ILCOR Advisory Statements: Advisory Statements of the International Liaison Committee on Resuscitation

【翻訳:救急医療情報研究会】

目次

はじめに
Introduction
原文
成人の一次救命処置
Adult BLS
原文
二次救命処置の共通アルゴリズム
Universal Algorithm
原文
早期除細動
Early Defibrillation
原文
小児の心肺蘇生法
Pediatric Resuscitation
原文
個々の状況での蘇生
Special Resuscitation
原文


個々の状況での蘇生
(Special Resuscitation Situations)

目 次

小 児 (Pediatrics)
電解質の異常 (Electrolyte Abnormalities) 
中 毒 (Toxicology)
電撃症 (Electric Shock)
雷 撃 (Lightning Strike)
除神経心 (Denervated Heart)
溺 水 (Near-Drowning)
低体温 (Hypothermia)
高体温 (Hyperthermia)
腎不全 (Renal Failure)
喘 息 (Asthma)
アナフィラキシ− (Anaphylaxis)
徐 脈 (Bradycardias)
頻拍症 (Tachyarrhythmias)
急性心筋梗塞 (Acute Myocardial Infarction)
外 傷 (Trauma)
麻酔と機械的人工呼吸 (Anesthesia and Mechanical Ventilation)
妊 娠 (Pregnancy)
脳卒中 (Stroke)
高齢者 (Elderly Patients)
倫理学的問題 (Ethical Issues)


小児 (Pediatrics)

背景

 一次救命処置(BLS)や二次救命処置(ALS)を必要とする小児救急は米国内における救急搬送件数全体の 5 - 10 %に相当し、救急外来患者のおよそ 1/4を占めている。小児の BLSや ALSに関する治療原則や医療器具、薬剤については原則として成人の場合と同様である。しかし、小児の重症疾患や外傷に対するケアにおいては、小児解剖学、小児生理学、小児精神医学などの知識に加えて、豊富な小児科の臨床経験が必要とされる。

心停止予防のポイント

 乳幼児の心停止の原因となるのは、不整脈や心室細動よりも、呼吸障害や呼吸 不全の方ががはるかに多い。その結果、心停止になる前に低酸素症や高炭酸ガス症、全身性の虚血になってしまうことが多い。また、臓器を維持するために必要な血流量を確保するためには、成人よりも多い心拍数や呼吸数が必要となる。したがって、成人の心停止例とは違って、早期の除細動を心がけるよりもむしろ、呼吸不全やショックを一早く察知して対処するとが大切である。

心停止中の BLS と ALS

 小児救急におけるBLSとALSの特殊性については、本勧告の小児救急の項を参照すること。

主な参考文献

(Click the name of the first author to read the abstract.)

  1. Tsai A, Kallsen G. Epidemiology of pediatric prehospital care. Ann Emerg Med. 1987;16:284-292.
  2. Cummins RO, ed. Textbook of Advanced Cardiac Life Support. Dallas, Tex: American Heart Association; 1994:60-68.
  3. Zaritsky A, Nadkarni V, Getson P, Kuehl K. CPR in children. Ann Emerg Med. 1987;16:1107-1111.


電解質の異常 (Electrolyte Abnormalities) 

背景

 高カリウム血症の場合を除けば、電解質異常が心停止の原因となることはまれである。

 心停止中には、酸塩基平衡や血中カテコラミン濃度が急激に変動するとともに、低酸素症に陥ることもあるため、電解質濃度も変動する。このような電解質の変動は、それ自体が心停止の原因でない限り、特別な処置は不要である。

心停止予防のポイント

心停止中のBLS変更

 なし。

心停止中のALS変更

 表1に心機能障害の原因となる電解質異常とその心電図所見およびすでに広く 認められている処置を示す。心停止中の患者に対しても、心停止ではない患者と同様な処置(ただし迅速に)が適用できると考えてよい。高ナトリウム血症、低ナトリウム血症、高リン酸血症、低リン酸血症、高カルシウム血症は1次性心停止の原因となることはまれであるので省略する。

主な参考文献

  1. Jacobson H, Striker G, Klahr S, eds. The Principles and Practice of Nephrology. 2nd ed. St Louis, Mo: Mosby; 1995.
  2. Massry S, Glassock R, eds. Textbook of Nephrology. 3rd ed. Baltimore, Md: Williams & Wilkins; 1995.
  3. Parrillo J, Bone R, eds. Critical Care Medicine: Principles of Diagnosis and Management. St Louis, Mo: Mosby; 1995.


中毒 (Toxicology)

背景

 有毒物質による心停止はまれではない。実際、有毒物質は18-35才の心停止の原因として第二位を占める。このような心停止症例に対して冠動脈疾患による心停止と同様の処置を行なうことは無効であることが多いだけでなく、時には危険でさえある。心停止の持続時間と並んで救命率を決定する重要な因子は有毒物質の服用量である。心拍再開による血流循環の再開と換気(呼吸)の再開による酸素化を速やかに回復させるなどの原則は、他の原因による心停止症例と同様である。これに次いで重要なのは可能なら毒物を中和し、体内へのそれ以上の吸収を防止することである。有毒となりうる物質に関する知識や、個々の毒物中毒にみられる臨床症状を 見極める能力が、蘇生成功の鍵となる。

心停止中のBLS変更

心停止中のALS変更

 標準的な方法で汚染除去し、毒物の更なる吸収を防止するとともに、 それぞれの物質に応じた特殊な処置が必要となる有毒物質も多い。
表2に心停止の原因となる主な有毒物質と標準的 ALSとは異なる処置を必要とする物質 をまとめた。また、標準的 ALSに追加すべき処置項目および標準的 ALSのうちでむしろ有害と考えられる処置も表に示す。ここで推奨している治療法は、科学的根拠はほとんど示されていないものの、現在得られる文献のレビューや薬理学的原則に基づく専門家のアドバイスを元に集大成されたものである。ここで追加した治療法および注意点は、心停止の危険が差し迫った患者、心停止中の患者、そして蘇生後も引き続いて中毒症状を示す患者に適用できる。

主な参考文献

  1. Raymond JR, van den Berg EK Jr, Knapp MJ. Nontraumatic prehospital sudden death in young adults. Arch Intern Med. 1988;148:303-308.
  2. Cummins RO, ed. Textbook of Advanced Cardiac Life Support. Dallas, Tex: American Heart Association; 1994.
  3. Bowyer K, Glasser SP. Chloral hydrate overdose and cardiac arrhythmias. Chest. 1980;77:232-235.
  4. Baud FJ, Barriot P, Toffis V, Riou B, et al. Elevated blood cyanide concentrations in victims of smoke inhalations. NEJM. 1991;325:1761-1766.
  5. Clarke RF, Vance MV. Massive diphenhydramine poisoning resulting in a wide-complex tachycardia: successful treatment with sodium bicarbonate. Ann Emerg Med. 1992;21:318-321.
  6. Seneff M, Scott J, Friedman B, Smith M. Acute theophylline toxicity and the use of esmolol to reverse cardiovascular instability. Ann Emerg Med. 1990;19:671-673.
  7. Goldfrank LR, Flomenbaum N, Lewin N, Weisman R, Howland M, Hoffman R, eds. Goldfrank's Toxicologic Emergencies. 5th ed. Norwalk, Conn: Appleton & Lange; 1994.


電撃症 (Electric Shock)

背景

 電撃による受傷者の症状は、低電流によって一過性の不快感を生じるものから、事故による感電のため瞬時に心停止を来すものまで様々である。電撃症は、細胞膜や血管平滑筋に対する電流の直接作用や、電流が組織を通過する際に電気エネルギーから生じた熱エネルギーによりもたらされる。

 感電による外傷の性質や程度を決定する因子としては、加えられたエネルギーの大きさ、電圧、電流に対する抵抗、電流の種類、電源との接触時間、電流の通過経路などが挙げられる。一般に、最重症となるのは高電圧によることが多いが、低電圧であっても致命的な傷害がもたらされることがある。皮膚の電気抵抗は実際に流れる電流の大きさを規定する最も重要な因子である。皮膚の電気抵抗は皮膚が湿っていると著しく小さくなってしまうので、通常なら軽傷ですむ程度の感電でさえも、致命傷に至ることがある。

 50〜60Hz(通常の家庭用・商用電源)の交流電源に接触した場合、骨格筋が強直して電源から離れることが困難になるため、結果的として長時間電流にさらされることになる。また、交流電源では逆方向の電流が繰り返し交互に流れるので、心周期中の受攻期に心筋が電流にさらされる可能性が高く、R-on-T現象と同様の機序による心室細動をきたしやすい。胸郭を横切るような向きに流れる電流は、体軸に沿った方向や両足を跨いで流れる電流に比べて致命的になることが多い。しかしながら電流が体軸に沿って流れた場合でも心筋障害をきたすことが多い。これは電流の心筋に対する直接的な作用と冠動脈の攣縮のためと考えられている。

 電撃症により即死する場合、第1の死因は直接の心肺機能の停止である。心室細動や心静止が、電気ショックの直接作用で起こり得るのだ。その他、心室細動に移行し得る心室性頻拍(VT)など、他の重篤な不整脈は、低電圧でも高電圧でも起こりうる。

 二次性呼吸停止の原因となり得るものを以下に示す:

 呼吸停止が長引けば低酸素性の心停止に至る可能性がある。

 感電後瞬時に呼吸停止か心停止を、あるいは両方とも起こす可能性がある。患者は無呼吸、皮膚斑紋様模様(電流斑)、意識消失、VFまたは心静止による循環虚脱などの症状を示す。感電の程度や持続時間は明らかでない事が多く、電気ショックからの回復の予後はすぐには判定できない。しかし、一般的に、患者は若年者で呼吸循環系の基礎疾患を持たないことが多いので、蘇生に成功する可能性が高い。従って、初期評価に際して一見して死亡しているように見える症例に対しても、積極的に蘇生を行うべきである。

心停止中の BLS変更

心停止中の ALS変更

心拍再開直後のALS変更

 循環血液量減少性ショックが高度な組織破壊が認められる患者では、急速輸液を行なってショックや体液喪失の進行を押さえ、利尿を維持しミオグロビン血症による腎機能停止(renal shutdown)を予防せよ。

 電気熱傷とそれに伴う深部組織の損傷は、外科的な処置を要することもあるの で、なるべく早く電撃傷治療の専門家に相談せよ。

主な参考文献

  1. Cooper MA. Emergent care of lightning and electrical injuries. Semin Neurol. 1995;15:268-278.
  2. Patten BM. Lightning and electrical injuries. Neurol Clin. 1992;10:1047-1058.
  3. Browne BJ, Gaasch WR. Electrical injuries and lightning. Emerg Med Clin North Am. 1992;10:211-229.

雷撃 (Lightning Strike)

背景

 雷撃症の死亡率は 30%であり、生存者でも、重大な合併症が見られるものが 70%に達する。雷撃による死亡原因の第一位は心停止であり、雷撃の直接作用による(一次 性)VFもしくは心静止である。雷撃は瞬間的かつ高エネルギーな直流電気ショックとして作用し、心筋が一瞬にして脱分極し心静止となる。多くの症例では心筋の自動能により秩序だった電気的活動が再開し、これにより自発的に洞調律が再開することもある。しかし、心拍再開後も胸部筋肉の痙攣と呼吸中枢抑制による呼吸麻痺が続くことがある。その場合人工呼吸が行われなければ、低酸素性心停止を来す可能性がある。必要な処置が行われなかった場合に、雷撃傷により死亡する危険性が最も高くなるのは、即座に心停止を来たした症例である。

 心停止を免れた患者が再び心停止を来すことは稀なので、このような患者は生存可能性がとても高い。したがって、同時に複数の傷病者が雷撃を受けた場合、トリアージの優先順位は通常の逆となる。救助者は呼吸停止や心停止の患者を最優先すべきである。

心停止中のBLSとALSの変更

 目標は心拍が再開するまで心筋と脳の酸素化を維持する事である。呼吸停止の場合には、二次性の低酸素性心停止を予防する目的で酸素投与と人工呼吸だけを行なえばよい。

 雷撃による心停止は、その他の原因による心停止よりも蘇生に成功する確率が高い。

 たとえ蘇生開始が遅れた場合でも、蘇生が功を奏する事もある。

主な参考文献

  1. Cooper MA. Emergent care of lightning and electrical injuries. Semin Neurol. 1995;15:268-278.
  2. Patten BM. Lightning and electrical injuries. Neurol Clin. 1992;10:1047-1058.
  3. Browne BJ, Gaasch WR. Electrical injuries and lightning. Emerg Med Clin North Am. 1992;10:211-229.

除神経心 (Denervated Heart)

背景

 心臓移植後の除神経心はアデノシンの作用に対する感受性が極めて高い。その結果、高度徐脈や心静止を来たす事が多い

心停止中のBLS変更

 特になし。

心停止中のALS変更

主な参考文献

  1. Ellenbogen KA, Thames MD, DiMarco JP, Sheehan H, Lerman BB. Electrophysiological effects of adenosine in the transplanted human heart: evidence of supersensitivity. Circulation. 1990;81:821-828.
  2. Ellenbogen KA, Szentpetery S, Katz MR. Reversibility of prolonged chronotropic dysfunction with theophylline following orthotopic cardiac transplantation. Am Heart J. 1988;116:202-206.


溺水 (Near-Drowning)

背景

 長期生存率とその質を決定する最も重要な要素は現場における効果的な蘇生である。水没事故を予防して、溺水を減少させる努力が極めて重要である。

心停止中の BLS変更

心停止中の ALS変更

 通常のALSに準ずる。ただし、除細動を行なう前には患者をよく乾かす必要がある点 に留意する。

 以下の目的で早期の気管内挿管を行なう。

 水没や蘇生の時間が長引いた後でも、特に冷水溺水では回復することがある。

心拍再開後の変更点

予後について

参考文献

  1. Modell JH. Drowning. N Engl J Med.1993;328:253-256.
    (whole article)

  2. Manolis N, Mackie I. Drowning and near drowning on Australian beaches patrolled by life-savers: a 10-year study, 1973-1983. Med J Aust. 1988;148:165-167, 170-171.


低体温 (Hypothermia)

背景

 低体温下では、心停止状態や蘇生中の低拍出状態に対する耐性が高まる。これは代謝が抑制され、低酸素症によってもたらされる活性酸素の作用や興奮毒性物質の産生、細胞膜透過性の変化といった有害な作用が抑制されるためであろう。重度の低体温では徐脈と呼吸数の低下を来たす。

心停止予防のポイント

心停止中の BLS変更

心停止中の ALS変更

主な参考文献

  1. Safar P. Cerebral resuscitation after cardiac arrest: research initiatives and future directions. Ann Emerg Med. 1993;22:324-349.
  2. Krivosic-Horber R. Hypothermie moderee et protection cerebrale. Ann Fr Anesth Reanim. 1995;14:122-128.
  3. Katsura K, Minamisawa H, Ekholm A, Folbergrová J, Siesjo BK. Changes of labile metabolites during anoxia in moderately hypo- and hyperthermic rats: correlation to membrane fluxes of K+. Brain Res. 1992;590:6-12.
  4. Sterz F, Safar P, Tisherman S, Radovsky A, Kuboyama K, Oku K. Mild hypothermic cardiopulmonary resuscitation improves outcome after prolonged cardiac arrest in dogs. Crit Care Med. 1991;19:379-389.
  5. Althaus U, Aeberhard P, Schüpbach P, Nachbur BH, Mühlemann W. Management of profound accidental hypothermia with cardiorespiratory arrest. Ann Surg. 1982;195:492-495.
  6. Reuler JB. Hypothermia, pathophysiology, clinical settings, and management. Ann Intern Med. 1978;89:519-527.
  7. Martin TG. Neardrowning and cold water immersion. Ann Emerg Med. 1984;13:263-273.


高体温 (Hyperthermia)

背景

 高体温下では、心停止状態および生命維持に関わる臓器の灌流低下状態に対す る耐性が低下する。これは、低体温下で代謝の速度や低酸素症の有害作用が 抑制されるのと逆の機序による。

心停止中の BLS変更

心停止中の ALS変更

自己心拍再開直後の変更

主な参考文献

  1. Safar P. Cerebral resuscitation after cardiac arrest: research initiatives and future directions. Ann Emerg Med. 1993;22:324-349.
  2. Krivosic-Horber R. Hypothermie moderee et protection cerebrale. Ann Fr Anesth Reanim. 1995;14:122-128.
  3. Katsura K, Minamisawa H, Ekholm A, Folbergrová J, Siesjo BK. Changes of labile metabolites during anoxia in moderately hypo- and hyperthermic rats: correlation to membrane fluxes of K+. Brain Res. 1992;590:6-12.
  4. Seraj MA. Heat stroke: the management of thermal trauma. In: Grande CM, ed. Textbook of Trauma Anesthesia and Critical Care. St Louis, Mo: Mosby Year Book Inc; 1993:1247-1257.


腎不全 (Renal Failure)

背景

 腎不全患者の ALSには様々な困難が付きまとう。迅速かつ正確な臨床的判断により、多くの症例で蘇生が不能な完全心停止に至るのを防止し得る。種々のシナリオに分類することができる。

 やっかいなことに、患者が示しうる障害は多岐にわたる。

心停止予防のポイント

 脈拍の不整や心電図異常はしばしば、高カリウム血症の存在を知るための手がかりとなる。通常、血清カリウム値と心電図所見は相関する。注意すべき点は、

 高カリウム血症の程度により、治療方針は以下の3通りに分けられる。

 (上記の治療に加え)心筋に対する高濃度カリウムの中毒作用を拮抗する。すなわち 、膜電位を低下させ、心室性不整脈の危険性を小さくする(塩化カルシウム)

 高度の高カリウム血症で、幅広いQRS波を伴う頻脈がみられる時には上記3種すべての治療を行なう。このような患者ではサインカーブ状QRS波や心室固有調律、VFへの移行が差し迫っていると考えて良い。

 これらの治療の詳細を表3に示す。

 塩化カルシウムは効果発現時間が最も短いので、相当の緊急時には第一選択とする。ジギタリス投与中の患者に塩化カルシウムを投与するとジギタリス中毒を誘発することもあるので注意すること。このような患者に対しては、上記の処方を変更し、塩化カルシウムを単回投与(ボーラス)せずに、5%デキストロ−ス液 100 ml中に添加し、30分以上かけて点滴静注する。

心停止中の BLSおよび ALS変更

 通常のALSに加え、以下の治療を行なう。

 CPR中で血流量が低下している場合、インスリン-グルコース療法の効果は低いと考え られるので、自己心拍が再開する以前の使用は推奨しない。

自己心拍再開直後の変更

 自己心拍再開後の治療は心停止前の治療に準ずる。

訳注:本項目中「bolus 投与」という語については、「急速投与」、「瞬時投与」「1回投与」などの案もあったが、現時点では「(静脈内)単回投与」に統一している。

主な参考文献

  1. Cummins RO. Toxicology and electrolyte abnormalities. In: Cummins RO, Graves JR, eds. ACLS Scenarios: Core Concepts for Case-Based Learning. St Louis, Mo: Mosby Lifeline; 1996:196-223.

喘息 (Asthma)

背景

 重症喘息が突然死に至る形態には種々のものがある。このうち、いくつかの至死的病態にはカテコラミンの過剰状態と、随伴する低酸素が関与している。喘息患者の心停止は以下の病態に関連する。

 喘息死の多くは病院外で発生する。最終的な死因に直結する要素の詳細を明らかにするのは不可能である。しかし、死亡直前の状態に至るまで悪化した症例を検討したある報告によれば、不整脈よりも窒息が要因となっていると考えられている。良く知られているように、突然の至死的喘息重積発作はほとんど前ぶれもなく発生し、2, 3分から 1時間以内に窒息に至る。

 重症喘息発作の治療では、完全な心停止に至るまでに如何に積極的な治療が行なわ れるかが重要である。具体的な投与薬剤や治療方針に関しては施設による違いはあるものの、原則としては以下に述べるような薬剤や治療法の組み合わせが採用されている。ALSにおいて問題となるのは種々の治療に対する反応がなく、症状が次第に悪化して行く症例である。このような状況では、(以下に述べるような原則的な薬剤や、治療法以外に)その他の効果があったという報告や研究のチェックリストを作り、それらの治療法を採用することも考慮すべきである。

心停止予防のポイント

酸素

 PaO2を90mmHg以上に保つために充分な吸入酸素濃度を用いる。マスクを用いて高流量酸素を投与するが、直ちに気管内挿管を行なえるよう準備して おく。

Greek beta 2-アドレナリン受容体刺激剤の吸入

 メタプロテレノールは多くの国で喘息治療の礎となっている。標準的な救急治療においては非常に積極的な投与が行なわれるようになってきており、その投与量は 5 - 10mg、15 - 20分毎を最大 3回まで(1時間当たり 15 - 30mg)に及んでいる。過量投与は頻脈の原因となり、さらに VF/VTに移行することもある。

ステロイド剤の静脈内投与

 救急治療では重症喘息発作で生命の危険が懸念される症例に対しては、直ちにステロイ ド剤を投与するのが一般的になっている。ステロイド剤の投与は酸素や Greek beta2-アドレナリン受容体刺激剤の投与と同時に行なうべきで、 Greek beta2-アドレナリン受容体刺激剤の効果を確認するために投与時期を遅らせてはならない。初回投与としてはメチルプレドニゾロン 2 mg/kg、またはハイドロコルチゾン 10 mg/kgを用いる。いずれも以後 6時間毎に投与を繰り返す。

抗コリン剤の吸入

 臭化イプラトロピウムが定用量吸入器で使用できるようになり、次第に普及しつつある。ネブライザーと組み合わせて用いる場合はイプラトロピウム 0.5mgを Greek beta2-アドレナリン受容体刺激剤と共に用いる。

アミノフィリンの静脈内投与

 本薬剤は Greek beta2-アドレナリン受容体刺激剤やステロイド剤の次に使われるように なってしまったが、時に Greek beta2-アドレナリン受容体刺激剤やステロイド剤の効果を増強することもある。アミノフィリンは成人よりも小児において好んで用いられる傾向がある。初回投与として 5 mg/kgを 30 - 40分かけて投与し、以後 0.5 - 0.7 mg/kg/hr で持続投与する。

硫酸マグネシウムの静脈内投与

 アドレナリン受容体刺激剤やステロイド剤の吸入に反応しない患者に対し、硫酸マグネシウムが有効であったとする報告も多い。確実に奏効するというわけではないが、マグネシウムはどこでも使われている薬剤であり、また、1 mg/minの速度で総量 2 - 3gを静脈内投与する限りにおいては例えあったとしても、大した副作用もない(硫酸マグネシウム 1 gはマグネシウム元素として 98mgを含有する)。

Greek beta-アドレナリン受容体刺激剤の静脈内投与

 重症の患者で吸入治療では対処できない場合、イソプロテレノールの持続静脈内投与 を数時間続けると効果が見られることもある。(開始量は 0.1 μg/kg/minとし、最大 6.0 μg/kg/minまで増量して良い。イソプロテレノールは、喘息によって心停止に至ったという、まさに絶望的な状況下で試みられることもある。

エピネフリンの静脈内投与

 強力な効果を期待できる方法の一つであり、これにより重症の至死的喘息発作を人工 呼吸なしで管理できることもある。成人に対しては 1:100,000希釈液 2 - 10 mlを 5分間かけて投与し、以後 5分毎に投与を繰り返す。反応が見られれば気管支の拡張を維持するため 1 - 20 μg/min の持続投与を行なっても良い。

炭酸水素ナトリウムの静脈内投与

 アシドーシスでは交感神経刺激薬の効果が減弱すると言われている。このため、重症喘息患者では動脈血 pHの正常化を行なうというのが何十年も前から続けられている。ただし、これは呼吸補助中の患者に対してのみ行われるというのが一般的である。

気管内挿管/人工呼吸

 酸素化と換気を保つためには鎮静、全身麻酔、筋弛緩、および気管内挿管が避けられない症例もある。重症喘息患者では吸気時気道が軽度閉塞し、呼気の際は気道はほぼ完全閉塞の状態となる。このため、吸入気が肺内に閉じ込められて、いわゆるオートピープ(auto-PEEP)と呼ばれる状態になっている。

 重症な至死的喘息発作の気管内挿管に際しては以下の点に注意が必要である。

  • ケタミン、ベンゾジアゼピン、またはバルビツール剤により充分な鎮静を保つ。

  • サクシニルコリン、ベクロニウム、またはパンクロニウムにより筋弛緩を行なう。

  • 一旦気管内挿管されたならば、意図的な低換気で(ある程度の)高炭酸ガス状態を許容しても、効果的に管理できることが少なくない。これにより死亡率が低下したとする、期待の持てる報告もある。

  • 手術室以外では最近用いられることが少なくなりつつあるが、揮発性麻酔薬には強力な気管支平滑筋の弛緩作用がある。ハロセンやイソフルラン、エトレン、エーテルなどの薬剤は、他の全ての治療に反応しない喘息重積発作の治療に用いられてきた。ただし、これらの薬剤は同時に血管拡張作用や心筋抑制作用をも有するほか、カテコラミンに対する心筋の感受性を増強するものもあるので、使用にあたっては充分な注意が必要である。

  • 喘息重積発作に対して用いる静脈麻酔薬としてはケタミンが好ましい。患者の反応を見ながら適切な量を使用すれば、緩徐な気管支拡張作用を期待できる 。また、血管拡張や循環虚脱、心筋抑制を来すこともない。

  • 「呼出補助」すなわち肺マッサージが喘息重積発作に対して有効であるという報告もある。 適応となるのは、器械による人工呼吸中の患者で胸腔内圧上昇や肺の過膨張が見られ る場合である。救助者は吸気終了と同時に両側の下部胸壁を絞るように圧迫し、次の吸気が始まるまでその圧迫を維持する。この方法を最長 2時間施行したところ予後の改善が見られたという。

 小児救急施設に搬入された、喘息により心停止を来した症例を対象として行なったある小規模な調査報告によると、8症例の内 3例において、気胸が見逃されていたことが明らかになっており、このことが心停止の誘因になった可能性があるとされている。この報告の著者は喘息による心停止症例に対しては、経験にもとづいて両側の胸腔ドレナージを行なうことを推奨しており、Dr. Safarもこれに同意している。

心停止中の BLSと ALS変更

 喘息患者の心停止に如何に対処すべきかに関する情報は限られているが、これもやむ を得ない事である。Dr. Safar曰く、「呼吸不全に続発する心停止を予防するポイントは、まず、呼吸不全そのものの発生を予防するにつきる。」

 考えられるケースには 2種類ある。第一には、喘息重積発作の患者で気管内挿管、人工呼吸など、考えうる限りの治療にもかかわらず心停止に至るものである。第二には、病院外などにおける急激な症状の悪化により、ALSの態勢が整った時点ですでに心停止状態に陥っているものである。ALSに際しては以下の手順に従う。


主な参考文献

  1. Wasserfallen JB, Schaller MD, Feihl F, Perret CH. Sudden asphyxic asthma: a distinct entity? Am Rev Respir Dis. 1990;142:108-111.
  2. Josephson E, Goetting M. Asthmatic cardiac arrest: an indication for empiric bilateral tube thoracotomies. Ann Emerg Med. 1989;18:457.
  3. Robin E, McCauley R. Sudden cardiac death in bronchial asthma and inhaled beta-adrenergic agonists. Chest. 1992;101:1699-1702.
  4. Grubb BP, Wolfe DA, Nelson LA, Hennessy JR. Malignant vasovagally mediated hypotension and bradycardia: a possible cause of sudden death in young patients with asthma. Pediatrics. 1992;90:983-986.
  5. Bharati S, Lev M. Conduction system findings in sudden death in young adults with a history of bronchial asthma. J Am Coll Cardiol. 1994;23:741-746.
  6. Rogers PL, Schlichting R, Miro A, Pinsky M. Auto-PEEP during CPR: an 'occult' cause of electromechanical dissociation? Chest. 1991;99:492-493.
  7. Wiener C. Ventilatory management of respiratory failure in asthma. JAMA. 1993;269:2128-2131.
  8. Molfini NA, Nannini LJ, Martelli AN, Slutsky AS. Respiratory arrest in near-fatal asthma. N Engl J Med. 1991;324:285-288.
  9. Sur S, Crotty TB, Kephart GM, Hyma BA, Colby TV, Reed CE, Hunt LW, Gleich GJ. Sudden-onset fatal asthma: a distinct entity with few eosinophils and relatively more neutrophils in the airway submucosa? Am Rev Respir Dis. 1993;148:713-719.
  10. Lin RY, Smith AJ, Hergenroeder P. High serum albuterol levels and tachycardia in adult asthmatics treated with high-dose continuously aerosolised albuterol. Chest. 1993;103:221-225.
  11. Bryant DH, Rogers P. Effects of ipratropium nebulizer solution with and without preservatives in the treatment of acute and stable asthma. Chest. 1992;102:742-747.
  12. Skobeloff EM, Spivey WH, McNamara RM, Greenspon L. Intravenous magnesium sulfate for the treatment of acute asthma in the emergency department. JAMA. 1989;262:1210-1213.
  13. Schiermeyer RP, Finkelstein JA. Rapid infusion of magnesium sulphate obviates need for intubation in status asthmaticus. Am J Emerg Med. 1994;12:164-166.
  14. Mithoefer J, Rinser R, Karetzky M. The use of sodium bicarbonate in the treatment of acute bronchial asthma. N Engl J Med. 1965;272:1200-1205.
  15. Darioli R, Perret C. Mechanical controlled hypoventilation in status asthmaticus. Am Rev Respir Dis. 1985;129:385-387.
  16. Echeverria M, Gelb AW, Wexler HR, Ahmad D, Kenefick P. Enflurane and halothane in status asthmaticus. Chest. 1986;89:152-154.
  17. Rock MJ, Reyes dela Rocha S, L'Hommedieu C, Truemper E. Use of ketamine in asthmatic children to treat respiratory failure refractory to conventional therapy. Crit Care Med. 1986;114:514-516.
  18. Van der Touw T, Tully A, Amis TC, Brancatisano A, Rynn M, Mudaliar Y, Engel LA. Cardiorespiratory consequences of expiratory chest wall compression during mechanical ventilation and severe hyperinflation. Crit Care Med. 1993;21:1908-1914.
  19. Weber J, Goetting M. Closed lung massage improves ventilation in status asthmaticus. Acad Emerg Med. 1994;1:49A. Abstract.
  20. Safar P, Paradis NA. Asphyxial cardiac arrest. In: Paradis NA, Halperin HR, Nowak RM, eds. Cardiac Arrest: The Science and Practice of Resuscitation Medicine. Baltimore, Md: Williams & Wilkins; 1996:702-726.


アナフィラキシ− (Anaphylaxis)

背景

 アナフィラキシー反応とアナフィラキシー様反応については様々な定義があるが、 あまねく受け入れられている定義は存在しない。アナフィラキシーという用語は、典型的にはIgEによって媒介される過敏反応に対して用いられる。これに対しアナフィラキシー様反応は、臨床症状が類似しているものの、IgEを介する過敏反応によるものではない。両者の症状の発現やそれに対する治療にはあまり違いはないので、急性発作に対する治療という観点からは、その区別は重要ではない。

 両者とも臨床的には血管性浮腫、気管支痙攣、低血圧を呈する。患者の中には、より広汎な症状を呈することなく、急性不可逆性の喘息もしくは喉頭浮腫により死亡する者もいる。その他の症状としては、じんま疹、鼻炎、結膜炎、腹痛、嘔吐、下痢、切迫した死の恐怖感などがある。患者は紅潮あるいは蒼白を呈する。心臓血管系の虚脱は最も一般的な症状であり、血管拡張と血漿喪失によって引き起こされる。心機能不全が起きるとすれば、低血圧、基礎疾患、または投与されたエピ ネフリンによるものである。

 虫刺され、薬剤、造影剤およびある種の食物が最も一般的な原因である。最近、ピーナッツや木の実に対するアレルギーが特に危険であることが知られてきている。βブロッカー類はエピネフリンに対して逆説的反応をもたらすことがあり、 アナフィラキシーの発生率を増加させるおそれがある。

 アナフィラキシーショックにおいて、診断につながる臨床症状が見られず多様な解釈が可能な場合には、診断が困難になることがある。血管迷走神経性反応やパニック発作に陥った多くの患者が間違ってエピネフリンの投与を受けることがある一方、真性のアナフィラキシーの患者が必ずしも適切な薬剤投与を受けているとは限らない。

 年間発症率は不明であるが、統計に含まれる症例を決める重症度基準の 設定によって、10万人当たり5人〜50人という幅のある推計がなされている。 イギリスの最近の研究では、病院の救急室入室者の2,300分の1の出現率と報告されて いる。致死的なアナフィラキシー様反応の年間発症率は100万人に対し1名以下 と考えられているが、診断が曖昧なために(たとえば喘息との混同)、 報告漏れが存在している可能性がある。

心停止予防のポイント

心停止中の BLSと ALSの変更

 アナフィラキシーによって死に至る場合、心電図上は通常、心静止であるといわれている。低酸素症と中枢性の循環血液量減少がその二大要因である。

 心停止に対する処置をどう修正してゆくべきかを示すようなデータはない。しかし、換気困難については予見や対処が可能かも知れない。

 急速な輸液負荷が必要となるし、惜しみなくエピネフリンを投与しつつ(す なわち、急速に大量投与へ移行すること)、抗ヒスタミン剤とステロイドの併 用療法を行うことが推奨される。これは、救命例の経験に基づくものである。

 以上のような点に注意した上で、通常の心静止に対する処置を続けるものとする。

主な参考文献

  1. Fisher M. Treatment of acute anaphylaxis. BMJ. 1995;311:731-733.
  2. Barach EM, Nowak RM, Lee TG, Tomlanovich MC. Epinephrine for treatment of anaphylactic shock. JAMA. 1984;251:2118-2122.
  3. Bochner BS, Lichtenstein LM. Anaphylaxis. N Engl J Med. 1991;324:1785-1790.
  4. Brown AFT. Anaphylactic shock: mechanisms and treatment. J Acc Emerg Med. 1995;12:89-100.
  5. Turpeinen M, Kuokkanen J, Backman A. Adrenaline and nebulized salbutamol in acute asthma. Arch Dis Child. 1984;59:666-668.
  6. Chamberlain D, Adgey J. Anaphylactic reactions: considerations in relation to treatment and resuscitation. Resuscitation. 1997. In press.


徐脈 (Bradycardias)

背景

 定義:徐脈には心拍数の絶対値が異常に小さい場合と、患者それぞれの循環動態にとって小 さすぎる場合(相対的徐脈)とがある。

 まず、徐脈の原因として心臓以外の基礎疾患がないかを検討し、それがある場合には できればその治療を行なう。基礎疾患の例としては、低体温、低酸素症、高カリウム血症、薬剤の過量投与や頭蓋 内病変などがある。

 徐脈に対し直接的な治療を行なう必要があるかどうかは、患者に意識があるかどうか や、心静止に至る可能性が充分にあるかどうか(過去に心停止にまで進展した既往が ある場合や、モビッツII型のAVブロック、3秒以上の無収縮、幅広いQRSを伴う完全房 室ブロックの場合)による。

 QRSの幅が正常である限り、3度の房室ブロック自体は治療の対象とはならないことに 注意すべきである。これは、接合部性の補充調律(QRSの幅は正常)により、ほぼ正 常で安定した心拍数が保たれることが多いためである。

心停止予防のためのポイント

心停止中の BLSと ALS変更

 特になし。心静止に移行した場合の治療は従来の通りである。

主な参考文献

  1. Manning JE, Zoll PM. Therapy of bradyasystolic arrest. In: Paradis NA, Halperin HR, Nowak RM, eds. Cardiac Arrest: The Science and Practice of Resuscitation Medicine.Baltimore, Md: Williams & Wilkins; 1996.
  2. Chamberlain D, Vincent R, Baskett P, Bossaert L, Robertson C, Juchems R, Lindner K. Management of peri-arrest arrhythmias: a statement for the Advanced Cardiac Life Support Committee of the European Resuscitation Council, 1994. Resuscitation. 1994;28:151-159.
  3. Peri-arrest arrhythmias: notice of 1st update. Resuscitation. 1996;31:281.
  4. Iseri LT, Allen BJ, Baron K, Brodsky MA. Fist pacing, a forgotten procedure in bradyasystolic cardiac arrest. Am Heart J. 1987;113:1545-1550.
  5. Dowdle JR. Ventricular standstill and cardiac percussion. Resuscitation. 1996;32:31-32.
  6. Zoll PM, Zoll RH, Falk RH, Clinton JE, Eitel DR, Antman EM. External noninvasive temporary cardiac pacing: clinical trials. Circulation. 1985;71:937-944.
  7. Cummins RO, Graves JR, Larsen MP, Hallstrom AP, Hearne TR, Ciliberti J, Nicola RM, Horan S. Out-of-hospital transcutaneous pacing by emergency medical technicians in patients with asystolic cardiac arrest. N Engl J Med. 1993;328:1377-1382.
  8. American Heart Association Emergency Cardiac Care Committee and subcommittees. Guidelines for cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiac care, III: adult advanced cardiac life support. JAMA. 1992;268:2199-2241.


頻拍症 (Tachyarrhythmias)

背景

 ガイドラインは VFと脈なしVTの治療、および、幅広い QRSを伴う頻脈性不整脈(主にVT)と幅の正常な QRSを伴う頻脈性不整脈(上室性頻拍や心房細動)の治療について、それぞれ作成された。

 急性心筋梗塞にみられる洞性頻脈や徐脈は(心臓の)自動能が不安定になっているこ との現われであり、期外収縮よりも重要な意味を持つ。

 無作為試験の結果によれば、クラス I 抗不整脈剤の予防的投与の有効性は疑問視され ている。 Greek beta-ブロッカーは死亡率を低下させることが明らかになっている。使用経験上、アミオダロンも有望視されている。

 散発性・非継続性の期外収縮に対して投薬治療が必要である事を支持するデータはない。

 無作為試験の結果、VF/VTの予防に関する不整脈抑制仮説の妥当性は否定された。む しろ心拍数と交感神経系の緊張・活動性を抑制する事の方がより有望であるとされて いる。

 全ての抗不整脈剤は同時に催不整脈作用を併せ持つ。

 多剤の併用や大量投与により重篤な心筋抑制を来す可能性がある。

心停止予防のポイント

主な参考文献

  1. A statement of the ALS Committee of the European Resuscitation Council. Peri-arrest arrhythmias: management of arrhythmias associated with cardiac arrest. Resuscitation. 1994;28:151-159 and Resuscitation. 1996;32:281.
  2. Task Force on the Management of Acute Myocardial Infarction of the European Society of Cardiology. Acute myocardial infarction: pre-hospital and in-hospital management. Eur Heart J. 1996;17:43-63.
  3. Cummins RO, ed. Textbook of Advanced Cardiac Life Support. Dallas, Tex: American Heart Association; 1994.
  4. Teo K, Yusuf S, Furberg C. Effects of prophylactic antiarrhythmic drug therapy in acute myocardial infarction: an overview of results from randomized controlled trials. JAMA. 1993;270:1589-1595.
  5. Kloner RA, Hale S, Alker K, Rezkalla S. The effect of acute and chronic cocaine use on the heart. Circulation. 1992;85:407-419.


急性心筋梗塞 (Acute Myocardial Infarction)

背景

 心血管系に起因する死亡例の50%近くが突然死である。心原性突然死患者の80%以上は基礎に冠動脈疾患を抱えている。もっとも、明らかな心筋梗塞が証明される症例はわずか30%である。

 非外傷性・突発性の心停止の75%はVFによるものである。

 冠動脈の異常に基づく急性病変の初期治療では、至死的な不整脈を予防ないし治療す ることと、冠血流再開のための処置を早期に開始することが目的となる。

心停止予防のためのポイント

心停止中の BLS変更

 血栓溶解療法を行なう場合でも、BLSは絶対的禁忌ではない。

心停止中の ALS変更

自己心拍再開直後の変更点

 充分な訓練を積んだ有資格者が処置に当たる場合で、12誘導心電図によって心筋梗塞 の診断が確定した場合には病院前処置の段階で血栓溶解療法を考慮しても良い。

 冠血流再開療法を直ちに行なうことができる医療施設への搬送を考慮する。

Selected Reading

  1. Task Force on the Management of Acute Myocardial Infarction of the European Society of Cardiology. Acute myocardial infarction: pre-hospital and in-hospital management. Eur Heart J. 1996;17:43-63.
  2. Ryan TJ, Anderson JL, Antman EM, Braniff BA, Brooks NH, Califf RM, Hillis LD, Hiratzka LF, Rapaport E, Riegel BJ, Russell RO, Smith EE Jr, Weaver WD. ACC/AHA guidelines for the management of patients with acute myocardial infarction: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Committee on Management of Acute Myocardial Infarction). J Am Coll Cardiol. 1996;28: 1328-1428.


外傷 (Trauma)

背景

 外傷患者が心停止をきたす原因は多岐にわたり、穿通性または鈍的な単独損傷から、複数の臓器損傷を伴う外傷まで様々である。広汎な脳破壊や頭蓋内圧亢進を伴う頭部外傷など、心臓以外の損傷が負傷後の致死要因となって、心停止に至ることもある。

 外傷に関連する心停止では心電図上、脈なし電気活動(PEA)または心静止である ことがほとんどである。しかし、VFが外傷の原因であったり、結果であったりする点も忘れてはならない。

心停止予防のポイント

 低酸素症、循環血液量減少、高カリウム血症、低体温、緊張性気胸、心タンポナーデなど、脈なし電気活動の原因となるような病態の多くは外傷によるものである。状況が許す限り、これらの病態に対しては直ちに診断・治療を行なわなければならない。

心停止中の BLS変更

 症状や受傷機転から頚椎損傷が疑われるような患者に対して頭部後屈を行なってはな らない。応急的な呼吸管理(例:口対口呼気吹き込み)を行う前に、口腔内に血液や吐物その他の分泌物がないことを確認する。

 胸壁や胸骨の骨折がある場合、心マッサージや人工呼吸の際には細かい点に充分注意して、それ以上悪化させないようにする。

 外出血がある場合は止血を優先して行ない、蘇生中の血液量をできる限り温存すべき である。適応がある症例では、ショックパンツの装着により横隔膜より尾側の内出血を減らし 、心マッサージによる血流を改善する効果を期待できる。

心停止中の ALS変更

気道

 症状や受傷機転から頚椎損傷が疑われる症例に気管内挿管を行なう場合には頭頚部を 中立位に固定しておかねばならない。

 前頭蓋底骨折が明らか、または疑われる場合の経鼻的気管内挿管は充分に注意して行 なうか、場合によっては禁忌である。

 高度な顔面損傷の場合には、気道を開通、維持、確保するために輪状-甲状靭帯切開が必要となることもある。

呼吸

 すでに気胸を来している可能性もあるため、蘇生中でも継続的に注意深い聴診を行な い、外傷部位の胸膜損傷から緊張性気胸が進展していないかどうかを確かめる。

 創部から空気の吸い込みがみられる場合には適切に密封し、受傷側の緊張性気胸が進行しないかどうか、常に監視する。また本格的胸腔ドレーンが挿入されるまでの間、シールの一辺を剥がしておくほうが良い(訳注1)。

訳注1:開放性胸部外傷の創(Sucking chest wounds)をシールで密閉すると今度は緊張性気胸になる危険がある。そこで、創には四角のシールを当てて、その3辺のみをテープで密着させ、他の1辺は開放させておくことが推奨されている。これにより、シールが一方弁の機能を果たし、肺裂傷を合併していたとしても、胸腔内に陽圧がこもることを防止することができる。

 気管内挿管後は、陽圧換気と胸骨圧迫の重畳によって、損傷肺が緊張性気胸に進 展することがある。肋骨や胸骨の骨折がある場合には特に要注意である。この ような胸壁損傷がある時には、1:5の割合で行なう陽圧換気と胸壁圧迫を、同期させて おこなうからである(訳注2)。

訳注2:開放性胸部損傷では胸骨圧迫/解除による胸腔内圧の変動が少なく、そのため心マッサ−ジの効果が乏しくなると言われている。この場合の対策として、加圧膨張させた肺で胸壁を支持しつつ心臓マッサージを行なう方法があるが、この状態では損傷肺が緊張性気胸に進展しやすいので注意が必要である。

 気管内挿管が完了したら胃管を挿入し、傷病者の胃内容物を排出することを考慮する。

循環

 出血に対してはあらゆる手段を講じてできるだけ速やかに止血を行ない、循環血液量 と酸素運搬能を維持する。

 特に脈なし電気活動(PEA)の場合、心タンポナーデの鑑別を最優先で行なう。緊急心嚢穿刺や病院への迅速な搬送、病院内での開胸心嚢開窓術により救命できる。肋骨または胸骨骨折があれば人工呼吸と胸骨圧迫を同期させて 1:5の割合で行なう。

 出血量が多い場合には適切な組織潅流圧を維持するため適切かつ積極的な輸液投与が 必要となる。非外傷性心停止の多くは、何らかの疾患を抱えた心臓がそもそもの原因であるのに対 し、外傷患者の心臓は元来健常なことが多いという点を忘れてはならない。

頭頚部の固定

 症状や受傷機転から頚椎損傷が疑われる場合には、搬送を含む蘇生の全経過を通じて 頭頚部の固定を継続しなければならない。

緊急の投薬治療

 低温環境にあった外傷患者では、薬剤を投与する前に体温下降がないかどうか確認する。

 胸部外傷がある場合には肺から出血している可能性もあるので、経気管的な薬剤投与 は得策ではない。

 以前より投薬治療を受けていた患者では薬剤が外傷反応の経過に影響することもある ので、 可能ならばそれらについての情報を集める。

 外傷による心停止患者に対する病院前処置の原則は、応急的救命処置を行なったら直 ちに、迅速に搬送することである。外傷性心停止のほとんど、特に鈍的外傷による心停止は予後が悪い。したがって、現場で自己心拍が再開しない場合、それ以上の蘇生を行なって外傷センターへ搬送しても無駄に終わる事も多い。必要なALSを含む蘇生が奏効しない場合に は蘇生を断念すべきであろう。 穿通性胸部外傷の場合には病院内で緊急開胸術を試みる価値がある。

自己心拍再開直後の変更

 心停止となった原因が不明な場合には、自己心拍再開後、ただちに原因の精査と治療を開始すべきである。

 緊急手術(例:出血創に対する外科的止血術)が必要な場合は迅速に行なう。

主な参考文献

  1. Rosemurgy AS, Norris PA, Olson SM, Hurst JM, Albrink MH. Prehospital traumatic cardiac arrest: the cost of futility. J Trauma. 1993;35:468-473.
  2. Hazinski MF, Chahine AA, Holcomb GW III, Morris JA Jr. Outcome of cardiovascular collapse in pediatric blunt trauma. Ann Emerg Med. 1994;23:1229-1235.

  3. (whole article)
  4. Bouillon B, Walther T, Krämer M, Neugebauer E. Trauma and circulatory arrest: 224 preclinical resuscitations in Cologne in 1987-1990. Anaesthesist. 1994;43:786-790.
  5. Schmidt U, Frame SB, Nerlich ML, Rowe DW, Enderson BL, Maull KI, Tscherne H. On scene helicopter transport of patients with multiple injuries: comparison of a German and an American system. J Trauma. 1992;33:553-555.
  6. Barriot P, Riou B, Noto R, Buffat JJ. Dissociations electromecaniques. Medecine et Armees. 1988;16:87-91.
  7. Durham LA III, Richardson RJ, Wall MJ Jr, Pepe PE, Mattox KL. Emergency center thoracotomy: impact of prehospital resuscitation. J Trauma. 1992;32:775-779.
  8. Rozycki G, Adams C, Champion HR, Kihn R. Resuscitative thoracotomy: trends in outcome. Ann Emerg Med. 1990;19:462.
  9. Kloeck WG. A practical approach to the aetiology of pulseless electrical activity: a simple 10-step training mnemonic. Resuscitation. 1995;30:157-159.
  10. Kloeck WGJ, Kramer EB. Prehospital advanced CPR in the trauma patient. Trauma Emerg Med. 1993;10:772-776.


麻酔と機械的人工呼吸 (Anesthesia and Mechanical Ventilation)

背景

 麻酔中の心停止はまれである(麻酔症例10,000-40,000につき1例)

 麻酔中の心停止の原因:

 特に心停止の原因が麻酔自体である場合など、麻酔以外の状況における場合よりも蘇 生率は高い。

 モニターの進歩により、呼吸に起因する防ぎ得た筈の(preventable)心停止の頻度は減少した。

 麻酔に伴う危険性は手術終了直後の期間も持続する。

心停止予防のためのポイント

心停止中のBLS変更

 特になし。

心停止中のALS変更

自己心拍再開直後の変更

 可及的、速やかに手術を終了する。

参考文献

  1. Morgan CA, Webb RK, Cockings J, Williamson JA. The Australian Incident Monitoring Study: cardiac arrest: an analysis of 2000 incident reports. Anaesth Intensive Care. 1993;21:626-637.
  2. Keenan RL, Boyan CP. Decreasing frequency of anaesthetic cardiac arrests. J Clin Anesth. 1991;3:354-357.
  3. Olsson GL, Hallèn B. Cardiac arrest during anaesthesia: a computer-aided study in 250 543 anaesthetics. Acta Anaesthesiol Scand. 1988;32:653-664.


妊娠 (Pregnancy)

背景

 妊娠中の心停止はまれで、分娩 30,000例につき1例の割合で発生するといわれている。

 妊娠中の母体では心拍出量や血液量、分時換気量、酸素消費量がいずれも増加するな ど、大きな生理学的変化が見られる。 さらに、妊婦が仰臥位の姿勢をとると、子宮の重さによって腸骨部や腹部の血管が圧 迫されて心拍出量と血圧が低下することがある。

 もう一つ重要なのは、妊娠中の心停止の原因となる特殊な病態、すなわち、羊水塞栓 症、肺塞栓症、妊娠子癇、薬剤中毒(硫酸マグネシウム、硬膜外麻酔)、うっ血性心 筋症、大動脈解離、外傷、出血などの存在である。

 緊急帝王切開(心停止5分以内)の必要性を素早く判断しなければならない。これにより、母体と胎児、両方の予後改善が期待できる。

心停止予防のためのポイント

心停止中のBLS変更

 子宮による大血管への圧迫を解除するため、用手的に子宮の位置をずらすか、枕を何 枚も重ねて楔状にしたものを背部に差し込むか、あるいは患者の背を救助者の大腿に 載せる。

心停止中のALS変更

参考文献

  1. Emergency Cardiac Care Committee and subcommittees, American Heart Association. Guidelines for cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiac care, IV: special resuscitation situations. JAMA. 1992;268:2242-2250.
  2. Goodwin AP, Pearce AJ. The human wedge: a manoeuvre to relieve aortocaval compression in resuscitation during late pregnancy. Anaesthesia. 1992;47:433-434.
  3. Wolcomir M, ed. Advanced Life Support for Obstetrics. Kansas City, Mo: American Academy of Family Physicians; 1996.


脳卒中 (Stroke)

背景

 脳卒中は身体機能の障害や死亡の原因の内で重要な位置を占める。 結果として心停止となるもあり、予後は悪い。急性期の脳卒中は緊急処置を必要とする疾患で、治療法の選択肢も増えつつある。治療にあたって、時間は重要な要素であることが多く、素早い診断と治療が重要となる。不整脈や急性心筋梗塞が脳卒中の原因となることもあるが、逆にこれらが脳卒中に続 発することもある。

 脳卒中では、一般市民に対する素早い発見と医療従事者による素早い治療開始が望ま れる。

心停止予防のポイント

心停止中のBLS変更

 特になし。

心停止中のALS変更

 早期に気管内挿管を行ない、亢進した頭蓋内圧を過換気によって低下させる。

自己心拍再開直後の変更

 上記「心停止予防のポイント」と同じ

参考文献

  1. Kushner M, Peters RW. Prolonged sinus arrest complicating a thrombotic stroke. Pacing Clin Electrophysiol. 1986;9:248-249.
  2. Emergency Cardiac Care Committee and subcommittees, American Heart Association. Guidelines for cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiac care, IV: special resuscitation situations. JAMA. 1992;268:2242-2250.


高齢者 (Elderly Patients)

Background

背景

 年齢自体は蘇生の成功率を左右する重要な因子ではないと考えられている。文献にみられる研究結果は様々ではあるものの、加齢に伴う合併症の影響を除外した 研究の多くは年齢自体が蘇生の成功率に影響を与える独立因子ではないとの結論を出 している。これらの研究は、また、蘇生後の神経学的予後についても高齢者と若年者との間に差 は見られないとしている。

心停止予防のポイント

 救急医療の従事者は高齢者の心筋梗塞では非典型的症状を認めることがある点を理解 しておく必要がある。

 80歳以上の患者の場合、心停止に至るほどの発作であっても胸痛を訴えるのは半数以下である。従って、その他の症状、すなわち、息切れ、失神、時には疲労感、ふらつき、などの漠然とした症状が心筋虚血の徴候となることがある。

 患者がこのような症状を示す場合には慎重に対応して、心筋虚血の有無を鑑別しなけ ればならない。これには早期の心電図検査や静脈路の確保、その他が含まれる。

 高齢者では若年者に比べて急性心筋梗塞による死亡率が高い。加齢に応じて心拍出量が減少するため、心筋の喪失は高齢者にとって大きな負担となる。従って、積極的な治療をできる限り早期に開始して、心筋の温存を図ることがきわめ て重要である。

 高齢者においては早期の血栓溶解剤使用、その他の治療により梗塞範囲を最小限にと どめる努力が重要である。

心停止中のBLS変更

 特になし。

心停止中のALS変更

 若年者に比べ高齢者ではVFを呈する事は少なく、PEAがより一般的に見られる心電図 波形である。心停止中の心電図に見られるこのような特殊性は原因が不明であり、今後の研究が必 要であろう。

 エピネフリンなど、ACLSに用いる薬剤の高齢者における使用法については信頼できる 研究がない。従って、ACLSプロトコールの変更に関しては特に言及すべき内容はない。

自己心拍再開直後の変更

 患者が高齢者の場合には、集中治療室に収容し、循環動態と心電図上のリズムを厳重 に監視する。

 高齢者では心筋梗塞後の死亡率が高く、また、心機能の予備力も低下しているため、 心筋梗塞後の合併症発生率も高い。心筋を温存するために積極的な治療が必要である。

主な参考文献

  1. Van Hoeyweghen RJ, Bossaert LL, Mullie A, Martens P, Delooz HH, Buylaert WA, Calle PA, Corne L. Survival after out-of-hospital cardiac arrest in elderly patients. Ann Emerg Med. 1992;21:1179-1184.
  2. Longstreth WT Jr, Cobb LA, Fahrenbruch CE, Copass MK. Does age affect outcomes of out-of-hospital cardiopulmonary resuscitation? JAMA. 1990;264:2109-2110.
  3. Bedell SE, Delbanco TL, Cook EF, Epstein FH. Survival after cardiopulmonary resuscitation in the hospital. N Engl J Med. 1983;309:569-576.
  4. Tresch DD, Thakur R, Hoffman RG, Brooks HL. Comparison of outcome of resuscitation of out-of-hospital cardiac arrest in persons younger and older than 70 years of age. Am J Cardiol. 1988;61:1120-1122.
  5. Tresch DD, Thakur RK, Hoffman RG, Aufderheide TP, Brooks HL. Comparison of outcome of paramedic-witnessed cardiac arrest in patients younger and older than 70 years. Am J Cardiol. 1990;65:453-457.
  6. Tresch DD, Thakur RK, Hoffmann RG, Olson D, Brooks HL. Should the elderly be resuscitated following out-of-hospital cardiac arrest? Am J Med. 1989;86:145-150.
  7. Bayer AJ, Chadha JS, Farag RR, Pathy MS. Changing presentations of myocardial infarction with increasing old age. J Am Geriatr Soc. 1986;34:263-266.
  8. Weaver WD, Litwin PE, Martin JS, Kudenchuk PJ, Maynard C, Eisenberg MS, Ho MT, Cobb LA, Kennedy JW, Wirkus MS. Effect of age on use of thrombolytic therapy and mortality in acute myocardial infarction. J Am Coll Cardiol. 1991;18:657-662.
  9. Doorey AJ, Michelson EL, Topol EJ. Thrombolytic therapy of acute myocardial infarction: keeping the unfulfilled promises. JAMA. 1992;268:3108-3114.


倫理学的問題 (Ethical Issues)

背景

 心停止患者の蘇生は無益ではないかという論議がある。これについては結論が出ていないので、特に救急医療従事者にとっては、蘇生開始が無益な患者を選別することは非常に困難である。心停止患者に対し、蘇生を開始しないことが許される状況として、以下のような状況がある。

 上記の他にも、患者の予後が非常に厳しいために、心停止後の心肺蘇生が無益であると感じられる状況が存在することは確かである。しかし、どのような場合に心肺蘇生が無益であるかについては、コンセンサスや広く受け入れられた定義は得られていない。個人的なバイアスや考え方の違いが、 蘇生を実施しないという重大な判断に影響することもある。 どのような場合に心停止後の心肺蘇生が無益であるのか、医学会の中で合意を形成することが望まれる。

心停止直前の重要な処置

心停止時の一次および二次救命処置の修正

 特になし

 なお不十分な、形だけの心肺蘇生を実施することは、倫理的に正当化されるものではないことに注意する。患者に対して、心肺蘇生を施行しないのか、もしくはガイドラインに沿って適切な二次救命措置を実施するのか、どちらかにすべきである。

心停止後早期の修正事項

 特になし。


ILCORの蘇生ガイドライン(目次)へ