進行性、主に対称性の筋力低下の急性発症、および深部腱反射の低下または消失。脳脊髄液(cerebrospinal fluid: CSF)及び電気診断検査で典型的な異常が認められた場合、GBSの臨床診断が確定する(アルゴリズム1)。(前述「診断的評価」参照)

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F134174&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H10

GBS患者のCSF所見は、髄液蛋白の高値(典型的には45~200mg/dL [0.45~2.0g/L])と、白血球数正常(典型的には5細胞/mm3未満)からなるアルブミン細胞解離であるが、50細胞/mm3まで上昇することがある。(前述「脳脊髄液分析」参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H11

・電気診断学的検査では、F波の延長又は消失、H反射の消失、遠位潜時の延長及び伝導ブロックと時間的分散、神経伝導速度に対する有意な反応の減速又は消失、並びに筋力低下の針筋電図検査におけるリクルートメント又は除神経が認められることがある。(上記「電気診断学的検査」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H829093397

・すべての患者に対して臨床検査を実施し、急性脱力のその他の一般的な原因をスクリーニングする。われわれは、GBSの変異型を示唆する症状を認める患者さんには、ガングリオシド自己抗体検査を実施する。典型的には、他の病因を除外するために神経画像診断が非定型症状の患者に用いられる。(上記「一部の患者に対する追加診断検査」の項参照)

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H1516507001

↓鑑別診断- GBSの鑑別診断には、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、その他の急性多発ニューロパチー、並びに脊髄、神経筋接合部、及び筋肉の疾患がある(表3)。GBSにとって非定型的な特徴を有する患者は、症状に代わる感染源がないか評価すべきである(アルゴリズム1)。

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F80040&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=NEURO%2F134174&topicKey=NEURO%2F5137&search=Guillain-Barre+Syndrome&rank=1%7E150&source=see_link

https://www.uptodate.com/contents/guillain-barre-syndrome-in-adults-pathogenesis-clinical-features-and-diagnosis?search=Guillain-Barre%20Syndrome&source=search_result&selectedTitle=1~150&usage_type=default&display_rank=1 – H15

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