会長あいさつ(Presidential Message)
昨年、おかげさまで、日本薬史学会は創立70周年を迎えることができました。その記念事業が森本和滋実行委員長(日本薬史学会第八代会長)の采配にて滞りなく完了したことを慶び、森本先生はじめ実行委員の皆さまに厚く御礼申し上げる次第です。
日本薬史学会が対象としている「薬」は商品という性格も持っていますが、薬とは特殊な商品であり、たとえば、場合によってはその商品選択は自分ではなく専門家に委ねられたり、使用にも専門家の技術や助言・指導を必要としたりします。そしてこの商品は使うことによって、望ましい場合には健康を回復したりする働きをする一方、思わしくない場合には健康を害することすらもあります。
このような特殊な商品でもある「薬」に関わる歴史を様々な観点から考究していくのがこの会の目的であり、薬の未来を語るにも歴史に学ぶことがとくに大切であることからその存在意義は大きいと存じます。
この目的遂行のため、本会では、年会や講演会を催したり、『薬史学雑誌』や『薬史レター』を発行したり、H Pを開設したりして、会員の皆さまの発表の場や、集う場を提供する努力をしています。是非、これらの発表や集いの場を大いに活用していただきたいと思います。
一昨年の年会は岡山(就実大学)、昨年は東京(帝京大学)で開催されましたが、今年は富士山を間近にする静岡駅前の静岡理工科大学のキャンパスにて10月4日 (土) 〜5日 (日) の日程で開催予定です。多数の参集を期待いたします。
日本薬史学会の現在の一般会員数は約230人です。このようにたくさんの方々が、薬史学に興味を持って集ってくださっていることは大変に嬉しいことであり、頼もしくもあります。会員諸氏に感謝し、大切にしたいと肝に銘じております。
なお、私事ですが、このたび、福岡で開催された日本薬学会第145年会にて、2025年度の「日本薬学会教育賞」が授与されました。授賞理由は「執筆や講演活動による国民各層への薬学知識の啓発」で、明らかに日本薬史学会における活動も含まれます。この受賞もきっかけとし、鋭意、この会の発展に尽くしたいと考えておりますので、今後とも変わらぬご支援やご叱責方、何卒どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年4月吉日
日本薬史学会会長 船山信次
(日本薬科大学客員教授)

「日本薬学会教育賞」の賞牌
プロフィール
1951年仙台市生まれ。東北大学薬学部卒業、同大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬剤師・薬学博士。博士研究員としてイリノイ大学薬学部(シカゴ)留学の後、北里研究所技師・室長補佐、東北大学薬学部専任講師、青森大学工学部教授(弘前大学客員教授兼任)、日本薬科大学教授(同大学図書館長・薬用植物園長・漢方資料館長)などを経、現在、日本薬史学会会長・日本薬科大学客員教授。
著書に、『毒と薬の世界史』(中公新書)、『〈麻薬〉のすべて』(講談社現代新書)、『毒』(P H P文庫)、『毒と薬の文化史』(慶應義塾大学出版会)、『毒の科学』(ナツメ社)、『アルカロイドー毒と薬の宝庫』(共立出版)、『絵でわかる薬のしくみ』(講談社)、『毒が変えた天平時代―藤原氏とかぐや姫の謎』(原書房)、『毒があるのになぜ食べられるのか』(PHP新書)、『禁断の植物園』(山と溪谷社)など多数。毒や薬の歴史と文化に関する雑誌記事の執筆、TVやラジオ番組出演も多数。
